世界のHouzzから:木の豊かな可能性を示すイノベーティブな木造住宅 9選
木造といえば伝統建築と思っていませんか? 世界各地で、 木材のすぐれた性質を生かしたイノベーションにあふれる現代的木造住宅が誕生しています。
Junko Kawakami
2016年2月23日
Freelance since 1999.
現代的な木造住宅への関心が世界中で高まっています。木はその土地で生産されるものを利用できてリサイクルも可能なため、サステナブルな社会づくりに貢献できる素材。さらにモジュール生産が比較的容易なこと、周囲の自然と調和する外観などが、木の家が人気となっている理由のようです。世界中の多くの場所で人間は古くから木のそばで暮らし、木で家を作ってきたわけですから、それも不思議ではありません。
有機的な温かさと柔らかな風合いがあり、断熱・蓄熱効果や調湿効果など環境に優しい性質を多く持つ木は、これからの時代に理想的な建材です。今回は、建築史の新たな時代を開く可能性を示す木造建築を9作品をご紹介します。
有機的な温かさと柔らかな風合いがあり、断熱・蓄熱効果や調湿効果など環境に優しい性質を多く持つ木は、これからの時代に理想的な建材です。今回は、建築史の新たな時代を開く可能性を示す木造建築を9作品をご紹介します。
1. 木のもつ性質をありのままに存分に生かした「木のカタマリに住む」家
所在地:日本、静岡県富士宮市
設計:網野禎昭+平成建設
特長:木を大量に使い、健康に暮らせる室内環境をつくりだしている。デッドストックを製材所で直接買い付け、製材所や山で働く人に直接利益を還元。
「木のカタマリに住む」は木造構法を専門とする大学教授である網野禎昭さんと、木造住宅の設計力と大工技術の高さで知られる建設会社、平成建設が協力して設計した家である。
大学で木造構法を教える網野さんは、年老いた両親のために、木のもつ性能を存分に生かして健康的な住環境をつくりたいと考えた。
「木のもつ強さと断熱性、蓄熱性、調湿性、そして人々に心地よさを感じさせるといった多面的な性能があります」と網野さんは話す。この多面的な性能を引き出すため、低市場価値の国産スギ材を大量に使ったこの家をつくりだした。
家の形は、外気の影響を最小限にするため、外壁面積が最小になる正方形の平面にした。屋根の上にはソーラーパネルを置き、熱を供給。加えて、スイス製の薪キッチンの熱も回収してタンクに1トンのお湯を貯め、床暖房や給湯に利用するなど、ローエネルギーの工夫をこらした設計となっている。東西南北にぴったりと配向し、南面をハイサイドライトのみとしているため、室内は光と陰の自然な濃淡に満ちたくつろぎの空間となっている。
所在地:日本、静岡県富士宮市
設計:網野禎昭+平成建設
特長:木を大量に使い、健康に暮らせる室内環境をつくりだしている。デッドストックを製材所で直接買い付け、製材所や山で働く人に直接利益を還元。
「木のカタマリに住む」は木造構法を専門とする大学教授である網野禎昭さんと、木造住宅の設計力と大工技術の高さで知られる建設会社、平成建設が協力して設計した家である。
大学で木造構法を教える網野さんは、年老いた両親のために、木のもつ性能を存分に生かして健康的な住環境をつくりたいと考えた。
「木のもつ強さと断熱性、蓄熱性、調湿性、そして人々に心地よさを感じさせるといった多面的な性能があります」と網野さんは話す。この多面的な性能を引き出すため、低市場価値の国産スギ材を大量に使ったこの家をつくりだした。
家の形は、外気の影響を最小限にするため、外壁面積が最小になる正方形の平面にした。屋根の上にはソーラーパネルを置き、熱を供給。加えて、スイス製の薪キッチンの熱も回収してタンクに1トンのお湯を貯め、床暖房や給湯に利用するなど、ローエネルギーの工夫をこらした設計となっている。東西南北にぴったりと配向し、南面をハイサイドライトのみとしているため、室内は光と陰の自然な濃淡に満ちたくつろぎの空間となっている。
木を使う理由
この家は木のもつ性質(ネイチャー)をありのままに活かしながら、木造建築の新しい価値観の創造をめざした、イノベーティブな建物である。壁と屋根と2階の床はすべて、通常、柱や梁、桁に使う厚さ12センチの平角材を並べて接合しているため、一般的な木造住宅に比べて構造的にも耐火性の面でも非常に強い建物になっている。
