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アンティーク家具の木材について知る 4:パイン材、エルム材、ビーチ材
家具に使われるポピュラーな木材の種類それぞれについて解説するシリーズ、今回はリーズナブル価格の普段使いの家具で広く一般に親しまれてきた3種類の木材について、まとめてご紹介します。
西谷典子|Noriko Nishiya
2016年4月5日
このシリーズでは、アンティーク家具についてのベーシックな知識を深めていただくために、主要な木材の特徴についてご説明します。家具に使われている木材の材質、デザインの発展や歴史背景との関連、価値の見分け方やメンテナンス方法など、ぜひ参考にされてください。
カントリー&シャビーシックで人気のパイン材
日本でも一時大きなブームとなったカントリースタイルに欠かせないのがパイン家具ですが、最近ではシャビーシックスタイルでも、ペイントを剥がしたパイン家具をよく見かけるようになりました。パイン材は昔から庶民の木材だったので、たとえば大きなお屋敷でも、ご主人様の部屋のドアはオーク材やマホガニー材であっても、召使いの部屋のドアにはパイン材が使われていたりするのです。また、調理場や召使いのダイニングテーブルなどもパイン材で作られたものが多く、現在見かけるアンティークの長いダイニングテーブルは、大きなお屋敷で使われていた可能性が高いです。
日本でも一時大きなブームとなったカントリースタイルに欠かせないのがパイン家具ですが、最近ではシャビーシックスタイルでも、ペイントを剥がしたパイン家具をよく見かけるようになりました。パイン材は昔から庶民の木材だったので、たとえば大きなお屋敷でも、ご主人様の部屋のドアはオーク材やマホガニー材であっても、召使いの部屋のドアにはパイン材が使われていたりするのです。また、調理場や召使いのダイニングテーブルなどもパイン材で作られたものが多く、現在見かけるアンティークの長いダイニングテーブルは、大きなお屋敷で使われていた可能性が高いです。
やわらかく、虫食いに要注意の木材
一般のパイン材とはヨーロッパの赤松を指しますが、パイン材はねじれやすくやわらかい木なので、コンディションのよいアンティークパインを見つけた場合は、非常に幸運といえます。しかもシロアリなどの害虫はこのやわらかいパイン材が大好きなので、アンティークのパイン家具でコンディションをよいものを見つけるのは、大変難しいのが現実です。
ただ、ラスティックでシャビーに見えるそんなところが、パインの持ち味であるともいえるでしょう。スカンジナビアや北ヨーロッパなど、日照時間が少なく気温も低い国々が産地のアンティークパインの家具は、比較的コンディションはいいですが、フランスなど暖かい国で産出されたパイン家具は虫食いがやや多く、その上からペイントしているものも多くあるので要注意です。
一般のパイン材とはヨーロッパの赤松を指しますが、パイン材はねじれやすくやわらかい木なので、コンディションのよいアンティークパインを見つけた場合は、非常に幸運といえます。しかもシロアリなどの害虫はこのやわらかいパイン材が大好きなので、アンティークのパイン家具でコンディションをよいものを見つけるのは、大変難しいのが現実です。
ただ、ラスティックでシャビーに見えるそんなところが、パインの持ち味であるともいえるでしょう。スカンジナビアや北ヨーロッパなど、日照時間が少なく気温も低い国々が産地のアンティークパインの家具は、比較的コンディションはいいですが、フランスなど暖かい国で産出されたパイン家具は虫食いがやや多く、その上からペイントしているものも多くあるので要注意です。
赤茶色の希少な「ピッチ・パイン」
アンティークのパイン材でもグレードが高いものは「ピッチ・パイン」と呼ばれ、普通のパイン材より重くがっちりしているものがあります。このパインは北米に生育しているもので、砂漠から沼地までやせた貧しい土地でもたくましく、ゆっくり育つパインなのですが、木材として使える部分が少ないので、どうしても価格が高くなり、木材というよりは主に松ヤニを取る目的で使用されています。色も赤茶色で他とは違うこのピッチ・パインは家具材の他、家のドアなどにも使われています。
