地下に広がる驚きの空間、「地下室」の可能性
音楽や映画鑑賞、楽器演奏を楽しむ部屋、書斎に車庫、浴室つきゲストルームまで、工夫を凝らした個人邸の地下室特集。

Miki Anzai
2016年3月5日
Houzzコントリビューター、英文編集者&ライター。建築をテーマにした旅の提案、伝統木造建築、「和」の要素を取り入れた住宅などを紹介しています。Houzz contributor, freelance writer and editor. After having worked as a mortgage loan officer at Citibank in New York, I earned an MS in journalism from Columbia University and became a writer. An opera buff, amateur jazz pianist, art lover, recreational cook, and true feline fanatic.
Houzzコントリビューター、英文編集者&ライター。建築をテーマにした旅の提案、伝統木造建築、「和」の要素を取り入れた住宅などを紹介しています。Houzz contributor,... もっと見る
「地下室」というと、暗くて、湿っぽく、費用がかかり、工期も長そうだ……。そんな従来のイメージを軽く払拭する、国内の個人邸につくられた「地下室」を、15事例に絞って紹介する。光、風、間取り、工法など、それぞれの物件を手がけた建築家たちの英知と、こだわりが感じられるものばかりだ。音響室や書庫など、趣味の部屋としてだけでなく、狭い土地を有効に使い、地下室の容積制限の緩和を利用して、生活部分の床面積をぐっと広げているケースも多い。頼りになる、経験豊富な建築家たちによる地下室の提案は、驚くほどスマートな発想で、家づくりに対する想像力を極限まで広げてくれる。
音響ルーム
施主の趣味は、クラシック音楽の鑑賞。神経を使う仕事をしているため、夜遅く帰宅して直行するのが、この音響室(約18帖)だ。コンクリート打ち放し仕上げに、吸音素材やパネルを使用しているため、施主は、交響曲を大音量で聴いて、一日の疲れを吹き飛ばし、心を癒しているという。設計を担当したのは、自邸を含め、既に100を越える地下室を手がけている〈ヴァンクラフト空間環境設計〉の小杉卓氏。約140平方メートルの角地に建ぺい率50%まで広げ、地下にこの音響室と、約5帖の階段室、地下書斎コーナーを実現している。
用語解説1:建ぺい率とは?
建築面積の敷地面積に対する割合。建物の日照、通風、防火、避難などを確保するため、その最高限度が、住居専用系地域では30~60%の範囲に定められている。地下室は一定の基準を満たせば建ぺい率に算入されないので、民法上の問題を除き、工事可能な限り境界線ギリギリまでつくれる。
施主の趣味は、クラシック音楽の鑑賞。神経を使う仕事をしているため、夜遅く帰宅して直行するのが、この音響室(約18帖)だ。コンクリート打ち放し仕上げに、吸音素材やパネルを使用しているため、施主は、交響曲を大音量で聴いて、一日の疲れを吹き飛ばし、心を癒しているという。設計を担当したのは、自邸を含め、既に100を越える地下室を手がけている〈ヴァンクラフト空間環境設計〉の小杉卓氏。約140平方メートルの角地に建ぺい率50%まで広げ、地下にこの音響室と、約5帖の階段室、地下書斎コーナーを実現している。
用語解説1:建ぺい率とは?
