東京から熱海へ定住。高台からの眺めが美しいインテリアデザイナーが建てた家
家族と過ごす時間を増やすため、2つの仕事の中間地点に家を建てた夫妻。住む場所を変えることで理想の家と豊かな暮らしを手に入れました。
永井理恵子
2018年3月12日
オーナーの中山サダヲさんの職業は、インテリアデザイナー。東京都内に構えるアトリエでの仕事のほか、教授を務める静岡県浜松市の芸術大学で教鞭をとる。奥様の明美さんは、東京都内の設計事務所に勤務する。
仕事柄「自分たちが暮らすならこんな家がいい」とオーナー自らが描いていたビジョンがあった。そのビジョンを実現できそうな建設会社を、インターネットを利用して数社ピックアップし、自ら描いた図面を送った。すぐに返信があったのが〈梅原建設〉だった。
〈梅原建設〉は、静岡県伊東市に拠点を置く工務店。中山邸がある熱海をはじめ、伊東や伊豆高原など伊豆半島の温泉地での別荘の設計・施工を得意とする。図面持ち込みによる設計・施工は久々のケースだったが「自分たちの感覚と違うもの、違う考え方に触れられる」と好奇心を持って取り組んだ結果、耐震構法であるSE構法による大空間が心地いい、ハイデザインの家が完成した。
仕事柄「自分たちが暮らすならこんな家がいい」とオーナー自らが描いていたビジョンがあった。そのビジョンを実現できそうな建設会社を、インターネットを利用して数社ピックアップし、自ら描いた図面を送った。すぐに返信があったのが〈梅原建設〉だった。
〈梅原建設〉は、静岡県伊東市に拠点を置く工務店。中山邸がある熱海をはじめ、伊東や伊豆高原など伊豆半島の温泉地での別荘の設計・施工を得意とする。図面持ち込みによる設計・施工は久々のケースだったが「自分たちの感覚と違うもの、違う考え方に触れられる」と好奇心を持って取り組んだ結果、耐震構法であるSE構法による大空間が心地いい、ハイデザインの家が完成した。
どんなHouzz?
住まい手:中山サダヲさんと明美さん、ボストンテリアのジュリアちゃん(6才)
所在地:静岡県熱海市
構造:木造2階建て(SE構法)
敷地面積:369.00平方メートル
延べ床面積:194.14平方メートル
基本設計:スペースカウボーイ(全体)、海野敏夫(構造)、中野民雄(設備)
設計・施工:梅原建設
ランドスケープデザイン:柳原博史
竣工:2016年
この家に暮らす以前、オーナーのサダヲさんは、明美さんと愛犬と暮らす東京都内にマンションと仕事用アトリエ、浜松の大学近くにはアパートを借りていた。3つの拠点を行き来する日々は、移動に時間をとられ、ときには数日間家に帰れないことも。サダヲさんは、生活にゆとりを持ち、愛犬と過ごす時間を増やしたかった。静岡県熱海市へと住まいを移すことにしたのは、東京と浜松、両方へのアクセスがいいからだ。
住まい手:中山サダヲさんと明美さん、ボストンテリアのジュリアちゃん(6才)
所在地:静岡県熱海市
構造:木造2階建て(SE構法)
敷地面積:369.00平方メートル
延べ床面積:194.14平方メートル
基本設計:スペースカウボーイ(全体)、海野敏夫(構造)、中野民雄(設備)
設計・施工:梅原建設
ランドスケープデザイン:柳原博史
竣工:2016年
この家に暮らす以前、オーナーのサダヲさんは、明美さんと愛犬と暮らす東京都内にマンションと仕事用アトリエ、浜松の大学近くにはアパートを借りていた。3つの拠点を行き来する日々は、移動に時間をとられ、ときには数日間家に帰れないことも。サダヲさんは、生活にゆとりを持ち、愛犬と過ごす時間を増やしたかった。静岡県熱海市へと住まいを移すことにしたのは、東京と浜松、両方へのアクセスがいいからだ。
