2022年夏・下半期の住まいのトレンドは?Houzzのユーザー動向から読み解く
Houzzのユーザー動向から、今夏以降に求められるインテリア・デザインの方向性を導き出してみました。
Miki Anzai
2022年7月19日
Houzz Japanでは、2022年上半期にユーザーにより多く保存された写真・よく読まれた記事・海外のインテリア・イベントで話題になったテーマなどを踏まえ、今夏から年末に向けて8つのキーワードを抽出しました。また、最近の施工事例で多く見られたインテリア・デザインの傾向を、Houzzの住まいの専門家から伺い、そこから見えてくる、年末までのデザイン・トレンドを予測してみました。
1. アウトドアリビング
住まいへのニーズが新型コロナウイルスの影響で多様化し、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に入っても、快適性や安全性が求められていくことでしょう。その意味からも、Houzzで上半期に多く保存されたこの施工事例のように、テラスとLDKをシームレスにつなぐアウトドアリビングへの需要は、今夏以降も堅調と思われます。
この家の設計を手がけた株式会社seki.designを主宰する石憲明さんは「当たり前になりつつあるアウトドアリビングに、ファニチャーを置くスタイルを標準的に提案し、荒天時の収納のしやすさを追求していきたいです」と語ります。
Houzzウェブマガジンでも、カラフルな家具をアウトドアリビングのアクセントにする案、アウトドアダイニングのすすめ、屋外の照明プランの記事がよく読まれています。
住まいへのニーズが新型コロナウイルスの影響で多様化し、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に入っても、快適性や安全性が求められていくことでしょう。その意味からも、Houzzで上半期に多く保存されたこの施工事例のように、テラスとLDKをシームレスにつなぐアウトドアリビングへの需要は、今夏以降も堅調と思われます。
この家の設計を手がけた株式会社seki.designを主宰する石憲明さんは「当たり前になりつつあるアウトドアリビングに、ファニチャーを置くスタイルを標準的に提案し、荒天時の収納のしやすさを追求していきたいです」と語ります。
Houzzウェブマガジンでも、カラフルな家具をアウトドアリビングのアクセントにする案、アウトドアダイニングのすすめ、屋外の照明プランの記事がよく読まれています。
2. ホテルのようなプレミアム空間
これまでホテルで体験していた極上の空間を、自宅にも求める傾向も強くなっています。今年3月にパリで開催された国際デザイン見本市『メゾン・エ・オブジェ』(以下メゾン)でも、「ホテルスタイル」のホームデザインの提案がなされていました。
「ホテル」は、Houzzでも2022年上半期の人気検索ワードで、前年同期比で4.7倍近くも検索回数が増えました。Houzzマガジンでも、ホテルライクなベッドルームやホテルライクな空間づくりを紹介する記事が人気でした。
メゾン・エ・オブジェ2022年3月展から導き出す、住まいづくりのためのヒント
これまでホテルで体験していた極上の空間を、自宅にも求める傾向も強くなっています。今年3月にパリで開催された国際デザイン見本市『メゾン・エ・オブジェ』(以下メゾン)でも、「ホテルスタイル」のホームデザインの提案がなされていました。
「ホテル」は、Houzzでも2022年上半期の人気検索ワードで、前年同期比で4.7倍近くも検索回数が増えました。Houzzマガジンでも、ホテルライクなベッドルームやホテルライクな空間づくりを紹介する記事が人気でした。
メゾン・エ・オブジェ2022年3月展から導き出す、住まいづくりのためのヒント
3. 丸みを帯びた家具
ホテルのような心地よさをもたらすデザインとして、前述のメゾンや、5月にニューヨークで開催された2つの国際家具見本市で多く展示されていたのが、丸みを帯びた家具です。
インテリアデザイナーの網村眞弓さんは、「ふっくらと印象的なソファを置くことで、ホテルの一角のような特別なくつろぎのシーンを演出することができる」と語ります。
現代家具とデザインの最新情報。NYの見本市から解くトレンド
ホテルのような心地よさをもたらすデザインとして、前述のメゾンや、5月にニューヨークで開催された2つの国際家具見本市で多く展示されていたのが、丸みを帯びた家具です。
インテリアデザイナーの網村眞弓さんは、「ふっくらと印象的なソファを置くことで、ホテルの一角のような特別なくつろぎのシーンを演出することができる」と語ります。
現代家具とデザインの最新情報。NYの見本市から解くトレンド
Houzzで多く保存されたこのリビングでも、窓ベンチに丸いクッションを置いています。在宅ワークが増えた今、丸みのあるパーソナルチェアがリラックス効果をもたらしてくれそうと話すのは、インテリアデコレーターのヘザー・ブラッキンさん。
「四角いデスクやパソコンから、緩やかなカーブが特徴のチェアへ移れば、気持ちの切り替えにもなるでしょう」と語ります。
心地よい空間づくりに、丸みのあるアイテムを取り入れてみませんか?
