Houzzツアー:川に寄り添うように立つ、風景とつながる小さな家
「驚くほど小さいけれど快適そうな家がある」とHouzzの海外読者から高い注目を集める家があります。4人家族が川辺の風景を楽しみながらゆったり暮らせるように設計した、工夫にあふれる家をご紹介します。
Junko Kawakami
2016年11月7日
Freelance since 1999.
世界有数の過密都市であり、土地の高い東京では、条件のいい広い敷地を手に入れることは難しい。そのため、クセのある条件の敷地を手に入れて家を建てるケースも珍しくない。同時に、こうした厳しい条件があるからこそ、日本の建築家たちは創意工夫にあふれる優れた住宅を生み出している。
今回紹介する《堀ノ内の住宅》も、まさにそんな1例だ。ハウズに掲載されて以来、海外の数多くのユーザーが写真が保存したプロジェクトなので、記事として紹介させていただくこととなった。設計を担当したのは、〈水石浩太建築設計室〉を主宰する建築家の水石浩太さんだ。
住まい手は、家具設計の仕事をしている会社員の夫、家で仕事をする妻、小さな子どもが2人という家族。この地区の賃貸マンションに暮らしていたが、いずれ家を建てたいと考えており、近所で通りかかる水石さんの事務所に目を留めた。予算は潤沢とはいえないが、できればこの近くで土地を手に入れて家を建てたいとのこと。住まい手と水石さんの両方が土地探しを続けるうちに出てきたのが、非常に幅の狭い、川沿いの狭小の土地だった。
今回紹介する《堀ノ内の住宅》も、まさにそんな1例だ。ハウズに掲載されて以来、海外の数多くのユーザーが写真が保存したプロジェクトなので、記事として紹介させていただくこととなった。設計を担当したのは、〈水石浩太建築設計室〉を主宰する建築家の水石浩太さんだ。
住まい手は、家具設計の仕事をしている会社員の夫、家で仕事をする妻、小さな子どもが2人という家族。この地区の賃貸マンションに暮らしていたが、いずれ家を建てたいと考えており、近所で通りかかる水石さんの事務所に目を留めた。予算は潤沢とはいえないが、できればこの近くで土地を手に入れて家を建てたいとのこと。住まい手と水石さんの両方が土地探しを続けるうちに出てきたのが、非常に幅の狭い、川沿いの狭小の土地だった。
善福寺川と狭い道に囲まれた、幅の狭い三角形の土地だ。狭さに加え、この土地にはさらに問題があった。住宅を建てるには幅4メートル以上の道路に2メートル(ないし3メートル)以上接しなければならないとする建築基準法第43条の「接道義務」があるが、これを満たしていないのだ。家を建てるとなれば、特例許可が必要となるため、さまざまな申請業務や、規制を考慮した設計の工夫が必要となる。
となれば、当然、買い手はつきにくい。周辺の相場よりかなり安い価格で売りに出されたのを住まい手が見つけて、家を建てられるだろうか、と水石さんに相談。どのくらいの広さが確保できるか検討した上で、工夫をすればなんとかなるだろう、と判断し、家づくりが始まった。
となれば、当然、買い手はつきにくい。周辺の相場よりかなり安い価格で売りに出されたのを住まい手が見つけて、家を建てられるだろうか、と水石さんに相談。どのくらいの広さが確保できるか検討した上で、工夫をすればなんとかなるだろう、と判断し、家づくりが始まった。
どんなHouzz?
