モールディングの歴史と伝統的なデザイン
クラシカルなインテリアに欠かせない装飾材、モールディング。伝統的なデザインの数々を、インテリアデザインの歴史様式にも触れながらご紹介します。

西谷典子|Noriko Nishiya
2018年8月14日
モールディングの古典的デザイン
- クラウンモールディング(廻り縁)
モールディング装飾は、ギリシャ・ローマ時代にはすでに寺院などの建築の外壁の装飾の一部として使われていました。ギリシャのパルテノン神殿の内装には、三角の破風(はふ)の下に、歯型のようなデコボコした廻り縁があしらわれています。写真のクラウンモールディングは「デンティル」(歯という意味)と呼ばれるイオニア式のデザインで、最もクラシックなもののひとつです。
ほかには、卵をモチーフにした「エッグ&ダート」も代表的なデザインです。卵の形と槍や鉾の先の形に囲まれ、その下には通常ビーズが敷かれています。伝統的なクラウンモールディングは、ほとんどが1本のレールでは作られず、幅が異なるもうひとつのレールと組み合わせます。凝ったデザインをミックスすることで生じるコントラストが、美しいアレンジを生み出します。
現代は白いモールディングが主流になっていますが、1860年代から1970年代までは、壁紙と相性のよいカラーを何色か取り入れたカラフルなモールディングが人気でした。室内を明るい雰囲気にするための演出のひとつだったようです。今でもイギリスのヴィクトリア時代の古いパブに行くと、緑や赤など鮮やかに塗られたモールディングを見かけることがあります。写真は、クラウンモールディングが部屋のアクセントとして家具とコーディネートされた現代版のよい一例です。
- モディリオン
- シーリングワーク(天井装飾)
19世紀になると、ヨーロッパの一般の住宅の寝室やリビングルームにも、写真のようなバロック様式の天井装飾が取り入れられるようになりました。とはいえ、現在は残念ながら流行とともに取り外されているものも多く、またいきなり現実的な話ですが、日頃から掃除をしていないと凹凸に埃が溜まりやすいのも事実で、その上から何度も塗装し直したために、次第にデザインがくっきりと見えなくなってしまっているものもあるのです。
- シーリングローズ、シーリングメダリオン
天井の中央、多くはシャンデリアなど照明を吊るす位置につけられる、丸い円盤のようなモールディング装飾は、イギリスではシーリングローズ、アメリカではシーリングメダリオンと呼ばれます。古代エジプト時代からあったという説がありますが、一般家庭のインテリアに登場するのはヴィクトリア時代から。当時はろうそくやガス灯を使っていたシャンデリアの煤で天井がすぐに黒くなってしまうため、塗り直しの手間を省くために使われたとされます。
シーリングローズのある天井によくコーディネートされるのは、ロココのイメージを持つシャンデリアです。シーリングローズには大きなシャンデリアをよりいっそう豪華に見せる効果がありますが、コンテンポラリーなシャンデリアを合わせても、しゃれた雰囲気になります。
クラシカルなインテリアを現代に
これらのモールディング装飾は、天井や高い位置だけでなく、壁やドアなどにもよく使われます。たとえば写真のように、アカンサスの葉の美しい曲線を強調した装飾をつけると、豪華なバロックテイストのインテリアになります。このような装飾は、ある程度の天井の高さや広いスペースが必要になりますが、現代では一般の家にも取り付けられるほど身近なものになってきました。
これらのモールディング装飾は、天井や高い位置だけでなく、壁やドアなどにもよく使われます。たとえば写真のように、アカンサスの葉の美しい曲線を強調した装飾をつけると、豪華なバロックテイストのインテリアになります。このような装飾は、ある程度の天井の高さや広いスペースが必要になりますが、現代では一般の家にも取り付けられるほど身近なものになってきました。
モールディングの素材の変遷
最後に、素材についても解説しましょう。伝統的なモールディングは、石膏や木材などが材料です。19世紀の産業革命時代の後半に入ると、それまでのこぎりやのみを使って手作業で作られていた木製のモールディングが、機械で大量生産できるようになり、徐々に一般家庭でも取り入れられるようになりました。現代では、ヒビが入りにくいようグラスファイバーなどで強化された石膏や、軽くて扱いやすいポリウレタン製など、新素材のモールディングもあります。
最後に、素材についても解説しましょう。伝統的なモールディングは、石膏や木材などが材料です。19世紀の産業革命時代の後半に入ると、それまでのこぎりやのみを使って手作業で作られていた木製のモールディングが、機械で大量生産できるようになり、徐々に一般家庭でも取り入れられるようになりました。現代では、ヒビが入りにくいようグラスファイバーなどで強化された石膏や、軽くて扱いやすいポリウレタン製など、新素材のモールディングもあります。
伝統的な石膏や木材と現代のポリウレタン製を比べると、デザインの繊細さではやはり伝統的な素材のほうが上です。ただ、軽くて扱いやすく、安価で長持ちする新素材の登場で、モールディングは現代のインテリアにも圧倒的に取り入れやすくなりました。写真の書棚のような大きな家具の装飾は、そのよい例です。
次回は、もう少しシンプルなデザインのものを中心に、現代のインテリアに上手にモールディングを取り入れるためのポイントをご紹介したいと思います。
クラウンモールディングの画像を見る
壁モールディングの画像を見る
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コメントありがとうございました!お役に立ちましたら幸いです。
弊社の写真を2枚も取り上げていただきありがとうございました!知らなかった知識が得られ大変勉強になりました。次回記事も楽しみにしております。
こちらこそ素敵なモールディングの実例写真を使わせて頂きましてありがとうございました!