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2世帯7人の家族が開放的に暮らす、光あふれるコートハウス
厳しい敷地条件ながら、デザイナーのオーナーと、価値観を共にする建築家が、アイデアを出し合って一緒につくりあげた住まいです。

Miki Anzai
2022年4月2日
Editor |Houzz Japan
兵庫県宝塚市の閑静な住宅街。袋小路の突きあたりに佇む、シンプルでスタイリッシュな外観のコートハウスです。以前はオーナーのご実家が建っていましたが、ご両親の将来のことを考え、オーナーが奥さまと小学校に通う3人の息子さんと、計7人で暮らせるように建て替えた住まいです。
家族全員が快適に暮らせるように、建物は厳しい高度斜線のかかる敷地を目一杯使って建っています。圧巻なのは、敷地中央の吹き抜けの中庭と、広々とした2階のテラス。溢れんばかりの光を享受しながら、プライバシーも保てる住まいは、アパレル・デザイナーの森大輔さんのセンスの良さと、それに呼応しながら、さらなる高みを目指して、一級建築士事務所シンクスタジオ代表の杉本清史さんが設計した2世帯住宅です。
どんなHouzz?
所在地:兵庫県宝塚市
住まい手:夫婦+両親+男の子3人
敷地面積:203.73平方メートル
延床面積:173.58平方メートル
構造:木造2階建て
設計・監理:一級建築士事務所シンクスタジオ(杉本清史)
施工:不二工営建設株式会社
竣工時期:2021年12月
写真:Atelier One (今西浩文)
どんなHouzz?
所在地:兵庫県宝塚市
住まい手:夫婦+両親+男の子3人
敷地面積:203.73平方メートル
延床面積:173.58平方メートル
構造:木造2階建て
設計・監理:一級建築士事務所シンクスタジオ(杉本清史)
施工:不二工営建設株式会社
竣工時期:2021年12月
写真:Atelier One (今西浩文)
2階の広いテラスから見た中庭
家を建てるにあたって、なにから始めてよいかわからなかった森さんが、まず相談したのはご友人でした。「Houzzという家づくりの情報を集めやすいアプリがあって、いろいろと役立つ記事も読めるよ」と教えてもらい、すぐにアプリをダウンロード。
建築家を探すボックスから検索すると、多数の建築家のリストが出てきて、その中から、「作品のデザインもさることながら、同じ子育て世代で、同じ価値観を持っていそうで、文章から温かみを感じられた」杉本さんにメールをしました。すると杉本さんから、自筆のメッセージ付きで事務所のパンフレットが送られてきたのだそう。
さっそく杉本さんの事務所兼自邸を訪ねると、「スタイリッシュなのに、アットホームな雰囲気」で、杉本さん自身もご両親思いなことがわかりました。さらに親近感が湧き、森さんは「絶対、いい家が出来る!」と確信して、迷わず、杉本さんに依頼することに決めたそうです。
家を建てるにあたって、なにから始めてよいかわからなかった森さんが、まず相談したのはご友人でした。「Houzzという家づくりの情報を集めやすいアプリがあって、いろいろと役立つ記事も読めるよ」と教えてもらい、すぐにアプリをダウンロード。
建築家を探すボックスから検索すると、多数の建築家のリストが出てきて、その中から、「作品のデザインもさることながら、同じ子育て世代で、同じ価値観を持っていそうで、文章から温かみを感じられた」杉本さんにメールをしました。すると杉本さんから、自筆のメッセージ付きで事務所のパンフレットが送られてきたのだそう。
さっそく杉本さんの事務所兼自邸を訪ねると、「スタイリッシュなのに、アットホームな雰囲気」で、杉本さん自身もご両親思いなことがわかりました。さらに親近感が湧き、森さんは「絶対、いい家が出来る!」と確信して、迷わず、杉本さんに依頼することに決めたそうです。
なだらかなスロープと引き戸の玄関は、意匠性だけでなく、万が一、車椅子になっても、移動がしやすいように考慮されたものです。
外壁は、森さんのリクエストで、普通より荒っぽく吹付け塗装しました。玄関脇のガラスブロックは、お母さまたっての希望で採用されたそうです。
外壁は、森さんのリクエストで、普通より荒っぽく吹付け塗装しました。玄関脇のガラスブロックは、お母さまたっての希望で採用されたそうです。
