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住まいとウェルビーイングを繋ぐアイデア集【ロンドン・デザイン・フェスティバル2022】
質感のある仕上げ、そしてウェルビーイングとサステイナビリティが注目を集めた今年のイベントは、ポジティブで明るいムードに包まれていました。
Amanda Pollard
2022年9月29日
今秋のロンドン・デザイン・フェスティバル(2022年9月17日から25日まで開催)では、市内各地で数多くのイベントがおこなわれました。とりわけ「自然とデザインの関係性」は多くのデザイナーにとって最大の関心事でした。自然界にある複雑なパターンに美を見出し、それらを出発点とした仕上材や、照明、家具が多く見られました。
今回のデザイン・フェスティバルで見つけた8つのトレンドをご紹介します。
今回のデザイン・フェスティバルで見つけた8つのトレンドをご紹介します。
家具シリーズEdge Free(Pearson Lloyo社、製作:Modus社)
仕事場と住まいの共存
私たち全員がフルタイムの在宅勤務を続けているというわけではありませんが、だからといってまた昔のように週5日会社に出勤するという兆しは今のところありません。
デザイナーたちは、自宅における「仕事場と家庭の共存」という状況に対応した家具のデザインを考え始めています。Arper社はClerkenwell Design Trail(クラーケンウェル・デザイン・トレイル)でおこなわれた展示「Project of Living」で、 ピーター・クンツがデザインしたAeeriテーブルなどを展示しました。細身で軽さが特徴のこのテーブルは、動かしやすく、食事用にも仕事用にも使うことができます。
同会場ではPearson Lloyd社のフレキシブルなシーティングシステム、Edge Freeシリーズ(写真)もお披露目されました。間仕切り、ラップトップテーブル、ローテーブル、オットマンに加え、電源も一体化された組み替え可能な仕組みになっています。またLigne Roset Westend社は、フィリップ・ニグロによるスクリーンキャビネットMarechiaroを展示しました。これは片面に本棚、もう片面に薄い板を美しい流線状に配置したもので、ワークスペースの仕切りにもなります。
仕事場と住まいの共存
私たち全員がフルタイムの在宅勤務を続けているというわけではありませんが、だからといってまた昔のように週5日会社に出勤するという兆しは今のところありません。
デザイナーたちは、自宅における「仕事場と家庭の共存」という状況に対応した家具のデザインを考え始めています。Arper社はClerkenwell Design Trail(クラーケンウェル・デザイン・トレイル)でおこなわれた展示「Project of Living」で、 ピーター・クンツがデザインしたAeeriテーブルなどを展示しました。細身で軽さが特徴のこのテーブルは、動かしやすく、食事用にも仕事用にも使うことができます。
同会場ではPearson Lloyd社のフレキシブルなシーティングシステム、Edge Freeシリーズ(写真)もお披露目されました。間仕切り、ラップトップテーブル、ローテーブル、オットマンに加え、電源も一体化された組み替え可能な仕組みになっています。またLigne Roset Westend社は、フィリップ・ニグロによるスクリーンキャビネットMarechiaroを展示しました。これは片面に本棚、もう片面に薄い板を美しい流線状に配置したもので、ワークスペースの仕切りにもなります。
Arenophileタイル(Studio Sahil社)
触覚を刺激するテクスチャー
クラーケンウェルのSolus Ceramincs社で開催された、「マテリアルが私たちに及ぼすポジティブな経験につい)」というパネルディスカッションでは、最近広く認識されつつある、身の回りの物体に対する見方が人間の感覚に影響を与える、という考えをテーマに議論がおこなわれました。議論の中では特に、マテリアルによる身体感覚への影響やウェルビーイングへの効果が話し合われました。
