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複数世代が生活し、この地で年齢を重ねていくために裏庭に建てられた「付属居住ユニット」
娘の住宅の敷地内に建てられた新しい建物。ミニマリスト風でありつつ温かみのある空間と、美しいプライベートな庭を母親に提供します。

Becky Harris
2023年3月3日
オレゴン州ポートランドの住宅の裏庭に建てられたこの付属居住ユニット(ADU)は、母親とその娘にとって非常に特別なプロジェクトでした。娘の住宅の敷地内にこの建物を追加することで、複数の世代からなる家族が生活していくためのスペースが生み出されました。
この家族は、母親が自分自身のスペースを確保しつつ家族の近くで過ごしながら、この地で年齢を重ねていけるような「モダンな箱」としてこの建物を構想したのです。また娘の方でも、将来的には自分が祖母としてこのADUで暮らし、大人になった子どもとその家族が母家に住む形を想定しています。娘と母親は、日本にインスピレーションを得た穏やかでプライベートな庭への眺めを備え、自分用にカスタマイズされた効率的でミニマリスト風の住宅を建てるために、デザイナーのLucas Gray(ルーカス・グレイ)さんに仕事を依頼しました。
この家族は、母親が自分自身のスペースを確保しつつ家族の近くで過ごしながら、この地で年齢を重ねていけるような「モダンな箱」としてこの建物を構想したのです。また娘の方でも、将来的には自分が祖母としてこのADUで暮らし、大人になった子どもとその家族が母家に住む形を想定しています。娘と母親は、日本にインスピレーションを得た穏やかでプライベートな庭への眺めを備え、自分用にカスタマイズされた効率的でミニマリスト風の住宅を建てるために、デザイナーのLucas Gray(ルーカス・グレイ)さんに仕事を依頼しました。
どんなHouzz?
住まい手:母(同じ敷地内に娘の住居あり)
所在地:オレゴン州ポートランド
面積:58平方メートル
設計: Lucas Gray
写真:Carlos Rafael Photography
「“黒いモダンな箱”のような住宅のデザイン依頼が私に来ることはあまりないのですが、このプロジェクトはそんな住宅デザインへの要望から始まりました」とグレイさんは話します。
ただ設計が進むにつれ、この敷地の周辺環境には天然の屋外用素材の方がよりマッチするだろうという判断に全員が至りました。
「James Hardie社が提供する外装材や金属製の外装材では、印象が冷たすぎるだろうと感じました」とグレイさんは言います。そこで外装用の羽目板には、ポートランドの気候に耐え得る品種である天然の杉板と、濃く染色された杉板を組み合わせて用いることにしました。その結果、この建物はモダンでミニマリスト風の雰囲気を備えつつ、温かみも併せ持ったものになったのです。
住まい手:母(同じ敷地内に娘の住居あり)
所在地:オレゴン州ポートランド
面積:58平方メートル
設計: Lucas Gray
写真:Carlos Rafael Photography
「“黒いモダンな箱”のような住宅のデザイン依頼が私に来ることはあまりないのですが、このプロジェクトはそんな住宅デザインへの要望から始まりました」とグレイさんは話します。
ただ設計が進むにつれ、この敷地の周辺環境には天然の屋外用素材の方がよりマッチするだろうという判断に全員が至りました。
「James Hardie社が提供する外装材や金属製の外装材では、印象が冷たすぎるだろうと感じました」とグレイさんは言います。そこで外装用の羽目板には、ポートランドの気候に耐え得る品種である天然の杉板と、濃く染色された杉板を組み合わせて用いることにしました。その結果、この建物はモダンでミニマリスト風の雰囲気を備えつつ、温かみも併せ持ったものになったのです。
この写真に写っている4枚のガラスパネルは寝室にあるのもので、右側に見えるドアはリビングスペースに直接つながっています。建物のこちら側は母家とは別の方向を向いているため、このプライベートガーデンはADU専用の庭になっています。張り出した庇部分は、さまざまな要素から建物を保護します。他のほとんどの写真はまだ植物が植えられていない時に撮影されたものなので、最初の写真にあるこの庭の美しい姿を想い出しながら残りの部分を読み進めてみて下さい。