高台に位置し、東側に開ける土地に建つ中山邸は、熱海の街並み越しに、相模湾を一望できるロケーション。美しく広い眺望を楽しむため、道路に向かって開けるように家を建てたいところだ。ところが道路より一段高い分、高さ制限がかかり、山を切り開いた土地だから崖条例で擁壁が必要だった。設計を担当した〈梅原建設〉の池上一敏さんは「中山さんの希望をできるだけ叶えるため、課題をひとつひとつ解決していきました」と話す。
モノトーンをベースに木部がアクセントになっている外観は、元々あった石積みや樹木をそのまま活かした外構と、見事に調和している。ところで、左手の平屋部分から右手の2階部分へ屋根のラインをなぞると、一筆書きになっているのがおわかりになるだろうか。これは、オーナーの希望により実現したもの。写真には写っていないが、手前にあるガレージからずっと続いており、家全体に一体感をもたらす。
広い芝生の庭を囲むように縁側が続き、屋内と屋外をゆるやかにつなぐ。愛犬ジュリアちゃんが楽しそうに走り回る姿を見て、中山夫妻は一軒家にしてよかったと改めて感じている。
モノトーンをベースに木部がアクセントになっている外観は、元々あった石積みや樹木をそのまま活かした外構と、見事に調和している。ところで、左手の平屋部分から右手の2階部分へ屋根のラインをなぞると、一筆書きになっているのがおわかりになるだろうか。これは、オーナーの希望により実現したもの。写真には写っていないが、手前にあるガレージからずっと続いており、家全体に一体感をもたらす。
広い芝生の庭を囲むように縁側が続き、屋内と屋外をゆるやかにつなぐ。愛犬ジュリアちゃんが楽しそうに走り回る姿を見て、中山夫妻は一軒家にしてよかったと改めて感じている。
北側に位置する玄関扉を開けると、ストリップ階段が出迎える。1階にはキッチンとメインダイニング、ゲストルームと浴室がある。
写真には写っていないが、右手には大きなシューズクロークが設えられ、夫婦の靴はもちろん、アウターの収納もできるようになっている。
玄関をはじめ、家中の床はすべて無垢のナラ材。ジュリアちゃんの足に優しい素材を選んだ。
写真には写っていないが、右手には大きなシューズクロークが設えられ、夫婦の靴はもちろん、アウターの収納もできるようになっている。
玄関をはじめ、家中の床はすべて無垢のナラ材。ジュリアちゃんの足に優しい素材を選んだ。
1階のメインダイニングは、階段のすぐ隣にある。階段はオープンにしたかったが、構造上どうしても外せない柱があった。“木を隠すなら森へ”というわけで、目立たせないために、踏み板1枚につき1本、等間隔になるよう柱を立てた。リビングの壁の一部はパープル。1階の眺望は庭や食材、遠景の熱海の山と海がメインとなるため、緑を引き立たせる色を直感的にセレクトしたという。
造作のテーブルは1本脚。四隅に脚がないため、大人数でテーブルを囲む際、コーナーに座ってもテーブルの脚が邪魔になることなくゆったりと過ごせる。
当初から、キッチンはIHコンロでステンレス素材のもの、というイメージを描いていた。既製のシステムキッチンの中からイメージ通りの色のものを選んで購入し、ステンレスの天板をのせた半造作キッチンにした。この方法なら、すべてを造作にするよりもリーズナブルだ。イメージをカタチにしながら、コストカットに成功。もちろん、使い勝手もいい。
テレビは180°動かせるパーツを使って壁付けにした。キッチンやダイニング、奥にあるBBQコーナー、テラスのどこにいても、角度を変えれば見ることができる。
ダイニングチェア:〈カッシーナ〉《キャブチェア》、ダイニング照明:〈ディーゼル〉《フォスカリーニ》
造作のテーブルは1本脚。四隅に脚がないため、大人数でテーブルを囲む際、コーナーに座ってもテーブルの脚が邪魔になることなくゆったりと過ごせる。
