家のなかに外部空間を取り入れる、通り庭の魅力
家のサイズに関わらず、通り庭で外部空間を取り入れることで、明るく開放的な住まいが実現します。
杉田真理子
2020年6月3日
通り庭とは、敷地の幅が狭く奥行きが長い京町家に代表されるような建物に設けられる、それぞれの部屋に満遍なく光や風を取り込み、動線を確保するために作られた通路や庭をさします。
家の中の外部的な空間として通り庭が通路のように通っていることで、家に籠っていても、狭苦しさを感じずに快適に過ごすことができます。今回は、3名のHouzzの専門家に、家の中に外部空間を取り込める、通り庭の魅力を聞きました。
お話をお聞きした建築家:佐竹永太郎さん(STAR/エスティエイアール)、稲垣裕行さん(株式会社desus建築設計事務所)、藤井伸介さん(Shinsuke Fujii ARCHITECTS)
家の中の外部的な空間として通り庭が通路のように通っていることで、家に籠っていても、狭苦しさを感じずに快適に過ごすことができます。今回は、3名のHouzzの専門家に、家の中に外部空間を取り込める、通り庭の魅力を聞きました。
お話をお聞きした建築家:佐竹永太郎さん(STAR/エスティエイアール)、稲垣裕行さん(株式会社desus建築設計事務所)、藤井伸介さん(Shinsuke Fujii ARCHITECTS)
通り庭とは
間口が狭く、奥行きがある縦長構造が一般的な京町家。都会の住宅密集地で周りが隣家に囲まれ、広々としたスペースを確保できないことが大半で、自由な間取りは望めません。しかし、京町家には、心地よい住まいを実現させるための、さまざまな工夫が施されています。その一つが、通り庭です。
京町家のような縦長構造の家では、各部屋が縦1列に配置されます。間口の玄関から奥まで続く通り庭は、廊下代わりとなり、風の抜け道と明かり採りの役割を果たします。また、坪庭や中庭を組み合わせることで、プライバシーを確保しながらも外光や景色を取り込み、心地よい住空間を生み出すことができるのです。
間口が狭く、奥行きがある縦長構造が一般的な京町家。都会の住宅密集地で周りが隣家に囲まれ、広々としたスペースを確保できないことが大半で、自由な間取りは望めません。しかし、京町家には、心地よい住まいを実現させるための、さまざまな工夫が施されています。その一つが、通り庭です。
京町家のような縦長構造の家では、各部屋が縦1列に配置されます。間口の玄関から奥まで続く通り庭は、廊下代わりとなり、風の抜け道と明かり採りの役割を果たします。また、坪庭や中庭を組み合わせることで、プライバシーを確保しながらも外光や景色を取り込み、心地よい住空間を生み出すことができるのです。
通り庭のメリット
STAR/エスティエイアールの建築家・佐竹永太郎さんは、「通路でもあり、庭でもある通り庭は、『屋外が引き込まれた屋内』であり、中間領域です。これが魅力を生み出しています」と、語ります。
Shinsuke Fujii ARCHITECTSの建築家・藤井伸介さんは、通り庭のメリットとして、採光をあげます。「プライバシーを確保しながら、暗くなりがちな家の中に庭を取り込み、室内を明るくします」
また、株式会社desus建築設計事務所の建築家・稲垣裕行さんは、通り庭によって長いアプローチが作れるため、廊下がないプランを作りやすいこともメリットだと話します。
STAR/エスティエイアールの建築家・佐竹永太郎さんは、「通路でもあり、庭でもある通り庭は、『屋外が引き込まれた屋内』であり、中間領域です。これが魅力を生み出しています」と、語ります。
Shinsuke Fujii ARCHITECTSの建築家・藤井伸介さんは、通り庭のメリットとして、採光をあげます。「プライバシーを確保しながら、暗くなりがちな家の中に庭を取り込み、室内を明るくします」
また、株式会社desus建築設計事務所の建築家・稲垣裕行さんは、通り庭によって長いアプローチが作れるため、廊下がないプランを作りやすいこともメリットだと話します。
通り庭のデメリット
メリットばかりのように見える通り庭ですが、いくつかの留意点もあります。風の流れを住まいに取り込む半屋外の通り庭は、必然的に冬場の冷えにもつながります。「高気密高断熱のような住宅と通り庭は、あまり相性がよくありません」と佐竹さん。ある程度のゆるさをもって設計することが重要なようです。
両サイドに壁が必要になるためコストもあがることが多いと、は稲垣さん付け加えます。
