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「コト」から始める家づくり:集める、飾る、悦に入る
〈ブルースタジオ〉石井健による連載第2回は、「集める」「飾る」「悦に入る」というキーワードのもとに、収納や飾り棚、コレクターズルームについて語ります。
Takeshi Ishii
2017年3月7日
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。... もっと見る
第1回では「料理をする」という「コト」を出発点に、キッチンから家づくりを考えました。連載第2回となる今回は、「集める」「飾る」「悦に入る」というキーワードのもとに、収納や飾り棚、コレクターズルームに着目しました。
極力ものを持つことを抑える「ミニマリズム」という考えがここ数年流行していますが、現実には「ものに囲まれて暮らしたい」という人も多いはずです。好きなもの、こだわりのものを集めるのは、人間の本性と言えるでしょう。ものへのこだわりが強い人は、家づくりにもこだわりを持つ人が多いと思います。家と“モノ”との関係が“コト”へと昇華するとき、住む人の暮らしを映し出す鏡のように感じます。
極力ものを持つことを抑える「ミニマリズム」という考えがここ数年流行していますが、現実には「ものに囲まれて暮らしたい」という人も多いはずです。好きなもの、こだわりのものを集めるのは、人間の本性と言えるでしょう。ものへのこだわりが強い人は、家づくりにもこだわりを持つ人が多いと思います。家と“モノ”との関係が“コト”へと昇華するとき、住む人の暮らしを映し出す鏡のように感じます。
圧倒的な物量を収める
収納は、ものを収めるという機能性にとどまらず、靴が一寸も乱れずビシッと収まっているような例のように、コレクションを美しく楽しく見せるという側面があります。数が揃い、さらにその人の独自の視点や知識が加わることによって、立派なコレクションと呼べるようになります。
収納は、ものを収めるという機能性にとどまらず、靴が一寸も乱れずビシッと収まっているような例のように、コレクションを美しく楽しく見せるという側面があります。数が揃い、さらにその人の独自の視点や知識が加わることによって、立派なコレクションと呼べるようになります。
特に、CD、服、スニーカーは流行があるので、その時代や背景、流行を感じ取ることができるのが、またコレクター魂をくすぐるのでしょう。
その一方で、本やCDは、“集める”という感覚が希薄なものかもしれません。どちらかと言えば、“集まってくる”もの、“たぐり寄せる”もの。自分が磁石になるような感覚になりませんか?
その一方で、本やCDは、“集める”という感覚が希薄なものかもしれません。どちらかと言えば、“集まってくる”もの、“たぐり寄せる”もの。自分が磁石になるような感覚になりませんか?
こちらは、図書館のような膨大な蔵書を収めたいという施主の希望があり、〈ブルースタジオ〉が手がけたものです。なんと3000冊もの本が収まっています。図書館で本を片付ける時に使うトロリーをつくったり、図書カードを設置したりと、住まい手のストイックさを感じます。蔵書の中で暮らしている感覚になります。
センスよく散らかす
集めたものは並べるだけでなく、センスよく散らかすのもアリ。集まってきたものに、その人のセンスが見られます。本人の意識で散らかしているのではなく、もののチカラがそうさせていると感じさせます。1個1個がいいものだから、ぐしゃっと置いてもかっこよく見えます。
この写真は建築家の阿部勤さんの自邸ですが、阿部さんの好きなオブジェや50脚もの椅子が置かれています。きちんと行儀よく並べて飾るよりも、雑然と置いていたほうがかっこよく見えるのです。
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この写真は建築家の阿部勤さんの自邸ですが、阿部さんの好きなオブジェや50脚もの椅子が置かれています。きちんと行儀よく並べて飾るよりも、雑然と置いていたほうがかっこよく見えるのです。
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「悦に入る」ということ
特に男性のスニーカー、女性のハイヒールなどは、玄関のシューボックスにしまい込むのではなく、リビングなどに飾り棚を設置して日常的に目に入るようにして「悦に入る」、という人も多いはず。誰かに見せるためではなく、自分が満足するために。靴そのものの美しさはもちろん、いくつも並べることで満たされる “自分だけの萌え” がそこにはあるはずです。