建築面積の敷地面積に対する割合。建物の日照、通風、防火、避難などを確保するため、その最高限度が、住居専用系地域では30~60%の範囲に定められている。地下室は一定の基準を満たせば建ぺい率に算入されないので、民法上の問題を除き、工事可能な限り境界線ギリギリまでつくれる。
ビリヤードルーム
若い施主夫妻が希望したのは、帰宅後や休日に「ビリヤード」を楽しめる部屋。ビリヤード台は1.7×3.0mだが、その周りにキューを引くための余白が必要になるので、建物の屋根を折り曲げ、強度を高めつつ、柱の無い大空間を実現した。この60平方メートルの無柱空間は、敷地の傾斜に沿ったスキップフロアに仕上げ、玄関からフラットに続く土間をビリヤードスペースに、階段の上をダイニングキッチンとした。ダイニングへ上がる階段の一部にソファを埋め込んだので、ここから正面の壁に映る映像も鑑賞できる。
若い施主夫妻が希望したのは、帰宅後や休日に「ビリヤード」を楽しめる部屋。ビリヤード台は1.7×3.0mだが、その周りにキューを引くための余白が必要になるので、建物の屋根を折り曲げ、強度を高めつつ、柱の無い大空間を実現した。この60平方メートルの無柱空間は、敷地の傾斜に沿ったスキップフロアに仕上げ、玄関からフラットに続く土間をビリヤードスペースに、階段の上をダイニングキッチンとした。ダイニングへ上がる階段の一部にソファを埋め込んだので、ここから正面の壁に映る映像も鑑賞できる。
ピアノラウンジ
作曲家の夫とピアニストの妻が、音楽活動をする部屋。ステンドグラス越しに光が差し込んでいるのは、大きなドライエリア(空堀り)を設けているからだ。ドライエリアは、採光の効果だけでなく、高温多湿の日本の風土に特有の、結露や湿気、地震発生時の避難路などの問題解決にも役立っている。
作曲家の夫とピアニストの妻が、音楽活動をする部屋。ステンドグラス越しに光が差し込んでいるのは、大きなドライエリア(空堀り)を設けているからだ。ドライエリアは、採光の効果だけでなく、高温多湿の日本の風土に特有の、結露や湿気、地震発生時の避難路などの問題解決にも役立っている。
バレエスタジオ
プロのバレリーナが自宅で練習するためにつくった、約34坪(67帖)のスタジオ。天井の高さはリフト練習ができるように、3.75mと住宅の地下室としては高めに設計してある。建ぺい率40%(角地:50%)、容積率80%の土地ゆえ、建築面積算入緩和(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く)を駆使して、約55坪の土地のほとんどを、この地下スタジオに充てている。床はカバ桜の天然フローリングとし、バレエレッスンに相応しく下地からスポーツ対応の仕様にしている。
用語解説2:容積率とは?
建築物の延床面積の敷地面積に対する割合。用途地域の種別、前面道路の幅員により、最大限度が定められている。住宅の用途として使用する地階部分は、建物の合計床面積の3分の1を限度として、容積率に算定されず、同じ建坪の2階建ての1.5倍の広さまで建築可能となっている。
プロのバレリーナが自宅で練習するためにつくった、約34坪(67帖)のスタジオ。天井の高さはリフト練習ができるように、3.75mと住宅の地下室としては高めに設計してある。建ぺい率40%(角地:50%)、容積率80%の土地ゆえ、建築面積算入緩和(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く)を駆使して、約55坪の土地のほとんどを、この地下スタジオに充てている。床はカバ桜の天然フローリングとし、バレエレッスンに相応しく下地からスポーツ対応の仕様にしている。
用語解説2:容積率とは?