《堀ノ内の住宅》
所在地:東京都
住まい手:夫婦、小さな娘2人
構造・規模:木造、2階建て
設計:水石浩太建築設計室
構造設計:長坂設計工舎
照明設計:中島龍興照明デザイン研究所
敷地面積:52.14平方メートル
建築面積:29.07平方メートル
延床面積:55.24平方メートル
施工:平野建設
予算的な事情もあり、構造は木造を選択。建物の幅がないので地震の際に短手方向に倒れる力がかかりやすいが、柱をたくさん立てると室内空間が細切れになってしまう。そこで、耐力小壁により構造を強化しつつ、ゆるやかに室内をゾーニングした。
《堀ノ内の住宅》
所在地:東京都
住まい手:夫婦、小さな娘2人
構造・規模:木造、2階建て
設計:水石浩太建築設計室
構造設計:長坂設計工舎
照明設計:中島龍興照明デザイン研究所
敷地面積:52.14平方メートル
建築面積:29.07平方メートル
延床面積:55.24平方メートル
施工:平野建設
予算的な事情もあり、構造は木造を選択。建物の幅がないので地震の際に短手方向に倒れる力がかかりやすいが、柱をたくさん立てると室内空間が細切れになってしまう。そこで、耐力小壁により構造を強化しつつ、ゆるやかに室内をゾーニングした。
土手の上の遊歩道を挟んで、川に寄り添うように立つ家。敷地の三角形の鋭角部分を切り落とし、その面にも窓を設置しているため、家の3面から川を眺めることができる。
1階の一部の凹んで見える部分は、駐車スペースを想定。「この小さな敷地に車を駐めるスペースがほしいと要望されたときにはちょっとびっくりしましたが、軽自動車限定ではありますが、ここに確保できました」と水石さん。
1階の一部の凹んで見える部分は、駐車スペースを想定。「この小さな敷地に車を駐めるスペースがほしいと要望されたときにはちょっとびっくりしましたが、軽自動車限定ではありますが、ここに確保できました」と水石さん。
外壁は1階部分を窯業サイディング材の横張りに、2階部分をあずき色のガルバリウム鋼板を縦張りにした。全体を同じ仕上げにするともたついた印象になるので、軽快さを出すために張り方を変えている。2階の張り出し部分で仕上げを切り替えているので、張り出し部分が強調されてシャープな印象になっている。
また、屋根面が急勾配なので、思い切って軒樋を設けないことで、屋根と壁面を一体として見せている。「樋を設けないのは結構勇気がいりますが、基礎の外周にU字溝を設け、そこで雨水を処理することで問題なくしています」と水石さん。
また、屋根面が急勾配なので、思い切って軒樋を設けないことで、屋根と壁面を一体として見せている。「樋を設けないのは結構勇気がいりますが、基礎の外周にU字溝を設け、そこで雨水を処理することで問題なくしています」と水石さん。
敷地の地面が川沿いの遊歩道より下がっているため、1階の空間は歩行者から見下ろされる位置にある。そこで、メインの生活空間となるLDKは2階に置き、遊歩道や川辺の風景を眺められるようにした。写真は竣工当時のものだが、今では木立が適度に生い茂り、歩行者の目線をさりげなく遮っている。
川のそばの低地という、水害の可能性もある地域であるため、1階の床面は地面から60センチ上げ、床下は湿気対策として24時間換気を実施。玄関は引き戸とし、可動の階段でアプローチする。
また、玄関口のところも、幅、高さともに約10センチほどのコンクリート製(ステンレス張り)の敷居をまたいで入る形になっている。水害対策として少しでも基礎を立ち上げておきたいという住まい手の要望に応えたものだ。
また、玄関口のところも、幅、高さともに約10センチほどのコンクリート製(ステンレス張り)の敷居をまたいで入る形になっている。水害対策として少しでも基礎を立ち上げておきたいという住まい手の要望に応えたものだ。
1階は玄関スペースとベッドルームとバス・トイレがある。
玄関を入ると、モルタル仕上げのコンクリート床があり、2階のLDKへ上がる階段が伸びている。写真右手に見える造作による大きな靴箱は、下部が床に密着していないので、空間にゆとりが感じられる。階段下も洗濯機や収納をもうけて空間を無駄なく利用している。
玄関を入ると、モルタル仕上げのコンクリート床があり、2階のLDKへ上がる階段が伸びている。写真右手に見える造作による大きな靴箱は、下部が床に密着していないので、空間にゆとりが感じられる。階段下も洗濯機や収納をもうけて空間を無駄なく利用している。
ベッドルーム部分の床は、カバザクラ材の無垢のフローリング。「カバザクラは値段が比較的手頃で、質のよい素材。予算に限りがあっても、できるだけ質のよいものを使いたいと思っています」と水石さん。小さな引き出しが並ぶアンティークの家具は、住まい手が以前からもっていたもの。
