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気に入ったマンションを買う前にーー中古マンションの管理状況を確認するには
「マンションは管理を買え」とよく言われます。では、リノベーションのために中古マンションを購入する場合、そのマンションの管理状況を確認するには、具体的にどうすればよいのでしょうか?
大村哲弥
2018年1月10日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
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分譲マンションは、購入者全員が共同で建物を所有(区分所有)し、共同で維持・管理する住まいです。通常、分譲マンションの管理は、区分所有者全員で管理組合を結成して、専門の管理会社に委託して行われます。
住戸の内部など専有部分に関しては、その住戸の所有者の判断で、リノベーションが可能ですが、外壁やエレベーター、エントランスや廊下などのいわゆる共用部分に関しては、その維持・管理の主体は管理組合になります。したがって、専有部分以外の建物の維持・管理が適切に行われるためには、管理組合が健全に運営されることが前提になります。
一戸建てとは異なり、マンションの場合は、現況の建物に不具合がないかどうかとあわせて、マンションの管理組合の運営の状況や将来の修繕計画など、管理に関することがらを事前に確認することが大変重要になります。これが「マンションは管理を買え」と言われる理由です。
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住戸の内部など専有部分に関しては、その住戸の所有者の判断で、リノベーションが可能ですが、外壁やエレベーター、エントランスや廊下などのいわゆる共用部分に関しては、その維持・管理の主体は管理組合になります。したがって、専有部分以外の建物の維持・管理が適切に行われるためには、管理組合が健全に運営されることが前提になります。
一戸建てとは異なり、マンションの場合は、現況の建物に不具合がないかどうかとあわせて、マンションの管理組合の運営の状況や将来の修繕計画など、管理に関することがらを事前に確認することが大変重要になります。これが「マンションは管理を買え」と言われる理由です。
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マンションの管理組合の37%は管理費滞納の問題を抱えている
国土交通省による「平成25年(2013年)度マンション総合調査結果」によると、管理費・修繕費の3ヶ月以上の滞納が発生している管理組合の割合は、全国で実に37%にも達しています。
管理費や修繕積立金の滞納の問題は、一部の管理組合の例外的な状況ではなくなってきています。こうした事実を知るにつけて、マンションの管理状況の事前のチェックは、マンション検討の際の必須事項と言っても過言ではありません。
以下ではマンション管理の基本と管理状況などをチェックするポイントと、その具体的方法について整理してみました。
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管理費や修繕積立金の滞納の問題は、一部の管理組合の例外的な状況ではなくなってきています。こうした事実を知るにつけて、マンションの管理状況の事前のチェックは、マンション検討の際の必須事項と言っても過言ではありません。
以下ではマンション管理の基本と管理状況などをチェックするポイントと、その具体的方法について整理してみました。
管理組合は管理規約に則り、総会で意思決定する
マンションの管理組合は、建物の清掃やメンテナンス、管理員の人件費などマンションの日常の維持・管理に関する費用を、区分所有者から毎月徴収する管理費でまかなっています。区分所有者は管理費とは別に、建物の将来の修繕のために修繕積立金を毎月負担します。
管理規約は、当該マンションの管理の基本ルールを定めたものです。管理組合は年一回の管理組合総会と不定期の臨時総会を開催して、毎年の予算や決算、修繕工事の実施、規約の改定、さまざまな案件への対応などを協議・決定します。
管理規約と総会の議事内容と議事録を確認することにより、マンションの維持・管理の基本ルールとその主体である管理組合の運営状況を知ることができます。
マンションの管理組合は、建物の清掃やメンテナンス、管理員の人件費などマンションの日常の維持・管理に関する費用を、区分所有者から毎月徴収する管理費でまかなっています。区分所有者は管理費とは別に、建物の将来の修繕のために修繕積立金を毎月負担します。
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管理規約と総会の議事内容と議事録を確認することにより、マンションの維持・管理の基本ルールとその主体である管理組合の運営状況を知ることができます。
マンションは適切な周期での修繕が必要。修繕積立金の水準は妥当か?