建築物の延床面積の敷地面積に対する割合。用途地域の種別、前面道路の幅員により、最大限度が定められている。住宅の用途として使用する地階部分は、建物の合計床面積の3分の1を限度として、容積率に算定されず、同じ建坪の2階建ての1.5倍の広さまで建築可能となっている。
書斎&趣味の部屋
建築面積が約10坪、許容容積率160%の狭小住宅のため、地下の容積率の緩和を利用。ドライエリアの確保は、狭小地ゆえ困難だったため、半地下にして、地上面に出ている箇所に換気ができる開口部を設けている。地下水位が低かったこともあり、二重壁にはしていないが、打ち放し面を多く取り、コンクリートそのものの湿気がこもりにくくした。設計を担当した〈LEVEL Architects〉によれば、「湿気をうまく処理できれば、温熱環境は地上階より安定している」という。確かに、「狭小地での施工方法には工夫が必要で、地下水位などが高い場合はコスト高になるが、事前の調査でリスク回避はできる」のだという。
建築面積が約10坪、許容容積率160%の狭小住宅のため、地下の容積率の緩和を利用。ドライエリアの確保は、狭小地ゆえ困難だったため、半地下にして、地上面に出ている箇所に換気ができる開口部を設けている。地下水位が低かったこともあり、二重壁にはしていないが、打ち放し面を多く取り、コンクリートそのものの湿気がこもりにくくした。設計を担当した〈LEVEL Architects〉によれば、「湿気をうまく処理できれば、温熱環境は地上階より安定している」という。確かに、「狭小地での施工方法には工夫が必要で、地下水位などが高い場合はコスト高になるが、事前の調査でリスク回避はできる」のだという。
地下車庫
カーギャラリー(車1台分)・書庫(次の画像)・AVルーム・駐車場(車3台、バイク2台分)・玄関を、旧擁壁を解体してつくった事例だ。外見上、この建物は、道路レベルの1階に見えるが、平均地盤高算定基準により、法律上の地階扱いになっている。設計した小杉卓氏は、「既存の土地が道路より約2m高かったので、道路レベルで敷地奥に土を掘り、地下車庫や地下室をつくった」という。床面積を多く確保したい場合は、このような傾斜地や段状地を活用して地階をつくるのが、「最も合理的(合法的)かつ、経済的である」と小杉氏は語る。
用語解説3:平均地盤高とは?
建築基準法での地下室とは、地下に埋まる部屋の天井の高さの3分の1以上が地中に埋まったもののこと。しかし、敷地の地盤面(地面)が完全に平坦であるとは限らないため、平均地盤高を算定し、建物などの高さの基準にする。傾斜面の場合、地盤面の高低差が3m以下を含め、3m以内ごとの平均の高さ(水平面)が地盤面となる。
カーギャラリー(車1台分)・書庫(次の画像)・AVルーム・駐車場(車3台、バイク2台分)・玄関を、旧擁壁を解体してつくった事例だ。外見上、この建物は、道路レベルの1階に見えるが、平均地盤高算定基準により、法律上の地階扱いになっている。設計した小杉卓氏は、「既存の土地が道路より約2m高かったので、道路レベルで敷地奥に土を掘り、地下車庫や地下室をつくった」という。床面積を多く確保したい場合は、このような傾斜地や段状地を活用して地階をつくるのが、「最も合理的(合法的)かつ、経済的である」と小杉氏は語る。
用語解説3:平均地盤高とは?
建築基準法での地下室とは、地下に埋まる部屋の天井の高さの3分の1以上が地中に埋まったもののこと。しかし、敷地の地盤面(地面)が完全に平坦であるとは限らないため、平均地盤高を算定し、建物などの高さの基準にする。傾斜面の場合、地盤面の高低差が3m以下を含め、3m以内ごとの平均の高さ(水平面)が地盤面となる。
大型書斎
上のカーギャラリーを臨み見ることができる約11帖の書斎。車が趣味の施主が、愛車を愛でながら、ゆっくりとくつろげる空間を実現した。地下工事費の坪単価は、約66万円(時価)である。
上のカーギャラリーを臨み見ることができる約11帖の書斎。車が趣味の施主が、愛車を愛でながら、ゆっくりとくつろげる空間を実現した。地下工事費の坪単価は、約66万円(時価)である。
オーディオルーム
半地下鉄筋コンクリート造に加え、内側150~300mmに高密度グラスウールを使用することで、遮音・吸音性能を高めている。床は紫檀のフローリングと砂利入り土間仕上げ、壁は珪藻土。格子や棚も濃い茶色でゆったりとこもって音楽を楽しめる空間を演出している。
用語解説4:半地下とは?
