庭から考えるサステナビリティ
身近な自然である庭を通して、サステナブルな暮らしについて考えてみませんか?
舩村佳織
2021年4月22日
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています。
二児の子育て中でもあり、家族みんなが楽しめる庭造りが得意です。設計者として、主婦としての目線から、暮らしやすさに寄り添います。
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています... もっと見る
様々な媒体で「サステナブル」という言葉を目にする機会が多くなりました。「サステナブル」とは「持続可能な」という意味の言葉です。現在の私たちの生活はサステナブルといえるものではなく、このままの生活を続けていけば、いずれ必ず破綻することが指摘されています。
次の世代へより良い環境を残すために、サステナブルな暮らし方に変化していく必要があります。私たちの最も身近な自然である庭を通して、サステナブルな暮らしを実現するために何ができるでしょうか?一緒に考えてみませんか?
次の世代へより良い環境を残すために、サステナブルな暮らし方に変化していく必要があります。私たちの最も身近な自然である庭を通して、サステナブルな暮らしを実現するために何ができるでしょうか?一緒に考えてみませんか?
都市における庭の役割
<生物多様性>
庭は個人の所有物でありながら、地域にとっても価値のあるものと言えます。自然の少ない街中では、虫や鳥が生息する場となり、それが地域の生物多様性を支えています。小さな生き物たちは庭から庭へ移動して、行動範囲を広げながら世代をつないでいくのです。小さな庭でも連続して通路のようにつながることで、大きな意味を持ちます。
実際に庭で植栽の作業を行い、片付けをしている頃にはもう蝶々がひらひらと舞い始めていることもあり、庭が地域の生物にとって大切なものなんだと実感します。庭の仕事を生業にしていて、ほっと心が温まる瞬間です。
<生物多様性>
庭は個人の所有物でありながら、地域にとっても価値のあるものと言えます。自然の少ない街中では、虫や鳥が生息する場となり、それが地域の生物多様性を支えています。小さな生き物たちは庭から庭へ移動して、行動範囲を広げながら世代をつないでいくのです。小さな庭でも連続して通路のようにつながることで、大きな意味を持ちます。
実際に庭で植栽の作業を行い、片付けをしている頃にはもう蝶々がひらひらと舞い始めていることもあり、庭が地域の生物にとって大切なものなんだと実感します。庭の仕事を生業にしていて、ほっと心が温まる瞬間です。
都市における庭の役割
<ヒートアイランド現象の緩和>
ヒートアイランド現象による都市部の高温化が問題となっています。人工的な舗装や排熱がヒートアイランド現象の原因と言われています。植物や土がある緑地は、舗装部分とは違い水を貯め込み、蒸発する際には気化熱で周囲の熱を奪います。緑地をが増えることは、ヒートアイランド現象の緩和に効果があるのです。
一つの庭は都市の中では小さな面積ですが、集まればかなりの面積となるはずです。庭は植物のお手入れが大変だから……と舗装で覆ってしまうのではなく、植物を植えて都市の緑化に貢献してみませんか?
<ヒートアイランド現象の緩和>
ヒートアイランド現象による都市部の高温化が問題となっています。人工的な舗装や排熱がヒートアイランド現象の原因と言われています。植物や土がある緑地は、舗装部分とは違い水を貯め込み、蒸発する際には気化熱で周囲の熱を奪います。緑地をが増えることは、ヒートアイランド現象の緩和に効果があるのです。
一つの庭は都市の中では小さな面積ですが、集まればかなりの面積となるはずです。庭は植物のお手入れが大変だから……と舗装で覆ってしまうのではなく、植物を植えて都市の緑化に貢献してみませんか?
