新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素 :床材いろいろ
インテリアコーディネーターとして活動する筆者が、インテリア素材の基本的な知識から裏話まで、アイテムごとに6回の連載でお伝えしていきます。
インテリアを形づくるアイテムは、床や壁などの仕上げ材に始まり、建具、水まわりの設備、照明器具、家具、そしてラグやカーテン・クッションなどのファブリックと、多種多様にわたります。建築と一体化している仕上げ材や設備などは、一度取り付けたらそう簡単に変えることはできません。短くても10年、物によっては50年以上の長い長いお付き合いになるインテリアアイテムです。この記事では、インテリアアイテムの基本的な知識から施工店さんがちょっぴり秘密にしておきたい裏話まで、シリーズ6回でお伝えしていきたいと思います。第1回は床材いろいろ。その種類や仕上げ方についてお話しします。
床材、と言ってまず最初に思い浮かぶものは、やはり木製のフローリングでしょう。多くの新築住宅やマンションなどで使われているのは「複合フローリング」。薄い板を接着剤で貼り合わせた合板の表面に、薄い木材や樹脂シートなどの化粧材を貼ってコーティングしたものです。時間が経っても反ったりねじれたりする心配がなくて、価格もリーズナブル。近年では、見た目が無垢材と変わらないものや傷やへこみに強いもの、高級な木材や大理石を模したプリントのものなど、バリエーションが豊かです。
床材、と言ってまず最初に思い浮かぶものは、やはり木製のフローリングでしょう。多くの新築住宅やマンションなどで使われているのは「複合フローリング」。薄い板を接着剤で貼り合わせた合板の表面に、薄い木材や樹脂シートなどの化粧材を貼ってコーティングしたものです。時間が経っても反ったりねじれたりする心配がなくて、価格もリーズナブル。近年では、見た目が無垢材と変わらないものや傷やへこみに強いもの、高級な木材や大理石を模したプリントのものなど、バリエーションが豊かです。
木製フローリング
複合フローリングの進化は目覚ましいものがありますが、やはり無垢フローリングの持つ木材そのものの温かみはとても魅力的です。
上の事例は無垢材のヘリンボーン張りです。家具をあまりたくさん置かないすっきりとした暮らし方は、床の面積が多く見えるため、床自体が生き生きとした主役になります。
ヘリンボーン張りは45度の角度を保ちながら張っていくので難易度が高く、慣れた職人さんや大工さんでないと対応できないことも。ヘリンボーン張りをやってみたいという場合は、施工店さんに早めに伝えましょう。
複合フローリングの進化は目覚ましいものがありますが、やはり無垢フローリングの持つ木材そのものの温かみはとても魅力的です。
上の事例は無垢材のヘリンボーン張りです。家具をあまりたくさん置かないすっきりとした暮らし方は、床の面積が多く見えるため、床自体が生き生きとした主役になります。
ヘリンボーン張りは45度の角度を保ちながら張っていくので難易度が高く、慣れた職人さんや大工さんでないと対応できないことも。ヘリンボーン張りをやってみたいという場合は、施工店さんに早めに伝えましょう。
左の事例は古材のフローリング材です。時間を経たことにより木材の水分や揮発成分が抜け、かさかさとしたマットな印象。表面の自然なダメージが魅力的です。
一般的なフローリング材は「実(さね)」といって、フローリング同士を組み合わせる凹凸が加工してありますが、古材ではその加工がされていないことも多くあります。
割れやささくれが肌を傷つける可能性もあるので、室内履きを使うことをおすすめします。
一般的なフローリング材は「実(さね)」といって、フローリング同士を組み合わせる凹凸が加工してありますが、古材ではその加工がされていないことも多くあります。
割れやささくれが肌を傷つける可能性もあるので、室内履きを使うことをおすすめします。
カラフルでポップな家具も、つやのある床の上では端正な印象に。
このような美しいつやを保つには、あらかじめフロアコーティングをかけたり、小まめなワックスがけをすることが重要です。
複合フローリングの中には、あらかじめ表面に加工がしてあってコーティングやワックスをかけられないものがありますので、ご注意ください。
このような美しいつやを保つには、あらかじめフロアコーティングをかけたり、小まめなワックスがけをすることが重要です。
複合フローリングの中には、あらかじめ表面に加工がしてあってコーティングやワックスをかけられないものがありますので、ご注意ください。
畳
日本の住まいといえば、やはり畳。縁(へり)のない畳は、すっきりとしてモダンな印象です。
畳の縁は、表面のい草(いぐさ)が折れる部分を保護するためのもの。縁のない畳の場合は、丈夫な上級い草を使用しますので、お値段も高めになります。
