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コロナ禍にリノベーションしたメルボルンの建築家の自邸
狭い通りに面した2ベッドルームのビクトリア時代のコテージ。老朽化が進んでいたため改修を計画していた最中に、新型コロナが蔓延。建築家はどのようにリノベーションを進めたのでしょうか?
Vanessa Walker
2022年11月22日
建築家が設計した家というと、デザインに凝り過ぎる傾向がある、というイメージを払拭したかったというリサ・ブリーズさん。オーストラリアのメルボルンにある自邸を、奇をてらうことなく、その広さに相応しく、使いやすいようにリノベーションしました。
最大の難関は、設計が終わり、いざ工事がスタートする時に、パンデミックが発生したことでした。それでも、この家の歴史や時代背景を尊重しつつ、コロナ禍の家族の生活に適した機能性の向上をめざしたと語ります。それでは、さっそく完成したご自慢のお住まいを拝見してみましょう。
最大の難関は、設計が終わり、いざ工事がスタートする時に、パンデミックが発生したことでした。それでも、この家の歴史や時代背景を尊重しつつ、コロナ禍の家族の生活に適した機能性の向上をめざしたと語ります。それでは、さっそく完成したご自慢のお住まいを拝見してみましょう。
どんなHouzz?
住まい手: カップル+乳幼児+2匹のペット
所在地: ビクトリア州ノースコート
寝室とバスルームの部屋数: 3つの寝室+1つのバスルーム+1つのパウダールーム
面積: 10平方メートル
設計: Lisa Breeze Architect (リサ・ブリーズ)
施工: Never Stop Group
建具: Silverstream Joinery
ランドスケープデザイナー: Amanda Oliver Gardens
写真:Cathy Schusler
住まい手: カップル+乳幼児+2匹のペット
所在地: ビクトリア州ノースコート
寝室とバスルームの部屋数: 3つの寝室+1つのバスルーム+1つのパウダールーム
面積: 10平方メートル
設計: Lisa Breeze Architect (リサ・ブリーズ)
施工: Never Stop Group
建具: Silverstream Joinery
ランドスケープデザイナー: Amanda Oliver Gardens
写真:Cathy Schusler
家族の拠点となる家を探していたブリーズさんとパートナーは、当時住んでいたメルボルンの家からそう遠くないノースコートで老朽化したビクトリア時代のコテージを見つけました。この建物はもともと住んでいた家より少し大きく、リノベーションによって2 ベッドルームを 3 ベッドルームへ変えることができそうでした。
周辺エリアは、もともと倉庫が並んでいましたが、そのほとんどが住宅にリノベーションされていました。商店街にも近く、都会的な雰囲気がありながら、小さな工房やアーティストが近くで活動しているというところにも魅力を感じたといいます。
周辺エリアは、もともと倉庫が並んでいましたが、そのほとんどが住宅にリノベーションされていました。商店街にも近く、都会的な雰囲気がありながら、小さな工房やアーティストが近くで活動しているというところにも魅力を感じたといいます。
レンガやウェザーボード(下見板張り)を取り入れることで、建物とその周辺地域の歴史が反映されています。
コテージ購入後、彼らは古い家ゆえにさまざまな問題に直面したと語ります。それは、いったいどんな問題だったのでしょう?
「すべてです!」と即答するブリーズさん。 「建物は老朽化して何もかも古く、まともな設計がされていなかったため、隙間風が入って寒いし、小さな庭は生い茂った雑草でいっぱいでした。こうした問題点すべてクリアし、さらに居住スペースを拡げたいと思いました」
リノベーションをするときに知っておきたい基礎知識
コテージ購入後、彼らは古い家ゆえにさまざまな問題に直面したと語ります。それは、いったいどんな問題だったのでしょう?
