吉村順三が手がけた箱根のマンションを、伊礼智がリノベーション
日本近代建築の巨匠の作品を、その思想を受け継ぐ現代の有名建築家がグレードアップさせました。依頼主も息をのんだ「時空を超えた共作」をご覧ください。
モダニズム建築の巨匠・吉村順三の建築の大ファンであるコピーライターの岡本欣也さん。別荘を購入しようとネットで「吉村順三」と検索していて、吉村設計のフジタ第2箱根山マンションの一室を見つけました。
内覧に行く道すがら、吉村が手がけた箱根ホテル小涌園が閉館になったことを知り、「吉村作品を価値あるものとして後世に残したい」という気持ちが募り、奥さまの弥生さんも箱根駅伝が好きなことから、「利害が一致」し、即購入を決断しました。
内覧に行く道すがら、吉村が手がけた箱根ホテル小涌園が閉館になったことを知り、「吉村作品を価値あるものとして後世に残したい」という気持ちが募り、奥さまの弥生さんも箱根駅伝が好きなことから、「利害が一致」し、即購入を決断しました。
解体工事中、スケルトン状態を見て、「躯体こそがオリジナル!このままでもよい」とすら思ったという岡本夫妻。実は岡本さん、ご実家、ご自宅、事務所と今までに4回もリノベーションしてきたツワモノ。改修の醍醐味は「新築ではなし得ない価値の創出」と語ります。
その気持ちを汲んで、伊礼さんが目指したのが、「尊敬する吉村先生なら、どうするだろう?と考えながら、先生の初期・中期・後期の作風を盛り込みつつ、お弟子さんがデザインした家具も総動員して、総合的に先生の世界に広がりをもたせること」でした。
その気持ちを汲んで、伊礼さんが目指したのが、「尊敬する吉村先生なら、どうするだろう?と考えながら、先生の初期・中期・後期の作風を盛り込みつつ、お弟子さんがデザインした家具も総動員して、総合的に先生の世界に広がりをもたせること」でした。
閉じると1枚に見える障子。両側の障子とも伊礼さんのデザイン
障子の框(かまち)と組子(くみこ)の「見付けは、吉村障子の18mmを踏襲しながら、ゆったりした6つ割りにして新しさを差し込みました」(伊礼さん)
北欧風ブルー・グレーの布クッション付きソファも伊礼さんの設計です。壁はもとの壁紙をはがして漆喰塗りにしたので、寄りかかって傷つけないように、チーク材で背もたれも造作しました。
障子の框(かまち)と組子(くみこ)の「見付けは、吉村障子の18mmを踏襲しながら、ゆったりした6つ割りにして新しさを差し込みました」(伊礼さん)
北欧風ブルー・グレーの布クッション付きソファも伊礼さんの設計です。壁はもとの壁紙をはがして漆喰塗りにしたので、寄りかかって傷つけないように、チーク材で背もたれも造作しました。
風景に向かって筋が伸びていく圧巻の天井
もともとマコーレ(柾)ベニヤ張りだった天井を、新しく巾125mmの杉板に4本の溝をいれ、縁甲板張り(ワトコオイル仕上げ)にしました。
数々のリノベーションを経験してきた岡本さんも、天井の効果に驚いたと言います。「家具を置いて隠れてしまうフローリングよりも、むしろ天井にこだわるべきだと確信しました」
弥生さんもソファに座って、天井を眺める時間が至福のときだと語ります。
もともとマコーレ(柾)ベニヤ張りだった天井を、新しく巾125mmの杉板に4本の溝をいれ、縁甲板張り(ワトコオイル仕上げ)にしました。
数々のリノベーションを経験してきた岡本さんも、天井の効果に驚いたと言います。「家具を置いて隠れてしまうフローリングよりも、むしろ天井にこだわるべきだと確信しました」
弥生さんもソファに座って、天井を眺める時間が至福のときだと語ります。
和室はダイニングから180mm上がっていました。
岡本さんは、「和室を小上がりにして、畳に座った時に、隣接する洋間の椅子に腰掛けた人と視線が合うように計画する吉村さんの手法」がとても気に入っていました。
岡本さんは、「和室を小上がりにして、畳に座った時に、隣接する洋間の椅子に腰掛けた人と視線が合うように計画する吉村さんの手法」がとても気に入っていました。
築55年以上のマンションのキッチンは、壁向きに設置されていて、ダイニングに背を向けて調理をするスタイルでした。
既存の浴室は、壁と床がタイル張りで、浴槽はプラスチック製でした。
壁をサワラとタイル張りに仕上げ、天然ヒノキの浴槽を置きました。蛇口からは温泉が出るので、露天風呂気分も味わえます。
改修前の洗面脱衣室の壁はヒノキで、天井はシナベニアに白の塗装が施されていました。
それをサワラの無垢板に張替え、アルミサッシ窓は木製樹脂ブラインド(ナニック)で隠しました。
鏡の下には、ピーラーで造作した薄型カウンターを設えました。「フォルムの美しさが気に入っています。歯ブラシなど、ちょっとした小物を置けるので便利です」(岡本さん)
鏡の下には、ピーラーで造作した薄型カウンターを設えました。「フォルムの美しさが気に入っています。歯ブラシなど、ちょっとした小物を置けるので便利です」(岡本さん)
天井に照明を付け過ぎないのも吉村流。岡本さんの「憧れポイント」でした。
吉村順三ファンの岡本さんは、伊礼さんの初期の作品や書物に感銘を受けて以来、伊礼智ファンでもありました。それだけに、「尊敬するお二人の建築家に共作して欲しい!という願いが叶って嬉しい」と語ります。
そして、リノベーションによって得られた物理的な価値への満足感はもとより、この品格の漂う空間に身を置きながら、「お二人を出会わせた自分もすごいな〜と夢想しながら喜びを噛み締めています」と話してくれました。
こちらもあわせて
・建築家の住宅論を読む(6)吉村順三『建築家 吉村順三のことば100 建築は詩』~
・フランク・ロイド・ライトの影響を受けた第2世代の日本人建築家(遠藤楽、前川國男、吉村順三)、第3世代(奥村昭雄と丸谷博男)
吉村順三ファンの岡本さんは、伊礼さんの初期の作品や書物に感銘を受けて以来、伊礼智ファンでもありました。それだけに、「尊敬するお二人の建築家に共作して欲しい!という願いが叶って嬉しい」と語ります。
そして、リノベーションによって得られた物理的な価値への満足感はもとより、この品格の漂う空間に身を置きながら、「お二人を出会わせた自分もすごいな〜と夢想しながら喜びを噛み締めています」と話してくれました。
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・フランク・ロイド・ライトの影響を受けた第2世代の日本人建築家(遠藤楽、前川國男、吉村順三)、第3世代(奥村昭雄と丸谷博男)
どんなHouzz?
住まい手:夫婦
構造:SRC造6階建て(最上階・角部屋)
延床面積:79.91㎡(24.17坪)
設計:伊礼智設計室(伊礼智)
施工:デライトフル
改修年:2019年(竣工年:1964年)
工事費:約2,300万円(設計料含む)
写真:伊礼智(オーナー提供写真を除く)