厚みのある木の壁、屋根、床は適度に蓄熱するため、住まい手である網野さんのお母さまによれば「極端に寒いとか熱いとか、感じたことがないですね」とのこと。また、木材の処理は防蟻処理のみで、外壁も内壁も塗装などの仕上げはしていないため、将来、一部解体した場合にも再利用しやすく環境負荷が低い。
この家は木のもつ性質(ネイチャー)をありのままに活かしながら、木造建築の新しい価値観の創造をめざした、イノベーティブな建物である。壁と屋根と2階の床はすべて、通常、柱や梁、桁に使う厚さ12センチの平角材を並べて接合しているため、一般的な木造住宅に比べて構造的にも耐火性の面でも非常に強い建物になっている。
厚みのある木の壁、屋根、床は適度に蓄熱するため、住まい手である網野さんのお母さまによれば「極端に寒いとか熱いとか、感じたことがないですね」とのこと。また、木材の処理は防蟻処理のみで、外壁も内壁も塗装などの仕上げはしていないため、将来、一部解体した場合にも再利用しやすく環境負荷が低い。
通常の木造建築の3倍もの量の木材を使っているが、そのすべてが市場価値の低いデッドストックの活用である。例えば、室内の一部の壁に使われているのは、断面にヒビがあったり角に丸みがあるため市場価値の低い製材を束ねてつくったものだが、むしろ丸みのある表面が垣間見えて、壁に表情をつくりだしている。
「規格品優先の木材市場の流通の問題や、消費者が見た目のよい木材 を選ぶといった事情により、十分使えるのに使われていない木材がたくさんあります。これを製材所で直接買い付けました。製材所や山で働く人に直接お金を落とし、山を豊かにしたいと考えてのことです」と網野さんは話す。
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「規格品優先の木材市場の流通の問題や、消費者が見た目のよい木材 を選ぶといった事情により、十分使えるのに使われていない木材がたくさんあります。これを製材所で直接買い付けました。製材所や山で働く人に直接お金を落とし、山を豊かにしたいと考えてのことです」と網野さんは話す。
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2. スウェーデン、木だけでできた集合住宅
所在地:スウェーデン、ストックホルム県スンドビュベリ
設計:イエート・ウィンゴード
施工:〈フォルケム〉
特長:短期間で建設できるモジュール工法。この建物に使われた量の木を育てるのに必要な時間は、スウェーデン全体で計算するとなんと1分間。
ストックホルム郊外、スンドビュベリの町にある8階建ての建物〈ストランドパーケン〉は、現在スウェーデンで最大の木造建造物。著名建築家イエート・ウィンゴードが設計を手がけ、完全木造建築を得意とする建設会社〈フォルケム〉が骨格から内装や外壁までモジュールごとに組み上げた。
都市人口が増えてストックホルムや周辺地域で建設ブームが続く中、持続可能な環境のためのこれからの建材は木材しかないと〈フォルケム〉社は考えている。
所在地:スウェーデン、ストックホルム県スンドビュベリ
設計:イエート・ウィンゴード
施工:〈フォルケム〉
特長:短期間で建設できるモジュール工法。この建物に使われた量の木を育てるのに必要な時間は、スウェーデン全体で計算するとなんと1分間。
ストックホルム郊外、スンドビュベリの町にある8階建ての建物〈ストランドパーケン〉は、現在スウェーデンで最大の木造建造物。著名建築家イエート・ウィンゴードが設計を手がけ、完全木造建築を得意とする建設会社〈フォルケム〉が骨格から内装や外壁までモジュールごとに組み上げた。
都市人口が増えてストックホルムや周辺地域で建設ブームが続く中、持続可能な環境のためのこれからの建材は木材しかないと〈フォルケム〉社は考えている。
木を使う理由
「単純に、木は建材として最高なんです」と〈フォルケム〉マーケティング責任者サンドラ・フランクさんは言う。「木の住まいは健康的で、温かく心地良い雰囲気を作り出してくれますし、音の響き方もいい。そのうえ、サステナブルな未来づくりに貢献できるんですから。」
スウェーデンには木が豊富なことから、木の家づくりの長い伝統があることはご存じの方も多いだろう。しかし、19世紀に木造家屋の火災が頻発したため3階建て以上の木造建築が禁止されていたことはあまり知られていない。スウェーデンがEUに加盟した1994年、ようやく禁止令が解除されて完全木造建築が再び建てられるようになった(耐火性などの基準を満たすことが条件)。