庇には、空に向かって大きな開口部が設けられています。この開口部の上に見えている黒い物体は水抜きで、屋根からの全ての雨水はこの水抜きに流れ込みます。そして雨水は、この開口部を通じて砂利敷の地面へと滝のように流れ落ち、庭全体に染み渡るようになっています。
庇には、空に向かって大きな開口部が設けられています。この開口部の上に見えている黒い物体は水抜きで、屋根からの全ての雨水はこの水抜きに流れ込みます。そして雨水は、この開口部を通じて砂利敷の地面へと滝のように流れ落ち、庭全体に染み渡るようになっています。
屋内は窓やドアからもたらされる自然光に満ちています。グレイさんはこの住宅から縁石や敷居を無くし、全ての床が同じ高さになるようにしました。これによって母親がつまずいてしまう危険を防ぎ、歩行器や車椅子が必要になった際にも動き回りやすいようにしています。
クライアントはコンクリートの持つミニマリスト的な見た目を好んでいた、とグレイさんは話します。彼らはコンクリートを床材として利用しましたが、このコンクリート床は日中と夜間を通じて室温の変動を調節する「サーマルマス(蓄熱体)」としての機能を提供します。彼は、希望があればより柔らかなコルクの床材をコンクリートの上に設置することも可能だと言います。
またグレイさんはエネルギー効率を向上させるために、屋根の下に設けられた硬質の断熱材層を含め、建築法規が要求するよりも多くの断熱材を設置しました。
またグレイさんはエネルギー効率を向上させるために、屋根の下に設けられた硬質の断熱材層を含め、建築法規が要求するよりも多くの断熱材を設置しました。
リビングルームはキッチンに向かって開けた形になっています。クライアントが希望したミニマリスト的な見た目を得るために、グレイさんは使用する素材の種類を抑えることにしました。彼はキャビネットに天然のメープル材を用いて温かみのある明るい見た目にし、これとコントラストをなすように暗い色の陶磁器製のはねよけタイルを追加しました。クライアントは1999年にVerde社が発売した12×24インチ(約30×60センチ)の“エボック カーボン”タイルを選択し、黒の目地材を施しました。キッチンのカウンタートップにはコンクリートのような見た目を備えた人造石材を用いています。
グレイさんは左側にくぼみを設けてそこに冷蔵庫を設置し、リビングルームからキッチンへの心地良い眺めを遮らないようにしました。右側にあるドアは娘の家につながっています。
グレイさんは深い引き出しの中に調理用具やスパイスなどのための二重の引き出しを追加するなど、キャビネットの内部スペースを全く無駄が出ないよう利用しています。また彼はスペースを節約するために、24インチ(約60センチ)幅の器具を用いています。
グレイさんは左側にくぼみを設けてそこに冷蔵庫を設置し、リビングルームからキッチンへの心地良い眺めを遮らないようにしました。右側にあるドアは娘の家につながっています。
グレイさんは深い引き出しの中に調理用具やスパイスなどのための二重の引き出しを追加するなど、キャビネットの内部スペースを全く無駄が出ないよう利用しています。また彼はスペースを節約するために、24インチ(約60センチ)幅の器具を用いています。
寝室には、24インチ幅の洗濯機と乾燥機が上下に積み重ねられる形でクローゼットの中に収められています。ベッド脇のライトをウォールランプにすることで、設置に必要なスペースを節約できます。高窓は光を取り込みつつ、母家からプライバシーを確保しています。
母親と娘は二人とも背が標準的な人よりも低いため、一般的な高さのキッチンカウンターの流し台で皿洗いをする際には踏み台を用いる必要があります。「歳をとると踏み台を利用するのは危険を伴う可能性があるため、標準的なカウンターの高さから数インチ低くなるよう、カウンターをカスタマイズしました」とグレイさんは話します。「このプロジェクトでは、全ての要素を彼らのニーズにマッチした、ライフスタイルを容易にするためにデザインすることがテーマになっています。」こうして通常より低くカスタマイズされたカウンタートップのおかげで、調理や皿洗いが以前よりも大幅に楽になったのです。