ガレージ奥には、キャンプ道具が置ける可動式収納棚を設置
マンション暮らしをしていた時、これらのキャンプ道具をいちいち部屋からカートに乗せて、エレベーターを使って駐車場の車まで運び入れていたという森さん。「荷物を入れるだけで1時間くらいかかっていた」ので、重労働から開放されて大満足! さらに、「棚を可動式にしてもらったので、荷物が増えても棚を増やせるし、道具のサイズによって段の高さを変えられるのが良いと実感しています」(森さん)
たまたま杉本さんの趣味もキャンプで、ここでも意気投合したそうです。
マンション暮らしをしていた時、これらのキャンプ道具をいちいち部屋からカートに乗せて、エレベーターを使って駐車場の車まで運び入れていたという森さん。「荷物を入れるだけで1時間くらいかかっていた」ので、重労働から開放されて大満足! さらに、「棚を可動式にしてもらったので、荷物が増えても棚を増やせるし、道具のサイズによって段の高さを変えられるのが良いと実感しています」(森さん)
たまたま杉本さんの趣味もキャンプで、ここでも意気投合したそうです。
連続する大判タイルと大開口でつないだ、一体感のある中庭とLDK
白い壁は、森さんが一念発起して、Porter’s Paintsで自ら塗装しました。当初は壁紙を予定していましたが、塗装の味わい深さを、杉本さんと工務店から説かれ、仕事帰りに深夜まで孤軍奮闘。約1ヶ月かけて全面塗装を完成した時は「放心状態だった」そうです。「クロスとは大違いで、頑張った甲斐がありました」と振り返ります。
ダイニングテーブルは、この家が建つ前から一目惚れして購入していた英国ヤンガー社のエクステンションテーブル。副天板を両サイドから引き出せば、2メートル以上になるので、7人家族全員で着席してもゆとりがあります。椅子はチェスカチェアと、積み重ねて収納できる、折りたたみ椅子の原型でもあるプリアチェア。
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名作家具:「鋼管パイプの革命児」ブロイヤーの家具のタイムレスな魅力とは?
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奥さまたっての希望で、BOSCH(ボッシュ)の食洗機がビルトインされているキッチン
「シンプルで塊(かたまり)感のあるものがよかったので、このキッチンはとても気に入っています」と言う奥さま。電化製品や食器類もすべて隠せる収納もお気に入りとのこと。各世帯ごとに冷蔵庫があるので、森さんご家族用の1台はキッチン奥のコーナー、ご両親さま用の1台は背面収納の中に収まっています。
「シンプルで塊(かたまり)感のあるものがよかったので、このキッチンはとても気に入っています」と言う奥さま。電化製品や食器類もすべて隠せる収納もお気に入りとのこと。各世帯ごとに冷蔵庫があるので、森さんご家族用の1台はキッチン奥のコーナー、ご両親さま用の1台は背面収納の中に収まっています。
キッチン裏に位置するご両親さまの部屋
フローリングは、お母様がお気に召した、浮造り(うづくり)加工した無垢のオーク材を採用。外には縁側と坪庭を設け、以前のお庭にあった灯籠などを置いています。
「実家を解体する時、全てのものを撤去すべきか迷った際、杉本さんに『使えるものは残しましょう』と言っていただき、ありがたかったです」という森さん。「ちょうど建物を建てるには効率の悪かった三角形のコーナーを庭に充当しました」(杉本さん)
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日常に癒しをくれる坪庭。作るなら知っておきたいこと
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ダイニングの扉の先に位置する洗面・浴室スペース
LDKからの連続性を重視し、白を基調に、黒のフレームをアクセントに使ったシンプルな空間です。
LDKからの連続性を重視し、白を基調に、黒のフレームをアクセントに使ったシンプルな空間です。
ランダムな刷毛の跡やマット感のある壁に挟まれて、2階へと続く階段
天井の間接照明や、階段途中の開口から差し込む光が、Porter’s Paintsの壁に映し出され、独特の風合いを生んでいます。