現在、スウェーデンの建築家たちは木造建築の新しい可能性を切り開き、さらに高く、大きく、斬新なデザインの建物が作られている。
「単純に、木は建材として最高なんです」と〈フォルケム〉マーケティング責任者サンドラ・フランクさんは言う。「木の住まいは健康的で、温かく心地良い雰囲気を作り出してくれますし、音の響き方もいい。そのうえ、サステナブルな未来づくりに貢献できるんですから。」
スウェーデンには木が豊富なことから、木の家づくりの長い伝統があることはご存じの方も多いだろう。しかし、19世紀に木造家屋の火災が頻発したため3階建て以上の木造建築が禁止されていたことはあまり知られていない。スウェーデンがEUに加盟した1994年、ようやく禁止令が解除されて完全木造建築が再び建てられるようになった(耐火性などの基準を満たすことが条件)。
現在、スウェーデンの建築家たちは木造建築の新しい可能性を切り開き、さらに高く、大きく、斬新なデザインの建物が作られている。
「私たちは木の建築こそ未来だと考えていますが、それには実にたくさんの裏付けがあるんです。中でもいちばん注目したいのは、スウェーデンの木材の成長スピード。この8階建ての建物で使ったすべての木材と同量の木が育つ時間を計算すると、1分なんです。たった1分ですよ!」とフランクさん。
〈フォルケム〉は現在、2024年までに6,000戸の住宅を建設する計画を提案中だ。著名な建築家たちに設計案を依頼し、見た目に美しく住み心地も快適な住まいを目指している。
「私たちの大きな目標の1つは、建設作業で排出されるCO2量を削減することです。コンクリートの代わりに木の住宅を6,000戸作ると、60万トンのCO2が削減できるんです」とフランクさんは言う。
この集合住宅の施工プロセスを紹介する動画はこちら(英語)
「私たちの大きな目標の1つは、建設作業で排出されるCO2量を削減することです。コンクリートの代わりに木の住宅を6,000戸作ると、60万トンのCO2が削減できるんです」とフランクさんは言う。
この集合住宅の施工プロセスを紹介する動画はこちら(英語)
3. スコットランド、美しい木工家具のようなコテージ
所在地:スコットランド、ダンフリーズ・アンド・ガロウェイ
建築家:〈エコー・リビング〉のサム・ブース
特長:モジュール工法でありつつ、ユニークな手作り感のあるたたずまい
「ブロックロックの小屋」という名のこちらの家は、ソーラーパネルとふんだんな断熱材を味方につけた完全オフグリッド住宅。室内は明るく温かで、狭い床面積を最大限に活用する設計の工夫もされている。
室内の壁に使われているのは、イタリアから輸入した厚さ27ミリのトウヒ材CLT(直交集成板)パネル。1枚の大きさは5×2.05メートルで、壁全体を1枚のパネルで作ることも可能だ。
所在地:スコットランド、ダンフリーズ・アンド・ガロウェイ
建築家:〈エコー・リビング〉のサム・ブース
特長:モジュール工法でありつつ、ユニークな手作り感のあるたたずまい
「ブロックロックの小屋」という名のこちらの家は、ソーラーパネルとふんだんな断熱材を味方につけた完全オフグリッド住宅。室内は明るく温かで、狭い床面積を最大限に活用する設計の工夫もされている。
室内の壁に使われているのは、イタリアから輸入した厚さ27ミリのトウヒ材CLT(直交集成板)パネル。1枚の大きさは5×2.05メートルで、壁全体を1枚のパネルで作ることも可能だ。
木を使う理由
設計会社が工場で前もって建物を作り上げ、出来上がったコテージを現地に運ぶ方法を取っている。これにより、通常の現場で建てる木造建築に比べ、家具作りにも似た細かな仕上げが可能になった。
外壁の仕上げには、地元のスコティッシュラーチ材の板を並べたパネルを、縦と横に向きを変えて交互に配置している。これにより、モジュール構造という特性がより強調されている。
設計会社が工場で前もって建物を作り上げ、出来上がったコテージを現地に運ぶ方法を取っている。これにより、通常の現場で建てる木造建築に比べ、家具作りにも似た細かな仕上げが可能になった。
外壁の仕上げには、地元のスコティッシュラーチ材の板を並べたパネルを、縦と横に向きを変えて交互に配置している。これにより、モジュール構造という特性がより強調されている。
