コメント
自分たちの「好き」を詰め込んだ、大阪の建築家の自邸
旅先で集めたアートや小物、ワインなど、夫婦の「好き」が詰まった建築家の自邸。光が差し込む内部の土間の吹き抜けには高さ4mの木もあり、家にいながら自然を感じられる空間となっています。
杉田真理子
2023年8月2日
大阪府、茨木市。西側には私道、反対の東側に畑が隣接する敷地に、ユカワデザインラボを主宰する建築家・湯川晃平さんの自邸はあります。外部空間である私道と畑は外部の土間を通じて内部の土間に続き、畑に開かれた吹抜けには、家を貫く1本の木があります。外部と内部がシームレスに連続した、開放的な住まいです。
どんなHouzz?
所在地:大阪府茨木市
住まい手:湯川晃平さんと妻の紘子さん
敷地面積:146.35 m2
建築面積:71.79 m2
延床面積:126.38 m2
構造:W造
設計:ユカワデザインラボ
施工:VICO
竣工時期:2019年
東に畑、西に2m以下の私道に囲まれた敷地。東側に開けただけでなく、北側も一階建の住宅の奥に公園があったりと、明るい家が作れると思ったと話す湯川さんは、「リビングを2階にし、明るく空に近い家にしたかった」と当時を振り返ります。中庭の多いイランに留学経験がある紘子さんは、明るく緑のある家を望んでいました。
所在地:大阪府茨木市
住まい手:湯川晃平さんと妻の紘子さん
敷地面積:146.35 m2
建築面積:71.79 m2
延床面積:126.38 m2
構造:W造
設計:ユカワデザインラボ
施工:VICO
竣工時期:2019年
東に畑、西に2m以下の私道に囲まれた敷地。東側に開けただけでなく、北側も一階建の住宅の奥に公園があったりと、明るい家が作れると思ったと話す湯川さんは、「リビングを2階にし、明るく空に近い家にしたかった」と当時を振り返ります。中庭の多いイランに留学経験がある紘子さんは、明るく緑のある家を望んでいました。
3等分された特徴的な屋根は、両側が畑側に抜けるよう、屋根に勾配がついています。中央部分の屋根は勾配の向きを逆にし、3つの異なるボリュームを作りました。
「畑側からは自然光を取り込みやすいのですが、将来的にマンションなどが建った場合などに備え、全方向的から満遍なく光が入るよう設計しました」
東側に開いた大きな窓からは、朝と昼に明るい光が差し込み、畑の緑が感じ取れます。屋根勾配のギャップを利用したハイサイドライトからは1日中光が入り、私道側の西に開いた窓からは、黄昏時の光が上手く取り入れられるようになっています。
Houzzで建築家を探す
「畑側からは自然光を取り込みやすいのですが、将来的にマンションなどが建った場合などに備え、全方向的から満遍なく光が入るよう設計しました」
東側に開いた大きな窓からは、朝と昼に明るい光が差し込み、畑の緑が感じ取れます。屋根勾配のギャップを利用したハイサイドライトからは1日中光が入り、私道側の西に開いた窓からは、黄昏時の光が上手く取り入れられるようになっています。
Houzzで建築家を探す
外部の土間から玄関を開け、室内に入ると、広々とした内部の土間が広がっています。「リビングが2階にあるとはいえ、1階でも豊かな生活をしたいと思いました」と湯川さん。
サッシを開ければ外部の土間と内部の土間が繋がり、広々と活用できる多目的なスペースへと早変わり。シンクやワインセラーも設置し、ワイン好きの夫妻が友人知人を招き、BBQやパーティーを楽しめるように工夫されています。
サッシを開ければ外部の土間と内部の土間が繋がり、広々と活用できる多目的なスペースへと早変わり。シンクやワインセラーも設置し、ワイン好きの夫妻が友人知人を招き、BBQやパーティーを楽しめるように工夫されています。
好きなアーティストの作品を集め、家中に飾っているご夫妻。1階土間スペースの壁面にも、夫婦の「好き」が詰め込まれています。将来的には1階スペースをギャラリーとして開放し、好きなアーティストや陶器の展覧会をしたり、子供の遊び場とすることなども考えているといいます。
