砂浜へ2分。週末サーフィンを楽しむビーチハウス
潮風を感じる、千葉・御宿のビーチハウス。自然でサステナブルな素材にこだわり、屋外の自然に対して開かれた、快適な住宅です。
杉田真理子
2017年4月15日
海水浴やサーフィンを楽しめる場所として有名な、千葉県外房の漁港町、御宿。2分も歩けば白い砂浜のビーチが見える場所に佇む家の玄関に立つと、すでに潮の匂いがする。住まい手のこだわりが詰め込まれた、海辺の住宅《御宿サーフシャック》を訪ねた。
「ここに来るたびに、故郷に戻ってきた気分になります」と話すのは、この家のオーナーであるオーストラリア出身のジョー・ゲートンさん。30年前に来日する前は、「世界一美しい道」と言われる、メルボルン近郊のグレートオーシャンロードで、長年サーフィンをしていたという。来日してからも、サーフィンをしに週末に千葉の海辺にはよくきていた。やがて、海の近くに家をもちたいという気持ちが強くなり、妻のちよみさんとともに2年ほど敷地を探し回った末に見つけたのが、ここ御宿の海辺の土地だ。
竣工は2011年11月。同年3月東日本大震災が起こったため、「こんなときに海辺に別荘を建てるなどという贅沢なことをしてもいいのだろうか」と思い悩んだこともあった。だが「この場所に来てみると、響いてくるものがあり、決断しました」と夫妻は話す。
設計は、娘の杏那さんを通じて知り合った建築家ユニットの〈BAKOKO〉の大槻香代子さんとアラステア・タウンゼントさんに依頼することに。ゲートン夫妻と同じ国際カップルだ。こうして、文化を超えた絆でつながる夫妻らしい、和と洋のよさを兼ね備えた海辺の家ができあがった。普段は東京都心の賃貸住宅に暮らす夫妻は、一週間のうち約半分をこの家で過ごしている。
「ここに来るたびに、故郷に戻ってきた気分になります」と話すのは、この家のオーナーであるオーストラリア出身のジョー・ゲートンさん。30年前に来日する前は、「世界一美しい道」と言われる、メルボルン近郊のグレートオーシャンロードで、長年サーフィンをしていたという。来日してからも、サーフィンをしに週末に千葉の海辺にはよくきていた。やがて、海の近くに家をもちたいという気持ちが強くなり、妻のちよみさんとともに2年ほど敷地を探し回った末に見つけたのが、ここ御宿の海辺の土地だ。
竣工は2011年11月。同年3月東日本大震災が起こったため、「こんなときに海辺に別荘を建てるなどという贅沢なことをしてもいいのだろうか」と思い悩んだこともあった。だが「この場所に来てみると、響いてくるものがあり、決断しました」と夫妻は話す。
設計は、娘の杏那さんを通じて知り合った建築家ユニットの〈BAKOKO〉の大槻香代子さんとアラステア・タウンゼントさんに依頼することに。ゲートン夫妻と同じ国際カップルだ。こうして、文化を超えた絆でつながる夫妻らしい、和と洋のよさを兼ね備えた海辺の家ができあがった。普段は東京都心の賃貸住宅に暮らす夫妻は、一週間のうち約半分をこの家で過ごしている。
どんなHouzz?