アンティークのパイン材でもグレードが高いものは「ピッチ・パイン」と呼ばれ、普通のパイン材より重くがっちりしているものがあります。このパインは北米に生育しているもので、砂漠から沼地までやせた貧しい土地でもたくましく、ゆっくり育つパインなのですが、木材として使える部分が少ないので、どうしても価格が高くなり、木材というよりは主に松ヤニを取る目的で使用されています。色も赤茶色で他とは違うこのピッチ・パインは家具材の他、家のドアなどにも使われています。
年月とともに味わいを増すパインの魅力
パインは実は長寿の木で、最近まで生き残っていた木では、樹齢4900年のものもあったそうです。害虫には弱いものの、実は相当に耐久性のある木です。そしてパイン材は長く使うほどに、色も艶やかな飴色に変化していきます。年月をかけて、ビーズワックス(蜜蝋)で自然なパティーナ(風合い)をつくり出すことができる素材なのです。
室内においては特に、冬の暖房や夏のエアコンの乾燥にさえ気をつけて大切に扱えば、そもそも今まで耐久してきた頑丈な家具なのですから、これからも長く使えるはずです。アンティークのパイン家具はこれからもどんどん数が少なくなるはずですので、お持ちの方はぜひ大事に扱っていただきたいと思います。
パインは実は長寿の木で、最近まで生き残っていた木では、樹齢4900年のものもあったそうです。害虫には弱いものの、実は相当に耐久性のある木です。そしてパイン材は長く使うほどに、色も艶やかな飴色に変化していきます。年月をかけて、ビーズワックス(蜜蝋)で自然なパティーナ(風合い)をつくり出すことができる素材なのです。
室内においては特に、冬の暖房や夏のエアコンの乾燥にさえ気をつけて大切に扱えば、そもそも今まで耐久してきた頑丈な家具なのですから、これからも長く使えるはずです。アンティークのパイン家具はこれからもどんどん数が少なくなるはずですので、お持ちの方はぜひ大事に扱っていただきたいと思います。
古くから伝わる堅牢な木材、エルム材
カントリーチェアといえば、エルム材を使ったものが有名ですが、このエルム材もオーク材と同じく、古くから使われていた木材でした。日本ではエルムとはニレの木を指しますが、ヨーロッパでは公園や歩道の並木として植えられ、大変親しまれている木です。
とにかく頑丈な木なので、馬車の車輪や椅子の座面、そして棺などにも使われていたそうです。見た目はホワイトアッシュ(タモ)材にも非常によく似ていて、しかもオーク材にも似たところがあるので、この3種類の木材をミックスして作っているアンティークの椅子もしばしば見かけます。
カントリーチェアといえば、エルム材を使ったものが有名ですが、このエルム材もオーク材と同じく、古くから使われていた木材でした。日本ではエルムとはニレの木を指しますが、ヨーロッパでは公園や歩道の並木として植えられ、大変親しまれている木です。
とにかく頑丈な木なので、馬車の車輪や椅子の座面、そして棺などにも使われていたそうです。見た目はホワイトアッシュ(タモ)材にも非常によく似ていて、しかもオーク材にも似たところがあるので、この3種類の木材をミックスして作っているアンティークの椅子もしばしば見かけます。
オーク材にやや似た、男性的なテイスト
エルムは木の外側ほど白っぽい黄色をしていて、年輪の中心の部分にいくほど淡褐色になっていくのですが、ステイン仕上げをすると見た目がオークによく似ていて、パッと見はわかりづらいのです。しかしよく見ると、エルム材やアッシュ材は、オーク材の柾目のように木目が真っすぐではなく、また色も濃い部分がもっと多く混じっていて、全体的に男性的な感じの木目です。オークと見比べると若干、木の表情が力強く見えるのが大きな特徴です。
エルムは木の外側ほど白っぽい黄色をしていて、年輪の中心の部分にいくほど淡褐色になっていくのですが、ステイン仕上げをすると見た目がオークによく似ていて、パッと見はわかりづらいのです。しかしよく見ると、エルム材やアッシュ材は、オーク材の柾目のように木目が真っすぐではなく、また色も濃い部分がもっと多く混じっていて、全体的に男性的な感じの木目です。オークと見比べると若干、木の表情が力強く見えるのが大きな特徴です。
