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アントニン・レーモンドが晩年に設計した家とその歴史を引き継いで、新しい命を吹き込む暮らし
1970年に竣工したアントニン・レーモンド設計の家を当時の施主から購入。親子3人が歴史ある家で、少しずつ自分たちらしいライフスタイルをつくっています。
柴田直美
2016年3月3日
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité internationale des arts)にて滞在研究。 http://www.naomishibata.com/
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité... もっと見る
2015年10月に飯田橋グラン・ブルーム(1~3階部分には商業施設「飯田橋サクラテラス」)がオープンし、「オフィス立地ブランド調査2015」で魅力度ランキング変化トップ3にランクインしたエリアにあり、再開発計画が着手された飯田橋駅から徒歩圏、小さな店舗が軒を連ねる商店街も近い環境にある地下1階、地上3階立ての住宅。数年来、家探しをしていた原田夫妻は、2013年になってアントニン・レーモンドが設計したこの家に出会った。
ご夫妻とも戸建住宅で育ったという原田夫妻は、集合住宅ではなく戸建住宅を探していたという。ただ、建て売りの特徴のない住宅ではなく、年月が味となるような、こだわりがある注文住宅を探していた。
どんなHouzz?
居住者:原田夫妻と2歳の息子
所在地:千代田区
規模:延床面積231.7平方メートル
築年数:築46年。2014年6月にリノベーション完成
構造:RC造 地下1階 地上3階建
写真:Jimmy Cohrssen Photography ジミー・コールセン・フォトグラフィー
ご夫妻とも戸建住宅で育ったという原田夫妻は、集合住宅ではなく戸建住宅を探していたという。ただ、建て売りの特徴のない住宅ではなく、年月が味となるような、こだわりがある注文住宅を探していた。
どんなHouzz?
居住者:原田夫妻と2歳の息子
所在地:千代田区
規模:延床面積231.7平方メートル
築年数:築46年。2014年6月にリノベーション完成
構造:RC造 地下1階 地上3階建
写真:Jimmy Cohrssen Photography ジミー・コールセン・フォトグラフィー
住宅を引き継ぐ
この家を見たときに、「手を入れることで良くなっていく」という実感を持ったというご主人は、実家にウッドデッキをつくったこともあるDIY経験者。かなりダメージがあった、この家のオリジナルの寄木細工の床も、ご主人の手により蘇った。古い家を直しながら暮らすことで、愛着も湧くし、住みながら価値も上げられるというご主人。既に見学に来た際には、間取りを見て、自分たちの家族に合うように変えられるというイメージを持ったそう。
この家を見たときに、「手を入れることで良くなっていく」という実感を持ったというご主人は、実家にウッドデッキをつくったこともあるDIY経験者。かなりダメージがあった、この家のオリジナルの寄木細工の床も、ご主人の手により蘇った。古い家を直しながら暮らすことで、愛着も湧くし、住みながら価値も上げられるというご主人。既に見学に来た際には、間取りを見て、自分たちの家族に合うように変えられるというイメージを持ったそう。
1970年に完成したこの家は、レーモンドに設計を依頼した吉田医師が終の住処として生涯を全うした後、この家で育った吉田医師の子どもたちが、住みつないでくれる人に売りたいということで一般社団法人住宅遺産トラストに相談。数百の物件の情報や都内の再開発計画なども調べていた原田夫妻は、家の中央を貫く螺旋階段やアントニン・レーモンドが設計したという史実などが気に入り、購入に名乗りをあげた。
できるだけオリジナルの状態を活かしたリビングルーム。障子を通して柔らかい明かりが差す。夜間にも柔らかい光で空間を満たすコーブ照明(間接照明)が使われていたなごりが天井に。
リビングルームの家具は、「すっきりとしたデザイン。シャープな感じ、そして色はブラック」という原田夫妻のイメージをもとに、北欧デンマーク家具のインテリアショップ〈BoConcept〉日本橋店のコンセプター平田裕美子さんがスタイリングを行った。
リビングルームの家具は、「すっきりとしたデザイン。シャープな感じ、そして色はブラック」という原田夫妻のイメージをもとに、北欧デンマーク家具のインテリアショップ〈BoConcept〉日本橋店のコンセプター平田裕美子さんがスタイリングを行った。
ライフスタイルの容れ物としての住宅
かつて夫婦と6人の子ども、お手伝いさんが暮らしていた家は、細かく部屋が区切られ、浴室は3つ。吉田医師の娘さんや、そのご主人(建築士)とも話しながら、家を引き継いだ原田夫妻は、自分たちの暮らしに合わせて手を加えながら、この家に住み続けていくという。
きっと原田夫妻の息子さんは、「子どもの頃に螺旋階段で遊んだ」と言う吉田医師の娘さんのように、螺旋階段をかけあがったり、駆け下りたり、秘密基地をつくったりして遊び、そして将来「この家で育った」と愛着を感じるようになるのではないだろうか。それが家を住み繋ぐということなのだろうと思い至った。
かつて夫婦と6人の子ども、お手伝いさんが暮らしていた家は、細かく部屋が区切られ、浴室は3つ。吉田医師の娘さんや、そのご主人(建築士)とも話しながら、家を引き継いだ原田夫妻は、自分たちの暮らしに合わせて手を加えながら、この家に住み続けていくという。
きっと原田夫妻の息子さんは、「子どもの頃に螺旋階段で遊んだ」と言う吉田医師の娘さんのように、螺旋階段をかけあがったり、駆け下りたり、秘密基地をつくったりして遊び、そして将来「この家で育った」と愛着を感じるようになるのではないだろうか。それが家を住み繋ぐということなのだろうと思い至った。
奥様がフランス人だった吉田一家は、玄関で靴を脱ぐ習慣がなかったので、玄関にはコート掛けしかなく、ご主人が手作りで靴の収納スペースを作成。
キッチンは大型で高さもある。
階段室はひやっとしたコンクリートの質感が洞窟のよう。子どもが腰掛けるのにちょうどいい高さの階段は格好の遊び場に。
もともとは6人の子どものために細かくしきられていた部屋をつなげるようにリノベーション。寝室は2部屋を1つに。
寝室には息子さんのお城も。
現在のトイレは、かつての浴室スペースにあたるので、かなりゆったり。現在の浴室はもとは個室だったところに新設された。
使っていなかった浴室は水が出ない状態だが、当時の様子をしのばせる。明るいブルーで統一されている。
主寝室として使われていた部屋には、机や本棚、ベッドサイドテーブルなどが作り付けで設えられてある。
奥様は学生時代に飯田橋で学んでいたことから、なじみがある街ではあったものの、商店街の様変わりに驚いたとのこと。周りにはマンションや保育園などもできて、子どもがいる世帯が増えている実感もあるそう。
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