「木で仕上げた室内には温かみが感じられ、普通のしっくい壁では得られないような安らげる手触り感があります」と言うのは建築家のサム・ブースさん。「また、木には室内の湿度を調節する機能があり、蓄熱能力もあるので家をまんべんなく温めることができます。」
「私はもともと家具や木工品を作っていましたので、〈エコー・リビング〉のプロジェクトも一般的な家としてではなく、ある土地に置かれた家具の中に人が住む、というような意識で捉えています」と言う。
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「私はもともと家具や木工品を作っていましたので、〈エコー・リビング〉のプロジェクトも一般的な家としてではなく、ある土地に置かれた家具の中に人が住む、というような意識で捉えています」と言う。
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4. ドイツ、都会を離れてのんびり暮らす木の家
所在地:ドイツ、ベルリン近郊の町ヴァンドリッツ
設計:〈2D+ アルシテクテン〉
特長:建物と家具・収納が一体化したデザイン
以前はベルリンで200平方メートルのアパートメントに暮らしていたオーナーたち。都会暮らしをやめて田舎に移り、なおかつ機能的で快適な新築の家に住みたいと考えていた。この希望を叶えるために建築家チームが作り出したのは、壁にたっぷり収納が作りつけられた、まるでひとつの大きな家具のような家。入居時には、テーブル1つとソファ2つ以外は家具を持ち込む必要がなかったそうだ。
暖炉、窓から庭が眺められるサウナ、特注のキッチンもあり、都会暮らしの頃と同様の便利なライフスタイルが確保できた。
所在地:ドイツ、ベルリン近郊の町ヴァンドリッツ
設計:〈2D+ アルシテクテン〉
特長:建物と家具・収納が一体化したデザイン
以前はベルリンで200平方メートルのアパートメントに暮らしていたオーナーたち。都会暮らしをやめて田舎に移り、なおかつ機能的で快適な新築の家に住みたいと考えていた。この希望を叶えるために建築家チームが作り出したのは、壁にたっぷり収納が作りつけられた、まるでひとつの大きな家具のような家。入居時には、テーブル1つとソファ2つ以外は家具を持ち込む必要がなかったそうだ。
暖炉、窓から庭が眺められるサウナ、特注のキッチンもあり、都会暮らしの頃と同様の便利なライフスタイルが確保できた。
木を使う理由
この家は完全木造で、木造軸組構造に、ラーチ材の外装で仕上げている。断熱材に使ったのも木材(ウッドファイバー)だ。造り付けの家具はホワイトウォッシュ加工をしたオーク材合板で仕上げた。
この家は完全木造で、木造軸組構造に、ラーチ材の外装で仕上げている。断熱材に使ったのも木材(ウッドファイバー)だ。造り付けの家具はホワイトウォッシュ加工をしたオーク材合板で仕上げた。
「小さな敷地内にいろいろな設備を盛り込む必要がありましたが、かといって狭苦しく感じる部屋にはしたくなかったので、木を使ってリラックスした雰囲気を演出しました」と言うのは、この家を設計した2名の建築家チームの1人、マルクス・ボナウアーさん。
「木の住まいというものを総体的な見方で捉えるようにしました。この家は内も外もすべて木でできていて、骨組みも、断熱材も、仕上げ材も木です。基本的にほとんど表面加工はせず、オイル塗装とホワイトウォッシュだけで仕上げました。だから、最終的にはコンポストとして完全に自然に返ることができるんです。」
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「木の住まいというものを総体的な見方で捉えるようにしました。この家は内も外もすべて木でできていて、骨組みも、断熱材も、仕上げ材も木です。基本的にほとんど表面加工はせず、オイル塗装とホワイトウォッシュだけで仕上げました。だから、最終的にはコンポストとして完全に自然に返ることができるんです。」
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5. ロシア、週末を過ごす別荘ドーム
所在地:ロシア、モスクワから北に1時間のゼレノグラード区
プロジェクトクリエーター:〈スカイドーム〉 社
特長:大量の積雪にも耐えられる形状
