低予算で期間限定。建築家が建てた「仮住まいの自邸」
低予算で期間限定、用途の変更可。家族で暮らす建築家の9坪の平屋には、新しい住まいのヒントがつまっています。

杉田真理子
2020年11月17日
将来、妻の実家の敷地に住まうことが確定しているものの、まだ新居を建てる状況ではなかったというN.A.Oの建築家・加藤直樹さん。思いついたのは、敷地の一角に必要最低限の予算で、将来はオフィスや教室、店舗などに転用できる仮住宅でした。
どんなHouzz?
所在地:神奈川県秦野市
住まい手:建築家の夫、妻、6歳、4歳、0歳になる3人の息子たち
敷地面積:全体敷地面積約1000㎡・分割利用敷地面積108.02㎡
建築面積:31.67㎡
延床面積:31.67㎡
構造:木造在来工法/平屋建
設計:N.A.O/加藤直樹
施工:株式会社バウムスタンフ
竣工時期:2018年12月
3人目が生まれたばかりという加藤さん。現在、夫婦と男児3人の5人家族で、約9坪の平屋に暮らしています。
加藤さんの自邸があるのは、妻の実家である1000平米ほどの敷地内。独立当時はアパートに家族で暮らしていましたが、子育てなどタイミングが重なり、妻の実家に引っ越す事になりました。
「最初は同居ではなく、別途家を建てる事になりました。敷地内に使われていない牛小屋があったのですが、ここにとりあえず建ててみることにしたんです」と加藤さん。子供が大きくなるまでの期間内、10年を期限にこの平屋で過ごし、将来母屋に移る際は、オフィスやヨガ教室、ピアノ教室などに転用する予定です。
「敷地が広いのでスペースに余裕はありますし、2~3階建ての建物もつくることはできました。しかし、あえて振り切った予算で、必要最小限の空間にしようと決めました」と加藤さんは話します。当初予算は500万円、そして最終的にかかったのは720万円。ローンを組まず、必要最小限、かつ心地よく生活できる設計計画を組みました。
所在地:神奈川県秦野市
住まい手:建築家の夫、妻、6歳、4歳、0歳になる3人の息子たち
敷地面積:全体敷地面積約1000㎡・分割利用敷地面積108.02㎡
建築面積:31.67㎡
延床面積:31.67㎡
構造:木造在来工法/平屋建
設計:N.A.O/加藤直樹
施工:株式会社バウムスタンフ
竣工時期:2018年12月
3人目が生まれたばかりという加藤さん。現在、夫婦と男児3人の5人家族で、約9坪の平屋に暮らしています。
加藤さんの自邸があるのは、妻の実家である1000平米ほどの敷地内。独立当時はアパートに家族で暮らしていましたが、子育てなどタイミングが重なり、妻の実家に引っ越す事になりました。
「最初は同居ではなく、別途家を建てる事になりました。敷地内に使われていない牛小屋があったのですが、ここにとりあえず建ててみることにしたんです」と加藤さん。子供が大きくなるまでの期間内、10年を期限にこの平屋で過ごし、将来母屋に移る際は、オフィスやヨガ教室、ピアノ教室などに転用する予定です。
「敷地が広いのでスペースに余裕はありますし、2~3階建ての建物もつくることはできました。しかし、あえて振り切った予算で、必要最小限の空間にしようと決めました」と加藤さんは話します。当初予算は500万円、そして最終的にかかったのは720万円。ローンを組まず、必要最小限、かつ心地よく生活できる設計計画を組みました。
自然が豊かなこの地域には、山も湖もあります。「午前は登山をし、午後から仕事というライフスタイルもできます」と加藤さん。都心まで電車で1時間という、利便性が良い土地でもあります。
外構には、価格も手ごろなガルバリウム鋼板のGL生地を用いました。「経年変化により、酸化して色がくすんでいく鉄板」という特徴に惹かれたと、加藤さんは説明します。
外構には、価格も手ごろなガルバリウム鋼板のGL生地を用いました。「経年変化により、酸化して色がくすんでいく鉄板」という特徴に惹かれたと、加藤さんは説明します。
玄関の位置は、向にある母屋の引き戸と位置を揃えました。日頃から、母屋との行き来は頻繁にあります。