外壁や排水管や諸設備機器などは一定の耐用年数があり、これらは適切な周期で修繕(補修や交換)が必要とされます。区分所有者が毎月負担する修繕積立金は、こうした将来の修繕のための積立金です。
誰しも負担は少ないほうがよいですが、一方で将来の建物の修繕のための費用を積み立てておかないと、適切な時期に修繕工事ができない、あるいは、その時に多額の一時金を負担する必要が発生するなどの事態が予想され、そうした事態を招かないためには、毎月、積み立てる修繕費の水準が適切かどうか、さらにきちんとプールされているかどうかが重要です。
国土交通省は「修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月)において、修繕積立金の目安を出しています。上のグラフの修繕積立金の水準は、平成20年に策定したガイドラインに沿って作成された長期修繕計画の事例(87事例)を分析したもので、修繕積立金(専有面積・月あたり)のひとつの目安とされている金額です。
実際の修繕に必要な費用は、マンションそれぞれで異なっているのが現実ですが、検討しているマンションの修繕積立金が、ガイドラインに沿って長期修繕計画が策定されている事例などからみて、概ね妥当な水準にあるのかどうかを判断する目安になると思われます。
外壁や排水管や諸設備機器などは一定の耐用年数があり、これらは適切な周期で修繕(補修や交換)が必要とされます。区分所有者が毎月負担する修繕積立金は、こうした将来の修繕のための積立金です。
誰しも負担は少ないほうがよいですが、一方で将来の建物の修繕のための費用を積み立てておかないと、適切な時期に修繕工事ができない、あるいは、その時に多額の一時金を負担する必要が発生するなどの事態が予想され、そうした事態を招かないためには、毎月、積み立てる修繕費の水準が適切かどうか、さらにきちんとプールされているかどうかが重要です。
国土交通省は「修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月)において、修繕積立金の目安を出しています。上のグラフの修繕積立金の水準は、平成20年に策定したガイドラインに沿って作成された長期修繕計画の事例(87事例)を分析したもので、修繕積立金(専有面積・月あたり)のひとつの目安とされている金額です。
実際の修繕に必要な費用は、マンションそれぞれで異なっているのが現実ですが、検討しているマンションの修繕積立金が、ガイドラインに沿って長期修繕計画が策定されている事例などからみて、概ね妥当な水準にあるのかどうかを判断する目安になると思われます。
マンションの将来の姿がわかる長期修繕計画
そのマンションの将来の修繕計画が記載されているのが、長期修繕計画です。通常は、新築時から30年先までの修繕計画が策定されています。
国土交通省が「長期修繕計画標準様式」と「長期修繕計画作成ガイドライン」を定めています(平成20年6月)。これに沿って、長期修繕計画とは具体的にはどんな書類でどんな内容なのか確認してみましょう。
マンションの長期修繕計画が一表にまとめられているのが、「長期修繕計画総括表」と呼ばれているものです。そこには修繕の工事項目と、その想定費用および修繕会計の収支が30年にわたって年度別に記載されています。通常は年度別の収支と修繕会計の残高をグラフ化した「収支計画グラフ」も作成されています。
そのマンションの将来の修繕計画が記載されているのが、長期修繕計画です。通常は、新築時から30年先までの修繕計画が策定されています。
国土交通省が「長期修繕計画標準様式」と「長期修繕計画作成ガイドライン」を定めています(平成20年6月)。これに沿って、長期修繕計画とは具体的にはどんな書類でどんな内容なのか確認してみましょう。
マンションの長期修繕計画が一表にまとめられているのが、「長期修繕計画総括表」と呼ばれているものです。そこには修繕の工事項目と、その想定費用および修繕会計の収支が30年にわたって年度別に記載されています。通常は年度別の収支と修繕会計の残高をグラフ化した「収支計画グラフ」も作成されています。
この「長期修繕計画総括表」および「収支計画グラフ」で、将来の修繕積立金の残高がマイナスにならずに適正な修繕が計画されているかどうかをチェックできます。特に外壁の補修が必要となる時期(竣工後12年目前後)や設備系の交換が必要となる時期(竣工後24年目前後)など、大規模な修繕工事が想定され、大きな支出が必要となる年度に修繕積立金が十分かどうかを確認しましょう。
現状の毎月支払う修繕積立金では修繕積立金の残高が不足してしまう場合は、将来の修繕積立金の値上げなども想定しておく必要があります。