新製品の発表でも触り心地を追求したデザインが多く、触感に対する関心の高さは一目瞭然でした。Studio Sahil社がショーディッチ・デザイン・トライアングルでおこなった展示「Coastal Myths(海岸神話)」では、写真のArenophileタイルをはじめとする砂を閉じ込めたガラス製品が並んでいました。
The Blue Mountain Schoolでおこなわれた、建築事務所GRAS社の「The Gathering Hand」では家具やオブジェクトが展示されたほか、さまざまな興味深いテクスチャーを見ることができました。ネイモン・ガストンにより制作されたCarpenter’s Table には、Studio Corkinho社のコルクタイルの天板が使われています。この天板は質感をより引き出すために熱加工が施されています。また、Albion Stone社のポートランド産の石を使用した製品ではブラスト加工により表面の凹凸が表現されたりと、素材感にこだわった仕上がりになっています。
触覚を刺激するテクスチャー
クラーケンウェルのSolus Ceramincs社で開催された、「マテリアルが私たちに及ぼすポジティブな経験につい)」というパネルディスカッションでは、最近広く認識されつつある、身の回りの物体に対する見方が人間の感覚に影響を与える、という考えをテーマに議論がおこなわれました。議論の中では特に、マテリアルによる身体感覚への影響やウェルビーイングへの効果が話し合われました。
新製品の発表でも触り心地を追求したデザインが多く、触感に対する関心の高さは一目瞭然でした。Studio Sahil社がショーディッチ・デザイン・トライアングルでおこなった展示「Coastal Myths(海岸神話)」では、写真のArenophileタイルをはじめとする砂を閉じ込めたガラス製品が並んでいました。
The Blue Mountain Schoolでおこなわれた、建築事務所GRAS社の「The Gathering Hand」では家具やオブジェクトが展示されたほか、さまざまな興味深いテクスチャーを見ることができました。ネイモン・ガストンにより制作されたCarpenter’s Table には、Studio Corkinho社のコルクタイルの天板が使われています。この天板は質感をより引き出すために熱加工が施されています。また、Albion Stone社のポートランド産の石を使用した製品ではブラスト加工により表面の凹凸が表現されたりと、素材感にこだわった仕上がりになっています。
Cocoonライト(HagenHinderdael社)
自然の模倣
住まいにおけるバイオフィリア(人間は本能的に自然との繋がりを求めるという考え) というコンセプトはすでに一般的になっていますが、「バイオミミクリー」というそれほど知られていないのではないでしょうか。背景には、自然界の精緻で巧妙に作られた仕組みをデザインに応用しようという動きがあります。ゆくゆくは、この考え方が自然に対するより深い理解やサステイナビリティへの関心を高めるきっかけになるのではないでしょうか。
今年のイベントでおこなわれた「自然の建築家たち」展では、参加した建築家らはチェルシー・エリアに点在するインスタレーションにバイオミミクリーを用いることとなりました。例えば、NOOMA Studio社による「Coral Heights」はサンゴ礁の揺らぎから着想したタワーを、またStudio Aki社の「Veil House」は白いベールを被ったように見えるその見た目から森の貴婦人とも呼ばれるキヌガサダケにヒントを得てデザインされました。
バンクサイドで開かれた「マテリアルが重要」展ではHagenHinderdael社の新作であるCocoonライト(写真)が披露されました。3Dプリントされたライトは100%分解可能であり、名前の通り繭の形を模したデザインとなっています。
自然の模倣
住まいにおけるバイオフィリア(人間は本能的に自然との繋がりを求めるという考え) というコンセプトはすでに一般的になっていますが、「バイオミミクリー」というそれほど知られていないのではないでしょうか。背景には、自然界の精緻で巧妙に作られた仕組みをデザインに応用しようという動きがあります。ゆくゆくは、この考え方が自然に対するより深い理解やサステイナビリティへの関心を高めるきっかけになるのではないでしょうか。