こちらの風変りなドーム形の建物は、オーナーにとってのドリームハウス。直径9メートルの家の中はゆったりとして、休日を過ごすにはぴったりのシンプルで温かな雰囲気だ。建設期間は2か月で、球形のシェル自体が骨格を兼ねているため、同じ規模の一般的な家に比べて構造強度は2倍以上となっている。外側はシベリアンラーチ材のこけら板で覆われ、基本構造と室内にはパイン材を使用。構造の強度の鍵となるパイン材の接合部分は、航空宇宙エンジニアが設計し、最先端の技術を駆使して作られた。この家は1平方メートルあたり最大700キロの積雪に耐えることができる。
耐力壁を室内につくらずにすむため、レイアウトは実に自由にデザインできる。独特な形状で熱損失が低いため、暖房コストも半分で済む。
所在地:ロシア、モスクワから北に1時間のゼレノグラード区
プロジェクトクリエーター:〈スカイドーム〉 社
特長:大量の積雪にも耐えられる形状
こちらの風変りなドーム形の建物は、オーナーにとってのドリームハウス。直径9メートルの家の中はゆったりとして、休日を過ごすにはぴったりのシンプルで温かな雰囲気だ。建設期間は2か月で、球形のシェル自体が骨格を兼ねているため、同じ規模の一般的な家に比べて構造強度は2倍以上となっている。外側はシベリアンラーチ材のこけら板で覆われ、基本構造と室内にはパイン材を使用。構造の強度の鍵となるパイン材の接合部分は、航空宇宙エンジニアが設計し、最先端の技術を駆使して作られた。この家は1平方メートルあたり最大700キロの積雪に耐えることができる。
耐力壁を室内につくらずにすむため、レイアウトは実に自由にデザインできる。独特な形状で熱損失が低いため、暖房コストも半分で済む。
木を使う理由
「環境に優しいライフスタイルというのは、自然に敬意を払うだけではなく、資源を正しく適切に利用して快適な暮らしを実現することだと思います。これからの時代は賢い選択をしていくことが不可欠だと思うのですが、この家はそれをよく表していると思います」と住まい手は言う。
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「環境に優しいライフスタイルというのは、自然に敬意を払うだけではなく、資源を正しく適切に利用して快適な暮らしを実現することだと思います。これからの時代は賢い選択をしていくことが不可欠だと思うのですが、この家はそれをよく表していると思います」と住まい手は言う。
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6. ニュージーランド、木造ビーチハウス
所在地:ニュージーランド、マヒア半島
建築家:ジュリアン・ガスリー
特長:施主が所有する土地でとれた木を利用
木の家はニュージーランドの建築文化に深く根付いている。先住民族も、のちにやって来たヨーロッパ人も家作りには主に木を用いてきた。また最近では世界各地で、室内・屋外を問わずサステナブルな木材利用を目指す動きがあり、進化した木造建築も見られるようになった。
ちょうどこちらのビーチハウスの建設中に、クライアントが所有する別の敷地内で、この地方に自生するカヒカテアの大木が倒れた。クライアントは倒木をビーチハウスに使えないかと建築家のジュリアン・ガスリーさんに相談し、室内の壁板として利用することになった。外壁に使ったシーダー材の羽目板とうまく調和している。
所在地:ニュージーランド、マヒア半島
建築家:ジュリアン・ガスリー
特長:施主が所有する土地でとれた木を利用
木の家はニュージーランドの建築文化に深く根付いている。先住民族も、のちにやって来たヨーロッパ人も家作りには主に木を用いてきた。また最近では世界各地で、室内・屋外を問わずサステナブルな木材利用を目指す動きがあり、進化した木造建築も見られるようになった。
ちょうどこちらのビーチハウスの建設中に、クライアントが所有する別の敷地内で、この地方に自生するカヒカテアの大木が倒れた。クライアントは倒木をビーチハウスに使えないかと建築家のジュリアン・ガスリーさんに相談し、室内の壁板として利用することになった。外壁に使ったシーダー材の羽目板とうまく調和している。
木を使う理由
ガスリーさんが外装の大部分に木を使ったのは、いくつかの理由がある。木は年を経ると風合いが出て、建物が周囲の自然のなかに溶け込むことがそのひとつ。