「すべてです!」と即答するブリーズさん。 「建物は老朽化して何もかも古く、まともな設計がされていなかったため、隙間風が入って寒いし、小さな庭は生い茂った雑草でいっぱいでした。こうした問題点すべてクリアし、さらに居住スペースを拡げたいと思いました」
リノベーションをするときに知っておきたい基礎知識
コテージの歴史的価値を保つため、既存の屋根の下にあるエリアは残しています。時代背景を示すディテールは、建物の前面部分に見て取ることができます。
ブリーズさんとパートナーは、住宅の全面的なリノベーションを計画。建物の奥側の解体と建て替え、歴史的特徴の修復、そして外構工事も必要だと考えていました。また、ベッドルームの追加は全体の計画の中でも重要であり、かつ出産予定日までに仕上げるという差し迫った目標がありました。
コロナ禍のリノベーションということもあり、自宅で仕事ができるようなスペースと、できる限り多くの収納スペースを組み入れることを希望。さらに、LDKは現代風にオープンプランをリクエストしました。
ブリーズさんとパートナーは、住宅の全面的なリノベーションを計画。建物の奥側の解体と建て替え、歴史的特徴の修復、そして外構工事も必要だと考えていました。また、ベッドルームの追加は全体の計画の中でも重要であり、かつ出産予定日までに仕上げるという差し迫った目標がありました。
コロナ禍のリノベーションということもあり、自宅で仕事ができるようなスペースと、できる限り多くの収納スペースを組み入れることを希望。さらに、LDKは現代風にオープンプランをリクエストしました。
Dulux社の海洋ブルー色で統一した造作家具と壁が印象的なベッドルーム
リノベーション後の間取りは、家の表側にベッドルーム2部屋がそれぞれ廊下を挟んで両側に配置され、一方のベッドルームの奥に3部屋目のベッドルーム (ブリーズさんが自宅で仕事をする場所として使用) 、反対側は水回りとなっています。さらに家の奥に向かっていくとLDKが広がっています。
もともと建物は左右両側の境界ぎりぎりに建てられており、採光や通気、動線、さらに計画された要素をはめ込んむことが容易ではありませんでした。
スペースの有効活用を図るため、ブリーズさんはいくつかの基本的な要素をアパートのようにバランスよくレイアウトしました。以前リビングルームがあった場所を、廊下にそってバスルーム、ランドリー(収納)、パウダールームといった水回り中心のスペースにしました。
ダイニングとキッチンは窓際のベンチで結ばれた一体的な空間となり、ベンチ下の引き出しはキッチンの収納スペースの一部となっています。また家の床面積を最大限に有効活用するため、床から天井までの収納を設置しました。
リノベーション後の間取りは、家の表側にベッドルーム2部屋がそれぞれ廊下を挟んで両側に配置され、一方のベッドルームの奥に3部屋目のベッドルーム (ブリーズさんが自宅で仕事をする場所として使用) 、反対側は水回りとなっています。さらに家の奥に向かっていくとLDKが広がっています。
もともと建物は左右両側の境界ぎりぎりに建てられており、採光や通気、動線、さらに計画された要素をはめ込んむことが容易ではありませんでした。
スペースの有効活用を図るため、ブリーズさんはいくつかの基本的な要素をアパートのようにバランスよくレイアウトしました。以前リビングルームがあった場所を、廊下にそってバスルーム、ランドリー(収納)、パウダールームといった水回り中心のスペースにしました。
ダイニングとキッチンは窓際のベンチで結ばれた一体的な空間となり、ベンチ下の引き出しはキッチンの収納スペースの一部となっています。また家の床面積を最大限に有効活用するため、床から天井までの収納を設置しました。
まさに建物の解体を始める準備をしていた矢先に、メルボルンで最初の長期ロックダウン(2020年5月)が始まりました。
「ご存知の通り、その段階で、今後どうなるか、またどのように建築作業を進めていけばよいのかを判断するのは困難でした」とブリーズさんは話します。
「建設業界が直面した様々な困難を振り返ると、結果として、最初の6か月はその後の2年間の中で最も楽な時期だったと言えるでしょう。私たちがその時作業を開始したことにはリスクもありましたが、それだけの価値があったと思います」(ブリーズさん)
Houzzで住まいの専門家を探してみませんか?
「ご存知の通り、その段階で、今後どうなるか、またどのように建築作業を進めていけばよいのかを判断するのは困難でした」とブリーズさんは話します。
「建設業界が直面した様々な困難を振り返ると、結果として、最初の6か月はその後の2年間の中で最も楽な時期だったと言えるでしょう。私たちがその時作業を開始したことにはリスクもありましたが、それだけの価値があったと思います」(ブリーズさん)
Houzzで住まいの専門家を探してみませんか?
パウダールームの洗面化粧台は、以前のキッチンで使われていたスーパー・ホワイト・ドロマイト石のスラブを再利用したもの。「念のため言いますが、引っ越しの際に余分な石を持ち込むのはお勧めしません」とブリーズさん。
コテージは完全に断熱対策がなされ、しかも採光の良い位置にあり、通気性も十分になりました。
「床下、壁、屋根の断熱は気温の季節変動の対応に有効です。この家には冷房がありませんが、日陰が計画的に設けられ、自然換気も可能となっています。暖房は温水暖房システムでまかなわれています」(ブリーズさん)
「床下、壁、屋根の断熱は気温の季節変動の対応に有効です。この家には冷房がありませんが、日陰が計画的に設けられ、自然換気も可能となっています。暖房は温水暖房システムでまかなわれています」(ブリーズさん)
密集地域にある家に自然光を取り込む天窓
