「サステナブル」を意識した家づくりを依頼できる建築家の見極め方
自然環境に負担をかけないサステナブルな家づくりは、想いを同じくする建築家を探すことから始まります。
気候変動や地球温暖化など、環境問題に対する意識が世界中で高まるなか、「サステナブル」や「持続可能性」といったキーワードが、ますます大切になってきています。サステナブルな家づくりに興味はあっても、どこからはじめて良いか分からない人もいるのではないでしょうか?今回は、「サステナブル」をテーマに活動するHouzzの専門家4名に、サステナブルな家づくりへの想いや工夫、気をつけておくべきポイントなど、「サステナブル」を意識した家づくりをする建築家の見つけ方など、お話を聞きました。
話をしてくれた4人の建築家たち:
お話を聞いた建築家:大槻香代子さん(BAKOKOデザインディベロップメント)、北野彰作さん(北野彰作建築研究所)、栗原守さん(有限会社光設計一級建築士事務所)、橋垣史子さん(いろは設計室)
話をしてくれた4人の建築家たち:
お話を聞いた建築家:大槻香代子さん(BAKOKOデザインディベロップメント)、北野彰作さん(北野彰作建築研究所)、栗原守さん(有限会社光設計一級建築士事務所)、橋垣史子さん(いろは設計室)
サステナブルを意識した建築家
サステナブルの大切さが社会に認知されつつあるなか、サステナブルな家づくりに寄り添う専門家は、日本にも数多くいます。
ロンドンで建築家として活動していたBAKOKOデザインディベロップメントの建築家・大槻さんは、気候変動や地球温暖化に対する警告が世界中に発信されるなか、サステナブルという概念が建築業界でも意識されるようになったと話します。
「日本古来の自然素材で建てられた家づくりを学ぶ為にロンドンから日本に戻りましたが、日本で主に使用されている内装建材(床材・クロス等)の多くが化学製品である事に、とてもショックを受けました。シックハウス症候群などを引き起こす化学製品で囲まれた住空間で過ごすよりも、天然木の床・天然紙でできた壁紙・漆喰壁などの自然素材に囲まれた住空間で生活する方が、住む人の心身の健全さを保てます」
建築家を探す
サステナブルの大切さが社会に認知されつつあるなか、サステナブルな家づくりに寄り添う専門家は、日本にも数多くいます。
ロンドンで建築家として活動していたBAKOKOデザインディベロップメントの建築家・大槻さんは、気候変動や地球温暖化に対する警告が世界中に発信されるなか、サステナブルという概念が建築業界でも意識されるようになったと話します。
「日本古来の自然素材で建てられた家づくりを学ぶ為にロンドンから日本に戻りましたが、日本で主に使用されている内装建材(床材・クロス等)の多くが化学製品である事に、とてもショックを受けました。シックハウス症候群などを引き起こす化学製品で囲まれた住空間で過ごすよりも、天然木の床・天然紙でできた壁紙・漆喰壁などの自然素材に囲まれた住空間で生活する方が、住む人の心身の健全さを保てます」
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写真撮影:大槻茂
橋垣さんは、「もともとこの仕事をする前からあまりエアコンなどの空調が好きではなく、素材についても工業的な建材よりもムクの木や自然素材が好きでした」と話します。「仕事を始めてから、日本の家の寿命の短さや廃棄の際の問題、化学製品が人の身体や環境に及ぼす影響などを詳しく知り、サステナブルな家づくりを意識しはじめました」
北野彰作建築研究所の建築家・北野彰作さんは、築300年近い沖縄の古民家・中村家住宅を2007年に初めて訪れてから、地域の素材を用い、周辺環境に適応したサステナブルな家づくりを意識し始め2019年にも再訪した、と話します。
橋垣さんは、「もともとこの仕事をする前からあまりエアコンなどの空調が好きではなく、素材についても工業的な建材よりもムクの木や自然素材が好きでした」と話します。「仕事を始めてから、日本の家の寿命の短さや廃棄の際の問題、化学製品が人の身体や環境に及ぼす影響などを詳しく知り、サステナブルな家づくりを意識しはじめました」
北野彰作建築研究所の建築家・北野彰作さんは、築300年近い沖縄の古民家・中村家住宅を2007年に初めて訪れてから、地域の素材を用い、周辺環境に適応したサステナブルな家づくりを意識し始め2019年にも再訪した、と話します。
サステナブルを意識した建築家が、家づくりで気をつけていること
