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My Houzz:植物とアートと音楽に囲まれて暮らす、タスマニアの家
暮らしながら自分たちらしい住まいを作り上げていく、アーティスト一家の暮らしをご紹介します。
Louise Lakier
2017年3月5日
植物は家を変える力がある。それを見事に示しているのが、オーストラリア、メルボルン郊外の通りの奥にたたずむ南国らしい豊かな緑が茂る庭に囲まれた、1960年代のコテージだ。マリス・マースさんとスティーブ・パーセルさんは、静かな海辺の町、アルトナにあるこの家を2006年に購入した。傷んだ状態だったが、ふたりはこの家が、家族のための「真っ白なキャンバス」になるという潜在的価値を見い出していた。
購入当時、ふたりは裏のポーチを壁で囲い、実質的にがらんとした土地だった裏庭まで拡張するつもりだった。だが移り住んで、家族が暮らす家らしくなっていくうち、裏のポーチは成長していく息子たちと動物たち、植物コレクションの苗を世話をするのに適した場所へと変わっていった。さらに、アーティストであるマースさんの仕事場にもなっている。
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どんなHouzz?
住まい手:マリス・マースさんとスティーブ・パーセルさん、息子のトムくん(13歳)、フレッドくん(9歳)、ネコのチンキー、ニワトリのスー
所在地:オーストラリア、ヴィクトリア州アルトナ
規模:150平方メートル。ベッドルームx3、バスルームx1
1961年に建てられた家は現在、熱帯植物のオアシスの奥に姿をのぞかせている。10年前に住みはじめて以来、元は砂利が敷かれていた前庭をパーセルさんが整備し、種苗店で買った植物を植えたり挿し木をしたりして、ここまで緑豊かになった。外壁の木製サイディングを黒く塗装し、植物の鮮やかな緑色と美しいコントラストを作り出している。
住まい手:マリス・マースさんとスティーブ・パーセルさん、息子のトムくん(13歳)、フレッドくん(9歳)、ネコのチンキー、ニワトリのスー
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1961年に建てられた家は現在、熱帯植物のオアシスの奥に姿をのぞかせている。10年前に住みはじめて以来、元は砂利が敷かれていた前庭をパーセルさんが整備し、種苗店で買った植物を植えたり挿し木をしたりして、ここまで緑豊かになった。外壁の木製サイディングを黒く塗装し、植物の鮮やかな緑色と美しいコントラストを作り出している。
玄関ポーチに置いた長椅子は、家族みんながお気に入りのリラックススポット。PVC(ポリ塩化ビニール)素材の波板を玄関ポーチの屋根に貼り自然光を取り入れた。将来、玄関にも天窓を設ける計画だ。
棚にきれいにレイアウトされた鉢植えが玄関先でゲストを出迎える。マースさんは木立の中を散歩しながらよく木々の枝を切ってきて、常にさまざまな緑があふれる家になるようにしている。
家の正面にある私道の突き当たりはマースさんのスタジオ。元はカーポート(車庫)として使われていた。
リノベーションをする前、マースさんは仕事用のアトリエを別に借りていた。だが息子のフレッドくんが生まれると、母親業と家の外での仕事を両立するのが難しくなってきた。
マースさんもパーセルさんも夜遅くまで仕事をする。カーポートからスタジオにリフォームし、裏庭へ通じるようにすると、母屋とは区切られた自分の仕事場をそれぞれ持つことができた。
リノベーションをする前、マースさんは仕事用のアトリエを別に借りていた。だが息子のフレッドくんが生まれると、母親業と家の外での仕事を両立するのが難しくなってきた。
マースさんもパーセルさんも夜遅くまで仕事をする。カーポートからスタジオにリフォームし、裏庭へ通じるようにすると、母屋とは区切られた自分の仕事場をそれぞれ持つことができた。
スタジオの形は理想的とはいえないものの、マースさんはうまく使いこなしている。イーゼルの上で絵を描くのをやめ、作品は外壁に掛け、全体の進捗をみるときは後ろへ下がって見るようにしている。手前のテーブルはシルクスクリーンや製図用の場所。
屋内で家族が気に入っているのは、リビングからの南国らしい眺め。パーセルさんはソファの前のパソコン用デスクで事務作業をし、子どもたちはここでテレビを見る。