裏庭に面したガラス張りの広いスペースは外付けのローラーブラインドで日を遮ることができます。また北向きの屋根の勾配は、太陽熱温水システムと太陽光発電パネルの面積をできる限り最大化できるよう設計されています。
裏庭に面したガラス張りの広いスペースは外付けのローラーブラインドで日を遮ることができます。また北向きの屋根の勾配は、太陽熱温水システムと太陽光発電パネルの面積をできる限り最大化できるよう設計されています。
古い床板は劣化していたため、ポリウレタン塗装(クリア、艶消し)を施したオウシュウアカマツのリサイクル材に張り替えました。ランドリー(基本的には大型の収納棚)には、ペットの猫のために穴が開けられ、猫用トイレに直接つながっています。
ビジュアルの美しさという点では、ブリーズさんは丈夫で実用的かつ美しい素材を使うことにこだわりました。具体的には、木の床材、テラゾーフロアタイル、セラミックウォールタイル、ステンレス製キッチンワークトップ (「決して壊れませんよ」) などです。
色は柔らかく落ち着いたものを選び、住宅の古い部分はムーディーに、増築部分は自然光を取り込み明るく仕上げました。
ビジュアルの美しさという点では、ブリーズさんは丈夫で実用的かつ美しい素材を使うことにこだわりました。具体的には、木の床材、テラゾーフロアタイル、セラミックウォールタイル、ステンレス製キッチンワークトップ (「決して壊れませんよ」) などです。
色は柔らかく落ち着いたものを選び、住宅の古い部分はムーディーに、増築部分は自然光を取り込み明るく仕上げました。
Gubi社のCollarペンダントライト
この空間では、2液型のポリウレタン塗料で仕上げた化粧板の造作と、Laminex社のSpinifex色のベンチトップシートの色を合わせています。
ダークカラーの窓枠は、機械乾燥したハードウッドを半透明のステインで仕上げたもの。視線を屋外へと向かわせます。
この空間では、2液型のポリウレタン塗料で仕上げた化粧板の造作と、Laminex社のSpinifex色のベンチトップシートの色を合わせています。
ダークカラーの窓枠は、機械乾燥したハードウッドを半透明のステインで仕上げたもの。視線を屋外へと向かわせます。
Ceramica Vogue社のバックスプラッシュタイル、艶消し、Ghiaccio色、200 x 100mm:Classic Ceramics社。
キッチンは若い家族にとって住まいの中心です。「夕方と週末はここで過ごしています(朝はバタバタと混乱状態ですが!)」とブリーズさん。「この部屋に注ぐ自然光は本当に素敵で、カラーパレットはソフトで落ち着いていながら、実用的でもあるのです」
キッチンは若い家族にとって住まいの中心です。「夕方と週末はここで過ごしています(朝はバタバタと混乱状態ですが!)」とブリーズさん。「この部屋に注ぐ自然光は本当に素敵で、カラーパレットはソフトで落ち着いていながら、実用的でもあるのです」
増築エリアの木の床材は、Tongue&Groove社のHekke(Eterno仕上げ、Piccoloサイズ)。またインテリア全体を通して、Dulux社のGamelan色、Natural White色、Lexicon Half色といった落ち着いた色の組み合わせが特徴となっています。
この新しく増築した空間は、フォルムもレイアウトも明らかに現代的なデザインとなっています。LDKは、高い勾配天井の下で裏庭に通じています。
この新しく増築した空間は、フォルムもレイアウトも明らかに現代的なデザインとなっています。LDKは、高い勾配天井の下で裏庭に通じています。
既存部分を改良し、光に溢れた増築部分を加えるのにあわせて、新しい住まいに合った新しい家具も選択しました。
豊かなグリーンの演出と、実用的な舗装という2つのバランスをとるために丸い敷石を使用。 Graniteコンクリート製敷石、Atlas色:Anston Architectural Products社
屋外エリアには駐車スペースがあり、並べられた敷石が、バーベキュー、ゴミ箱、物干しなどのそれぞれのエリアへと続く小道になっています。「ちょっと変わっていますが実用的です」とブリーズさん。
庭づくりの専門家に聞く、コンポストを暮らしに取り入れるためのコツ
屋外エリアには駐車スペースがあり、並べられた敷石が、バーベキュー、ゴミ箱、物干しなどのそれぞれのエリアへと続く小道になっています。「ちょっと変わっていますが実用的です」とブリーズさん。
庭づくりの専門家に聞く、コンポストを暮らしに取り入れるためのコツ
裏手の増築部分はResene社のHalf Iron色で仕上げられ、正面のフェンスや既存部分の基礎の板張り、増築部の裏手のウェザーボード(下見板張り)の一部はアクセントとしてColorbond社のBasalt色合わせとしています。
このコテージがある場所はとても都会的な環境で、自然にあふれているとはいえませんが、それを補うためにも、ブリーズさんは造園家と協力し、小さな庭をできるだけ緑豊かなものにしました。
庭づくりの専門家を探すときのポイント
このコテージがある場所はとても都会的な環境で、自然にあふれているとはいえませんが、それを補うためにも、ブリーズさんは造園家と協力し、小さな庭をできるだけ緑豊かなものにしました。
庭づくりの専門家を探すときのポイント
セメント板のウェザーボードが増築部分のシンプルなフォルムを一層引き立て、足元には塗装仕上げの板材が添えられています。
コロナ禍でのリノベーションは困難も多かったものの、暮らしやすい住まいが完成し、今はほっと胸をなでおろしているそうです。
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まるで北欧のコテージのよう。陶芸を楽しむ心地よいリノベーション
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