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Houzzツアー:時とともに風合いが増す木の外装に守られた海辺の別荘
海辺の気候から守られた空間をつくりつつ、周囲の自然にとけこむ家をつくるため、建築家は木製ルーバーを多用するデザインを考案。ニュージーランド建築家協会賞を受賞した、秀逸な別荘です。
Emily Hutchinson
2016年3月26日
人工構造物でありながら、自然のなかでも違和感のない美しさのこちらの家は、建築家ジュリアン・ガスリーさんが手がけた休暇用別荘だ。周囲に広がるマヒア半島の景観を存分に活用し、6人家族が都会を離れてゆっくり休日を過ごすための最高の場所ができあがった。
まず目を引く特徴は、各所に使われた木材。木を使うことで自然環境のなかに溶け込むと同時に、サステナブルな家作りにも貢献している。建築デザインの素晴らしさと自然との融合は両立可能だと示したことが評価され、完成した2013年にはニュージーランド建築家協会賞を受賞した。
どんなHouzz?
居住者:6人家族の休暇用別荘
所在地:ニュージーランド、マヒア半島
規模:271平方メートル、ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×2。離れには2段ベッドのある子ども用寝室とガレージ
まず目を引く特徴は、各所に使われた木材。木を使うことで自然環境のなかに溶け込むと同時に、サステナブルな家作りにも貢献している。建築デザインの素晴らしさと自然との融合は両立可能だと示したことが評価され、完成した2013年にはニュージーランド建築家協会賞を受賞した。
どんなHouzz?
居住者:6人家族の休暇用別荘
所在地:ニュージーランド、マヒア半島
規模:271平方メートル、ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×2。離れには2段ベッドのある子ども用寝室とガレージ
首都ウェリントンでの普段の生活から抜け出すため、静かな沿岸部に別荘を作りたい、というのがクライアントの要望。しかし、完全に人里離れたロケーションでの建設作業には、予想していたより困難な点も出てきた。まず、敷地にいくつか建設条件があり、一定以上の高さの建物を作ることはできず、周囲の土地への影響についても制約があった。
特殊技術のある建設業者に現地に来てもらうことも難しかったため、比較的シンプルな素材や建設方法を用いることにした。「建設作業中は、Eメールや携帯テキストメッセージでコミュニケーションを取りました。遠く離れた場所なので、常に進行状況を直接見に行くことは難しかったんです」とガスリーさんは言う。
特殊技術のある建設業者に現地に来てもらうことも難しかったため、比較的シンプルな素材や建設方法を用いることにした。「建設作業中は、Eメールや携帯テキストメッセージでコミュニケーションを取りました。遠く離れた場所なので、常に進行状況を直接見に行くことは難しかったんです」とガスリーさんは言う。
海のすぐ近くであるため、厳しい気候が建物に与える影響も考慮する必要があった。「この土地の特性と共鳴するような家を作り、厳しい環境の中でもあまりメンテナンスがかからないようにする必要がありました」とガスリーさん。雨戸のデザインを工夫して、嵐から家を守ると同時にセキュリティも確保した。
オープンプランの大きなリビングスペースは、この家でもっとも印象的な空間のひとつ。リビングの北側と東側は広い木製デッキにつながり、海が見渡せる。キッチンには、特注のステンレス製アイランドと、パイン材合板のキャビネットを設置した。
研磨コンクリートの床が家全体に使われ、日光から蓄熱すると同時に、入ってくる明るい日差しを反射して広げる効果もある。「手入れも簡単だし、外の木製デッキやコンクリート敷きの中庭へと、室内から屋外へのシームレスなつながりを作り出しています」とガスリーさんは言う。
研磨コンクリートの床が家全体に使われ、日光から蓄熱すると同時に、入ってくる明るい日差しを反射して広げる効果もある。「手入れも簡単だし、外の木製デッキやコンクリート敷きの中庭へと、室内から屋外へのシームレスなつながりを作り出しています」とガスリーさんは言う。
オーナー一家はダイビングが大好きだ。近くの海に沈む難破船の探検に出かけ、宝物を見つけて持ち帰ることもあるのだとか。
インテリアはミニマルだが、ディスプレイされたコレクションには個性が垣間見える。
インテリアはミニマルだが、ディスプレイされたコレクションには個性が垣間見える。
リビングエリアから中庭へとシームレスにつながっている。午後は西からの日差しが当たる中庭は、海風からも守られており、コンクリート敷きで、コンクリート製の屋外用薪暖炉と、造り付けのバーベキューピットもある。家の中に廊下がない代わりに、この中庭がすべての部屋をつなぐ役割も果たしている。
3つのベッドルームはリビングの両側に配置され、オーナー夫妻と、成長した子どもたちそれぞれの部屋となっている。各ベッドルームは中庭と海に面したデッキにつながっており、中庭からのスライドドアは壁と一体化しているため「ベッドルームは中庭の奥にあるアルコーブのようにも感じられます」とガスリーさんは言う。
ベッドルームに取り入れた特注の合板シェルフは、洗練された印象で、床面積の節約にもなる。
ベッドルームに取り入れた特注の合板シェルフは、洗練された印象で、床面積の節約にもなる。
マスターベッドルームとつながるバスルームには、白い内壁パネル「ハーディグレイズ」に、青いガラスタイルの壁を使って色彩を加えた。合板の洗面台はナチュラルな雰囲気で、家全体に使われた木のトーンと調和している。
ガレージがあるのは別の建物で、母屋の中庭へと1本のスチール製の梁でつながっている。ガレージの扉はユニークで、西側の壁全体がこの梁に沿って横にスライドすることで入口が開く仕組みだ。
外壁と雨戸は透明オイル塗装のシーダー材で、丘側は仕上げ塗りを施したコンクリートブロック材を使っている。シーダー材は厳しい天候から家を守りながら、年月が経つにつれて色あせ、より風景に溶け込む風合いになる。隙間のある雨戸を通り、和らいだ太陽の光と穏やかな風が部屋に入ってくる。温かい夏は昼も夜も、このくらいがちょうどいいとガスリーさんは言う。
ガスリーさんの手掛ける案件では木をよく用いるが、その理由は「素のままで残すか塗装するかによって、仕上げや素材感が幅広く表現できるから」だと言う。「木の自然な質感で、建物に有機的な温かみが生まれます。都市化が進み、ますます複雑になる現代社会では、とても大事な要素です。」
ガスリーさんの手掛ける案件では木をよく用いるが、その理由は「素のままで残すか塗装するかによって、仕上げや素材感が幅広く表現できるから」だと言う。「木の自然な質感で、建物に有機的な温かみが生まれます。都市化が進み、ますます複雑になる現代社会では、とても大事な要素です。」
外装はシーダー材が主だが、室内に使ったのは地元に育つカヒカテアの木(学名ダクリカルプス・ダクリディオイデス)。ホームオーナーのウェリントンの自宅にあった倒木を加工して内壁のパネルに利用したものだ。外壁のシーダー材ともマッチしている。
丘に面した側にあるアルコーブ状の屋外空間を仕切り、真鍮製のアウトドアシャワーを設置した。海水浴やダイビングから帰ってきたときにここでシャワーを浴びる。
この別荘に来たら、空が真っ青に晴れた日に、デッキエリアに座ってのんびりする、というのが家族の大好きな過ごし方。「この家は、家族が一緒に休暇を楽しみ、自然とつながり、思い出を作ることのできる場所なんです」とガスリーさんは言う。
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