所在地:千葉県夷隅郡御宿町
住まい手:ジョー・ゲートンさん、岡元ちよみさん夫妻。娘の岡元・ゲートン・杏那さんもときどき滞在する。
敷地面積:330.58平方メートル
延床面積:135.40平方メートル
構造:木造(在来軸組み壁工法) 地上2階建
設計:BAKOKOデザインディベロップメント
外から一見すると、建物というよりは杉板張りの大きな黒いボックスが、素知らぬ顔で佇んでいるようだ。設計を担当した〈BAKOKO〉の大槻さんは、自然の美しい海辺の場所だからこそ、周囲の景観へのビジュアルインパクトを最大限に抑えた。できるだけ自然素材を使いたいという思いから、外装は吉野杉(レッドシダー)を張った。「ワイルドな庭でしょう」と笑いながらゲートンさんが見せてくれた庭は、ご本人が時間をかけて育てたもの。当初は購入した植物を植えていたが、潮風や強い日射など厳しい環境のためすべて枯れてしまったため、海辺の自生植物を植え替えて育てている。「結局、その土地の植物が合うのです」とゲートンさんは語る。
所在地:千葉県夷隅郡御宿町
住まい手:ジョー・ゲートンさん、岡元ちよみさん夫妻。娘の岡元・ゲートン・杏那さんもときどき滞在する。
敷地面積:330.58平方メートル
延床面積:135.40平方メートル
構造:木造(在来軸組み壁工法) 地上2階建
設計:BAKOKOデザインディベロップメント
外から一見すると、建物というよりは杉板張りの大きな黒いボックスが、素知らぬ顔で佇んでいるようだ。設計を担当した〈BAKOKO〉の大槻さんは、自然の美しい海辺の場所だからこそ、周囲の景観へのビジュアルインパクトを最大限に抑えた。できるだけ自然素材を使いたいという思いから、外装は吉野杉(レッドシダー)を張った。「ワイルドな庭でしょう」と笑いながらゲートンさんが見せてくれた庭は、ご本人が時間をかけて育てたもの。当初は購入した植物を植えていたが、潮風や強い日射など厳しい環境のためすべて枯れてしまったため、海辺の自生植物を植え替えて育てている。「結局、その土地の植物が合うのです」とゲートンさんは語る。
外壁と同じ吉野杉を張ったトンネルのような玄関エリアは、内と外の境界を曖昧にするユニークなつくりになっている。靴を脱いであがったら、室内に入ることもできるし、そのまま南東に面したデッキに出ることも可能だ。ゲートン家は人を招いてパーティーをするのが好きで、夏はよくデッキや庭でバーベキューをするという。玉砂利と敷石が日本的な土間の右手には大きな収納スペースがあり、サーフボードや自転車もしまえる。通路に切り取られた庭と外の風景は、一枚の絵画のようだ。
玄関から引き戸で中に入ると、LDKが広がっている。外観は杉板張りの黒くて大きな閉じたボックスであるのに対し、屋内は明るく開放的。窓から遠くなるにつれて高くなる勾配天井の視覚的効果により、ゆったりと広く見える。写真左手のホビールームとの仕切りは折りたたみ式なので、全面的に開放すればリビングと一体化している。
「この家にはあえてテレビは置いていません」と妻のちよみさんは言う。リビングの主役は薪ストーブだ。ゲストを招いた団欒のひとときには、クッションを片手にした人が暖炉を囲むように集まるそうだ。
「この家にはあえてテレビは置いていません」と妻のちよみさんは言う。リビングの主役は薪ストーブだ。ゲストを招いた団欒のひとときには、クッションを片手にした人が暖炉を囲むように集まるそうだ。
1階は、回遊動線に沿って部屋を配置している。ロフトへ抜ける階段の向こうはプライベートエリアで、写真の階段右手のドアの奥にはベッドルーム(下の写真)が、左手のドアの奥には洗面エリアやバスルームがあり、その両方がウォークインクローゼットでつながれている。
ベッドルームからウォークインクローゼットを抜けるとバスルームがある。リビングの階段の左手のドアからもアクセスできる。サーファーの暮らす家らしい工夫のあるバスルームだ。ビーチから戻ったら、浴室に隣接したアウトドアシャワーで身体についた砂を落とし、そのままドアを開けて浴室に入れば、暑い湯を張った浴槽に浸かることができる。床に埋め込まれたタイプの浴槽からは、日本風の坪庭が良く見える。お風呂上がりにはそのまま寝室に向かい、着替えを済ませてからリビングダイニングに出ることが可能だ。
設計にはほとんど口を出さなかった夫妻だが、キッチンにはこだわった。オーストラリアからオーガニック食品を輸入する会社に勤めるジョーさんと料理好きのちよみさんは、大のパーティー好き。そこで、キッチンはオープンキッチンとし、友人を頻繁に招いては、一緒に手作りの食事を囲んでいる。オープンキッチンにすることで作り手と会話をしながら食事を楽しむことができるし、バーカウンターとしてゲストをもてなすこともできる。