建築基準法、地下や、半地下といった言葉の分別はせず、総称して「地階」という。しかし、傾斜地などで地下室の一面が露出していたり、埋め込みを浅くしてある地下室を半地下と呼ぶことが多い。
半地下鉄筋コンクリート造に加え、内側150~300mmに高密度グラスウールを使用することで、遮音・吸音性能を高めている。床は紫檀のフローリングと砂利入り土間仕上げ、壁は珪藻土。格子や棚も濃い茶色でゆったりとこもって音楽を楽しめる空間を演出している。
用語解説4:半地下とは?
建築基準法、地下や、半地下といった言葉の分別はせず、総称して「地階」という。しかし、傾斜地などで地下室の一面が露出していたり、埋め込みを浅くしてある地下室を半地下と呼ぶことが多い。
洋寝室
スキップフロアの最低階を、寝室・書斎としている。82.42平方メートルの敷地で、第1種低層住居専用地域(建ぺい率50%/容積率100%)、第1種高度地区という厳しい条件下、希望の部屋数を確保するために、地下室を選択した。設計を担当した〈万平デザイン工房〉の珍田勝実氏は、地下室は「建築容積が大きく取れる点が利点だ」と語るいっぽう、地下をつくる予算を、(地上階の)インテリアや素材にまわすほうが、豊かな空間をつくれる」こともあるので、用途の検討が重要と指摘する。
用語解説5:第1種高度地区とは?
北側隣地の日照の悪化を防ぐため、都市計画法規で、北側境界線から垂直に5mの高さをとり、その地点から0.6/1勾配の中に建物を収めて計画しなければならないと定められている区域。
スキップフロアの最低階を、寝室・書斎としている。82.42平方メートルの敷地で、第1種低層住居専用地域(建ぺい率50%/容積率100%)、第1種高度地区という厳しい条件下、希望の部屋数を確保するために、地下室を選択した。設計を担当した〈万平デザイン工房〉の珍田勝実氏は、地下室は「建築容積が大きく取れる点が利点だ」と語るいっぽう、地下をつくる予算を、(地上階の)インテリアや素材にまわすほうが、豊かな空間をつくれる」こともあるので、用途の検討が重要と指摘する。
用語解説5:第1種高度地区とは?
北側隣地の日照の悪化を防ぐため、都市計画法規で、北側境界線から垂直に5mの高さをとり、その地点から0.6/1勾配の中に建物を収めて計画しなければならないと定められている区域。
和寝室
半地下に深基礎をつくるような構造でつくった和室。施主夫妻が寝室として使用している。敷地面積91.23平方メートル、容積率100%の地域に、容積率の緩和を使えるガレージおよび地下室をつくり、延床面積を確保した。必要数の部屋をすべてつくるのには、地階が絶対条件であり、施主の要望でもあった。敷地が細長いため、階段の配置など間取りの構成に苦労したが、スキップフロアにすることで、「おもしろい空間構成ができた」と〈Coo Planning〉の中尾彰良氏。ドライエリアは設けていないが、前面道路に穏やかな傾斜があったことから、半地下の天井付近に窓を設け、採光、通風を確保している。
半地下に深基礎をつくるような構造でつくった和室。施主夫妻が寝室として使用している。敷地面積91.23平方メートル、容積率100%の地域に、容積率の緩和を使えるガレージおよび地下室をつくり、延床面積を確保した。必要数の部屋をすべてつくるのには、地階が絶対条件であり、施主の要望でもあった。敷地が細長いため、階段の配置など間取りの構成に苦労したが、スキップフロアにすることで、「おもしろい空間構成ができた」と〈Coo Planning〉の中尾彰良氏。ドライエリアは設けていないが、前面道路に穏やかな傾斜があったことから、半地下の天井付近に窓を設け、採光、通風を確保している。
和風の書斎
