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梅干しを漬けたり、味噌を仕込んだり。季節の手仕事が楽しい土間のある家
ゆくゆくはお店を開くことも念頭に、素材や建具にこだわった家づくり。フレキシブルに使える土間は、「日常を慈しむ」そんな豊かさを味わうことができます。
永井理恵子
2019年6月6日
「実家や親戚の家では田植えや畑仕事、味噌作りなどの手仕事をしていたので、子供の頃から手伝う機会が多かったんです」と話す、この家のオーナーの奥様。もともと料理が大好きで、子どもが生まれてからは、自分でも梅干しを漬けたり、味噌を仕込んだり、季節の保存食を作るように。この家を建てる前、一家で暮らしていたアパートでも梅干しを漬けていたが、あまりに手狭で仕事がしづらかったそう。「土間があったらいいのに」――そう思ったのが、この家を建てるきっかけになった。
設計は、HAPTIC HOUSEの長尾隆行さんに依頼。木や塗り壁、タイルといった自然素材を使った家づくりが得意な建築家だ。プラスチックやビニールなどの新しい素材に抵抗を感じていたオーナー夫妻は、長尾さんと意気投合し、新しい家の設計を頼むことにした。
夫妻の要望は、「田舎のおばあちゃんちのような、土間のある家」。そこで長尾さんは、1階の中央は古い建具に囲まれた和室とし、そのまわりに土間、勝手口、業務用キッチンを配置して、回遊できる間取りにした。昔の民家を思わせる土間は、梅干しや味噌といった季節の保存食作りに大活躍。また、屋外とつながった開放的な空間には、友人たちが気楽に集まるスペースにもなっている。
設計は、HAPTIC HOUSEの長尾隆行さんに依頼。木や塗り壁、タイルといった自然素材を使った家づくりが得意な建築家だ。プラスチックやビニールなどの新しい素材に抵抗を感じていたオーナー夫妻は、長尾さんと意気投合し、新しい家の設計を頼むことにした。
夫妻の要望は、「田舎のおばあちゃんちのような、土間のある家」。そこで長尾さんは、1階の中央は古い建具に囲まれた和室とし、そのまわりに土間、勝手口、業務用キッチンを配置して、回遊できる間取りにした。昔の民家を思わせる土間は、梅干しや味噌といった季節の保存食作りに大活躍。また、屋外とつながった開放的な空間には、友人たちが気楽に集まるスペースにもなっている。
どんなHouzz ?
住まい手:30代夫婦、子ども1人
所在地:静岡県御殿場市
構造:木造2階建て
敷地面積:227.39平方メートル
延床面積:69.56平方メートル
設計・監理:HAPTIC HOUSE
施工:米山工務店
竣工:2015年12月
外壁は、黒いガルバリウム鋼板の波板。雨や霧の多い土地柄、後々のメンテナンスのしやすさ、長く暮らしたときのランニングコストを考慮して選んだ素材だ。対照的に、雨のかかりにくい玄関ポーチの庇下にはレッドシダーを貼り、ポーチ柱には古材を面材として巻き、一歩屋根の下に入れば自然素材を身近に感じられるようになっている。
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住まい手:30代夫婦、子ども1人
所在地:静岡県御殿場市
構造:木造2階建て
敷地面積:227.39平方メートル
延床面積:69.56平方メートル
設計・監理:HAPTIC HOUSE
施工:米山工務店
竣工:2015年12月
外壁は、黒いガルバリウム鋼板の波板。雨や霧の多い土地柄、後々のメンテナンスのしやすさ、長く暮らしたときのランニングコストを考慮して選んだ素材だ。対照的に、雨のかかりにくい玄関ポーチの庇下にはレッドシダーを貼り、ポーチ柱には古材を面材として巻き、一歩屋根の下に入れば自然素材を身近に感じられるようになっている。
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玄関ポーチからダイレクトに続く土間。ポーチの庇は1.6mと深く、土間の窓を開け放つと内と外の境界が曖昧に感じられる。玄関を通らずとも家の中に入ることができる開放的な空間には、友人たちが気軽に集まる。
暮らしの楽しみを実現。玄関土間のある家10選
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1階にあるキッチンでは、集まった友人たちのために奥様が腕を振るう。元々カフェの店長だった奥様。自分のお店を持ちたいという希望を叶えるため、1階の土間の延長線上にキッチンを設えるよう設計した。キッチン設備として選んだのは、もちろん業務用。土間は、未来のカフェ空間でもあるのだ。
土間は万能空間