室内は、限られた空間のなかで収納力をいかにあげるかを意識して設計しました。収納における可動性を意識し、棚は可動式になっています。
Houzzで建築家を探す
室内は、限られた空間のなかで収納力をいかにあげるかを意識して設計しました。収納における可動性を意識し、棚は可動式になっています。
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玄関から室内に入ると、リビング、ダイニング、キッチンがワンルームで構成されています。
内装は、床、壁、天井、棚、キッチンカウンター等、全て構造用合板を採用しました。「木目の強さや色味等の要素が多い為か、何を置いても何となく絵になるんです」と加藤さん。生活感が出たり部屋が乱雑になっても、あまり気にならないと話します。
内装は、床、壁、天井、棚、キッチンカウンター等、全て構造用合板を採用しました。「木目の強さや色味等の要素が多い為か、何を置いても何となく絵になるんです」と加藤さん。生活感が出たり部屋が乱雑になっても、あまり気にならないと話します。
「あえてものを見せ、ごちゃごちゃ感を雑貨屋のようにカッコよく見せたいなと思いました」と加藤さん。
これが合板ではなく、例えば真っ白な空間であれば、このような収納をすると煩雑な印象になってしまうでしょう。「要素の多さ」を意識した思い切ったデザインだからこそ、ものが多くてもスタイリッシュ にまとまって見えます。
気づけば好きになっている。「合板」の魅力
これが合板ではなく、例えば真っ白な空間であれば、このような収納をすると煩雑な印象になってしまうでしょう。「要素の多さ」を意識した思い切ったデザインだからこそ、ものが多くてもスタイリッシュ にまとまって見えます。
気づけば好きになっている。「合板」の魅力
LDKには可動棚を多く設け、それらを可動させることにより、レイアウトの変更が可能となっています。現在は、クローゼットや子供の机にも、可動棚を転用しているとのこと。
構造は全て外壁側で成り立たせ、内部には柱を建てない設計としました。間ごとに細かく機能をつけないことで、大幅なレイアウト変更が可能です。
構造は全て外壁側で成り立たせ、内部には柱を建てない設計としました。間ごとに細かく機能をつけないことで、大幅なレイアウト変更が可能です。
家づくりにおいて、「決めなければいけないストレス」を感じる人が多いと、加藤さんは話します。「設計の段階で、どこで何をするのか、それぞれの用途を細かく決めることが一般的です。でも、長期間住む住宅なのに、設計時に全て決められる訳がないというのが、僕の考えです」
石膏ボードやビニールクロスなど、用途を先に決めておく必要がある素材は出来るだけ使わず、下地材でもある合板を使用するなど、フレキシブルに変化できる空間づくりを大切にしていると加藤さん。「タオル掛けひとつとっても、時間をかけて決定したけど、実際住んでみたらいらなかった、ということもありますよね。決めないことは決めない、後から考える、後から変更できる。絶対決めなければいけないこと以外は決定しない、という思想が大切です」
石膏ボードやビニールクロスなど、用途を先に決めておく必要がある素材は出来るだけ使わず、下地材でもある合板を使用するなど、フレキシブルに変化できる空間づくりを大切にしていると加藤さん。「タオル掛けひとつとっても、時間をかけて決定したけど、実際住んでみたらいらなかった、ということもありますよね。決めないことは決めない、後から考える、後から変更できる。絶対決めなければいけないこと以外は決定しない、という思想が大切です」
畳数は気にせず、どう使うかを意識して設計したというキッチン。母屋で料理することも多いため、ここでは必要最低限のキッチンを作りました。
寝室は小部屋になっていますが、将来他の用途にも転用可能なように、シンプルなレイアウトで仕上げました。
現在は、1人子どもが増え、長男が小学生になり手狭になってきたこともあり、ロフトベットをDIYで作製し、スペースを増やして使用しています。