整理整頓好きなちよみさんの要望で、大容量の収納棚を設置。キッチンの細々としたモノをすべて隠して、すっきりと見せている。
整理整頓好きなちよみさんの要望で、大容量の収納棚を設置。キッチンの細々としたモノをすべて隠して、すっきりと見せている。
リビングの階段を上ると、ロフトがある。壁がないため、リビングを見わたせるし、上下階でお互いに気配を感じたり、会話を交わすことができる。1階のリビングの窓にはカーテンがなく、自然光がよく入るし、風通しも非常に良い。〈BAKOKO〉の大槻さんとタウンゼントさんは、この家をつくるにあたり、できるかぎり自然素材を使うことにこだわった。「自然のものがもつ心地よさに勝るものはありません」と大槻さんは言う。木製の壁はスプルス材の積層ソリッドパネルを、白い壁はドイツ製のウッドチップ入り天然壁紙をはっている。床は無垢のバーチ材とした。
住まいの快適さをつくる採光、遮光、通気や温熱環境についても、パッシブデザインの原理を利用した設計の工夫により自然の力を利用している。
建物の配置と形状は、南側からの最大限の採光を取れるようにデザインされており、夏の日射を考慮した軒の設置によって、夏は遮光ができて冬は採光が最大限となるので、季節ごとに採光はコントロールされる。
窓の高低差を利用した自然換気(クロスベンティレーション)により、夏は窓を開け放てば涼しい海風が建物の内部に通過し、熱い空気が天窓やロフトの換気窓から抜けて室内に快適な空気が流れるので、暑さが軽減される。
冬は薪ストーブが暖めた空気が家の中全体を巡り、開放的な室内をほどよく暖める。
建物の配置と形状は、南側からの最大限の採光を取れるようにデザインされており、夏の日射を考慮した軒の設置によって、夏は遮光ができて冬は採光が最大限となるので、季節ごとに採光はコントロールされる。
窓の高低差を利用した自然換気(クロスベンティレーション)により、夏は窓を開け放てば涼しい海風が建物の内部に通過し、熱い空気が天窓やロフトの換気窓から抜けて室内に快適な空気が流れるので、暑さが軽減される。
冬は薪ストーブが暖めた空気が家の中全体を巡り、開放的な室内をほどよく暖める。
ロフトは、海が見えるように窓辺にデスクをしつらえてあり、読書や仕事にも使えるスペースだ。天窓があり、はしごを使って屋根の上に出られるようにしたのは、「家は楽しく使えるものであるべき」というモットーをもつ〈BAKOKO〉のふたりのアイデアだ。屋根の上で、日向ぼっこや星空の眺めを楽しめるのはもちろん、ゲートンさんによれば、「御宿の夏の花火大会のとき、屋根の上は特等席になるんですよ」とのこと。
ロフトはL字型になっており、天井が低い奥の部分は、娘の杏那さんが滞在するときに寝室として使っている。もちろん、ゲストルームとして使うこともある。リビングにいる家族の気配を感じながらも「読書にいそしみたいときやひとりになりたいときに、こもれるスペースです」と大槻さん。
オーストラリアのオーガニックな食材を輸入する仕事をしているゲートンさんは、もともと大学で農業を学んだとのこと。御宿では小さな畑も借りて野菜も育てている。もちろん、このあたりでは、海の幸も野菜も新鮮なものが手に入るし、パンは薪屋さんが始めたパンが気に入っている。「薪ストーブの薪を売っている薪屋さんなので、当然、薪の窯で焼いたパンです。とても美味しいんですよ」とゲートンさん。
週末をここで過ごすようになってすでに5年がすぎ、地元の友人もたくさんできた。「御宿は小さな町ですが、来るたびに何かしら面白いことがあるんですよ」とゲートンさんは話す。ある年には、卵から孵ったばかりのウミガメたちが、台風のせいで方向を誤り陸に向かってしまい、側溝や人家の水場やに迷い込むという “事件” が起こり、地元の人たちが総出でウミガメを拾い集めて海に帰した。近くの浜辺に鯨の骨が打ち上げられたのを、近所の人たちと一緒に拾いに行ったこともある(骨は、今は庭の植木台として使っている)。今年も、初日の出は目と鼻の先の砂浜で見た。「御宿には、ゆったりとした時間が流れています。週末は都会を離れてビーチハウスでゆっくり過ごすというライフスタイルは、私が育ったメルボルンではめずらしくありませんし、東京では手に入らない暮らしの楽しさと豊かさがありますね」とジョーさんは話してくれた。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
日曜日の爽やかな朝おはようございます。素晴らしいビーチハウスですね。ワクワクしながら拝見させていただきました。ステキな朝の時間を迎えることができ 御宿のフレッシュな潮風がとどいています。ありがとうございます。ぜひシェアをさせてくださいませ。
ebisu5beer さん、ありがとうございます! 私も取材に同行しましたが、本当に素敵なビーチハウスでした。ぜひシェアしてくださいませ。