住宅密集地の建坪約16坪に、2世帯5人が余裕をもって暮らせるように、この地下室をつくった。写真の反対の面に、ドライエリアを設置して一定の明るさを確保しており、圧迫感もない。縁なしの畳を敷き、和風の趣味の部屋を誕生させた。
住宅密集地の建坪約16坪に、2世帯5人が余裕をもって暮らせるように、この地下室をつくった。写真の反対の面に、ドライエリアを設置して一定の明るさを確保しており、圧迫感もない。縁なしの畳を敷き、和風の趣味の部屋を誕生させた。
ホームシアター
2016年2月に竣工したばかりのオール電化住宅の地下室に、180インチワイドのスクリーンを設置し、ホームシアターと、趣味のエレキギター演奏を楽しんでいる。音も光も遮断できる地下室は、映画や音楽好きにはうらやまし過ぎる空間だ。
この地下室が驚異的なのは、水中(!)ながら水を通さないRC打設工事を実現している点だ。常水面(地中のある部分から下にいくと、常に水分を含んでいる面)が、地表面下マイナス2.4mと浅く、地質も微細砂地層で、地震時に液状化も生じる可能性が高いこの土地に、地下室床面が常水面より約0.5mも下にある地下室(30帖)を完成させている。独自のコンクリート打設技術があってこそなせる技である。
2016年2月に竣工したばかりのオール電化住宅の地下室に、180インチワイドのスクリーンを設置し、ホームシアターと、趣味のエレキギター演奏を楽しんでいる。音も光も遮断できる地下室は、映画や音楽好きにはうらやまし過ぎる空間だ。
この地下室が驚異的なのは、水中(!)ながら水を通さないRC打設工事を実現している点だ。常水面(地中のある部分から下にいくと、常に水分を含んでいる面)が、地表面下マイナス2.4mと浅く、地質も微細砂地層で、地震時に液状化も生じる可能性が高いこの土地に、地下室床面が常水面より約0.5mも下にある地下室(30帖)を完成させている。独自のコンクリート打設技術があってこそなせる技である。
両親、娘2人に息子家族の大所帯だが、地階に姉妹それぞれの個室、そしてこの共有スペースをつくったことで、ゆったりと暮らせているのだそう。天井のFRP製パネルから1階の光が差し込み、明るく、快適な空間をつくり出している。床は、あたたかな質感のパイン板、内装には無垢材を使用。「木材は反りが出たり、節があったりするが、湿気をコントロールするので体に優しい理想的材料」(〈ユミラ建築設計室〉の弓良一雄氏)という。コンクリート打放しの壁は、躯体防水を施している。地階は、地上階より工事費単価は約20万円アップするが、冬暖かく、夏涼しい建物に、施主は大変喜んでいる。
自宅兼アトリエ
漫画家という仕事柄、連日、徹夜作業が多いため、自宅兼アトリエが悲願だった施主。建ぺい率40%、容積率80%の約50坪の土地だけに、この要望は地下室抜きでは叶えられなかった。地下には、アシスタントの仮眠場所やトイレ・簡単なキッチンをはじめ、膨大な書庫なども設けている。外部から出入りができるように地下室への外階段動線も確保し、かつ施主のデスク前には、大型のドライエリアを設けて外光を採り入れている。この約20坪(40帖)の地下室から、数々の人気作品が世に送り出されている。
漫画家という仕事柄、連日、徹夜作業が多いため、自宅兼アトリエが悲願だった施主。建ぺい率40%、容積率80%の約50坪の土地だけに、この要望は地下室抜きでは叶えられなかった。地下には、アシスタントの仮眠場所やトイレ・簡単なキッチンをはじめ、膨大な書庫なども設けている。外部から出入りができるように地下室への外階段動線も確保し、かつ施主のデスク前には、大型のドライエリアを設けて外光を採り入れている。この約20坪(40帖)の地下室から、数々の人気作品が世に送り出されている。
地下路地
