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ロンドンビルド2023見本市から学ぶ、サステナブルな住まいづくり
家づくりをする上で、環境負荷を軽減するための革新的なアイデアをご紹介します。
Amanda Pollard
2022年11月29日
建設業界を代表する見本市「ロンドンビルド2023エキスポ」(2022年11月16日・17日開催)では、サステナビリティ(持続可能性)が注目を集めました。ロンドンのオリンピアで開催されたこの見本市の展示で特に目をひいたのが、サステナビリティの概念を家づくりに取り入れるために役立つ製品アイデアでした。また、トークイベントでは、業界の温室効果ガスの排出量を減らす方法などが紹介されました。
この記事では、会場で展示されていた素晴らしいアイデアのうち、いくつかをご紹介します。
この記事では、会場で展示されていた素晴らしいアイデアのうち、いくつかをご紹介します。
建設工事段階のためのソリューション
気候変動に対する取り組みをおこなうZero Constructの展示では、サステナブルな施工を実践するためのアドバイスが紹介されました。建設の専門家で構成されるこの団体は、プロジェクトの各段階で炭素効率性を重視。業界全体にその重要性を広めるべく活動しています。
「建設業界は、年間およそ40億t-CO2eもの温室効果ガスを排出しています」と話すのは、『ZERO Uniting Construction to Tackle Embodied Carbon(ZERO—建設業界が一丸となったエンボディドカーボンに対する取り組み)』というパネルディスカッションに参加したZEROのメンバーであり環境コンサルタントのJonathan Munkley(ジョナサン・ムンクリー)さんです。この問題に取り組むため、ZEROはPlaybook(戦略集)の作成を進めています。この資料は、低炭素プロジェクトを遂行するにあたっての実用的なガイドであるといい、2023年1月にリリースされる予定です。
気候変動に対する取り組みをおこなうZero Constructの展示では、サステナブルな施工を実践するためのアドバイスが紹介されました。建設の専門家で構成されるこの団体は、プロジェクトの各段階で炭素効率性を重視。業界全体にその重要性を広めるべく活動しています。
「建設業界は、年間およそ40億t-CO2eもの温室効果ガスを排出しています」と話すのは、『ZERO Uniting Construction to Tackle Embodied Carbon(ZERO—建設業界が一丸となったエンボディドカーボンに対する取り組み)』というパネルディスカッションに参加したZEROのメンバーであり環境コンサルタントのJonathan Munkley(ジョナサン・ムンクリー)さんです。この問題に取り組むため、ZEROはPlaybook(戦略集)の作成を進めています。この資料は、低炭素プロジェクトを遂行するにあたっての実用的なガイドであるといい、2023年1月にリリースされる予定です。
1. 排出物を除去する
会場では、現場での環境負荷低減を目指す建設業者に向けたさまざまなアイデアが紹介されました。
例えば、AMPD Energy社のEnertainerのような、ディーゼル発電機から排出される二酸化炭素を削減するための製品。このバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、ディーゼル発電機に代わるものとして設計され、二酸化炭素の排出量を最大85%削減し、大気汚染物質も排除することができます。
また、同じく出展していたNew Era社は、Green Biofuels社と提携し、化石燃料を使用した発電機の代替えとして、化石燃料を使用していない再生可能燃料を提供しています。
会場では、現場での環境負荷低減を目指す建設業者に向けたさまざまなアイデアが紹介されました。
例えば、AMPD Energy社のEnertainerのような、ディーゼル発電機から排出される二酸化炭素を削減するための製品。このバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、ディーゼル発電機に代わるものとして設計され、二酸化炭素の排出量を最大85%削減し、大気汚染物質も排除することができます。
また、同じく出展していたNew Era社は、Green Biofuels社と提携し、化石燃料を使用した発電機の代替えとして、化石燃料を使用していない再生可能燃料を提供しています。
2. 廃棄物を削減する
建設工事に伴う廃棄物は業界のもう一つの課題であり、見本市でもその解決策が取り上げられました。その中でも、現場で発生しうる建築資材表面の損傷に関連するものが特に目立ちました。「建設コストの12%はミスによるもので、それを5%でも減らすことができれば、5%のエンボディドカーボン(内包二酸化炭素)の削減につながります」とZEROのパネルディスカッションでムンクリーさんが述べているように、施工には、慎重な計画と実施が重要です。
他にも、修理・修復を専門とするPlastic Surgeon社(写真)の展示では、石材、セラミック、金属から木材、MDF、アクリルまで、あらゆる硬質表面を修復する技術により、企業が修理を優先とする方針を採用できるようサポートしていることを紹介していました。