都市における庭の役割
<雨水の透水>
近年台風や大雨の増加とともに、浸水被害も増加しています。市街地では人工的な舗装面が多く、大雨の際には排水路に大量の水が流れ込み、排水しきれなくなることも被害を拡大している原因とされています。
舗装されていない緑地では、降った雨はゆっくりと土に浸み込んでいくため、排水路に流れ込む水を減らしてくれます。庭の緑地が街全体の排水性の助けとなります。
このように、個人の庭から地域の環境を向上させる様々なアプローチが可能です。一つ一つの庭はわずかな面積だとしても、集まれば大きな力となるのです。庭は個人の楽しみだけでなく、地域への価値も持つということを頭の片隅に置いていただけると嬉しいです。
<雨水の透水>
近年台風や大雨の増加とともに、浸水被害も増加しています。市街地では人工的な舗装面が多く、大雨の際には排水路に大量の水が流れ込み、排水しきれなくなることも被害を拡大している原因とされています。
舗装されていない緑地では、降った雨はゆっくりと土に浸み込んでいくため、排水路に流れ込む水を減らしてくれます。庭の緑地が街全体の排水性の助けとなります。
このように、個人の庭から地域の環境を向上させる様々なアプローチが可能です。一つ一つの庭はわずかな面積だとしても、集まれば大きな力となるのです。庭は個人の楽しみだけでなく、地域への価値も持つということを頭の片隅に置いていただけると嬉しいです。
個人における庭・環境教育
自然が多くない都市部で生活する子供たちは、虫や植物、野鳥と触れ合う機会が限られてしまいます。そのような環境の子供たちにとって、庭での自然とのふれあいは大きな意味を持ちます。
例えば小さなビオトープを作ってみると、より一層庭の環境に奥行きが生まれ、たくさんの自然と出会えるでしょう。家庭菜園を行ったり、バードバスを設置したり、工夫次第でより自然を身近に感じられます。次世代を担う子供たちに自然の美しさや偉大さを教えることは、環境教育の第一歩となります。
自然が多くない都市部で生活する子供たちは、虫や植物、野鳥と触れ合う機会が限られてしまいます。そのような環境の子供たちにとって、庭での自然とのふれあいは大きな意味を持ちます。
例えば小さなビオトープを作ってみると、より一層庭の環境に奥行きが生まれ、たくさんの自然と出会えるでしょう。家庭菜園を行ったり、バードバスを設置したり、工夫次第でより自然を身近に感じられます。次世代を担う子供たちに自然の美しさや偉大さを教えることは、環境教育の第一歩となります。
自然の営みを活かす
もともと樹木や土、そこに生息する生き物たちは自然のサイクルの中でうまく生活をしています。それこそがまさにサステナブルな自然の営みです。それを庭でも再現できれば、サステナブルな庭造りに近づくはずです。
もちろん庭は完全な自然環境とは異なるので、人間がお手入れをしてあげないといけない部分は多くあります。その中でも実践できるアイデアをいくつかご紹介します。
もともと樹木や土、そこに生息する生き物たちは自然のサイクルの中でうまく生活をしています。それこそがまさにサステナブルな自然の営みです。それを庭でも再現できれば、サステナブルな庭造りに近づくはずです。
もちろん庭は完全な自然環境とは異なるので、人間がお手入れをしてあげないといけない部分は多くあります。その中でも実践できるアイデアをいくつかご紹介します。
自然の営みを活かす
<落葉落枝の活用>
自然環境の中では樹木からの落葉落枝は、土中の微生物が分解し、再び土の栄養となり、植物が利用します。自然から発生するものにはゴミとなるものがありません。これと同じように、庭で出た落葉落枝をコンポストやマルチングとして庭の中で活用することで、ゴミを減らし、余計な肥料等の資材を使わずにすみます。
秋の落葉で腐葉土づくりをすれば、次の春には完成します。ガーデニングの新たな楽しみとして挑戦してみてはいかがでしょうか?
<落葉落枝の活用>
自然環境の中では樹木からの落葉落枝は、土中の微生物が分解し、再び土の栄養となり、植物が利用します。自然から発生するものにはゴミとなるものがありません。これと同じように、庭で出た落葉落枝をコンポストやマルチングとして庭の中で活用することで、ゴミを減らし、余計な肥料等の資材を使わずにすみます。
秋の落葉で腐葉土づくりをすれば、次の春には完成します。ガーデニングの新たな楽しみとして挑戦してみてはいかがでしょうか?