階段に続く段差には腰掛けることもでき、BBQの時などに活躍します。
家の中央には、吹き抜けを貫く大きな木が室内に植えられています。「緑が好きなので元々は中庭を作りたかったのですが、スペース的に難しかったので、代わりに、木を植えて吹き抜けにし、『内部化した中庭』を作ることにしました」と湯川さん。
こちらもあわせて
暮らしの楽しみを実現。玄関土間のある家10選
家の中央には、吹き抜けを貫く大きな木が室内に植えられています。「緑が好きなので元々は中庭を作りたかったのですが、スペース的に難しかったので、代わりに、木を植えて吹き抜けにし、『内部化した中庭』を作ることにしました」と湯川さん。
こちらもあわせて
暮らしの楽しみを実現。玄関土間のある家10選
毎日、階段を登り下りする度に様々な角度から観察できるというシマトネリコの木。「季節に合わせて新芽が芽吹くのがみれたり、窓側と室内側で成長の速度が違ったりと、毎日観察することで愛着が湧きます」と湯川さん。木の根はそのまま大地に繋がっているので、4mクラスの大きな木を植えることができました。また、木の周辺部の仕様は外部用としているため、手入れの度に濡れても大丈夫で、すくすく元気に育っているとのこと。
「葉が落ちたり、虫がついたりした時の世話は必要ですが、その覚悟と設計上の工夫さえあれば可能なアイデアです。ペットに愛情を注ぐような感覚に似ていますね」
「葉が落ちたり、虫がついたりした時の世話は必要ですが、その覚悟と設計上の工夫さえあれば可能なアイデアです。ペットに愛情を注ぐような感覚に似ていますね」
吹き抜けから奥に進むと、現在は事務所として活用されているスペースがあります。将来子供ができた際は、分割し子供部屋としても使用できるようになっています。
「事務所の床は一段高くし、畑側の窓からの眺めと庭の眺めが一体として感じられ、より借景を楽しめるよう、工夫しました」と湯川さん。住宅は1階北側が一番暗くなる傾向にありますが、明るく、開放感を感じられる部屋となっています。
「事務所の床は一段高くし、畑側の窓からの眺めと庭の眺めが一体として感じられ、より借景を楽しめるよう、工夫しました」と湯川さん。住宅は1階北側が一番暗くなる傾向にありますが、明るく、開放感を感じられる部屋となっています。
リビングとダイニング、その間の和室を繋ぐ廊下は、ルーバー状の廊下で繋がっています。
部屋ごとに仕上と床、天井の高さを変え、空間のメリハリを付けました。家全体が立体的なワンルームのような作りなので、どこにいてもお互いのつながりを感じることができます。
「縁側も当初から作りたかったものの一つですが、1階には外と内の土間の連続を重視て設けられませんでした。ですが、格子状の廊下のルーバー越しに木や畑の様子が見え、室内にある縁側のように感じられ、これはこれでよかったです」と紘子さん。
天井は、ガルバリウム鋼板を使用。「金属なので光を反射しながらぼんやりと明るくなります。木や畑の緑が反射し、光や色を室内に取り入れてくれます」と湯川さん。時間や季節によって表情をかえるのが魅力です。
部屋ごとに仕上と床、天井の高さを変え、空間のメリハリを付けました。家全体が立体的なワンルームのような作りなので、どこにいてもお互いのつながりを感じることができます。
「縁側も当初から作りたかったものの一つですが、1階には外と内の土間の連続を重視て設けられませんでした。ですが、格子状の廊下のルーバー越しに木や畑の様子が見え、室内にある縁側のように感じられ、これはこれでよかったです」と紘子さん。
天井は、ガルバリウム鋼板を使用。「金属なので光を反射しながらぼんやりと明るくなります。木や畑の緑が反射し、光や色を室内に取り入れてくれます」と湯川さん。時間や季節によって表情をかえるのが魅力です。
