再び注目の太陽光発電を考える
大学院で地球環境学を研究している筆者が、家庭用太陽光発電のメリット・デメリットについて考察します。
東京都が新築住宅への太陽光パネル設置の義務化を目指しているニュースが流れ、再び注目を集めているのが、住宅用の太陽光発電です。しかし、システムを導入する際、「建築費用がかさむ、台風に耐えられるの?建物の外観を損ねる」といった懸念もあります。太陽光発電協会によると、設置可能な戸建住宅の太陽光発電普及率はまだ15%に過ぎません。
こうした中、東京都が条例改正を経て2025年4月から、大手住宅メーカーを対象にして、新築一戸建て住宅に太陽光パネル設置を義務化する基本方針を発表しました。今回、都はなぜこのような措置を打ち出したのでしょうか。
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温室効果ガスというと、臨海工業地帯にそびえ立つ煙突から出る煙を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、住宅、スーパーなど商業施設、オフィスビルといった民生部門から出る排出量も意外と多いのです。
家電製品といえば昔は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機でした。それらに加えて最近では、1人最低1台は所有するパソコンやスマートフォン、ウォシュレットなど家電製品の普及により、家庭内の電力需要は増大していることも原因です。
家電製品といえば昔は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機でした。それらに加えて最近では、1人最低1台は所有するパソコンやスマートフォン、ウォシュレットなど家電製品の普及により、家庭内の電力需要は増大していることも原因です。
売電収入の減少は設備費用の低下で相殺?
政府は2012年に太陽光パネルなどで発電した再生エネルギーを一定期間、固定価格で、電力会社が買い取る「固定価格買取り制度」を導入しました。しかし、当初の買取り価格が破格に高かったこともあり、現在では10年前の4分の1近くに下がっています。家計にとって売電収入のメリットは薄れましたが、累積生産量効果もあり、設備費用も4割程度低下していることも見逃せません。導入時と比べるとハードルは格段に下がっているといえるでしょう。
さらに補助金の活用です。東京都は、一般的な4kWの太陽光パネルの初期設置費用98万円は、10年程度で、補助金を活用すれば6年程度で、回収できるとしています。30年間の収支は、最大159万円のメリットがあると説明しています。補助金は、東京都が本気で脱炭素を目指している表れとも言えるので、設置を検討する場合、使わない手はありません。このほか、リースなどを利用し、初期費用をゼロにする方法もあります。
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さらに補助金の活用です。東京都は、一般的な4kWの太陽光パネルの初期設置費用98万円は、10年程度で、補助金を活用すれば6年程度で、回収できるとしています。30年間の収支は、最大159万円のメリットがあると説明しています。補助金は、東京都が本気で脱炭素を目指している表れとも言えるので、設置を検討する場合、使わない手はありません。このほか、リースなどを利用し、初期費用をゼロにする方法もあります。
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電気代を節約できる
ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰で、別のメリットが生まれています。それは、電力の自家消費という考えです。都によると、屋根に4kWの太陽光発電システムを導入した場合、4,000kWh程度の年間消費量が期待でき、1年間に一般家庭が必要な電力消費量の約8割を賄えるとしています。創電した電力は自ら使い、電力会社と契約する値上がりした電力使用を抑えることで、家計全体の電力料金が節約できるだけでなく、エネルギー消費量も減ります。また、災害による停電時には非常電源として活用できます。
環境省によれば、太陽光発電システムを設置している世帯は、設置していない世帯と比べ、エネルギー消費量が2割程度少ないことが分かります。
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自然災害に耐えられるのか?
他方デメリットについては、どうしても天候に左右されることです。雨の日や夜間は当然発電しません。もっとも、蓄電池を併用することで、電気をためておくことは、可能です。台風、雷、雹(ひょう)など自然現象に太陽光パネルは耐えられるのか、という不安もあります。
しかし、都によると、パネルはJIS規格により風速62mに耐えうる設計となっています。気象庁は、風速54m以上が最大級の「猛烈な」台風と定義しています。62mの台風となると、通常では考えられません。もっとも近年、自然災害が激甚化しており、想定外の状況が起こる可能性は否定できません。パネルのガラス面は強化ガラスを使用しているため、通常の雹では割れることはないと説明しています。
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しかし、都によると、パネルはJIS規格により風速62mに耐えうる設計となっています。気象庁は、風速54m以上が最大級の「猛烈な」台風と定義しています。62mの台風となると、通常では考えられません。もっとも近年、自然災害が激甚化しており、想定外の状況が起こる可能性は否定できません。パネルのガラス面は強化ガラスを使用しているため、通常の雹では割れることはないと説明しています。
処分・廃棄・撤去費用は?
使用をやめる場合、設備の撤去なども気になるところですが、都はパネルの解体から収集運搬、リサイクル、メーカー、メンテナンス業者から成る協議会を9月に立ち上げ、リサイクルルートを確立します。まさに「揺り籠から墓場」の態勢を整える構えです。
固定資産税は?
個人が利用する住宅用の太陽光発電システムは通常10kW未満のため、固定資産税と所得税が両方課税されないケースがほとんどですが、10kW超の場合は「産業用」とみなされ固定資産税の課税対象です。導入前に確認しておくと良いでしょう。
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家を建てる際、家の外観は重要な要素ですが、家の中でいかに安全、快適、健康的に過ごせるかも、大切です。特に2年半以上続いているコロナ禍で在宅時間は増え、エネルギー価格の高騰とともに、家計の電気料金の支払いは増え続けています。持続可能な太陽光を使った電力で、自立的に暮らすライフスタイルは選択肢の1つでしょう。
太陽光発電住宅で1年間発電した場合、スギの木約200本分の二酸化炭素吸収量と同等の効果があると東京都では試算しています。人々の行動変容が広がれば、中長期的には地球温暖化の緩和も期待できそうです。
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巨大都市である東京の決断には、大きな理由があります。都は19年5月、国に先行して、50年までに二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」を表明しました。
温室効果ガスは、石油や石炭など化石燃料を燃やし発電すると多く発生します。猛暑、洪水、干ばつなど世界各地で頻発している現象は、温室効果ガス増加に伴う温暖化が原因であることが、国連の科学者から警鐘が鳴らされています。このため温室効果ガスが発生しない太陽光や風力などの自然エネルギーへのシフトが、世界中で求められています。