自然の営みを活かす
<環境に合った植物でローメンテナンスな庭>
自然に生えている植物は、自身に適した環境を選んで生育しています。そうして誰の手入れも必要とせず、生き生きと美しく成長していきます。
庭も同じことで、庭の環境に合わない植物を植えてしまうと、たくさん手間をかけないといけなくなってしまいます。庭の環境をよく観察し、環境に合った植物を選べば最小限のお手入れで元気に生育してくれます。このようなローメンテナンスな庭では、環境に負荷をかける可能性のある農薬や化成肥料を使う必要がありません。
<環境に合った植物でローメンテナンスな庭>
自然に生えている植物は、自身に適した環境を選んで生育しています。そうして誰の手入れも必要とせず、生き生きと美しく成長していきます。
庭も同じことで、庭の環境に合わない植物を植えてしまうと、たくさん手間をかけないといけなくなってしまいます。庭の環境をよく観察し、環境に合った植物を選べば最小限のお手入れで元気に生育してくれます。このようなローメンテナンスな庭では、環境に負荷をかける可能性のある農薬や化成肥料を使う必要がありません。
自然の営みを活かす
<害虫・雑草に対する考え>
庭にはつきものの害虫や雑草対策ですが、完璧にきれいな状態を求めると、殺虫剤・除草剤の使用や舗装で土を覆うデザインを採用するしかありません。もしくは気が遠くなるような草取り作業に追われることになってしまいます。
このような方法で害虫や雑草を完璧に排除しようとすると、自然のバランスが崩れてしまいます。健康な状態の庭ならば、一つの種類の虫が大量発生するということはなく、害虫がいればその天敵となる益虫が現れ、植物に大きな被害が出ることは少なくなります。
<害虫・雑草に対する考え>
庭にはつきものの害虫や雑草対策ですが、完璧にきれいな状態を求めると、殺虫剤・除草剤の使用や舗装で土を覆うデザインを採用するしかありません。もしくは気が遠くなるような草取り作業に追われることになってしまいます。
このような方法で害虫や雑草を完璧に排除しようとすると、自然のバランスが崩れてしまいます。健康な状態の庭ならば、一つの種類の虫が大量発生するということはなく、害虫がいればその天敵となる益虫が現れ、植物に大きな被害が出ることは少なくなります。
雑草についても同じです。雑草は虫の住処となりますが、それは害虫だけでなく益虫にも言えることです。雑草も自然のバランスの一つなのです。茂らせ放題では問題ですが、完全に排除しようとせず、ある程度で良しとするような気持ちで付き合うのがちょうどよいのです。
素材を吟味する
地域の石や木材を使うことは、運搬時のCO2削減につながります。特に地域の木材の使用は、その地域の山や森林の健全な育成につながるので、地域の水資源を守ること、土砂災害を防ぐこと、など様々なメリットがあります。
また、なるべく自然素材を使用することも、製造時・廃棄時の環境負荷を小さくします。自然素材は解体したあと再利用できるものが多く、再利用できなくてもカーボンニュートラルであるものがほとんどです。自然素材は経年変化によって味わいを深めていくので、丁寧に長く使えるのも魅力です。
地域の石や木材を使うことは、運搬時のCO2削減につながります。特に地域の木材の使用は、その地域の山や森林の健全な育成につながるので、地域の水資源を守ること、土砂災害を防ぐこと、など様々なメリットがあります。
また、なるべく自然素材を使用することも、製造時・廃棄時の環境負荷を小さくします。自然素材は解体したあと再利用できるものが多く、再利用できなくてもカーボンニュートラルであるものがほとんどです。自然素材は経年変化によって味わいを深めていくので、丁寧に長く使えるのも魅力です。
忙しい生活の中ではつい効率を重視してしまいます。サステナブルなものは、時に効率や便利さに反することもあります。目まぐるしい生活を一度見直し、のんびりとした時間の中で生活するのも良いものです。庭を通して、サステナブルなライフスタイルを考えていただけると幸いです。
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化学肥料や雑草・害虫対策の薬品はもちろん注意が必要ですし、園芸用の土の多くが地球を掘って商品になっています。また外来種が野生化して元々の生態系を脅かすのはペットだけではありません。
ガーデニングなんてエコな趣味と思いがちですが、気をつけたいですね。