歴史あるウィンザーチェアの素材として
イギリスのウィンザー城の近くにあるハイウィコムという町では、伝統的に曲木を使ったウィンザーチェアという椅子が作られていました。このウィンザーチェアにはエルム材がよく使われているのですが、そもそもエルムは頑丈なうえ、木質に粘りがあり、木を曲げることが容易だったため、ウィンザーチェアのようなデザインが生まれたようです。ただエルム材は亀裂が生じやすいという特徴もあり、また年月が経つと波打ち始め、平らではなくなるものもありますので、特に椅子のシートなどに関してはチェックが必要です。
イギリスのウィンザー城の近くにあるハイウィコムという町では、伝統的に曲木を使ったウィンザーチェアという椅子が作られていました。このウィンザーチェアにはエルム材がよく使われているのですが、そもそもエルムは頑丈なうえ、木質に粘りがあり、木を曲げることが容易だったため、ウィンザーチェアのようなデザインが生まれたようです。ただエルム材は亀裂が生じやすいという特徴もあり、また年月が経つと波打ち始め、平らではなくなるものもありますので、特に椅子のシートなどに関してはチェックが必要です。
レアなエルム材家具
エルム材はカントリー家具の素材として庶民的なイメージがありますが、実はエルム材の家具にもアンティーク業界の中では高く売買されているものもあります。たとえば「バール・エルム」と呼ばれるコブや根の部分を使ったベニヤ(突板)が貼られたデコラティブなデザインの高価な家具、一枚板でできている家具などはレアなエルム材のアイテムとして知られています。
このようにエルム材は堅い材質で、細かい彫刻などの加工はできないものの、どっしりとしてやわらかい木目には温かみが感じられ、たとえ家具がちょっと歪んでいても何故かそれがチャームポイントになるような、多彩な表情を持った木なのです。
エルム材はカントリー家具の素材として庶民的なイメージがありますが、実はエルム材の家具にもアンティーク業界の中では高く売買されているものもあります。たとえば「バール・エルム」と呼ばれるコブや根の部分を使ったベニヤ(突板)が貼られたデコラティブなデザインの高価な家具、一枚板でできている家具などはレアなエルム材のアイテムとして知られています。
このようにエルム材は堅い材質で、細かい彫刻などの加工はできないものの、どっしりとしてやわらかい木目には温かみが感じられ、たとえ家具がちょっと歪んでいても何故かそれがチャームポイントになるような、多彩な表情を持った木なのです。
エルム材、ビーチ材とアーコールチェア
ところで、このハイウィコムという町ですが、周辺には昔からビーチ(ブナ)材、エルム材、アッシュ(タモ)材が多く生育していて、前述のウィンザーチェアからヒントを得たものがアーコールチェアです。このアーコール社の家具にも、エルム材のほか、ビーチ材が使われています。シートにはエルム材、背もたれのバーや曲木の部分はビーチ材、といった具合です。創始者のアーコリーニ氏はもちろん、この2種類の木材がひびが入りやすく、椅子のシートにすると波打ちやすいという特徴をよく知っていました。彼はその後、この土地で受け継がれた木の扱い方の秘訣を生かし、機械化して大量生産することに成功するのです。確かに、アーコール社の古い椅子のシートが反ってしまっているものは大変少ないように思います。ということは、エルム材もビーチ材も、その扱い方をきちんと知れば、十分に頑丈な家具になりうるということですね。
ところで、このハイウィコムという町ですが、周辺には昔からビーチ(ブナ)材、エルム材、アッシュ(タモ)材が多く生育していて、前述のウィンザーチェアからヒントを得たものがアーコールチェアです。このアーコール社の家具にも、エルム材のほか、ビーチ材が使われています。シートにはエルム材、背もたれのバーや曲木の部分はビーチ材、といった具合です。創始者のアーコリーニ氏はもちろん、この2種類の木材がひびが入りやすく、椅子のシートにすると波打ちやすいという特徴をよく知っていました。彼はその後、この土地で受け継がれた木の扱い方の秘訣を生かし、機械化して大量生産することに成功するのです。確かに、アーコール社の古い椅子のシートが反ってしまっているものは大変少ないように思います。ということは、エルム材もビーチ材も、その扱い方をきちんと知れば、十分に頑丈な家具になりうるということですね。