黒のスチール製の手すりは、森さんのアイデア。「今回、現場で細かい点を決めていく際、森さんと、キャッチボールをするかのように、さまざまなアイデアを出し合えたことが、建物をより良いものにしたと思います」(杉本さん)
天井の間接照明や、階段途中の開口から差し込む光が、Porter’s Paintsの壁に映し出され、独特の風合いを生んでいます。
黒のスチール製の手すりは、森さんのアイデア。「今回、現場で細かい点を決めていく際、森さんと、キャッチボールをするかのように、さまざまなアイデアを出し合えたことが、建物をより良いものにしたと思います」(杉本さん)
階段をあがると目に飛び込んでくる、広々としたインナーテラス
窓ぎわに造作した収納付きソファは、森さんの特等席です。入居した初日もここで眠りについたそうです。「ぐっすりと寝られて、良い朝を迎えられました。トップライトのお陰で、朝日の温かさも感じられ、とても気持ちがよかったです」
窓ぎわに造作した収納付きソファは、森さんの特等席です。入居した初日もここで眠りについたそうです。「ぐっすりと寝られて、良い朝を迎えられました。トップライトのお陰で、朝日の温かさも感じられ、とても気持ちがよかったです」
子ども部屋から見たテラス
テラスに設けた横長の連窓には不透明ガラスを採用したので、ご近所の目を気にすること無く、ここに椅子を出してリラックスしたり、お布団を干すこともできます。
「ちょうど座ると、お隣の屋根のラインと、奥の壁の斜めの線が重なり、青空だけが眺められるので最高です!」という森さん。この絶妙な壁の角度は、杉本さんがCGを駆使して、「お隣さんと視線を合わさずにすむ高さ、かつ最大限に空を広く感じられるように」慎重に計算して導き出したものです。
テラスに設けた横長の連窓には不透明ガラスを採用したので、ご近所の目を気にすること無く、ここに椅子を出してリラックスしたり、お布団を干すこともできます。
「ちょうど座ると、お隣の屋根のラインと、奥の壁の斜めの線が重なり、青空だけが眺められるので最高です!」という森さん。この絶妙な壁の角度は、杉本さんがCGを駆使して、「お隣さんと視線を合わさずにすむ高さ、かつ最大限に空を広く感じられるように」慎重に計算して導き出したものです。
現在は家族5人で寝ている子ども部屋
床は子どもたちが裸足で無垢材のぬくもりを感じられるように、オーク材を採用。天井は構造梁を現しにしました。この斜めの天井も、高度斜線に掛からないように計算して導かれた形状です。
床は子どもたちが裸足で無垢材のぬくもりを感じられるように、オーク材を採用。天井は構造梁を現しにしました。この斜めの天井も、高度斜線に掛からないように計算して導かれた形状です。
2階北側、ご両親さまの部屋の真上に位置する主寝室
現在は、ソファベッドを置いて、リラックスルームとして使っているそうです。椅子がわりにもなるSONYの樽形スピーカーにも、オーナーのセンスのよさが光ります。
現在は、ソファベッドを置いて、リラックスルームとして使っているそうです。椅子がわりにもなるSONYの樽形スピーカーにも、オーナーのセンスのよさが光ります。
日が落ちた後の姿からも「家のあたたかさが伝わってくる」と奥さまが語るように、ご一家はもちろんのこと、ご近所さんたちも心地よい灯を分けてもらっていることでしょう。
森さんご夫妻(写真左)と一級建築士事務所シンクスタジオ代表の杉本清史さん
「家づくりは人生で最も高額な買い物」とよく言われるように、森さんご夫妻にとっても「満足できる家をつくりたい」、「失敗したくない」という意識は強かったと言います。心から納得できる家を手にした今、森さんは「価値観の合う杉本さんにお任せできて本当によかった」と振り返ります。「こちらの申し上げたことに対して、更に広げてよい選択肢を、丁寧に解説しながら、たくさん提示してくれたのも、ありがたかったです」(森さん)
デザインを生業とする森さんと杉本さんのセンスと知見がフルに活かされたお住まいでした。
Houzzで建築家を探す
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・中庭でかなえる「閉じながら開く」快適な暮らし
・旗竿地に建てたコートハウス
・都市型コートハウス
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