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Houzzツアー:大小の家を重ね合わせた、2つの家族のための家
傾斜のきつい土地に建てられた2家族のための家。2家族の距離を近づけ、スペースを広くとりつつ、プライバシーは確保する。相反する条件を妥協することなく折り合わせて実現した家が完成しました。
Simon Farrell-Green
2016年12月6日
ウェリントンのブルックリン地区にある、細長い斜面の土地に立つ2つの家。こちらのオーナーは、いわゆる住宅開発業者とはまったく異なる発想をもつ人たちだ。2人のホームオーナーの希望は、子どもたちと、片方のホームオーナーの母親もいっしょにみんなで暮らせる場所。そのために独創的な設計で作られたのが、この小さな2つの家なのだ。オーナーたちはそれぞれ近所に家を所有していたのだが、売却して一緒に暮らすことにし、家族のかたちに合った、素敵な家を作ることを決めたのだ。
敷地内に2つの家を作って家族の距離を近づけながら、同時にそれぞれのプライバシーを守り、十分なスペースを確保するにはどうすればよいか? オーナーたちの古くからの友人、建築家のピート・リッチーさんとブロンウェン・カーさんは、この提案を聞いて強く興味をひかれたと言う。そして、プロジェクトの難度をさらに上げたのは、家2つを1つの場所に作るという案件にもかかわらず、予算がかなり限られていたことだ。
敷地内に2つの家を作って家族の距離を近づけながら、同時にそれぞれのプライバシーを守り、十分なスペースを確保するにはどうすればよいか? オーナーたちの古くからの友人、建築家のピート・リッチーさんとブロンウェン・カーさんは、この提案を聞いて強く興味をひかれたと言う。そして、プロジェクトの難度をさらに上げたのは、家2つを1つの場所に作るという案件にもかかわらず、予算がかなり限られていたことだ。
どんなHouzz?
住まい手:カップルと幼い子どもたち、子どもたちのおばあちゃん
所在地:ニュージーランド、ウェリントン、ブルックリン地区
規模:手前の家:延床面積90平方メートル、ベッドルーム×2
奥の家:延床面積210平方メートル、ベッドルーム×4
設計:〈カー・リッチー・アーキテクツ〉
竣工年:2014年
「とても細長い土地なんです」とリッチーさんは言う。「こういった敷地の場合、いろいろと制限が出てきますが、それが良いチャンスにもなります。」西側の端には交通量の多い道路が位置し、北側は敷地の長い境界線に沿っている。眺望が開けているのは、西側の道路越しだ。敷地面積は700平方メートルで(以前は荒れ果てた平屋の家があった)、家を2つ建設するにあたり、承認プロセスの面でとくに難しい問題はなかった。土地を分割することは現実的でなかったものの、家族の暮らす家と、その前側に独立したひと回り小さい家を作る許可を得ることができた。この場所は、丘沿いにあるかわいらしいブルックリン集落から目と鼻の先で、ウェリントンの市街地からも近い。
クライアントの要望に対し、カーさんとリッチーさんはエレガントな設計案を打ち出した。敷地を長い部分の真ん中で2つに区切り、その片側に長い私道を引き入れ、大小2つのコンパクトな家を設計。建物は急斜面の地形に逆らうのではなく、地形に沿うようにデザインした。低いほうに位置する家は、オーナーの母親の住まい。コンパクトにまとめられた平屋建てで、道路へ出る専用のゲートがある。その背後には、子どもたちと家族が暮らすための、ひと回り大きい家が位置している。
住まい手:カップルと幼い子どもたち、子どもたちのおばあちゃん
所在地:ニュージーランド、ウェリントン、ブルックリン地区
規模:手前の家:延床面積90平方メートル、ベッドルーム×2
奥の家:延床面積210平方メートル、ベッドルーム×4
設計:〈カー・リッチー・アーキテクツ〉
