一戸建住宅の構造・工法、その特徴とメリット・デメリット
木造や鉄骨造やRC造のメリットとデメリットとは? 木造にはどんな工法の違いがある? 一戸建住宅の構造と工法に関する疑問にお答えします。
大村哲弥
2018年3月16日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
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一見同じように見える一戸建住宅でも、木造や鉄骨造、RC造(コンクリート造)など、その構造はさまざまです。また、同じ木造にも、在来工法や2×4(ツーバイフォー)工法など複数の工法があり、それぞれに特徴や個性があります。
今回は、一戸建住宅の主な構造と工法について考察します。
今回は、一戸建住宅の主な構造と工法について考察します。
一戸建住宅の構造は木造、鉄骨造、RC造の三構造
一戸建住宅は、構造に使われる材料と工法(つくり方)によって上記の表のように分類されます。これ以外にも、RC造と木造を合わせた混構造や、木造軸組+パネルによるハイブリッドな工法などがありますが、主な工法としては、
に分類できます。
工法は、構造と工法を合わせた意味合いで「構法」という言い方をする場合もあります。例えば、在来工法は木造軸組構法、2×4工法は木造枠組壁構法などともいわれます。
一戸建住宅は、構造に使われる材料と工法(つくり方)によって上記の表のように分類されます。これ以外にも、RC造と木造を合わせた混構造や、木造軸組+パネルによるハイブリッドな工法などがありますが、主な工法としては、
- 木造軸組工法(在来工法)
- 2×4工法(木質枠組壁工法)
- 木質系パネル工法(木造プレハブ)
- 軽量鉄骨工法(非木質系プレハブ)
- 重量鉄骨造
- RC造
に分類できます。
工法は、構造と工法を合わせた意味合いで「構法」という言い方をする場合もあります。例えば、在来工法は木造軸組構法、2×4工法は木造枠組壁構法などともいわれます。
日本の一戸建住宅の約9割は木造でつくられている
上のグラフは、平成26年建築着工統計による新築住宅の構造別の工法です。日本の一戸建住宅の約9割を占めるのが木造であり、そのなかでも最も一般的なのが「在来木造」(シェア74.4%)と呼ばれている木造軸組工法です。ちなみに2×4工法はシェア11.2%、木質系プレハブ同2.9%、非木質系プレハブ同9.9%、鉄骨造・RC造は合計で同1.6%となっています。
各工法の特徴や個性を詳しくみていきましょう。
上のグラフは、平成26年建築着工統計による新築住宅の構造別の工法です。日本の一戸建住宅の約9割を占めるのが木造であり、そのなかでも最も一般的なのが「在来木造」(シェア74.4%)と呼ばれている木造軸組工法です。ちなみに2×4工法はシェア11.2%、木質系プレハブ同2.9%、非木質系プレハブ同9.9%、鉄骨造・RC造は合計で同1.6%となっています。
各工法の特徴や個性を詳しくみていきましょう。
- 在来工法(木造軸組工法)
柱・梁を組み合わせながら比較的自由に建物形状や間取りをつくることができます。壁による制約が少ないため、大きな開口を設けることや柱・梁を見せながら和風の内装をつくり込むのに適しています。もちろん洋風の意匠も可能です。木材は鉄骨などに比べて比較的安価なため、工事費も比較的低廉であるというメリットもあります。
在来工法は、現場での加工や組み立てが多く、他の工法に比べ、つくり手(大工さん)の力量によって出来ばえに差が出るといわれてきましたが、現在ではあらかじめ工場で加工した部材(プレカット)を用いることが一般的になっており、かつてほど品質のばらつきや施工精度のリスクは少なくなってきました。
また、柱・梁だけで構成された軸組は、地震による水平力が加わった際にゆがみやすく、地震に対して弱いと言われてきましたが、建築基準法の改正により、以前より高い耐震性が要求されるようになり、接合部の補強金物、筋交い、構造壁などが設けられるようになり、新築で適法につくられている限り、他の工法に比べ耐震性が劣ることはなくなりました。
多くの工務店の工法は在来工法です。大手ハウスメーカーでは〈住友林業〉が代表です。
- 2×4工法と木質系パネル工法(木造枠組壁工法)
ダンボール箱の原理と同様に、地震や風などの水平力への耐性が高いのが特徴です。また、ボックス状のパネルが隙間なく囲むので、在来工法に比べ、耐火性や遮音性の面で有利で、気密性や断熱性にも優れます。一方で、壁が構造体となっているため、窓などの開口の大きさや位置などが制限される、間取りの自由度が少ないなど、在来工法に比べるとプランニングの面で制約があります。また、高気密・高断熱なので、多湿で結露が発生しやすい日本では換気への対応が必要です。