特に男性のスニーカー、女性のハイヒールなどは、玄関のシューボックスにしまい込むのではなく、リビングなどに飾り棚を設置して日常的に目に入るようにして「悦に入る」、という人も多いはず。誰かに見せるためではなく、自分が満足するために。靴そのものの美しさはもちろん、いくつも並べることで満たされる “自分だけの萌え” がそこにはあるはずです。
「悦に入る」の究極タイプ。ダイニング・キッチンのスペースに車を迎え入れています。好きな車を眺めるだけでなく、乗ることもできて、キッチンでつくった食事を食べることもできて、テレビを見るときも車に乗って……。駐車スペースよりもダイニング・キッチンスペースのほうが狭いことにも注目。
家の中に博物館をつくる
海洋生物の標本をジャーに入れて、たくさん並べた書斎。アートではないけれど、並べるとアーティスティックに見えます。一見バラバラなようで、ひとつの共通項があって並んでいるというのがおもしろいところです。
海洋生物の標本をジャーに入れて、たくさん並べた書斎。アートではないけれど、並べるとアーティスティックに見えます。一見バラバラなようで、ひとつの共通項があって並んでいるというのがおもしろいところです。
この標本たちは、透けたときのシルエットまで計算されていて、裏側から見ても美しくディスプレイされて見えます。
ビンテージの毛布やブランケットのコレクション。棚に載せたオブジェや、壁に取り付けられたインテリアもビンテージで統一されています。このように、集めているものとインテリアの親和性が高い事例は魅力的に思いました。
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捨てられない、身近なものも飾り方次第でアートになります。こちらは、アメリカの人気俳優アシュトン・カッチャーさんが、母の日のサプライズプレゼントのためにリフォームした家。壁に飾られているのはアシュトンさんと彼の姉、双子の弟が着ていたガールスカウト、ボーイスカウトのユニフォーム。自分や子どもが幼いころ大切にしていたもの、記念のものをどう収納するかお困りの方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
品質を保ちながら集める
光や温度に弱いワインは、見せるように並べると品質を落とすことになります。コンディションを保つために、コレクションとしてニヤニヤ楽しみながらも、品質を管理する。光、温度も含めた設計です。
光や温度に弱いワインは、見せるように並べると品質を落とすことになります。コンディションを保つために、コレクションとしてニヤニヤ楽しみながらも、品質を管理する。光、温度も含めた設計です。
コレクションを家に埋め込む
この住まい手は、把手(ノブ)収集家で、集めた把手を家づくりのときにひとつずつ引き出しに取り付けました。自らのコレクションを家に埋め込んでしまう。家の一部にしてしまう。まさしく“コレクションに溺れる”という感覚でしょう。
この住まい手は、把手(ノブ)収集家で、集めた把手を家づくりのときにひとつずつ引き出しに取り付けました。自らのコレクションを家に埋め込んでしまう。家の一部にしてしまう。まさしく“コレクションに溺れる”という感覚でしょう。
コレクションそのものに住む
部屋を覆い尽くす、コカ・コーラのアンティークのサインや、赤いクラシックカー、ノスタルジックな飲食店のシート。住まい手は60年代のセンスに憧れを抱いているのでしょうか。まるで博物館のようです。“コレクションを家に埋め込む”と前述しましたが、これは、“コレクションそのものに住む”ということになるでしょう。自分もコレクションの一部に取り込まれるという極み。ものと空間の境界が曖昧になるほどに、住む人のストーリーがよりよく映し出された家になるのではないかと感じます。
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教えてHouzz
愛するコレクションをどのように収納していますか? 見えるように飾っていますか? それとも、こっそりとしまい込んでいますか? コメント欄で共有しましょう。
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