ベッドルームとモルタル床の部分の間は、天井からのカーテンで仕切る。ベッドの奥にクローゼットがあるが、ここも扉をつけずカーテンで隠している。コストをおさえられる上に、カーテンの透明感のある柔らかい質感は、閉じたときにも閉塞感を生まないというメリットもある。
トイレとバスルームの間はガラス壁とし、色を白で統一することにより、空間に広がりを感じさせている。
階段をのぼると、LDKが広がっている。写真奥に予備室があり、リビングとの間にある両側の耐力小壁でゆるやかに仕切られている。
道路側の下の棚(写真左側)は、オーディオが好きな住まい手のため、機器やCDのサイズに合わせた棚を造作したもの。手前のパソコンデスクは家で仕事をする奥さまのワークスペースだ。川側の窓辺にはベンチを造作して、ソファのように使用し、下は収納として空間を有効利用。夜はカーテンでプライバシーを守る。
真上にロフトがある(後述)ためリビングは天井高が低いのだが、両側が大きな窓面となっているため、天井の低さを感じさせない。
道路側の下の棚(写真左側)は、オーディオが好きな住まい手のため、機器やCDのサイズに合わせた棚を造作したもの。手前のパソコンデスクは家で仕事をする奥さまのワークスペースだ。川側の窓辺にはベンチを造作して、ソファのように使用し、下は収納として空間を有効利用。夜はカーテンでプライバシーを守る。
真上にロフトがある(後述)ためリビングは天井高が低いのだが、両側が大きな窓面となっているため、天井の低さを感じさせない。
限られた空間を有効に使う工夫の1つが、ベンチの座面と出窓の外部デッキ面を揃えたこと。窓を開け放つと一体となって奥行きが生まれ、テラスのように使える。
三角形の鋭角部分にあるスペースに、キッチンとダイニングをまとめている。
屋根の形に沿った勾配天井は高さがあり、ペンダントライトがその高さを意識させるため、床面積が小さい空間でもゆったりと感じる。ダウンライトを中心とする、主張せずに空間の質をさりげなく高める照明は〈中島龍興照明デザイン研究所〉が担当した。
屋根の形に沿った勾配天井は高さがあり、ペンダントライトがその高さを意識させるため、床面積が小さい空間でもゆったりと感じる。ダウンライトを中心とする、主張せずに空間の質をさりげなく高める照明は〈中島龍興照明デザイン研究所〉が担当した。
キッチンからリビング方向を眺めると、リビングの上にロフトが見える。広さは6畳弱。子どものかっこうの遊び場だが、キッチンやダイニングにいる家族ともつねにつながりを感じられる空間だ。リビングとの間も、耐力小壁で仕切られている。
キッチンとリビングを挟んで反対側の端は予備室で、現在は収納スペースとして使用している。
天窓から光が入るロフト。実は、2つあるうちの南側の天窓は、上棟後に追加を決意したもの。天窓には採光に加え、建物上部に集まった熱を逃がす効果があるが、南側に設けると日射を取り込みすぎて暑くなるリスクもある。
南側の天窓を思い切って設けたことで、ロフトからも、家の両端の窓と天窓の3方向から、川や空といった風景が抜けて見えるので、外とのつながりを感じられる。
ロフトからキッチンを見下ろしたところ。
「設計の依頼を受けたら、必ず何か価値を生み出したいと思っています」と水石さん。買い手のつかない条件の悪い土地から長所を読み取って、心地よい暮らしの空間を生み出した《堀ノ内の住宅》は、まさに価値を生み出した1例だ。
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水石浩太様の設計建築素晴らしいですね。弊社が浸透性の遮水材をRC構造物大谷石大理石タイルタイル目地他に施工してる関係で河川の側の住宅という事で気に成りコメントします。海河川に近いエリアで外壁に問題を抱えてる御家が多いのです。外壁にシラス壁、凹凸のある外壁仕上げをしてて黒カビ・緑苔・川藻が強風で飛んできて外壁に付着して建築2年位で汚れた外壁に成るのです。ガルバリウム鋼板の外壁ならそう言う問題もないでしょうね。
海、河川に近いエリアは特に外壁の材料・仕上げに注意が必要だと感じています。お施主様の希望と違う仕様になるかもしれませんが、大切な仕様打ち合わせの時にその辺をお話しするのか?希望通りに受け入れするのか?後々お施主様は維持管理で苦労しますから。専門家としての意見を伝えることは大事ですね。この住宅は外壁の維持管理が良さそうですね。風通し良く使い心地良さそうですね。勉強になりました。
Osobenno romantichen tualet za zanaveskoi :)))))))