今年のイベントでおこなわれた「自然の建築家たち」展では、参加した建築家らはチェルシー・エリアに点在するインスタレーションにバイオミミクリーを用いることとなりました。例えば、NOOMA Studio社による「Coral Heights」はサンゴ礁の揺らぎから着想したタワーを、またStudio Aki社の「Veil House」は白いベールを被ったように見えるその見た目から森の貴婦人とも呼ばれるキヌガサダケにヒントを得てデザインされました。
バンクサイドで開かれた「マテリアルが重要」展ではHagenHinderdael社の新作であるCocoonライト(写真)が披露されました。3Dプリントされたライトは100%分解可能であり、名前の通り繭の形を模したデザインとなっています。
Divine Inspirationコレクションの照明器具(リー・ブルーム)
落ち着きのある照明
今年のフェスティバルでは、繊細に揺れるペンダントライトをはじめ、華麗で美しい照明家具に溢れていました。例えば、Haberdashery社はSand & Seaシリーズの新たなラインナップを、またリー・ブルームはDivine Inspiration(写真)というコレクションを発表しました。
照明が私たちの意識に与える影響を踏まえて、From The Sky社が発表した新製品は調光可能なLEDを採用するとともに、森の中のような自然環境を模倣するために光を反射・透過させるよう表面処理が施されています。こうしたデザインの背景には、自然からのインスピレーションをもとにデザインされた照明にはリラックス効果が生まれるという考えがあります。
落ち着きのある照明
今年のフェスティバルでは、繊細に揺れるペンダントライトをはじめ、華麗で美しい照明家具に溢れていました。例えば、Haberdashery社はSand & Seaシリーズの新たなラインナップを、またリー・ブルームはDivine Inspiration(写真)というコレクションを発表しました。
照明が私たちの意識に与える影響を踏まえて、From The Sky社が発表した新製品は調光可能なLEDを採用するとともに、森の中のような自然環境を模倣するために光を反射・透過させるよう表面処理が施されています。こうしたデザインの背景には、自然からのインスピレーションをもとにデザインされた照明にはリラックス効果が生まれるという考えがあります。
交換可能なカバー付モジュラーソファー(Cozmo社)
長持ちする製品
住まいのリノベーションにおいてゴミを削減しようという取り組みに触発されたデザイナーたちは、製品の寿命を延ばす新たな方法を模索しています。V&A美術館は、このような状況に対してBBCで放送されているThe Repair Shopという番組をヒントに、独自の回答を示しました。「RはリペアのR」というそのインスタレーションは、壊れたアイテムを公募し、イギリスとシンガポールのデザイナーが修理して再び命を吹き込むというものです。
少し違ったアプローチで言うと、 Cozmo社のモジュラーソファー(写真)のためにデザインされたシートカバーも、ゴミを減らし製品の寿命を伸ばすという課題に対する回答と言えるでしょう。「ジャケット」と名づけられたそのシートカバーは、ソファー自体を変えなくともさまざまな色やパターンで室内の雰囲気を変えることができます。
長持ちする製品
住まいのリノベーションにおいてゴミを削減しようという取り組みに触発されたデザイナーたちは、製品の寿命を延ばす新たな方法を模索しています。V&A美術館は、このような状況に対してBBCで放送されているThe Repair Shopという番組をヒントに、独自の回答を示しました。「RはリペアのR」というそのインスタレーションは、壊れたアイテムを公募し、イギリスとシンガポールのデザイナーが修理して再び命を吹き込むというものです。
少し違ったアプローチで言うと、 Cozmo社のモジュラーソファー(写真)のためにデザインされたシートカバーも、ゴミを減らし製品の寿命を伸ばすという課題に対する回答と言えるでしょう。「ジャケット」と名づけられたそのシートカバーは、ソファー自体を変えなくともさまざまな色やパターンで室内の雰囲気を変えることができます。
3Dプリント製のCoralランプ(Blast Studio社)
採掘される都市
デザインの世界では、循環型経済が加速しており、その中のひとつがアーバンマイニング(都市鉱山)の活用です。これは、都市でゴミとして廃棄される電化製品などから有用な資源をリサイクルして有効活用しようという考えです。
