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大きな屋根つきデッキで心地よく外につながる家
引退生活を海辺で暮らしたい、というクライアントの希望を受けて建築家がつくりだしたのは、大きな窓が広い屋根付きデッキにつながり、海辺を感じながら暮らせる家でした。
Joanna Tovia
2017年10月7日
ふだん暮らしているのはフェデレーション様式(オーストラリア連邦が成立した1900年前後の建築様式)の下見板張りの家で、休暇を過ごす別荘は70年代築の、毛足の長いカーペットを敷いた美しからぬ茶色いレンガの家……。そんなときに建て替えのチャンスがやって来たら、モダンでスタイリッシュな家をつくりたいと思うのが当然だろう。今回のホームオーナー夫婦は、ニューサウスウェールズ州のノース・コーストに30年間所有していた家族の別荘を取り壊し、その代わりに、ふたりの将来的なニーズに合い、休暇中に訪れる子どもや孫たちも快適に過ごすことのできる住まいを建てることに決めた。これから退職生活に移行していくなかで、いずれはここを終の棲家として移り住むことを考えている。
「この新しくモダンな家は、ふたりにとって新たな出発点となり、スタイリッシュでありながら、よりリラックスした暮らしができる場所になっています」と、担当した〈ネッド・アーキテクチャー&デザイン〉の建築家、ネッド・パワーさんは言う。
「この新しくモダンな家は、ふたりにとって新たな出発点となり、スタイリッシュでありながら、よりリラックスした暮らしができる場所になっています」と、担当した〈ネッド・アーキテクチャー&デザイン〉の建築家、ネッド・パワーさんは言う。
どんなHouzz?
住まい手:夫婦。独立して海外で暮らす子どもたちや孫たちも遊びに来る。
所在地:ニューサウスウェールズ州ノース・コースト、コフス・ハーバー、エメラルド・ビーチ
規模:敷地は700平方メートル、建物は延床面積285平方メートル。ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×3、パウダールーム
建築設計:〈ネッド・アーキテクチャー&デザイン〉
ランドスケープ:〈ガーデン・エクスプレッションズ〉
オーナー夫婦がふだん暮らしているのは、車で3時間ほど離れたアーミデールの町にある、1900年代初期に建てられた下見板張りのカントリースタイルの家だ。これまでの別荘は、長年にわたり家族が楽しい時間を過ごしてきた場所だったが、取り壊すべきときがやって来た。ふたりの幸せな退職後の生活に備えて、素敵な新しい家に建て替えるのだ。
住まい手:夫婦。独立して海外で暮らす子どもたちや孫たちも遊びに来る。
所在地:ニューサウスウェールズ州ノース・コースト、コフス・ハーバー、エメラルド・ビーチ
規模:敷地は700平方メートル、建物は延床面積285平方メートル。ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×3、パウダールーム
建築設計:〈ネッド・アーキテクチャー&デザイン〉
ランドスケープ:〈ガーデン・エクスプレッションズ〉
オーナー夫婦がふだん暮らしているのは、車で3時間ほど離れたアーミデールの町にある、1900年代初期に建てられた下見板張りのカントリースタイルの家だ。これまでの別荘は、長年にわたり家族が楽しい時間を過ごしてきた場所だったが、取り壊すべきときがやって来た。ふたりの幸せな退職後の生活に備えて、素敵な新しい家に建て替えるのだ。
「クライアントが希望していたのは、スタイリッシュかつリラックスしたライフスタイルを実現するための、現代的で美しいオリジナルの住宅でした」とパワーさんは言う。「力強い幾何学的なフォルムの家は、小さなビーチコミュニティで大胆な個性を放っています」。
自然に囲まれているような雰囲気にしたい、というのがオーナー夫婦の希望。一方で、喧騒から離れ、守られていながら、孤立しすぎないことも大切だった。表にフェンスをつくっていないため、通りがかりの人にも家のようすが目に入る。