当初から、キッチンはIHコンロでステンレス素材のもの、というイメージを描いていた。既製のシステムキッチンの中からイメージ通りの色のものを選んで購入し、ステンレスの天板をのせた半造作キッチンにした。この方法なら、すべてを造作にするよりもリーズナブルだ。イメージをカタチにしながら、コストカットに成功。もちろん、使い勝手もいい。
テレビは180°動かせるパーツを使って壁付けにした。キッチンやダイニング、奥にあるBBQコーナー、テラスのどこにいても、角度を変えれば見ることができる。
ダイニングチェア:〈カッシーナ〉《キャブチェア》、ダイニング照明:〈ディーゼル〉《フォスカリーニ》
熱海、温泉というキーワードに惹かれ、遊びに来る友人たちが多いという中山さんのお宅。1階の奥には、ゲストルームが用意されている。ゲストルームの扉とトイレの扉は木の扉。《Yチェア》が置かれた家事室など住まい手のプライベートな空間への扉は、壁と同じ白。ゲストにわかりやすいように工夫されている。
ベッドの足元に置かれたル・コルビュジエの《LC2》は、窓の外を見渡すよう東向きに置かれており、ここから朝日を眺めることができる。
ベッドの足元に置かれたル・コルビュジエの《LC2》は、窓の外を見渡すよう東向きに置かれており、ここから朝日を眺めることができる。
1階のバスルームには、ジャクジーを設えた。外からの視線を遮ることができるように、木々を新たに植えた。あと数年もすれば格子戸を開け放てるほど枝が伸びて葉が生い茂り、中の様子を覆い隠してくれるだろう。
ジャクジーのほかに、石造りの内湯もある。運良く温泉を引くことができる土地だったため、内湯では温泉を楽しむことができる。源泉の温度が高いため、朝溜めたお湯が適温になるのは、帰宅する時間帯。石の浴槽と床がじんわり温まっているから、冬でもストレスなく温泉を楽しめる。
ジャクジーのほかに、石造りの内湯もある。運良く温泉を引くことができる土地だったため、内湯では温泉を楽しむことができる。源泉の温度が高いため、朝溜めたお湯が適温になるのは、帰宅する時間帯。石の浴槽と床がじんわり温まっているから、冬でもストレスなく温泉を楽しめる。
2階への階段を照らすのは〈フロス〉の《タラクサカム 88》。1988年、アッキーレ・カスティリオーニによってデザインされた照明には、圧倒的な存在感がある。「いちばん好きな照明器具のための空間です」とサダヲさん。タンポポの属名であるタラクサカムという名が示す通り、タンポポの綿毛を太陽に透かしたように光を放つ。調光が可能で、光量を最大にすると、まるで近未来の発光体のように強く輝く。
オフィススペースに置かれたデスクは造作。仕事をしながらリビングに目を向けると、窓の向こうに青々とした空と海が広がる。
オフィススペースに置かれたデスクは造作。仕事をしながらリビングに目を向けると、窓の向こうに青々とした空と海が広がる。
リビングの上に梁を渡したのは、将来的にロフトを設けられるように設計したから。「建築家なら眺望を妨げないために不要としがちな梁ですが、インテリアデザインの観点からだとあったほうが面白いと感じています」とサダヲさん。
木造軸組工法での施工ながらこれほどまでの開放感を出せたのは、オーナーが家づくりに選んだのが耐震構法SE構法を取り入れる〈梅原建設〉だったからだとも言える。
SE構法とは、鉄骨造と同じ構造計算方法をとる構造体として開発された木骨造の構法。強度に優れた集成材を使用し、柱同士の接合部分にSE金物と呼ばれる特殊なSボルトで固定する。柱と梁自体に強度を持たせるため、木造軸組工法で必要とされる筋交いなどの体力壁を減らすことができ、シンプルで強い構造体を実現できる。