この部屋の反対側には最初の写真に写っていた大きな窓とドアがあります。このスペースで生活する母親の姿を写したこの写真は、建設中に撮影されたものです。最初の写真を見返すと、今現在の美しく植物が育ったプライベートガーデンへの眺めをご覧いただけます。
この部屋の反対側には最初の写真に写っていた大きな窓とドアがあります。このスペースで生活する母親の姿を写したこの写真は、建設中に撮影されたものです。最初の写真を見返すと、今現在の美しく植物が育ったプライベートガーデンへの眺めをご覧いただけます。
「浴室ではデザインの限界を押し広げ、より大胆になれます。私たちは黒いタイルを用いて、この住宅のその他のスペースとコントラストをなすような、洞窟のような雰囲気にすることを決めました」とグレイさんは言います。空へと開けた窓からの眺めも、暗い色の壁とコントラストをなしています。「タイルについては、黒一色のものよりも自然な見た目を追求しました」とグレイさんは言います。彼は天然の石材のような見た目を備え、メンテナンスをあまり必要としない、耐久性の高い陶磁器製のタイルを選びました。
浴室の床は、シャワーの背後にある直線状の排水溝に向かって気付かない程度に傾斜を持たせ、入り口部分に縁石を設けなくてもよいデザインにしています。その以外の高齢者向けの要素には、握り手としても機能するトイレットペーパーホルダーや、シャワーの手持ちヘッドがあります。母親はまだシャワーにつかまり棒を設置しなければならないほど高齢ではありませんが、将来的に必要になった場合に壁の背後に適切な支持要素があるよう、グレイさんはシャワーの背後部分の壁を塞いでいます。
シャワー室にある出っぱり部分は、実はキッチンに設けられた冷蔵庫用のくぼみの裏側にあたります。「このプロジェクトの多くの部分は、スペースを可能な限り効率的にするために形状や寸法をいかにうまく扱うかにかかっていたと言えます」とグレイさんは話します。
また彼はこの浴室の上にある天井裏の空洞部分に、小型の分割式空調システムを追加しています。
一方の壁の端から端まで広がっている鏡は、このスペースを視覚的に拡張します。この鏡は、キャビネットの底面に埋め込まれた帯状のLED照明によって上から照らされるようになっています。
浴室の床は、シャワーの背後にある直線状の排水溝に向かって気付かない程度に傾斜を持たせ、入り口部分に縁石を設けなくてもよいデザインにしています。その以外の高齢者向けの要素には、握り手としても機能するトイレットペーパーホルダーや、シャワーの手持ちヘッドがあります。母親はまだシャワーにつかまり棒を設置しなければならないほど高齢ではありませんが、将来的に必要になった場合に壁の背後に適切な支持要素があるよう、グレイさんはシャワーの背後部分の壁を塞いでいます。
シャワー室にある出っぱり部分は、実はキッチンに設けられた冷蔵庫用のくぼみの裏側にあたります。「このプロジェクトの多くの部分は、スペースを可能な限り効率的にするために形状や寸法をいかにうまく扱うかにかかっていたと言えます」とグレイさんは話します。
また彼はこの浴室の上にある天井裏の空洞部分に、小型の分割式空調システムを追加しています。
一方の壁の端から端まで広がっている鏡は、このスペースを視覚的に拡張します。この鏡は、キャビネットの底面に埋め込まれた帯状のLED照明によって上から照らされるようになっています。
後で追加の窓が加えられてはいますが、この平面図は建設時のADUの平面配置を図示したものです。この平面図の一番下側部分にはプライベートガーデンがあり、娘の住宅はこの平面図の最上部よりも外側に位置しています。グレイさんはADUのデザインを専門としており、これらの平面図は購入可能になっています。
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