「当初からそうしようと決定していたわけでなく、その時々の家族の状況に合わせてカスタマイズを繰り返している一例です」と加藤さん。今後、次男が小学生になったタイミングで、もう一つロフトベットを追加しようかと考えているそうです。
現在は、1人子どもが増え、長男が小学生になり手狭になってきたこともあり、ロフトベットをDIYで作製し、スペースを増やして使用しています。
「当初からそうしようと決定していたわけでなく、その時々の家族の状況に合わせてカスタマイズを繰り返している一例です」と加藤さん。今後、次男が小学生になったタイミングで、もう一つロフトベットを追加しようかと考えているそうです。
インスタグラムでも人気があるというオフィススペースは、最低限の広さで仕事ができるよう工夫しました。「子供が後ろで遊んでいるなかでの仕事は難しいですが、定時を決めて、長時間労働だけはしないよう心がけています」
また、「気を使わない住宅」であることを大切にしているという加藤さん。子供たちが落書きをしたり、家のなかで竹馬をしても、平気だと話します。
「世の中の住宅は、綺麗すぎ、完成されすぎていると思います。住宅は、人の生活がある場所であり、使っていくうちに汚れていくのがあたりまえです。それなのに、汚れるとショックを受けてしまうような住宅が多い」
子供が落書きをしても、床にシミができてしまっても、許容できるベースの設計が大切だと加藤さんは話します。
「世の中の住宅は、綺麗すぎ、完成されすぎていると思います。住宅は、人の生活がある場所であり、使っていくうちに汚れていくのがあたりまえです。それなのに、汚れるとショックを受けてしまうような住宅が多い」
子供が落書きをしても、床にシミができてしまっても、許容できるベースの設計が大切だと加藤さんは話します。
ローンを組まず最低限の予算で作った仮住まいの住宅。身軽でいたい若い世代にはぴったりの住宅です。「同じようなコンセプトで、賃貸物件があっても良いですよね。売るのも買うのも簡単です。この考え方を、今後も広げていければ良いなと思います」
仮住まい終了後は、加藤さんの事務所として転用することを想定しています。それ以外の用途でも、少し手を加えてカスタマイズすれば、何にでも転用できます。低予算で期間限定の、建築家の「仮住まいの自邸」。これからの住宅のあり方や定義を、広げてくれそうな事例です。
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狭小住宅の記事を読む
仮住まい終了後は、加藤さんの事務所として転用することを想定しています。それ以外の用途でも、少し手を加えてカスタマイズすれば、何にでも転用できます。低予算で期間限定の、建築家の「仮住まいの自邸」。これからの住宅のあり方や定義を、広げてくれそうな事例です。
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コメントありがとうございます!
設計依頼をお受けすることは、もちろん可能です。
全国を対応地域としております。
遠隔地の場合は設計料に加えて、交通費を別途頂戴するかたちになります。金額に関してはご相談させて頂きながら決定する流れをとっております。
加藤先生 初めまして
長崎在住です マンション住まいですが夫のリタイアが一年後でシニアに相応しい平家を希望していましたが、どこも綺麗すぎというか金太郎飴と言いますか面白くないんです 宜しければ設計などのご相談等可能でしょうか?水回りをセンターコアに配置して寝室と夫婦それぞれの部屋から行き来出来るような間取りをCADで作ったものの不安です アドバイス宜しくお願いします
移転先は北九州市です
三浦様
コメントありがとうございます。
ご相談内容を伺えればと思います。
コメント欄ですと、差し支えるかと思いますので、事務所アドレスにご連絡を頂けますでしょうか。
事務所アドレス:info@n-archi-o.com
プロフィールの問合せからもアクセスできるかと思います。
宜しくお願い致します。