お話を聞いた4人の建築家の共通点として、以下のような実践が浮き彫りになりました。
お話を聞いた4人の建築家の共通点として、以下のような実践が浮き彫りになりました。
- テクノロジーや設備に頼らず、自然の摂理に適った方法でデザインする
大槻さんは、照明や空調などでできるだけ電力を使わないように、自然光が効率良く取り入れられる位置や角度を工夫しています。「夏は強い直射日光が室内に入り込むのを防ぎ、逆に冬は採光を最大限に取り入れられるような屋根・庇・軒・日除けのデザインを取り入れる事が重要です」 - 環境に負担のない建材や自然素材を使用する
「時間が経つにつれて劣化して悪くなっていく素材ではなく、自然素材のように時間とともに味わいが出てよくなっていく素材を使うことで、長く大切にしていこうという気持ちになります」と橋垣さんは語ります。「構造や断熱性能が高くて省エネルギーな家であっても、住む人の好みや暮らしにあっていない家では、手入れをしながら長く住んでいくということにはなりません」 - 長持ちする、住み継ぐことを前提とした家づくり
「急いで作るのではなく、じっくりと時間をかけて設計や工事をすることも大切」だと、栗原さんは説明します。長く住まう家だからこそ、時間をかけて納得できる家づくりをすることが大切です。
素材の選び方
サステナブルな家づくりの前提となる、エコな素材についても、お話をお聞きしました。
栗原さんは、「呼吸する機能のある自然素材を選ぶようにしています」と説明します。「『呼吸する』ということは、吸放湿をするという意味です。素材の持つ吸放湿機能により、室内の湿気がコントロールされ、室内を快適な状態にできます」
です。」大槻さんは説明します。
「日本古来の自然素材を建材に使用する事により、日本の林
業や和紙の生産業などの復興にも繋がりますので、自然建材を使用する事は環境に対してだ
けでなく、経済的にもサステイナブルな貢献ができます」
サステナブルな家づくりの前提となる、エコな素材についても、お話をお聞きしました。
- 石油由来ではなく、土に還る素材
栗原さんは、「呼吸する機能のある自然素材を選ぶようにしています」と説明します。「『呼吸する』ということは、吸放湿をするという意味です。素材の持つ吸放湿機能により、室内の湿気がコントロールされ、室内を快適な状態にできます」
- 地域の素材、日本古来の自然素材を選ぶ
です。」大槻さんは説明します。
「日本古来の自然素材を建材に使用する事により、日本の林
業や和紙の生産業などの復興にも繋がりますので、自然建材を使用する事は環境に対してだ
けでなく、経済的にもサステイナブルな貢献ができます」
- 表に見えない素材にも気を配る
サステナブルな素材として、大槻さんは、以下のような建材を紹介してくれました。
- シラスを主原料にした外壁塗材
多孔質で複雑な形状のシラスの粒子を利用した、完全防水の自然建材です。
- 無垢フローリング
科学的に加工されていないので、木材が本来持つ調湿性、抗菌性、手触りといった風合いにも優れています。
- 内装の壁の仕上げ材で代表的な珪藻土
海底のプランクトンが化石となったもので、粒子一つの中に多数の気泡があり、その気泡が室内の湿気を調整するため、湿気を原因としたカビの発生を抑えられるという性質があります。さらに空気中の有害物質を吸着するなどの効果がありますので、内装仕上げ材にもってこいの素材です。
- ドイツ生まれのウッドチップ入り壁紙
木屑と再生紙で構成され、リサイクル性に優れた環境に優しい自然素材です。珪藻土などの塗り壁と同様に空気や湿気に対する浸透性に優れ、呼吸する壁紙として調湿機能も⻑けています。木屑と再生紙を圧着して生成するため、接着剤なども一切使用していない自然素材建材です。 - 新たな自然素材
酸素を取り入れ、炭酸ガス(二酸化炭素)を排出する性能のある卵の殻を原料にしたエッグウォール、調湿・抗菌・断熱・化学物質の吸着分解の効果のあるホタテの殻を原料にしたあわせなどの新しい自然建材も開発されています。
エシカル思考、サステナブル思考な建築家の探し方、見極め方
インターネットが普及した現代では、建築家を探すこと自体は難しくありません。一方で、「サステナブル」をキーワードに検索しても、数が多すぎて戸惑ってしまうこともあるでしょう。エシカル思考、サステイナブル思考で、自分にぴったりな建築家を見つけるために、4人は以下の方法をおすすめしています。
「ヴィーガンなインテリア」はサステナブル消費の最新トレンド?