透明オイル塗装をしたシーダー材の羽目板はメンテナンスに手間がかからず、潮風にさらされる海沿いの気候には理想的な素材だ。オイルが木の乾燥やカビによる劣化を防いで耐久性を高めつつ、時間が経つにつれ自然な風合いが生まれてくる。シーダー材はステイン塗装をしない場合、数年後には色あせてシルバーグレーの色合いになる。
ガスリーさんの設計には、木を主要素材に使うことが多いと言う。「木は、そのままにするか塗装するかで、さまざまな仕上がりや味わいが生まれます。木の自然な質感は建物に有機的な温かみを与えてくれるので、ますます都市化が進んで複雑化する現代社会では大切ですね。」
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ガスリーさんが外装の大部分に木を使ったのは、いくつかの理由がある。木は年を経ると風合いが出て、建物が周囲の自然のなかに溶け込むことがそのひとつ。
透明オイル塗装をしたシーダー材の羽目板はメンテナンスに手間がかからず、潮風にさらされる海沿いの気候には理想的な素材だ。オイルが木の乾燥やカビによる劣化を防いで耐久性を高めつつ、時間が経つにつれ自然な風合いが生まれてくる。シーダー材はステイン塗装をしない場合、数年後には色あせてシルバーグレーの色合いになる。
ガスリーさんの設計には、木を主要素材に使うことが多いと言う。「木は、そのままにするか塗装するかで、さまざまな仕上がりや味わいが生まれます。木の自然な質感は建物に有機的な温かみを与えてくれるので、ますます都市化が進んで複雑化する現代社会では大切ですね。」
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7. チリ、木と廃材を利用したモジュラーハウス
所在地:チリ、サンティアゴ首都州クラカビ
建築家:〈ジェイムズ&マウ・アルキテクトゥラ〉(ジェイミー・ガズテル、マウリシオ・ガレアノ)、サステナブルなモジュラー住宅に特化した建設会社〈インフィンスキ〉
特長:リサイクルしたパレットと廃材を全体に使用
チリ、コロンビア、スペインでサステナブルな家づくりを専門とする建設会社〈インフィンスキ〉が手掛けたのが、こちらの〈マニフェストハウス〉。同社の哲学を表明したマニフェストのような家、ということでこの名前が付けられた。その哲学とは、その土地の生態系や気候に合わせたモジュール式設計でエネルギー消費を抑えること、再生材・廃材の利用、環境を汚さない建設システム、そして再生可能エネルギーを全面的に取り入れることだ。
家を構成しているのは、3つの船舶コンテナと、その外側を覆う木製ダブルスキン構造。家の片面の壁には、板を水平方向に並べたパネル、もう片面には古い木製パレットが使われている。パレットの方は1つずつ開閉することができ、日射量を調節できる。
所在地:チリ、サンティアゴ首都州クラカビ
建築家:〈ジェイムズ&マウ・アルキテクトゥラ〉(ジェイミー・ガズテル、マウリシオ・ガレアノ)、サステナブルなモジュラー住宅に特化した建設会社〈インフィンスキ〉
特長:リサイクルしたパレットと廃材を全体に使用
チリ、コロンビア、スペインでサステナブルな家づくりを専門とする建設会社〈インフィンスキ〉が手掛けたのが、こちらの〈マニフェストハウス〉。同社の哲学を表明したマニフェストのような家、ということでこの名前が付けられた。その哲学とは、その土地の生態系や気候に合わせたモジュール式設計でエネルギー消費を抑えること、再生材・廃材の利用、環境を汚さない建設システム、そして再生可能エネルギーを全面的に取り入れることだ。
家を構成しているのは、3つの船舶コンテナと、その外側を覆う木製ダブルスキン構造。家の片面の壁には、板を水平方向に並べたパネル、もう片面には古い木製パレットが使われている。パレットの方は1つずつ開閉することができ、日射量を調節できる。
木を使う理由
「外装に木を利用したのは、周囲の風景との調和を考えただけではなく、家の表面に通気路となる層を作りたかったからです。安くてこの地域で手に入りやすい素材ということで、リサイクルしたパレットと、この地方に多いパイン材を使い、艶消しのニスで仕上げました。解体現場から手に入れたオレゴンパイン材を使って室内の家具も作りました」と建築家のジェイミー・ガズテルさんとマウリシオ・ガレアノさんは言う。