「四角いデスクやパソコンから、緩やかなカーブが特徴のチェアへ移れば、気持ちの切り替えにもなるでしょう」と語ります。
心地よい空間づくりに、丸みのあるアイテムを取り入れてみませんか?
4. サステナブルで多機能、コンパクトなキッチン
Houzzが実施した「住宅リフォーム・リノベーション 2021年・2022年市場調査」によると、模様替えも含めて改修・改築などをした場所として、昨年一番多かったのがキッチンでした。平均支出額も、2年前に比べて2倍以上も増えて150万円でした。
リフォームで好まれるデザインの傾向は、「ぎらぎらしたものから遠ざかり、スムースな表面、しっとりした質感、ソフトでニュートラルな、自然由来の色調やサーフェスへの変化を感じます」という網村さん。また、バックスプラッシュに使われるタイルにも変化が見られ、「大地や海、樹木を連想させるゆらぎの表情を持ったタイルや、リネンのようなぬくもりが感じられるタイルが目立つようになってきている」と語ります。
Houzzが実施した「住宅リフォーム・リノベーション 2021年・2022年市場調査」によると、模様替えも含めて改修・改築などをした場所として、昨年一番多かったのがキッチンでした。平均支出額も、2年前に比べて2倍以上も増えて150万円でした。
リフォームで好まれるデザインの傾向は、「ぎらぎらしたものから遠ざかり、スムースな表面、しっとりした質感、ソフトでニュートラルな、自然由来の色調やサーフェスへの変化を感じます」という網村さん。また、バックスプラッシュに使われるタイルにも変化が見られ、「大地や海、樹木を連想させるゆらぎの表情を持ったタイルや、リネンのようなぬくもりが感じられるタイルが目立つようになってきている」と語ります。
こちらもHouzzで人気だったキッチンですが、シンプルでコンパクトかつ、タイムレスなデザインの流れが感じられます。
5. タイムレスな家具
サステナブルな家具とはなにかを考えてみると、時代を超えて受け継いでいける「タイムレス」な家具に行き着きます。上半期にもっとも読まれたHouzzツアー(お宅訪問)記事は、「吉村順三が手がけた箱根のマンションを、伊礼智がリノベーション」でした。明治時代に生まれ昭和に活躍した吉村氏と、彼の弟子などゆかりのある建築家らがデザインした家具が勢揃いした住まいは、多くの読者の心を捉えました。
また、「アンティーク」も、2022年上半期に最もよく検索されたキーワードの1つで、検索回数も前年同期比で6倍近く増えました。
サステナブルな住まいづくりを顧客と進めていく方法
サステナブルな家具とはなにかを考えてみると、時代を超えて受け継いでいける「タイムレス」な家具に行き着きます。上半期にもっとも読まれたHouzzツアー(お宅訪問)記事は、「吉村順三が手がけた箱根のマンションを、伊礼智がリノベーション」でした。明治時代に生まれ昭和に活躍した吉村氏と、彼の弟子などゆかりのある建築家らがデザインした家具が勢揃いした住まいは、多くの読者の心を捉えました。
また、「アンティーク」も、2022年上半期に最もよく検索されたキーワードの1つで、検索回数も前年同期比で6倍近く増えました。
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6. 青と黄色、根強い人気のグレージュ、パステルカラー
パリのメゾンでも注目されていた色は、フランス現代美術を代表する芸術家のイヴ・クラインが開発した鮮やかな「クラインブルー」。今年は日差しのように鮮やかなイエローとの組み合わせが華々しくカムバックしています。
メゾン・エ・オブジェで見つけた、2022年のトレンドカラーとは?