フローリングの部屋と段差なしでつなぐ場合、畳とフローリングは厚みが違うので、あらかじめ下地作りをしておくことが重要です。
日本の住まいといえば、やはり畳。縁(へり)のない畳は、すっきりとしてモダンな印象です。
畳の縁は、表面のい草(いぐさ)が折れる部分を保護するためのもの。縁のない畳の場合は、丈夫な上級い草を使用しますので、お値段も高めになります。
フローリングの部屋と段差なしでつなぐ場合、畳とフローリングは厚みが違うので、あらかじめ下地作りをしておくことが重要です。
モルタル
こちらの床仕上げはモルタル。無機質なのにどこか温かい印象があるのは、左官職人による手作業だからでしょうか。
リノベーションの現場で使われることが多い仕上げ方法で、鉄筋コンクリートの構造床の上に直接セメントを塗ります。
昭和40~50年代ごろに建てられた鉄筋コンクリートの建物は、現在のマンションなどに比べて天井が低く作られています。構造床の上に木製の下地作りをせずに直接塗れるモルタルは、天井高さをいっぱいまで稼げるので効果的です。
こちらの床仕上げはモルタル。無機質なのにどこか温かい印象があるのは、左官職人による手作業だからでしょうか。
リノベーションの現場で使われることが多い仕上げ方法で、鉄筋コンクリートの構造床の上に直接セメントを塗ります。
昭和40~50年代ごろに建てられた鉄筋コンクリートの建物は、現在のマンションなどに比べて天井が低く作られています。構造床の上に木製の下地作りをせずに直接塗れるモルタルは、天井高さをいっぱいまで稼げるので効果的です。
石材
高級感ある床材の代表格ともいえるのが、石材、中でも大理石でしょう。お値段は石の希少性や運搬の大変さに比例します。石の種類によるほか、1枚あたりの大きさが大判になるほどアップします。
木材に比べると見た目にもひんやりした印象で、実際に触った時にも冷たく感じます。反面、石は一度温まると遠赤外線を発して木材以上に暖かさを感じるので、床暖房と合わせて使うことをおすすめします。
高級感ある床材の代表格ともいえるのが、石材、中でも大理石でしょう。お値段は石の希少性や運搬の大変さに比例します。石の種類によるほか、1枚あたりの大きさが大判になるほどアップします。
木材に比べると見た目にもひんやりした印象で、実際に触った時にも冷たく感じます。反面、石は一度温まると遠赤外線を発して木材以上に暖かさを感じるので、床暖房と合わせて使うことをおすすめします。
カーペット
足あたりが柔らかく、音を吸収する効果もあるカーペット。フローリングや石材などに比べて滑りにくい素材なので、室内でペットを飼っている方にもおすすめです。
ハウスダストやダニの発生を心配する声も多く聞きますが、カーペットにはハウスダストを吸着して空気中に舞い上げないという効果が。実際、フローリングの部屋とカーペットの部屋とでは、カーペットの方が舞っているほこりの数が少ないそうです。掃除機をこまめにかけて除湿や換気に気をつければ、清潔に使うことができますよ。
足あたりが柔らかく、音を吸収する効果もあるカーペット。フローリングや石材などに比べて滑りにくい素材なので、室内でペットを飼っている方にもおすすめです。
ハウスダストやダニの発生を心配する声も多く聞きますが、カーペットにはハウスダストを吸着して空気中に舞い上げないという効果が。実際、フローリングの部屋とカーペットの部屋とでは、カーペットの方が舞っているほこりの数が少ないそうです。掃除機をこまめにかけて除湿や換気に気をつければ、清潔に使うことができますよ。
タイルカーペット
それでもやはりカーペットは汚れが心配という方には、タイルカーペットがおすすめです。大きさは30~60cm角くらい。1枚ずつ外すことが可能なので、汚れたら部分的な貼り替えやクリーニングができます。
フローリングの上に直接置くだけのすべり止め付きのタイプもありますので、そちらはさらに気軽に試してみることができます。
それでもやはりカーペットは汚れが心配という方には、タイルカーペットがおすすめです。大きさは30~60cm角くらい。1枚ずつ外すことが可能なので、汚れたら部分的な貼り替えやクリーニングができます。
フローリングの上に直接置くだけのすべり止め付きのタイプもありますので、そちらはさらに気軽に試してみることができます。
コルク
コルクもまた、足あたりが柔らかくて吸音性のある素材です。水に強く断熱性があって暖かく感じるという性質から、キッチンや洗面所、脱衣所など水まわりにも向いています。
色合いはコルク本来の薄い茶色~オレンジ色、茶色の着色のほか、ほんのりと白っぽく着色したものなどがあります。
コルクもまた、足あたりが柔らかくて吸音性のある素材です。水に強く断熱性があって暖かく感じるという性質から、キッチンや洗面所、脱衣所など水まわりにも向いています。
色合いはコルク本来の薄い茶色~オレンジ色、茶色の着色のほか、ほんのりと白っぽく着色したものなどがあります。