ケージにたくさん入っているのは、ふたりがこれまで楽しんだワインボトルのコルク栓。ただ、最近はスクリューキャップのボトルが増えてきたため、コレクションが増えるペースは落ちてきた。「以前、兄のルーベンのためにコルクを集めていたのですが、そのときの名残ですね。兄は集めたコルクを使って見事なコルクボードを作っていました」。
家のあちこちを飾る色とりどりの小物や懐かしい思い出が詰まった品が家族を物語り、アート作品やマースさんが描いた絵と調和している。
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マースさんは通りが見える自室のベッドで本を読むのが好きだ。引っ越してきた当初はプライバシーを懸念したが、今は屋外のジャングルのような植物が視線をさえぎってくれる。壁の色に赤を選んだのは、部屋にあたたかみと居心地のよさが出ると思ったからだそう。「家の中の色はよく変えます。部屋の感じをがらっと変えられるし、これは違ったかなと思っても、たいした問題にはなりません」とマースさんは言う。壁に描かれている馬は「その場の思いつきでローラーで描いた」という。
布団カバーのシルクスクリーンは、ロサンゼルスを拠点にスケートボーダー、写真家、アーティストとして活躍するエド・テンプルトンのデザイン。
布団カバーのシルクスクリーンは、ロサンゼルスを拠点にスケートボーダー、写真家、アーティストとして活躍するエド・テンプルトンのデザイン。
ピクチャーウィンドウの向かい、ドレッサーの上にはマースさんが描いた馬の絵が置かれている。ドレッサーは、建築設計と施工業を引退したマースさんの父親が手を入れてよみがえらせた。メルボルンを訪れた父親がオークションで見つけたものだ。
マースさんは13歳のとき、家族でオランダからオーストラリアへ移り住んだ。その後、タスマニア大学美術学部で版画制作を専攻。現在、絵に描くのはおもに馬で、日常の場面における人間を表現しているという。馬に関心を持ったのは、タスマニアで家族が所有していた小さな農場で乗馬をしたころにさかのぼり、そこから「馬の虜」になったのだそう。写真の絵は『Panache』(パナッシュ。颯爽とした、の意)と題した2011年の作品。
マースさんは13歳のとき、家族でオランダからオーストラリアへ移り住んだ。その後、タスマニア大学美術学部で版画制作を専攻。現在、絵に描くのはおもに馬で、日常の場面における人間を表現しているという。馬に関心を持ったのは、タスマニアで家族が所有していた小さな農場で乗馬をしたころにさかのぼり、そこから「馬の虜」になったのだそう。写真の絵は『Panache』(パナッシュ。颯爽とした、の意)と題した2011年の作品。
息子のトムくんが自分の寝室に選んだのは、オレンジ色の壁と、マースさんが描いた『Horse’s Houses』(ホース・ハウス、馬の家)という大きな赤い絵。
高校に通うトムくんはコントラバスの弓づかいを習っているところ。小学生のときはバンドでギターを弾いていた。
弟のフレッドくんの寝室。ダイニングルーム兼音楽スタジオと壁を接している。フレッドくんはごく小さいころから、隣でジャムセッションをしている環境で眠ってきた。海の生きものを描いた生地の下にはパッドを入れ、元はパティオに面していた窓を隠している。
フレッドくんの部屋の隣にあるバスルーム。木製キャビネットとインドネシアの川の石を使ったシンクは地元のショップで見つけた。石のシンクはマースさんにとって海外で家族と過ごした休暇を思い出すアイテムだ。
キッチンはバスルームの隣。壁の色はマースさんいわく「明るくてクリーンでフレッシュな始まり」を感じさせるイエローをパーセルさんと選んだ。思い入れのあるアイテムの数々が壁や棚を飾り、家族の目を楽しませてくれる。
部屋をペイントする色を選ぶときは、あまり分析しすぎない方がいい、とマースさんは提案する。こんな感じにしたいという感覚で決め、やってみて違っていたらまた変えればいい。「いいアイデアは思いもしなかったうれしい偶然から生まれるものです」。
部屋をペイントする色を選ぶときは、あまり分析しすぎない方がいい、とマースさんは提案する。こんな感じにしたいという感覚で決め、やってみて違っていたらまた変えればいい。「いいアイデアは思いもしなかったうれしい偶然から生まれるものです」。
オランダにいた12歳のころ、マースさんの寝室は赤と白がテーマだった。当時、小さな店を開いていた伯母が、店の外に掛けていた古いエナメル製のコカコーラの看板をゆずってくれた。「そのころ、とにかく何でも赤と白が好きだった私にくれたんです。もう何十年も経った今でも大切にしています」。