SE構法とは、鉄骨造と同じ構造計算方法をとる構造体として開発された木骨造の構法。強度に優れた集成材を使用し、柱同士の接合部分にSE金物と呼ばれる特殊なSボルトで固定する。柱と梁自体に強度を持たせるため、木造軸組工法で必要とされる筋交いなどの体力壁を減らすことができ、シンプルで強い構造体を実現できる。
必要最低限の柱と梁で十分な強度を生み出せるから、柱や壁など、遮る物が少ない広々とした空間を作り出すことができるのだ。幅310cm、高さ230cmととても大柄な〈フロス〉のフロアライト《アルコ》が、しっくりくる大空間である。
ダイニングテーブルの天板をはずすと、意外や意外、全自動麻雀卓。熱海というリゾート地を満喫しに来宅する友人たちと、卓を囲むのも楽しみのひとつ。
ダイニングテーブルの天板をはずすと、意外や意外、全自動麻雀卓。熱海というリゾート地を満喫しに来宅する友人たちと、卓を囲むのも楽しみのひとつ。
トイレにはトップライトを設けた。写真は2階のトイレだが、1階のトイレも同じで、トップライトから光が入る。日中は照明がなくても明るくて快適だ。
壁一面は、鮮やかなライムグリーン。振り返れば、ダイニングにはパープル、ゲストルームにはグリーン、パントリーコーナーにはブルー、階段にはイエローと、各スペースの壁に違う色を塗り、家の中に変化をもたらしている。
壁一面は、鮮やかなライムグリーン。振り返れば、ダイニングにはパープル、ゲストルームにはグリーン、パントリーコーナーにはブルー、階段にはイエローと、各スペースの壁に違う色を塗り、家の中に変化をもたらしている。
写真はベッドの裏手のパウダーコーナー。洗面台とシャワールームがある。家にサダヲさんの友人が滞在している間、明美さんも快適に過ごせるよう配慮した。もちろん、日常の暮らしにも心配りがある。慌ただしい朝、二人同時に身支度できるようダブルシンクにした。仕切り壁の裏側に鏡とカウンターを設え、ドレッサーに。寝室を出る頃には、すっかり身支度を整えられるようになっている。
東京を離れるにあたり、「友人たちが遊びに来てくれる場所として考えたとき、選択肢は熱海しかなかった」と中山さん夫妻は笑いながら話す。東京から新幹線で40分で行けるリゾートに温泉を楽しめる家を建てたら、愛犬と過ごす時間が増え、心にゆとりが生まれ、休日が楽しくなった。熱海を選び、熱海をよく知る地元の建設会社と建てた家に大満足だ。
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私は現在、湘南に仕事と住まいを25年前に移しましたが・・・移ってから10年位前になりますが、、、アトリエを作るなら熱海、大磯、葉山と考えが交差していた時期がありましたね!
結局のところ湘南の茅ヶ崎に25年間住んでおりますがね(笑)!
さて、今回の中山邸を拝見させて頂きデザイナーの作品に可なり拘りのある方と思いました。デザイナーが作る家具には時代を超えて生き続ける力があるものは人に愛されている証と思います。
デザインとは大変難しい作業であり心のままに情熱を傾けていても人に認めてもらえないモノが沢山ある仕事ですから・・・ 特に私のようなフリーランスで45年も経験していても同じです。
何が違うのかは私自身も正直明快な答えが良く分かりませんから~
今回の現場は建築と家具のコラボレーションが特に上手く行った事例ではな意でしょうか!
そういう意味で言えば中山さんの思いによる建設会社との出会いが非常に上手く行った事例だと感心して拝見させて頂き、どの部屋を見てもそこかしこに垣間見えるお二人の拘りに感心させられた家ですね。
まだまだ、お若い二人ですが今は良いですが年を重ねるごとに熱海の坂が気になる時が来ますが、、、これも健康のためと思い常日頃から足腰を鍛える意味で散歩や歩くことをお勧めしておきます。
機会があれば是非、拝見させて頂きたいですね!