竣工年:2014年
「とても細長い土地なんです」とリッチーさんは言う。「こういった敷地の場合、いろいろと制限が出てきますが、それが良いチャンスにもなります。」西側の端には交通量の多い道路が位置し、北側は敷地の長い境界線に沿っている。眺望が開けているのは、西側の道路越しだ。敷地面積は700平方メートルで(以前は荒れ果てた平屋の家があった)、家を2つ建設するにあたり、承認プロセスの面でとくに難しい問題はなかった。土地を分割することは現実的でなかったものの、家族の暮らす家と、その前側に独立したひと回り小さい家を作る許可を得ることができた。この場所は、丘沿いにあるかわいらしいブルックリン集落から目と鼻の先で、ウェリントンの市街地からも近い。
クライアントの要望に対し、カーさんとリッチーさんはエレガントな設計案を打ち出した。敷地を長い部分の真ん中で2つに区切り、その片側に長い私道を引き入れ、大小2つのコンパクトな家を設計。建物は急斜面の地形に逆らうのではなく、地形に沿うようにデザインした。低いほうに位置する家は、オーナーの母親の住まい。コンパクトにまとめられた平屋建てで、道路へ出る専用のゲートがある。その背後には、子どもたちと家族が暮らすための、ひと回り大きい家が位置している。
リビングエリアを構成しているのは、暖炉のある1階のリビングルーム、中2階のキッチンとダイニングで、このエリア全体が、1枚の片流れ屋根の下に位置している。外から小さな玄関ホールに入ってくると、すぐに視線が上に引き寄せられ、空間どうしがつながっているため屋内のあちこちに目が行く。これにより、実際より広く感じさせる効果もある。「1つの空間から周りの空間を見渡せるデザインになっているのが面白いところですね」とリッチーさんは言う。
家の中へと進むにつれ、徐々にプライベートな度合いが増す。さらに階段を上がるとベッドルームとバスルームがあるフロアで、ここはもう1枚の片流れ屋根の下に位置する部分だ。
家の中へと進むにつれ、徐々にプライベートな度合いが増す。さらに階段を上がるとベッドルームとバスルームがあるフロアで、ここはもう1枚の片流れ屋根の下に位置する部分だ。
敷地が細長いため、家も細長く設計し、建物に切り込みを入れるようにして北側に小さなデッキや中庭を作っている。こういった屋外空間には、ほとんどすべての部屋から簡単に出入りすることができ、そのため、家が実際よりもずっと大きく感じられる。「家の上のほうにも、機能的な屋外空間が用意されています」とリッチーさんは言う。「いちばん上の階からだって、外の菜園に出られるんです。地形をうまく取り込んでいるからですね。」
予算の問題もあった。傾斜の強い丘陵地として知られるウェリントンに家を建てるには、どうしても地中の大規模な工事は避けられない。そこで次に考えなければならなかったのが、いかに経済的に建物を作るか、である。「家を地中から持ち上げるだけでも、大量のコンクリートを使います。とにかく大量の原材料が必要でした」とリッチーさんは言う。費用の節約のため、建設作業は、建築事務所ではなくクライアント側が管理することにした。これは珍しいケースだが、クライアントと建築家たちが古くからの友人だったこともありうまく進んだ。
地下にかなりお金がかかったこともあり、地上の構造はベーシックな素材でまとめている。家の外壁は、縦に張った黒いステイン仕上げの合いじゃくり板と、スタンダードなスチールの屋根材という、シンプルだが高い強度を持つ組み合わせで仕上げた。ただし〈カー・リッチー〉のほかのプロジェクトにも見られるように、屋根材は裏返して使われており、凹部分が狭く凸部分が広くなっている。「私たちの自宅でもこの方法を使っていますが、下見板張りに近い印象になるんです」とリッチーさんは言う。この素材は、短期間で施工できることや、雨風の強いウェリントンの気候に耐えられる頑丈さも魅力だ。