切り枝を植えた鉢がキッチンのシンク上の窓辺に並んでいる。植物が室内と外をつないでいる。
人を招いて一緒に過ごしたり、食事をしたりするのはたいていこの奥の部屋で。ダイニングルームとしても、ビリヤード室や音楽スタジオとしても使える空間だ。写真の長テーブルはビリヤード台にもなる。カバーをスライドさせて折りたため、キャスター付きなので自由に移動でき、パーセルさんのバンド「パーリー・シェルズ」が練習のセッションをするときは片づけておける。この多目的空間と隣のキッチンとは、カーテンを引いて区切ることができる。
古いピアノは家の中でもマースさんお気に入りのアイテム。「ピアノは周りに人が集まるすてきな楽器です。今は子どもたちが弾いているのがうれしいですね。このピアノは1980年代にオランダからタスマニアへ移るときに私の両親が持ってきたものです。私たちが子どものころピアノの練習で弾いていました」とマースさんは話す。その後、マースさんたちが大人になり、しまい込んだままになっていたのを見つけて、メルボルンへ送って再び使えるようにした。
古いピアノは家の中でもマースさんお気に入りのアイテム。「ピアノは周りに人が集まるすてきな楽器です。今は子どもたちが弾いているのがうれしいですね。このピアノは1980年代にオランダからタスマニアへ移るときに私の両親が持ってきたものです。私たちが子どものころピアノの練習で弾いていました」とマースさんは話す。その後、マースさんたちが大人になり、しまい込んだままになっていたのを見つけて、メルボルンへ送って再び使えるようにした。
解体現場で見つけた上げ下げ窓が並ぶ。奥の部屋のレイアウトはこの窓を起点に考えた。
奥の部屋はゲストや家族が集まって過ごすほか、パーセルさんのバンドがレコーディングに使うこともある。
フェンスで囲った裏のポーチは、リノベーションでいちばん大きく変えた部分。大きな特徴は広い範囲に巡らせたぶどう棚で、パーセルさんが施工業者の友人と一緒に手がけた。
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家の裏側の向かいに立つのは、寝る場所も備えたスタジオ。マースさんとパーセルさんは建築と造園のスキルをあっというまに身につけ、予算を抑えながら家のグレードアップにつなげた。パーセルさんがマースさんの兄ルーベンさんと一緒に基礎と躯体を造り上げたあと、マースさんとパーセルさんがスタジオの外装を仕上げた。そのほかの素材はオークションや不用品回収所、解体現場、中古木材の販売店で手に入れた。この先、家と離れのスタジオの間、木陰を作っている木の下に敷石を敷く予定だ。
スタジオにはパーセルさんのラジオ付きレコードプレーヤーが置かれている(このほかにさらに6台持っていて、収納小屋にしまってあるそう)。壁は化粧板にあわせて白でペイントし、明るく広い印象に。
敷地の反対側の隅には新しい収納用の小屋がある。こちらもパーセルさんが友人と建てた。
マースさんは引っ越し後、できるだけ早く庭づくりを始めようと提案した。「しばらく経ってからにしたり、あとから付け足せばいい程度に考えていたりする人も多いです。庭は自然に形になるようにして、少し柔軟性がほしい場所です。そうするとすぐに自分の家らしく感じられるようになるんです」。
マースさんは引っ越し後、できるだけ早く庭づくりを始めようと提案した。「しばらく経ってからにしたり、あとから付け足せばいい程度に考えていたりする人も多いです。庭は自然に形になるようにして、少し柔軟性がほしい場所です。そうするとすぐに自分の家らしく感じられるようになるんです」。
収納小屋の裏には屋外トイレがある。離れのスタジオ兼寝室や、裏庭でゲストと過ごすときに使う。今後、ここにシャワーと目隠しのついたてを追加しようと考えている。
ふたりにとって何よりうれしかった発見が、敷地の裏手に使われていない土地が少しあったことだ。裏庭のさらに奥は家族みんなのお気に入りの場所になっている。ふたりがゲストを迎えているときは特に、子どもたちはここで過ごすのが大好きだ。
屋外スペースは暖炉とハンモックを備え、植物を接ぎ木して育てるスペースも用意してある。マースさんはここで馬を飼うことも思い描いている。でもそれには仲間の馬がもう1頭必要になる。
活気に満ちた郊外の家と敷地は、一家が手がける建物と庭、音楽、アートを受け入れながら、これからも進化を続けていく。
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