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実はこの家には、キッチンが2つある。2階へ上がると、LDK、主寝室、子ども部屋、浴室、洗面脱衣室といった生活の舞台となるスペースがすべてまとめられている。家事動線がコンパクトになるうえ、1階でお店を始めたときには2階が完全なプライベートなスペースになる。
洗面脱衣室には生活を快適にする工夫が2つある。
1つは、写真左手のアイアン製のタオルかけ。壁のように見えるが実は扉になっており、押し開ければウォークインクローゼットへ。入浴時の着替えや朝の身支度の動線が短くて済む。
もう1つは、壁部分に空いている四角い穴だ。ランドリーシューターになっていて、洗濯物を放り込めば1階にある洗濯機置き場に届く。
1つは、写真左手のアイアン製のタオルかけ。壁のように見えるが実は扉になっており、押し開ければウォークインクローゼットへ。入浴時の着替えや朝の身支度の動線が短くて済む。
もう1つは、壁部分に空いている四角い穴だ。ランドリーシューターになっていて、洗濯物を放り込めば1階にある洗濯機置き場に届く。
2階のLDKの奥には、屋根裏部屋へ繋がるハシゴがある。
17平方メートルほどの空間は、オーナーのプライベートスペースだ。床はパイン、壁には杉の無垢材と珪藻土を使用。勾配天井の小さな空間だからこそ、自然素材の温もりに包まれているような感覚をより強く味わえる。
人気のエコ素材、珪藻土の特徴とは?
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1階の間取りは、中央に和室を配し、この和室を囲むように土間、勝手口、キッチンがあって、ぐるりと回遊できる。
和室の建具は、すべてアンティーク。オーナー夫妻と長尾さんが連れ立って東京・八王子市にあるアンティークショップへ出向き、購入した。間口のサイズは、建具を選んでから決定した。
一方、外に面した窓はすべて、木製サッシとLow-E複層ガラスを採用。富士山麓に位置する静岡県御殿場市の1月の平均気温は2.5℃。真冬の朝の気温が氷点下になることも珍しくない。土間にある薪ストーブを使えば、当然、外気温との差で結露が生じやすい。それを防止するため、熱伝導率の低い窓にした。
和室の建具は、すべてアンティーク。オーナー夫妻と長尾さんが連れ立って東京・八王子市にあるアンティークショップへ出向き、購入した。間口のサイズは、建具を選んでから決定した。
一方、外に面した窓はすべて、木製サッシとLow-E複層ガラスを採用。富士山麓に位置する静岡県御殿場市の1月の平均気温は2.5℃。真冬の朝の気温が氷点下になることも珍しくない。土間にある薪ストーブを使えば、当然、外気温との差で結露が生じやすい。それを防止するため、熱伝導率の低い窓にした。
和室の奥にあるプレイルームは、オーナー夫妻の子どもはもちろん、友人たちの子どもたちにも大人気。大人が手仕事をしながらおしゃべりを楽しんでいる間、ここで自由に遊べるからだ。子どもたちがつねに目が届くところにいるので安心できる。
5月。梅が収穫される時期になると、奥様はせっせと梅を仕込む。オーナーは庭師。夏の暑い日、毎日持参するお弁当に梅干しは欠かせないし、娘さんも梅干しが大好きで毎日1粒必ず食べる。自分で漬ければ、手間はかかるけれど、ふっくらと美味しく仕上がる。アパートで暮らしているときに初めて漬けた梅干しは5kg。狭くて、保管するスペースがなかったからだ。翌年、この家で初めて漬けた梅の量は、10kg。今年は20kgを目標に梅を仕込む。友人と一緒に梅を仕込みながらおしゃべりするのも、楽しいひとときだ。
和室の奥の通路には、季節の保存食を保管する棚がある。冬に仕込んだ味噌の大きな琺瑯の容器や、去年漬けた梅干しが入った甕などが並ぶ。
和室の奥の通路には、季節の保存食を保管する棚がある。冬に仕込んだ味噌の大きな琺瑯の容器や、去年漬けた梅干しが入った甕などが並ぶ。
畑で収穫したたくさんの野菜を友達と分け合ったり、一緒に料理して味わえるのは、土間があるおかげだと奥様は言う。
玄関になったり、キッチンになったり、ダイニングになったり、変幻自在な土間。その時々で自在に変化する柔軟な空間が家のなかにあるのは、なんとも魅力的だ。
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Houzzツアー:木と窓が際立つ、シンプルで心地よい御殿場の家
玄関になったり、キッチンになったり、ダイニングになったり、変幻自在な土間。その時々で自在に変化する柔軟な空間が家のなかにあるのは、なんとも魅力的だ。
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