パリのメゾンでも注目されていた色は、フランス現代美術を代表する芸術家のイヴ・クラインが開発した鮮やかな「クラインブルー」。今年は日差しのように鮮やかなイエローとの組み合わせが華々しくカムバックしています。
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ワークルームの壁面造作家具の色を全てブルーにしたいと顧客からリクエストされたstudio Ma(スタジオ・エムエー)代表の安藤眞代さんも、ブルー系に注目していると語ります。
そのほかにも、「グレージュ系と合う、少し明度を落としたパステルカラー群も昨年から定番にしています」という安藤さん。先月、独フランクフルトで開催されたインテリアの『ハイムテキスタイル国際見本市』でも、青とパステルカラーが大人気でした。
クールさと温かみを両立。グレージュをインテリアに取り入れる
そのほかにも、「グレージュ系と合う、少し明度を落としたパステルカラー群も昨年から定番にしています」という安藤さん。先月、独フランクフルトで開催されたインテリアの『ハイムテキスタイル国際見本市』でも、青とパステルカラーが大人気でした。
クールさと温かみを両立。グレージュをインテリアに取り入れる
7. 無駄のない動線
Houzzで上半期によく保存された画像のひとつが、こちらのランドリールーム・家事室。家事のしやすさを考えてデザインされた空間は、昨年から根強い人気を集めています。
インテリアをトータルコーディネートする株式会社いそざきや代表の磯崎久美子さんも、「サニタリーの設計では、無駄の無い動線、手入れのしやすさ、仕切り過ぎない収納」を提案していると語ります。
Houzzで上半期によく保存された画像のひとつが、こちらのランドリールーム・家事室。家事のしやすさを考えてデザインされた空間は、昨年から根強い人気を集めています。
インテリアをトータルコーディネートする株式会社いそざきや代表の磯崎久美子さんも、「サニタリーの設計では、無駄の無い動線、手入れのしやすさ、仕切り過ぎない収納」を提案していると語ります。
8. 窓の高断熱化
夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現するために、窓の断熱リフォームが増えていくでしょう。あまり窓のリフォームに予算を割けられない場合は、「内窓による断熱補強が、最も費用対効果が高い」と話すのは、株式会社松尾設計室代表の松尾和也さん。
既存窓の内側に樹脂サッシの窓を施工した網村さんは、「遮熱機能を強化できた上に、サッシの色をオフホワイトにすることで、光が拡散して、黒かったサッシも覆われ、視覚的にもソフトになりました」と語ります。
夏におすすめ、窓のリフォーム。熱を遮断して涼しく、快適に暮らそう
夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現するために、窓の断熱リフォームが増えていくでしょう。あまり窓のリフォームに予算を割けられない場合は、「内窓による断熱補強が、最も費用対効果が高い」と話すのは、株式会社松尾設計室代表の松尾和也さん。
既存窓の内側に樹脂サッシの窓を施工した網村さんは、「遮熱機能を強化できた上に、サッシの色をオフホワイトにすることで、光が拡散して、黒かったサッシも覆われ、視覚的にもソフトになりました」と語ります。
夏におすすめ、窓のリフォーム。熱を遮断して涼しく、快適に暮らそう
ところで、Houzzの「2021年・2022年の市場調査」で特に目を引いたのが、「リフォーム・リノベーションを家づくりの専門家に依頼した」と回答した人が、2021年には全体の95%にのぼり、 その中でも建築家に依頼したケースが、前年から2.7倍の24%になったことです。
デザイン住宅を多く手がける石さんは、「リモートワークが増え、家族で家にいる時間が増えたため、いままで住宅設備や表層的なコストを抑えたリフォームになりがちだったのが、よりコストをかけ、デザイン性の高い家を手に入れたいと思う世帯が増えてきている」と語ります。
Houzzの調査でも、2021年に自宅のリフォーム・リノベーションをおこなった人の支出額の中央値が前年から62%も上昇し、300万円となりました。これはハイエンド層(支出額を大きい順に並べた時の上位10パーセンタイル)による支出額が前年より70%上昇し、1700万円になったことも起因しています。