建設工事に伴う廃棄物は業界のもう一つの課題であり、見本市でもその解決策が取り上げられました。その中でも、現場で発生しうる建築資材表面の損傷に関連するものが特に目立ちました。「建設コストの12%はミスによるもので、それを5%でも減らすことができれば、5%のエンボディドカーボン(内包二酸化炭素)の削減につながります」とZEROのパネルディスカッションでムンクリーさんが述べているように、施工には、慎重な計画と実施が重要です。
他にも、修理・修復を専門とするPlastic Surgeon社(写真)の展示では、石材、セラミック、金属から木材、MDF、アクリルまで、あらゆる硬質表面を修復する技術により、企業が修理を優先とする方針を採用できるようサポートしていることを紹介していました。
3. サステナブルな資材
製造過程での二酸化炭素排出が多いセメントに代わる資材を探している建設関係者がまず見るべきはNatural Cement社のブース。同社が製造しているセメントNatcem 35は、河川や海洋生物にとって有害となる化学添加物を含まず、普通ポルトランドセメント(OPC)よりもはるかに低温で焼成することができます。
また、EDGE(Eco Design Green Environment)社は、循環型社会と持続可能性に貢献するブランドを集め、住宅の専門家にサステナブルな選択肢を提供することを目的として出展しました。見本市では、ココナッツの殻と天然の接着剤から作られたMDFの代用品Cocoboard(写真)や、Zero Waste Works社の廃棄物から作られた補強繊維など、建設に様々な形で利用できる製品が紹介されました。
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今こそ見直したい、伝統工法によるサステナブル住宅の可能性
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また、EDGE(Eco Design Green Environment)社は、循環型社会と持続可能性に貢献するブランドを集め、住宅の専門家にサステナブルな選択肢を提供することを目的として出展しました。見本市では、ココナッツの殻と天然の接着剤から作られたMDFの代用品Cocoboard(写真)や、Zero Waste Works社の廃棄物から作られた補強繊維など、建設に様々な形で利用できる製品が紹介されました。
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4. サーキュラーデザイン
サステナブルな製品だけでなく、資材や建物を再生・再利用できるよう、先を見据えることの重要性も強調されました。
「丈夫で長持ちする、ユーザーのニーズに適応できる建物を作ることが大切です」と説明するのはKatherine Adams(キャサリン・アダム)博士。『Future Proofing London: Applying the Circular Economy Through Flexible Design discussion(将来を見据えたロンドン:柔軟なデザインによるサーキュラーエコノミーの応用)』のディスカッションでは、「将来的に何がリサイクル可能になるかを考える必要があります」と述べました。
既存の空間をリノベーションする場合、資材をリサイクルするためにはある程度の計画が必要ですが、Grimshaw ArchitectsのPeter Swallow(ピーター・スワロー)さんは、「ほとんどの材料に再利用の道がある」と語ります。
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サーキュラーエコノミー研究家・建築家に聞く、日本でも実践できるサステナブルな住まいづくりのヒント
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建物のための低炭素ソリューション
1. 断熱材
見本市では、IndiNature社の天然繊維の断熱ボードや断熱材など、サステナブルで興味深い断熱素材が展示されていました。ヨークシャーで栽培された麻から作られ、ススコティッシュ・ボーダーズの都市ジェドバラ近くにある、廃棄物ゼロを実現した工場で断熱材に成形されたこの素材は、約60年もつと予測されており、その後は理論上リサイクルすることが可能です。
また、Marmox社は、建物の熱のうち15%が壁と床の接合部で失われていることを説明しました。同社の耐荷重性断熱ブロックThermoblock(写真)は、この厄介な部分に設置することで、熱の損失をわずか1%に抑えることができます。
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2. 省エネ
効率的な暖房器具は、排出量だけでなくコストも減らすことができますが、今年の展示会では新たな選択肢が展示されていました。例えば、InfraHeat社のブースでは、赤外線暖房について、より一般的な対流式暖房と比較しながら紹介されていました。対流式暖房は室内の空気を暖めるだけですが、赤外線暖房は室内のあらゆるものに均等に暖かさが行き渡ります。
XO社のブースで展示された省エネに役立つ製品のうちのひとつが、従来の屋根瓦の代わりになるソーラータイル(写真)です。このタイルは、従来のものソーラーパネルよりも屋根の表面を広く覆うことができるため、クリーンなエネルギーを通常よりも多く作り出します。
一方、Zypho社は、排水から熱を回収し、シャワーの効率を30〜75%向上させるシャワーユニットを発表しました。
【ご参考】省エネ住宅を紹介した記事
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