部材が標準化され、施工も容易(工期が短い、組み立てに熟練を要さない)なことから一般的には、在来工法に比べ工事費は安価であるといわれています。ただし、規格外のプランニングをする場合などは逆に割高になる場合もあります。
木質系パネル工法(木造プレハブ)と呼ばれる工法は、2×4工法と同様の木造枠組壁構法です。2×4工法と異なるのはパネル自体を工場生産する点です。規格化、工場生産などが基本であることから、プレハブ(prefabrication/前もって製作する意に由来)と称されています。基本的には2×4工法と同様の特徴を持ちますが、工業化の度合いが進んでいる分、精度や工事費の面で有利といえます。
2×4工法を代表する大手ハウスメーカーは〈三井ホーム〉。木質系パネル工法を採用している大手ハウスメーカーは〈ミサワホーム〉などです。
- 軽量鉄骨工法(非木質系プレハブ)
鋼材は木材に比べ、耐久性が高く、品質が安定し、高い精度の加工が可能です。また、現場作業の単純化、施工精度のアップ、工期短縮などの特徴があります。ブレースが入った工場生産の鉄骨軸組は、耐震性にも優れています。シロアリなどの害虫被害の心配がないことも木材に比べたメリットです。一方で、木材に比べ、耐火性が低い(高温で曲がったり、溶けたりしてしまう)、錆の発生、熱伝導率が高く、暑さや寒さが室内に伝わりやすいなどのデメリットもあります。鋼材の耐火被覆、防錆塗装、断熱対策などが求められます。工事費は木造に比べ高い水準です。
さらに工業化が進んだ軽量鉄骨工法として、壁や床自体を工場生産して現場に持ち込む鉄骨ユニット工法があります。
軽量鉄骨工法の代表的なハウスメーカーとして、〈積水ハウス〉、〈大和ハウス工業〉、〈パナホーム〉などがあります。〈積水化学工業〉は鉄骨ユニット工法を採用しています。
- 重量鉄骨工法
逆に木造や軽量鉄骨に比べて重量が大きくなるため、堅固な地盤が必要とされます。また木造や軽量鉄骨に比べ工事費は高くなります。
大手ハウスメーカーでは旭化成の「ヘーベルハウス」が有名です。
- RC造
施工はRC造の施工経験がある建設会社が施工することが一般的です。
耐震等級について
最後に耐震等級に触れておきます。
住宅性能表示制度は、住宅の耐震性や省エネルギー性や遮音性などの基本性能に関する、法律に基づく表示制度です。耐震等級は、上記の3ランクに分かれています。
建築基準法で求められている耐震基準は、あくまで耐震等級1のレベルです。具体的には、震度5強の地震で損傷を生じない、震度6強~7の大地震でも倒壊・崩壊しないという耐震性能です。留意したいのが、「倒壊・崩壊しない」というレベルは、建物は損傷を受けるが人命が損なわれるような壊れ方をしない、という意味であり、地震被害後に住宅として機能するかどうか、住み続けるかどうか、あるいは補修できる程度の損傷かどうかは、また別の話になります。
ちなみに、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)の過去3回の大地震の最大震度は7でした。
住宅の耐震性能は、住宅の工法の違いよりも、耐震等級の違いによるところが大きいと言えます。
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最後に耐震等級に触れておきます。
住宅性能表示制度は、住宅の耐震性や省エネルギー性や遮音性などの基本性能に関する、法律に基づく表示制度です。耐震等級は、上記の3ランクに分かれています。
建築基準法で求められている耐震基準は、あくまで耐震等級1のレベルです。具体的には、震度5強の地震で損傷を生じない、震度6強~7の大地震でも倒壊・崩壊しないという耐震性能です。留意したいのが、「倒壊・崩壊しない」というレベルは、建物は損傷を受けるが人命が損なわれるような壊れ方をしない、という意味であり、地震被害後に住宅として機能するかどうか、住み続けるかどうか、あるいは補修できる程度の損傷かどうかは、また別の話になります。
ちなみに、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)の過去3回の大地震の最大震度は7でした。
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Hitoshi Iida様
ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通り一戸建ではRC壁式の方が一般的ですね。追記したいと思います。