メリットばかりのように見える通り庭ですが、いくつかの留意点もあります。風の流れを住まいに取り込む半屋外の通り庭は、必然的に冬場の冷えにもつながります。「高気密高断熱のような住宅と通り庭は、あまり相性がよくありません」と佐竹さん。ある程度のゆるさをもって設計することが重要なようです。
両サイドに壁が必要になるためコストもあがることが多いと、は稲垣さん付け加えます。
通り庭を住まいに取り入れるにあたり、留意しておくべきこと
「通り庭を住まいに取り入れる際は、幅と高さのバランスに注意しましょう」と稲垣さん。狭小住宅の場合特に、幅をどこまで詰められるか、慎重に計算する必要があります。
藤井さんは、「通り庭を優先するあまり、接する部屋が貧しい空間にならないようにする注意しましょう」とアドバイスします。
「通り庭を住まいに取り入れる際は、幅と高さのバランスに注意しましょう」と稲垣さん。狭小住宅の場合特に、幅をどこまで詰められるか、慎重に計算する必要があります。
藤井さんは、「通り庭を優先するあまり、接する部屋が貧しい空間にならないようにする注意しましょう」とアドバイスします。
現代住宅における通り庭の事例①:佐竹永太郎さん(STAR/エスティエイアール)
佐竹さんのデザインした「つづきまのいえ」では、落ち着いた和風な空間のなかに、通り道が印象的に取り入れられています。
「通り庭は、しっとりとした光の道です。夏は、風の道となります」と佐竹さん。エアコンが苦手なご夫婦のために、入口は、格子戸とガラス戸の2重構造で仕上げ、風の通し方を工夫しました。「こうすることで、冬はガラス戸を閉めて防寒できますし、夏は、ガラス戸をあけて、防犯と風抜けを両立させています」
土足で使用する通り庭は、土間でもあります。「私にとって『土間』は、「つち」を感じる「ま」をつくること。通り庭があることで、あえて下駄に履き替えるような、気持ちの切り替えができる空間をを意識しています」
佐竹さんのデザインした「つづきまのいえ」では、落ち着いた和風な空間のなかに、通り道が印象的に取り入れられています。
「通り庭は、しっとりとした光の道です。夏は、風の道となります」と佐竹さん。エアコンが苦手なご夫婦のために、入口は、格子戸とガラス戸の2重構造で仕上げ、風の通し方を工夫しました。「こうすることで、冬はガラス戸を閉めて防寒できますし、夏は、ガラス戸をあけて、防犯と風抜けを両立させています」
土足で使用する通り庭は、土間でもあります。「私にとって『土間』は、「つち」を感じる「ま」をつくること。通り庭があることで、あえて下駄に履き替えるような、気持ちの切り替えができる空間をを意識しています」
現代住宅における通り庭の事例②:稲垣裕行さん(株式会社desus建築設計事務所)
稲垣さんのデザインした「インナーバルコニーの家」では、アプローチとして通り庭を設置するだけでなく、階段、廊下も通り庭に開き、いつも自然を身近に感じられる生活を目指しました。
「単調になりすぎないよう、床の質感、デザインを検討しました」と稲垣さん。両サイドの壁面は、リズム感を大切にしています。
稲垣さんのデザインした「インナーバルコニーの家」では、アプローチとして通り庭を設置するだけでなく、階段、廊下も通り庭に開き、いつも自然を身近に感じられる生活を目指しました。
「単調になりすぎないよう、床の質感、デザインを検討しました」と稲垣さん。両サイドの壁面は、リズム感を大切にしています。
現代住宅における通り庭の事例③:藤井伸介さん(Shinsuke Fujii ARCHITECTS)
藤井さんのデザインした「通り庭のある家」は、表庭、表土間、中庭、裏土間、裏庭まで庭が連続した住宅となっています。
「外部空間だけでなく、表土間と裏土間という『半外部空間』を組み合わせ、連続させることで、明るさと開放感を生み出しています」と藤井さん。
「通り庭をデザインする際は、接する部屋が気持良くなるように心がけています」
Houzzで庭づくりの専門家を探す
藤井さんのデザインした「通り庭のある家」は、表庭、表土間、中庭、裏土間、裏庭まで庭が連続した住宅となっています。
「外部空間だけでなく、表土間と裏土間という『半外部空間』を組み合わせ、連続させることで、明るさと開放感を生み出しています」と藤井さん。
「通り庭をデザインする際は、接する部屋が気持良くなるように心がけています」
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取材ありがとうございました。
通り庭は興味深い視点だと思います。
これからも素敵な記事楽しみにしています。