ごろごろできる和室は、ゲストの宿泊場所としても使え、将来の子育て時にも便利です。「和室自体は5畳程度ですが、リビング、ダイニング 、和室と一体感を持たせることで広々と開放的な空間にしました」
「障子越しに柔らかに光を取り込みつつ、夕方は西日によって赤く染まります」と湯川さん。黄昏時の雰囲気をめいいっぱい楽しめるように工夫しました。
リビングとダイニングの天井は、畑側に勾配がかかっていることで天井が高く、広々とした雰囲気。階段や和室がある中部は天井の勾配が逆になっているため、空間を移動する毎に雰囲気がかわり、ダイナミックさを演出しています。屋根の逆勾配を活用し、ダイニングではハイサイドライトから光を取り入れています。
カウンタートップとキッチンにはモールテックスを使用し、柔らかで自然な表情のキッチンを造作で作りました。バックカウンターは、絶対に欲しかったワインセラーから寸法を決めたと言います。「ビルトインに近い形で、お客さんにも見えて使い易いです」と湯川さん。「ワイングラスも、見せながら収納して、週末にはワインを楽しみます」
壁には小さな棚を作り、旅先で集めたアートや小物を飾り、好きなものに囲まれたダイニングキッチンとなりました。
カウンタートップとキッチンにはモールテックスを使用し、柔らかで自然な表情のキッチンを造作で作りました。バックカウンターは、絶対に欲しかったワインセラーから寸法を決めたと言います。「ビルトインに近い形で、お客さんにも見えて使い易いです」と湯川さん。「ワイングラスも、見せながら収納して、週末にはワインを楽しみます」
壁には小さな棚を作り、旅先で集めたアートや小物を飾り、好きなものに囲まれたダイニングキッチンとなりました。
スリット状の窓から朝日が入ってくるというリビング。「家全体で、明るさの濃淡があります。それが1日の時間帯や季節によって変化するのを楽しめるようになっています」
「家中明るいので、日没まで照明をつけることはありません」と湯川さん。熱効率も良く、エアコン1台で家中が十分足りる日も多いとか。
「家中明るいので、日没まで照明をつけることはありません」と湯川さん。熱効率も良く、エアコン1台で家中が十分足りる日も多いとか。
家全体に効果的に仕込まれた照明の光が木にあたり、夜はダイナミックな影を落とします。紘子さんの提案で、普段からカーテンを付けずに生活しているといいます。周辺の状況をしっかり観察して3Dモデルで検証することで、大きな窓があるにも関わらず、カーテンがなくとも、どこからでもプライバシーが担保できるように計算されています。
設計者としては、生活する上での「好き」を建主と施主が共有し、それを空間として実現することが喜びのある生活につながる最も大事なポイントだと思っている、と湯川さんはいいます。「それが、我が家の場合は、自然、アートや小物、ワインでした。それらを自邸に工夫しながらうまく盛り込めたと思います」と続けます。
家のところどころにお気に入りの居場所がある、2人の「好き」が詰め込まれた住まいとなりました。
【ご参考】Houzzが、工務店や建築家、インテリアの専門家のために開発したソフトウェアHouzz Proには、完成イメージを3次元で表示できる機能もついています。
設計者としては、生活する上での「好き」を建主と施主が共有し、それを空間として実現することが喜びのある生活につながる最も大事なポイントだと思っている、と湯川さんはいいます。「それが、我が家の場合は、自然、アートや小物、ワインでした。それらを自邸に工夫しながらうまく盛り込めたと思います」と続けます。
家のところどころにお気に入りの居場所がある、2人の「好き」が詰め込まれた住まいとなりました。
【ご参考】Houzzが、工務店や建築家、インテリアの専門家のために開発したソフトウェアHouzz Proには、完成イメージを3次元で表示できる機能もついています。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む