奥の家は、前側の家よりも高い位置にあり、そのあいだにある私道が2つの建物をつないでいる。奥の家の玄関へと上がる階段の左側にあるのは自転車用ガレージだ。このおかげで家の下にあるカーポートは車1台分で済んでいるが、2台分の広さの車庫を作るとなれば、かなり不便なデザインになっただろう。
奥の家は、前側の家よりも高い位置にあり、そのあいだにある私道が2つの建物をつないでいる。奥の家の玄関へと上がる階段の左側にあるのは自転車用ガレージだ。このおかげで家の下にあるカーポートは車1台分で済んでいるが、2台分の広さの車庫を作るとなれば、かなり不便なデザインになっただろう。
内装の素材もシンプルにまとめられている。白い壁のほか、一般的には床の下張り材として使われるポリウレタン加工合板が床と天井に使われている。「こういった仕上げは、部屋に『巻き付ける』というふうに捉えています」とリッチーさんは言う。「床に使った素材を天井まで巡らせることが多いですね。」包まれるような重量感のある空間が演出でき、シンプルで費用もあまりかからない方法だ。
周囲の家が近く、近所と接する境界線も長いため、窓の配置にはかなり神経を使った。「日光をできるだけ屋内に取り入れるようにしています」とリッチーさんは言う。リビングエリアの各部屋と、ベッドルームのいくつかには北向きの窓があり、建物の西の端にある大きな窓は、午後の陽光を取り入れて冬の室内を温めてくれる。窓の位置は、プライバシーに留意して調整されており、周囲の建物からの視線を避けて一部の窓を高くしたり、壁の低い位置に配置するなど工夫している。
玄関ドアのわきには来客用トイレがあり、その上には収納スペースがある。リビングにある木製の照明器具は〈デヴィッド・トゥルブリッジ〉によるデザイン。
玄関ドアのわきには来客用トイレがあり、その上には収納スペースがある。リビングにある木製の照明器具は〈デヴィッド・トゥルブリッジ〉によるデザイン。
木とスチールを用いた外装は、〈カー・リッチー〉がいくつかのプロジェクトで取り入れながら、慎重に編み出してきた方法だ。リッチーさんの説明によると、ドア周りやテラス、普段の生活で通り過ぎるときに触れることの多い角の部分など、人間と接触するところには、必ず木を用いているという。より強度が必要で、触れることの少ない部分は、基本的にスチールを使っている。
家族どうしとはいえ、2つの家の境界はしっかり設定されており、それぞれの家には屋外エリアも個別に作られている。これは、どちらかの家を賃貸することになった場合にも重要なポイントだ。
家族どうしとはいえ、2つの家の境界はしっかり設定されており、それぞれの家には屋外エリアも個別に作られている。これは、どちらかの家を賃貸することになった場合にも重要なポイントだ。
低いほうの家には、ベッドルームが2つと、コンパクトなリビングエリアがある。家の前にある交通量の多い道路からは、分厚いコンクリートの壁で仕切られており、専用のゲートから出入りできる。家の前面と後ろ側に1つずつ小さな中庭があり、これから育っていく緑で覆われるはずだ。(ここには写真がないが)建材も、大きい家と同様のものが使われている。ただ大きな違いは、奥の家が斜面に沿ってのぼる形状であるのに対し、この手前の家は丘の中に埋まるかたちで平屋建てになっていること。おばあちゃんが老後を過ごす家であることを考えると、これは重要な配慮だ。
オーナー家族は、この家に住んで2年になる。昨年、このプロジェクトはウェリントン建築アワードの集合住宅部門に入賞を果たした。一家にとって、同じ土地のなかで暮らすようになったのは、素晴らしい変化だったという。「ホームオーナーたちと話すといつも、自慢の家だと言ってくれますね。素晴らしいクライアントで、この家の暮らしをとても気に入ってくれています。」
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