デザイン住宅を多く手がける石さんは、「リモートワークが増え、家族で家にいる時間が増えたため、いままで住宅設備や表層的なコストを抑えたリフォームになりがちだったのが、よりコストをかけ、デザイン性の高い家を手に入れたいと思う世帯が増えてきている」と語ります。
Houzzの調査でも、2021年に自宅のリフォーム・リノベーションをおこなった人の支出額の中央値が前年から62%も上昇し、300万円となりました。これはハイエンド層(支出額を大きい順に並べた時の上位10パーセンタイル)による支出額が前年より70%上昇し、1700万円になったことも起因しています。
【番外編】
海外で大人気の「ジャパンディ」スタイル
最後に、数年前から海外で注目され始めた、和(ジャパン)と北欧(スカンジナビア)らしさをミックスした「ジャパンディ」スタイルについても触れておきます。世界10ヶ国以上でビジネス展開しているHouzzですが、海外のユーザー動向から「ジャパンディ」が世界的なブームを巻き起こしていることが分かります。
今年の1月から3月の間にHouzzの米国サイトで「ジャパンディバスルーム」と検索された回数は、前年同期比で3.3倍、「ジャパンディキッチン」が2倍強でした。米国のデザイナーたちによると、「日本」と「北欧」スタイルに共通する、木材を使って、直線的なフォルムを取り入れ、職人の丁寧な手仕事を大切にする点が評価されているとのこと。
Houzzオーストラリアでも、2017年頃から人気が出始めた「ジャパンディ」。当初は「北欧スタイルよりかはカジュアルさを抑え、侘(わび)寂の(さび)のような伝統的な日本建築よりもくつろいだ雰囲気」を、リビングなどに取り入れるケースが目立ちましたが、2021年には「日本式の深い浴槽」の検索数が前年比で約12倍アップと、驚異的な伸びをみせました。
海外で大人気の「ジャパンディ」スタイル
最後に、数年前から海外で注目され始めた、和(ジャパン)と北欧(スカンジナビア)らしさをミックスした「ジャパンディ」スタイルについても触れておきます。世界10ヶ国以上でビジネス展開しているHouzzですが、海外のユーザー動向から「ジャパンディ」が世界的なブームを巻き起こしていることが分かります。
今年の1月から3月の間にHouzzの米国サイトで「ジャパンディバスルーム」と検索された回数は、前年同期比で3.3倍、「ジャパンディキッチン」が2倍強でした。米国のデザイナーたちによると、「日本」と「北欧」スタイルに共通する、木材を使って、直線的なフォルムを取り入れ、職人の丁寧な手仕事を大切にする点が評価されているとのこと。
Houzzオーストラリアでも、2017年頃から人気が出始めた「ジャパンディ」。当初は「北欧スタイルよりかはカジュアルさを抑え、侘(わび)寂の(さび)のような伝統的な日本建築よりもくつろいだ雰囲気」を、リビングなどに取り入れるケースが目立ちましたが、2021年には「日本式の深い浴槽」の検索数が前年比で約12倍アップと、驚異的な伸びをみせました。
一方、Houzzの英国でもリビングルームを「ミニマルなジャパンディスタイル」にしたいというユーザーが多く見られました。
伝統を重んじ、秩序、調和、そして自然界とのつながりを大切にする「和」の様式美。そこに、シンプルですっきりとした、明るい色の木材とミニマルに抑えた色づかいが特長の「北欧」スタイルを融合した「ジャパンディ」スタイル。心地よく、飽きのこないデザインは、今年のトレンドである「タイムレス」な空間づくりにもつながりそうです。
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刺さる良い記事ですね。
アウトドアリビング
雨風の影響が少なそうなラウンジチェアを発注しました。
テーブルは使う時だけ持ち出せる、折りたたみ式のものを
なんと、特注で作っています。
メゾン・エ・オブジェ
もうすぐ名古屋でも少しだけ見られます。休みをとって行
こうと思います。
https://www.jr-takashimaya.co.jp/cp/maison-objet/
ありがとうございます。折りたたみ式のアウトドアリビング・テーブルとは、素敵ですね!名古屋でのメゾンもお楽しみください。個人的には、「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた椅子&照明をクロノロジカルに展示した第1部がよかったです。