開閉できるパレットパネルのおかげで、木製ダブルスキンの外装を自由に操作できる。冬場はパレットを開け放すことで日光が金属のコンテナの壁を暖め、CO2排出量ゼロの暖房の役割を果たす。夏の間はパレットを閉めると、日光による室温上昇を防ぐと同時に、コンテナと木の間の層に空気が流れて天然のエアコンのような効果がある。
「外装に木を利用したのは、周囲の風景との調和を考えただけではなく、家の表面に通気路となる層を作りたかったからです。安くてこの地域で手に入りやすい素材ということで、リサイクルしたパレットと、この地方に多いパイン材を使い、艶消しのニスで仕上げました。解体現場から手に入れたオレゴンパイン材を使って室内の家具も作りました」と建築家のジェイミー・ガズテルさんとマウリシオ・ガレアノさんは言う。
開閉できるパレットパネルのおかげで、木製ダブルスキンの外装を自由に操作できる。冬場はパレットを開け放すことで日光が金属のコンテナの壁を暖め、CO2排出量ゼロの暖房の役割を果たす。夏の間はパレットを閉めると、日光による室温上昇を防ぐと同時に、コンテナと木の間の層に空気が流れて天然のエアコンのような効果がある。
しかし、木を利用した家作りには難しいところもあるようだ。「もっともっと木を使いたいんですが、プロジェクトに必要な条件をすべて満たし、なおかつ森林認証を受けた木材を使おうとすると、かなり高価になってしまいます。それに、木の家はメンテナンスも必要ですが、それを面倒だと思う人もいます。ですから私たちの場合、通常は家の構造自体や外装よりも、室内に木を使うことの方がずっと多いですね」と建築家の2人は言う。
彼らのプロジェクトで使う木材は、家などの解体現場で出る廃材がほとんどだ。「この家の木材は、チリのバルパライソで見つけました。オレゴンパインや月桂樹で、100年ほど前のものなので、安定性も十分です。」
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彼らのプロジェクトで使う木材は、家などの解体現場で出る廃材がほとんどだ。「この家の木材は、チリのバルパライソで見つけました。オレゴンパインや月桂樹で、100年ほど前のものなので、安定性も十分です。」
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8. オーストリア、森に溶け込む高層住宅
所在地:オーストリア、カッチュベルク
設計:〈マテオ・トゥン&パートナーズMatteo Thun & Partners〉
特長:木製グリッドの外壁で、風景に溶け込む高層ビル
オーストリアのザルツブルク州とケルンテン州の州境、カッチュベルク峠の景観と一体化したようにたたずむのが、2棟の高層住宅〈エーデルワイス・レジデンス〉。スキー客など、山で冬を過ごす人たちが滞在する場所として66戸が用意されている。近くのホテルで廃材を利用したバイオマス発電を行っており、そこから暖房をまかなっているため、この建物のために新たに配電設備を設置する必要はなかった。
外装に使ったのは地元産のラーチ材。アパートメント内の家具にもこの木材が多く使われている。
所在地:オーストリア、カッチュベルク
設計:〈マテオ・トゥン&パートナーズMatteo Thun & Partners〉
特長:木製グリッドの外壁で、風景に溶け込む高層ビル
オーストリアのザルツブルク州とケルンテン州の州境、カッチュベルク峠の景観と一体化したようにたたずむのが、2棟の高層住宅〈エーデルワイス・レジデンス〉。スキー客など、山で冬を過ごす人たちが滞在する場所として66戸が用意されている。近くのホテルで廃材を利用したバイオマス発電を行っており、そこから暖房をまかなっているため、この建物のために新たに配電設備を設置する必要はなかった。
外装に使ったのは地元産のラーチ材。アパートメント内の家具にもこの木材が多く使われている。
木を使う理由
「木は、オーストリアの山岳地方の心とも言えるものです。建物が長く愛されるためには、視覚的にも自然の風景の一部とならなければなりません。また、サステナブルで長期間の耐久性があることも必要です」と言うのは、このビルを手がけたイタリアの著名な建築家、マテオ・トゥンさん。この地方に多いラーチ材は建設現場の近くで入手でき、運搬が短距離で済んだため汚染物質の排出も軽減できた。