インターネットが普及した現代では、建築家を探すこと自体は難しくありません。一方で、「サステナブル」をキーワードに検索しても、数が多すぎて戸惑ってしまうこともあるでしょう。エシカル思考、サステイナブル思考で、自分にぴったりな建築家を見つけるために、4人は以下の方法をおすすめしています。
- 設計事例を参考にする
Houzzなどのプラットフォームから、気になるキーワードで建築家を探し、過去の事例写真や、使われている素材などに目を通します。「建築家の作品にはその建築家の思考・価値観・メッセージが込められています」と大槻さん。「気候変動・地球温暖化の問題が警告されている近年、エシカル思考やサステイナブル思考をコンセプトにした建築物も多くなってきました。」 - ブログなどの情報発信を参考にする
住宅の施工事例の写真だけでなく、家づくりに対する思いや考え方、サステイナブルの取り組みなどの情報をブログなどで発信している建築家もいるので、参考にしてみると良いでしょう。「家づくりへの思いや価値観が同じと思えるような建築家を探すようにすると、いい出会いにつながります」と栗原さんは話します。
「ヴィーガンなインテリア」はサステナブル消費の最新トレンド?
気になる費用は?
サステナブル、オーガニックといえば少し敷居が高いイメージがありますが、家づくりの場合、費用はどうなっているのでしょうか?
実は、現代では木の家づくりが普及し始めたため、以前と比べると、サステイナブルな家づくりと言っても特別にコストアップにならないケースが大半のようです。「木の家づくりが得意な地域の工務店さんをネットなどで探して依頼するのがいいのではと思います」と栗原さん。
もちろん、性能や素材にこだわれば、その分建設費用は高くなるケースはあります。その分、面積を工夫したり、ランニングコストとの兼ね合いを考慮するなど、全体のバランスを見ながら判断するのが良いと、橋垣さんは説明します。
また断熱性能を高くしたり、自然エネルギーを活用した住宅であれば、建設時の費用は少し高くなっても、ランニングコストは低くなるので、長い視点で考えることができればいいのではないかと思います。家の配置・窓の配置を検討する自然の摂理に適うデザインは、費用に直接影響を与えないので実践しやすいと思います」と大槻さん。「自然建材はコスト高になると思われがちですが、無垢材と人工建材のフローリングの価格帯は同じ位です。
サステナブル、オーガニックといえば少し敷居が高いイメージがありますが、家づくりの場合、費用はどうなっているのでしょうか?
実は、現代では木の家づくりが普及し始めたため、以前と比べると、サステイナブルな家づくりと言っても特別にコストアップにならないケースが大半のようです。「木の家づくりが得意な地域の工務店さんをネットなどで探して依頼するのがいいのではと思います」と栗原さん。
もちろん、性能や素材にこだわれば、その分建設費用は高くなるケースはあります。その分、面積を工夫したり、ランニングコストとの兼ね合いを考慮するなど、全体のバランスを見ながら判断するのが良いと、橋垣さんは説明します。
また断熱性能を高くしたり、自然エネルギーを活用した住宅であれば、建設時の費用は少し高くなっても、ランニングコストは低くなるので、長い視点で考えることができればいいのではないかと思います。家の配置・窓の配置を検討する自然の摂理に適うデザインは、費用に直接影響を与えないので実践しやすいと思います」と大槻さん。「自然建材はコスト高になると思われがちですが、無垢材と人工建材のフローリングの価格帯は同じ位です。
自然環境に負担をかけないサステナブルな家づくりには、適切な素材を使うこと、デザインを工夫することはもちろん、想いを同じくする建築家を探すことも欠かせません。少しでもサステナブルに興味があれば、一度、サステナブルを意識して活動しているエシカルな建築家に、話を聞いてみてはいかがでしょうか。サステナブルを意識した住まいでは、毎日の暮らしもより気持ち良いものになるはずです。
エコ・サステナブルの記事をもっと読む
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省エネルギー住宅であるパッシブハウスや、再生可能エネルギーや地域の自然素材を使用するエコハウスなど、人だけでなく、地球にも優しい家づくりが、近年注目を集めています。同時に、性能の高さばかりを重視する現代の建築のあり方にも、疑問の声が上がりはじめました。
「住宅の構造や断熱性・気密性については、性能を表示する指標があります。分かりやすくて良いことですが、数値が高ければ高いほど、いい家であるかのように思わせることに違和感を感じます」と、いろは設計室の建築家・橋垣史子さんは語ります。
「現代の家づくりは効率ばかりを求めすぎているように思います」と、光設計の建築家・栗原守さんは話します。栗原さんは、1997年、シックハウスが社会的な問題になっていた時代、健康で安全な住宅に関する情報発信を行う「住空間ラボ 健康と安全」の立ち上げに、監修者の一人として関わりました。
素材や工期、かける手間など、全て効率重視でつくる家は長持ちしない、と栗原さんは説明します。「日本の家の寿命は28年というデータがあります。何も考えないで家を作ると、28年後には解体をされて粗大ゴミになってしまうということになってしまいます」