樹脂タイル
上の事例は樹脂タイル。水や洗剤などに強いため、水まわりへの採用が主流です。デザインはポップな印象の単色のものから、フローリングやセラミックタイルと見間違えるようなプリントのものまでと多様です。
上の事例は樹脂タイル。水や洗剤などに強いため、水まわりへの採用が主流です。デザインはポップな印象の単色のものから、フローリングやセラミックタイルと見間違えるようなプリントのものまでと多様です。
また樹脂タイルは床材の中ではかなり薄く、厚さ3mm程度。この事例のように、古くなった既存のフローリングの上から張ることができるので、リノベーションの現場でも活躍しています。敷き方次第でさまざまなデザインを楽しむことができるのも魅力のひとつです。
セラミックタイル
セラミックタイルは樹脂タイル同様デザインが豊富。お気に入りのデザインに出会えたら、ぜひとも採用してみたいアイテムです。
写真はバスルームの事例ですが、もちろんリビングや廊下などに使うのも素敵です。注意点はタイルごとにそれぞれ用途が決まっているということ。どんなに気に入ったタイルでも、つるつるしているものは水に濡れると滑るので、水まわりの床には不向き。選ぶときには用途を確認することが重要です。
目地のお掃除が大変ではないかと採用をあきらめるケースもありますが、どんな仕上げ材を選んでも、美しい住まいを保つために掃除とお手入れは欠かせないもの。汚れが落としやすい水まわり用の目地も販売されています。惚れ込んだものならばチャレンジするだけの価値はありますよ。
セラミックタイルは樹脂タイル同様デザインが豊富。お気に入りのデザインに出会えたら、ぜひとも採用してみたいアイテムです。
写真はバスルームの事例ですが、もちろんリビングや廊下などに使うのも素敵です。注意点はタイルごとにそれぞれ用途が決まっているということ。どんなに気に入ったタイルでも、つるつるしているものは水に濡れると滑るので、水まわりの床には不向き。選ぶときには用途を確認することが重要です。
目地のお掃除が大変ではないかと採用をあきらめるケースもありますが、どんな仕上げ材を選んでも、美しい住まいを保つために掃除とお手入れは欠かせないもの。汚れが落としやすい水まわり用の目地も販売されています。惚れ込んだものならばチャレンジするだけの価値はありますよ。
その他の床材
最後に、ちょっと変わった仕上げ材を2つご紹介します。
上の事例は本来は床の下地となる構造用合板を、上に何も張らずにそのままむき出しにしたケースです。シンプルで男性的な空間に仕上がっています。
天井の高さのとれない屋根裏空間なので、仕上げ材を張らないことが高さを確保するうえでも効果的になっています。
最後に、ちょっと変わった仕上げ材を2つご紹介します。
上の事例は本来は床の下地となる構造用合板を、上に何も張らずにそのままむき出しにしたケースです。シンプルで男性的な空間に仕上がっています。
天井の高さのとれない屋根裏空間なので、仕上げ材を張らないことが高さを確保するうえでも効果的になっています。
この事例は、窓の手前の部分に半透明の樹脂製グレーチングが使われています。グレーチングとは側溝など水を流す場所にのせる網状やすのこ状の蓋のことですが、光や空気を通す床材として住宅の中でも使われるようになりました。
上階から入った光が下階へ、下階で温まった空気が上階へ。人の目線や声も上下階で通じるため、空間がより立体的で豊かなものになります。
新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素 。次回は、壁と天井の仕上げ材についてご紹介します。
上階から入った光が下階へ、下階で温まった空気が上階へ。人の目線や声も上下階で通じるため、空間がより立体的で豊かなものになります。
新築も、リフォームも。知っておきたいインテリアの構成要素 。次回は、壁と天井の仕上げ材についてご紹介します。
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床材だけでも本当に雰囲気が変わりますね。非常に勉強になる記事をありがとうございます。私も現在、まさしく白い石材の部屋(賃貸です)の空間づくりに取り掛かろうとしています。石素材の部屋というのが初めてなので、最初は木製フローリングのタイルを敷いたりしようかと考えていたのですが、もしかするとラグがあるだけでも雰囲気は変わるのかもしれないと思い始めています。
それぞれの床材別の空間事例をもっとHouzzで集めてみたいと思いました!
小林千尋さま
ありがとうございます。なるべくわかりやすく、一般のユーザーの方が興味を持って楽しんでもらえたらいいなと考えて記事を書いています。
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