Pareid Architecture社のデボラ・ロペスとハディン・シャーベルによるクレバーなインスタレーション「都市鉱山の未来」は、都市鉱山というコンセプト自体を新たな次元へと昇華させました。美容院でゴミとなった髪の毛を集めて、彫刻と建築の間に位置するような作品に仕上げたもので、廃棄物を用いて一体何ができるのか、そして建築や室内空間に活用できるかどうかを鑑賞者に問いかけています。
他には、Blast Studio社が3Dプリントされた家具やランプ(写真)、またロンドン市内にあったテイクアウト用のコーヒーカップやダンボールを使ったオーナメントを発表しました。製作チームはこうした廃棄物と一緒に菌糸をミックスしました。そうすることで、菌糸がそれを食べて滑らかですべすべとしたテクスチャーを持つサステナブルなバイオマテリアルへと変わるのです。
採掘される都市
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Pareid Architecture社のデボラ・ロペスとハディン・シャーベルによるクレバーなインスタレーション「都市鉱山の未来」は、都市鉱山というコンセプト自体を新たな次元へと昇華させました。美容院でゴミとなった髪の毛を集めて、彫刻と建築の間に位置するような作品に仕上げたもので、廃棄物を用いて一体何ができるのか、そして建築や室内空間に活用できるかどうかを鑑賞者に問いかけています。
他には、Blast Studio社が3Dプリントされた家具やランプ(写真)、またロンドン市内にあったテイクアウト用のコーヒーカップやダンボールを使ったオーナメントを発表しました。製作チームはこうした廃棄物と一緒に菌糸をミックスしました。そうすることで、菌糸がそれを食べて滑らかですべすべとしたテクスチャーを持つサステナブルなバイオマテリアルへと変わるのです。
ガラスのオブジェ(Charles Burnand Gallery社)
ガラス製品への関心
私たちの生活に欠かすことができない材料であるとして、2022年は国際ガラス年とすることが国連で定められました。これに合わせて、Charles Burnand Gallery社はガラス職人から家具デザイナーまで、ガラスを中心としたオブジェをキュレーションしました(写真)。
同様に、V&A美術館のジョン・マデイスキー・ガーデンでは吹きガラスのパフォーマンスがおこなわれました。また、ヨーロッパのデザインスタジオSé社は、イニ・アーキボンがヴェネチアガラスを使って作ったGaeaペンダントの制作風景のビデオを公開しました。
ガラス製品への関心
私たちの生活に欠かすことができない材料であるとして、2022年は国際ガラス年とすることが国連で定められました。これに合わせて、Charles Burnand Gallery社はガラス職人から家具デザイナーまで、ガラスを中心としたオブジェをキュレーションしました(写真)。
同様に、V&A美術館のジョン・マデイスキー・ガーデンでは吹きガラスのパフォーマンスがおこなわれました。また、ヨーロッパのデザインスタジオSé社は、イニ・アーキボンがヴェネチアガラスを使って作ったGaeaペンダントの制作風景のビデオを公開しました。
Paper家具コレクション(David Horan(デイヴィッド・ホラン)とBéton Brut Gallery社による)
積極的に取り入れる世界の職人技
イギリスとシンガポールの文化をまたいだコラボーレションとなったV&A美術館による「RはリペアのR」展から、日本の伝統的な笠間焼の陶芸家によるショーなど、今年は国際的な工芸品のフェスティバルとなりました。
例えば、デイヴィッド・ホランのPaper家具コレクション(写真)は、手作りの紙によってできたレイヤーを特徴としており、それはデコパージュと呼ばれる紙の切り抜き絵や日本の民藝運動から影響を受けているそうです。他には、インドのデザインスタジオThe Architecture Story社は古代の鏡づくりのプロセスにからインスピレーションを得た「天空の巣」という大きなインスタレーションを発表しました。
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