「木は、オーストリアの山岳地方の心とも言えるものです。建物が長く愛されるためには、視覚的にも自然の風景の一部とならなければなりません。また、サステナブルで長期間の耐久性があることも必要です」と言うのは、このビルを手がけたイタリアの著名な建築家、マテオ・トゥンさん。この地方に多いラーチ材は建設現場の近くで入手でき、運搬が短距離で済んだため汚染物質の排出も軽減できた。
「木は、光や空気や湿気などに触れることで風合いや艶が出て、時間を経るごとに味わいが増します」とトゥンさんは言う。「手触りがあたたかく滑らかで、なおかつ硬くしっかりとしているので、安心感を与えてくれます。」
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9. デンマーク、兄弟で建てた低エネルギーの木の家
所在地:デンマーク、オーフス
設計:〈ラスムス・イェンセン・アルキテクト MAA〉
大工:ペル・クレメンス・イェンセン
施工:〈ブリックス&イェンセン 〉
特長:兄弟チームの作った低エネルギー住宅
家族、そして兄弟というのは特別な関係だ。家を建てるのはなかなかの一大事だが、弟は大工で兄は建築家というこちらの兄弟チームにかかると何のその。2人の手掛けたこちらの低エネルギー木造住宅は、学際的な開発プロジェクト「ホーム・フォー・ライフ」の一環として、4つの住宅区画の1つに建てられている。この実験的プロジェクトでは、ほかにもいくつかの企業が参加して低エネルギー住宅を作っている。
所在地:デンマーク、オーフス
設計:〈ラスムス・イェンセン・アルキテクト MAA〉
大工:ペル・クレメンス・イェンセン
施工:〈ブリックス&イェンセン 〉
特長:兄弟チームの作った低エネルギー住宅
家族、そして兄弟というのは特別な関係だ。家を建てるのはなかなかの一大事だが、弟は大工で兄は建築家というこちらの兄弟チームにかかると何のその。2人の手掛けたこちらの低エネルギー木造住宅は、学際的な開発プロジェクト「ホーム・フォー・ライフ」の一環として、4つの住宅区画の1つに建てられている。この実験的プロジェクトでは、ほかにもいくつかの企業が参加して低エネルギー住宅を作っている。
木を使う理由
この家が消費する電力は、年間わずか1,700 kWh。これに比べ、2014年におけるアメリカの住宅の年間平均電力消費量は10,932 kWhだった。(米国エネルギー情報局調べ)
電力消費量が低い理由は、木製の断熱材を強化したことと、エネルギー効率の高いトリプルガラス窓を取り入れたこと。トリプルガラスの接合部分には高機能な複合素材を使っている。セントラルヒーティングがなくても、家が断熱性に優れているため地熱冷暖房システムで1年中快適に過ごすことができる。
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この家が消費する電力は、年間わずか1,700 kWh。これに比べ、2014年におけるアメリカの住宅の年間平均電力消費量は10,932 kWhだった。(米国エネルギー情報局調べ)
電力消費量が低い理由は、木製の断熱材を強化したことと、エネルギー効率の高いトリプルガラス窓を取り入れたこと。トリプルガラスの接合部分には高機能な複合素材を使っている。セントラルヒーティングがなくても、家が断熱性に優れているため地熱冷暖房システムで1年中快適に過ごすことができる。
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家を建てた時は天井に木を貼りたいとか、表し柱にしたいとか、外壁の一部をアクセントで本物の木を使いたいとか...色々とアイデアあったのですが、現実は結局火災保険の割引が無効になるんで木に関するアイデアは全てキャンセルしました。
木の柄が印刷されたクロスはその出来栄えも素晴らしかったのですがやっぱり違うだろと和室の天井も他の天井と一緒のクロスで統一。やらない時は全くやらない決心も大切かと。
現在自宅の新築を建設中。
無添加住宅を販売しているさつまホームさんにお願いしました。
無垢財と漆喰のおうち。
住宅も私が使う楽器も、樹には大変お世話になっております。
I am building new my house made of wood and Japanse SHIKKUI plaster.
All of my musical instruments also made of wood.
Thank you for sharing this post.