2つの長方形の躯体が交わり重なるようなデザインで、変わった形の敷地をもっとも効果的に活用している。「マッスが重なり合うことで、道路に面したファサードに凹凸をつくり、いきいきとした彫刻的な雰囲気になっています」とパワーさんは言う。
自然に囲まれているような雰囲気にしたい、というのがオーナー夫婦の希望。一方で、喧騒から離れ、守られていながら、孤立しすぎないことも大切だった。表にフェンスをつくっていないため、通りがかりの人にも家のようすが目に入る。
2つの長方形の躯体が交わり重なるようなデザインで、変わった形の敷地をもっとも効果的に活用している。「マッスが重なり合うことで、道路に面したファサードに凹凸をつくり、いきいきとした彫刻的な雰囲気になっています」とパワーさんは言う。
サーファービーチから250メートルのところにある家は、海からの強風にさらされる。外装の素材選びは、美しさだけでなく、耐久性、寿命、リーズナブルな価格、そしてメンテナンスの容易さも条件となった。「外装には、全体的に、オーセンティックで機能的な美しさが感じられる素材を使っています」とパワーさんは言う。
素のままのコンクリートブロックやセメントボードが広範に使われているが、一部にアルコボンド(アルミ複合板)を用いて、グラマラスな要素を加えている。さらに、アクセントウォールとして縦ハゼ継ぎのカラーボンド(スチールにコーティングを施した外装材)を取り入れ、デザイン性の高いファサードに仕上がっている。
素のままのコンクリートブロックやセメントボードが広範に使われているが、一部にアルコボンド(アルミ複合板)を用いて、グラマラスな要素を加えている。さらに、アクセントウォールとして縦ハゼ継ぎのカラーボンド(スチールにコーティングを施した外装材)を取り入れ、デザイン性の高いファサードに仕上がっている。
敷地は3角形の傾斜地。向かい合う2つの辺に沿って2つの長方形が配置され、それらが途中で重なったようなかたちだ。「これが、建物の各所に見られる斜めの動きをつくり出しているんです」とパワーさんは言う。
1階には、エントランスと、それぞれバスルーム付きのゲスト用ベッドルームが2つ、ガレージ、音楽室がある。
1階には、エントランスと、それぞれバスルーム付きのゲスト用ベッドルームが2つ、ガレージ、音楽室がある。
解放感のあるガラス張りのエントランスは、隣の音楽室でホームコンサートを開くときには、訪れたゲストが集まるロビーのような役割も果たす。また、このエントランスホールが、2つの長方形の躯体が交わるポイントに当たる。
「階段を上がるとキッチンに出ます。物理的にも象徴的にも、キッチンはこの家の中心となっている支点のような場所ですね」とパワーさん。
「階段を上がるとキッチンに出ます。物理的にも象徴的にも、キッチンはこの家の中心となっている支点のような場所ですね」とパワーさん。
クライアント夫婦の片方はプロの音楽家(子どものひとりも音楽家)で、音楽室は100人のお客さんを招いて演奏会を開くことのできる広さが必要だった。自分たちが演奏するだけでなく、年に数回、地元や海外からアーティストを招いてコンサートを催している。
ここは多機能な空間で、2つのゲストベッドルームが隣接しているため、泊まりに来た子どもや孫が自由に動けるスペースにもなる。床は、コンテンポラリーな空間に似合う実用的な素材として、特注の骨材入りポリッシュコンクリートを選んだ。
ここは多機能な空間で、2つのゲストベッドルームが隣接しているため、泊まりに来た子どもや孫が自由に動けるスペースにもなる。床は、コンテンポラリーな空間に似合う実用的な素材として、特注の骨材入りポリッシュコンクリートを選んだ。
飾られているアートの大半は、ホームオーナーたちがたくさん集めてきたアボリジニのマルトゥの人々によるアートだ。パプアニューギニアやインドネシアへの旅行から持ち帰った木彫りやファブリックもある。
音楽室から大きなガラスの引き戸を開けると、亜熱帯植物の庭に出る。地元の造園デザイン会社〈ガーデン・エクスプレッションズ〉のクローディア・ネヴィルさんと協力し、家と庭に一体感を出すことを心掛けている。