ナチュラルテイストにマッチする、優しい持ち味のビーチ材
おもしろいことに古代ゲルマン社会では、紙が発明される前はこのビーチの木に文字を書いていたらしく、ドイツ語では本のことをBuch(ブッフ)、そしてビーチはBuche(ブッヘ)と発音され、英語で本を意味するBookの語源は、このビーチから来ているという説があります。
ビーチ材の木肌は小さな穴のように見える斑点が放射状に出ていて、色はほんのりと桃色がかった白色や黄白色なので、どちらかといえば女性的な、優しい持ち味の木材です。現代のナチュラルテイストのインテリアにはマッチしやすいと思います。
また、ビーチ材はひびが入りやすいという性質を生かし、燃やすとすぐ割れ、長く燃える薪の材料として現在も使われています。ビールや燻製食材などの製造にも欠かせない材料でもあります。
おもしろいことに古代ゲルマン社会では、紙が発明される前はこのビーチの木に文字を書いていたらしく、ドイツ語では本のことをBuch(ブッフ)、そしてビーチはBuche(ブッヘ)と発音され、英語で本を意味するBookの語源は、このビーチから来ているという説があります。
ビーチ材の木肌は小さな穴のように見える斑点が放射状に出ていて、色はほんのりと桃色がかった白色や黄白色なので、どちらかといえば女性的な、優しい持ち味の木材です。現代のナチュラルテイストのインテリアにはマッチしやすいと思います。
また、ビーチ材はひびが入りやすいという性質を生かし、燃やすとすぐ割れ、長く燃える薪の材料として現在も使われています。ビールや燻製食材などの製造にも欠かせない材料でもあります。
変幻自在、高級家具のレプリカにも
ビーチ材は他の木材に似せて塗装すると、高価なものに見せることができる木材でもあります。ビーチ材の木目は高級木材のローズウッドにも若干似ているので、「フォ・ローズウッド(偽のローズウッド)」と呼ばれる、きれいにカービングされ、「インレイ」も施された、いかにも高価なローズウッドに見えるビーチ材のアンティーク家具があったりします。その七変化にはいつも驚かされます。
「インレイ」についてはこちらも参考に:
アンティーク家具の木材について知る 2:ウォールナット材
アンティーク家具の木材について知る 3:マホガニー材
ビーチ材は他の木材に似せて塗装すると、高価なものに見せることができる木材でもあります。ビーチ材の木目は高級木材のローズウッドにも若干似ているので、「フォ・ローズウッド(偽のローズウッド)」と呼ばれる、きれいにカービングされ、「インレイ」も施された、いかにも高価なローズウッドに見えるビーチ材のアンティーク家具があったりします。その七変化にはいつも驚かされます。
「インレイ」についてはこちらも参考に:
アンティーク家具の木材について知る 2:ウォールナット材
アンティーク家具の木材について知る 3:マホガニー材
パイン材、エルム材、ビーチ材、いずれもその材質にはよい点も悪い点もありますが、この材質を理解することで、今後の家具選びにも役立つのではないかと思います。この3種類の材質のアンティーク家具のほとんどは、コンディションをチェックして購入すれば、価格もリーズナブルですので、肩肘を張らずに楽しめるユーズド・ファニチャー感覚で使っていただけると思います。その後も乾燥などに気をつけながらメンテナンスし、木目に飽きたらペイントも簡単にできる素材でもあり、リメイクして長く使っていける、まさに今も昔も、「庶民の味方」的な木材です。
こちらの記事もおすすめ:
アンティークの基本的な知識、選び方や扱い方のポイント
コンパクトな空間に、アンティーク家具をバランスよく配置するコツ
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