修繕工事項目に漏れはないか、修繕周期の設定は妥当か、修繕費用の想定は適切かなど、長期修繕計画の根本に係る事項は、プロの目での調査が必要となります。閲覧した長期修繕計画に不安があるようであれば、別途専門家に調査を依頼しましょう。
現状の毎月支払う修繕積立金では修繕積立金の残高が不足してしまう場合は、将来の修繕積立金の値上げなども想定しておく必要があります。
修繕工事項目に漏れはないか、修繕周期の設定は妥当か、修繕費用の想定は適切かなど、長期修繕計画の根本に係る事項は、プロの目での調査が必要となります。閲覧した長期修繕計画に不安があるようであれば、別途専門家に調査を依頼しましょう。
事前に「管理に係る重要事項調査報告書」を入手してチェックする
では、こうした管理に関する確認は具体的にどうすればよいのでしょうか。
区分所有法第33条によって、特定住戸の購入検討者は管理規約(総会議事録)を閲覧する権利を有しています。この法律に基づいて、購入検討者は物件調査の段階で管理規約を閲覧することが可能になります。ただし、管理組合決算書や長期修繕計画などの書類まで閲覧できるかどうかは、管理組合によって対応はまちまちです。
マンションの管理状況を確認する、最も現実的で簡便な方法は、仲介業者経由で「管理に係る重要事項調査報告書」を入手することです。
マンションの売買契約の際に、仲介業者の宅地建物取引主任者から交付される重要事項説明書には、対象不動産の権利や取引条件などのほかに、マンションの管理状況に関する事項も記載することになっています。通常、仲介業者は対象マンションの管理会社から「管理に係る重要事項調査報告書」を取得して管理状況の情報を得ることになっています。
「管理に係る重要事項調査報告書」には、以下のようなマンションの維持・管理に関する重要な内容が記載されています。
また、「管理に係る重要事項調査報告書」を仲介業者を経由して入手する際に、同時に管理規約(総会議事録)や長期修繕計画のコピーなどを添付してもらうことも、最近では一般的になってきています。
「管理に係る重要事項調査報告書」やその他資料は有料です。仲介会社が負担することが一般的です。
検討段階の早い段階で、こうした書類を入手して、管理状況をチェックしておくことが、安心できるマンションを選ぶポイントといえます。
教えてHouzz
中古マンションを購入したことがある方は、管理体制に関してどの程度気にしていたか、体験談をお寄せください。
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では、こうした管理に関する確認は具体的にどうすればよいのでしょうか。
区分所有法第33条によって、特定住戸の購入検討者は管理規約(総会議事録)を閲覧する権利を有しています。この法律に基づいて、購入検討者は物件調査の段階で管理規約を閲覧することが可能になります。ただし、管理組合決算書や長期修繕計画などの書類まで閲覧できるかどうかは、管理組合によって対応はまちまちです。
マンションの管理状況を確認する、最も現実的で簡便な方法は、仲介業者経由で「管理に係る重要事項調査報告書」を入手することです。
マンションの売買契約の際に、仲介業者の宅地建物取引主任者から交付される重要事項説明書には、対象不動産の権利や取引条件などのほかに、マンションの管理状況に関する事項も記載することになっています。通常、仲介業者は対象マンションの管理会社から「管理に係る重要事項調査報告書」を取得して管理状況の情報を得ることになっています。
「管理に係る重要事項調査報告書」には、以下のようなマンションの維持・管理に関する重要な内容が記載されています。
- 毎月の修繕積立金の額および修繕積立金の総額と滞納の有無
- 毎月の管理費と滞納の有無
- 管理組合の収支関係(ex.借人金の有無)
- 管理費等の変更予定の有無
- 共用部分の補修の履歴
- 耐震診断の有無とその結果
また、「管理に係る重要事項調査報告書」を仲介業者を経由して入手する際に、同時に管理規約(総会議事録)や長期修繕計画のコピーなどを添付してもらうことも、最近では一般的になってきています。
「管理に係る重要事項調査報告書」やその他資料は有料です。仲介会社が負担することが一般的です。
検討段階の早い段階で、こうした書類を入手して、管理状況をチェックしておくことが、安心できるマンションを選ぶポイントといえます。
教えてHouzz
中古マンションを購入したことがある方は、管理体制に関してどの程度気にしていたか、体験談をお寄せください。
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