「建物が周囲と調和し、住まい手が自然のなかで暮らしていると感じられるように、ランドスケープと建築とをひとつのまとまったものとして演出することが重要でした。」とパワーさんは言う。「有機的なレイアウトの庭の各所に、建物の幾何学的フォルムを引き立たせるような、構造的・建築的要素のある植物を配置しています。」
「建物が周囲と調和し、住まい手が自然のなかで暮らしていると感じられるように、ランドスケープと建築とをひとつのまとまったものとして演出することが重要でした。」とパワーさんは言う。「有機的なレイアウトの庭の各所に、建物の幾何学的フォルムを引き立たせるような、構造的・建築的要素のある植物を配置しています。」
ひろびろとしたゲスト用ベッドルームも庭に面している。それぞれのベッドルームに専用のオンスイートバスルームと造り付けの収納がある。
ゲストが滞在していないときには、夫婦ふたりで快適に暮らすことができるように設計されている。ふたりだけのときには2階がおもな居住空間となる。
明るく開放感あふれるオープンプランのキッチン/リビング/ダイニングエリア。スポッテッドガム材のフローリングで、2階全体が流れるようにつながっている。
ガラスの壁は折り戸式に開き、室内とデッキをつなげることができる。デッキは、家の裏手や島を望む配置になっており、回遊するクジラも見えるそうだ。「自然に囲まれ、温かく穏やかな気候の恵みを感じられる家が、クライアントの希望だったんです」とパワーさんは言う。
必要なときだけ引き出して設置できる、5メートルの防虫ネットも用意されている。デッキの天井にはヒーターがあり、1年中デッキをおもてなしスペースとして使うことができる。
必要なときだけ引き出して設置できる、5メートルの防虫ネットも用意されている。デッキの天井にはヒーターがあり、1年中デッキをおもてなしスペースとして使うことができる。
「2階建てにしたことで、リビングエリアから海の眺めがよく見え、夏には北東の海風がよく入るようになっています。また、家自体が占める面積を少なくして、庭のスペースを広く保つ目的もありました」とパワーさんは言う。
部分的に屋根で覆われた深いデッキは、日差しを取り入れながら日陰を確保し、冬の冷たい南風や西風からも守ってくれる。
部分的に屋根で覆われた深いデッキは、日差しを取り入れながら日陰を確保し、冬の冷たい南風や西風からも守ってくれる。
よく考えて配置された窓のおかげで、近くを通る人や近所の建物からは適度に隔離され、守られている印象だ。
この家には家族がおおぜい集まることも多い。そのため、キッチンはみんなで料理することを考えて設計している。
極端にスタイリッシュな住宅のなかには、まったく温かみが感じられないケースもある。しかしこちらの家では、建物はとことんモダンながら、ふたりが集めたアートや以前からの家具がうまく調和して、温かな個性が生まれている。
キッチンのカウンタートップは〈シーザーストーン〉、機器類は〈ミーレ〉と〈ネフ〉の製品を使っている。キャビネットの扉はソフトクローズ仕様で、2液型のウレタン塗装で仕上げた〈ブルム〉の製品だ。アクセントとなっているスポッテッドガム材のキャビネットで、フローリングとのつながりを演出。
長さ4.8メートルのアイランドカウンターは、コンサートのあとでリビングやデッキに集まってきたゲストにカナッペや飲み物をサーブする場所にもなる。
通風を確保する電動ルーバー窓も、いくつも取り入れられている環境に配慮した工夫のひとつだ。
通風を確保する電動ルーバー窓も、いくつも取り入れられている環境に配慮した工夫のひとつだ。
ダイニングのペンダントライトは〈クリストファー・ブーツ〉のもので、もともとはファッションイベントのためにデザインされた製品。
2階のマスターベッドルームは、光あふれる居心地の良い部屋で、海に面したデッキはリビングエリアのデッキとつながっている。ひろびろとしたオンスイートバスルームとドレッシングルームもある。
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