施主の強い希望により、地下階に書斎兼音楽室(写真左側)と、リゾート風のゲストスペース(写真右側、次の写真)を設計。中央の廊下は、路地をイメージして、砂利敷きの間に飛び石を配し、左側の部屋は、格子を連ねたモダンな和空間とした。正面の遊歩道側と手前の中庭の2箇所にドライエリアを設けることで、自然光をうまく取り入れている。
施主の強い希望により、地下階に書斎兼音楽室(写真左側)と、リゾート風のゲストスペース(写真右側、次の写真)を設計。中央の廊下は、路地をイメージして、砂利敷きの間に飛び石を配し、左側の部屋は、格子を連ねたモダンな和空間とした。正面の遊歩道側と手前の中庭の2箇所にドライエリアを設けることで、自然光をうまく取り入れている。
ゲストルームと浴室
ゲストルームには、ミニキッチンとクローゼットを配し、床には縁無し畳を敷いている。化粧柱が連なる内路地越しに、広々としたバスルーム(次の写真)が見える。浴室の左手は明かり取りのドライエリアで、ウッドデッキ、砂利敷き、植栽を設けて地階のアウトドアスペース(中庭)となっている。
ゲストルームには、ミニキッチンとクローゼットを配し、床には縁無し畳を敷いている。化粧柱が連なる内路地越しに、広々としたバスルーム(次の写真)が見える。浴室の左手は明かり取りのドライエリアで、ウッドデッキ、砂利敷き、植栽を設けて地階のアウトドアスペース(中庭)となっている。
この浴室つきゲストルームと、趣味の部屋を地下に設計した〈豊田空間デザイン室〉の豊田悟氏は、地階を作る際は「部屋の湿気対策や、壁からの漏水をなくすための防水仕様をすること」、「地上階よりコスト増になることを、施主に納得してもらうこと」が重要と語る。これらの要件を満たして完成したこの地下室は、「地上の生活スペースから完全に独立して、趣味に没頭できる」極上の空間となっている。
地下室の極意
当然ながら地下室は、防水・防湿・除湿などへの十分な対策が必要となるため、地盤の質次第では工事費がかさむというデメリットもある。快適で美しい地下室をつくるには、豊富な専門知識と経験のあるプロの力は欠かせない。
地下室設計の実績30年の〈ヴァンクラフト空間環境設計〉の小杉氏は、「大切なのは、土地に合った工法選定」という。「難しいのは地下室そのものの築造ではなく、敷地形状や地質のデータ解析」だという。 漏水を恐れるあまり、地下室の外壁・内壁に、必要以上に防水工事を施しているケースもあるという。「無用な心配が膨大な費用計上となっているのは、見るに忍びない」と語る小杉氏。「地下室をきちんとプランニングすることで、誰からも邪魔をされない、安心で快適な空間を、適正価格で手に入れて欲しい」という
(写真は、小杉氏とコンクリート工事の共同研究をしている建設会社の工事部長邸の地階。この地下室だけでなく屋根・屋上までコンクリート打ちっ放しで防水はしていない)。
地下室は、一般家庭にとっては、無縁の世界だと思っていた。しかし、建築技術の発展や、建築材の進化に加え、現代の建築家の創意工夫により、地下室には大きな可能性が広がっていることがわかり、驚かされた。家の中で、最もくつろげる場所が「地下室」という個人邸が、今後さらに増えていくかもしれない。
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当然ながら地下室は、防水・防湿・除湿などへの十分な対策が必要となるため、地盤の質次第では工事費がかさむというデメリットもある。快適で美しい地下室をつくるには、豊富な専門知識と経験のあるプロの力は欠かせない。
地下室設計の実績30年の〈ヴァンクラフト空間環境設計〉の小杉氏は、「大切なのは、土地に合った工法選定」という。「難しいのは地下室そのものの築造ではなく、敷地形状や地質のデータ解析」だという。 漏水を恐れるあまり、地下室の外壁・内壁に、必要以上に防水工事を施しているケースもあるという。「無用な心配が膨大な費用計上となっているのは、見るに忍びない」と語る小杉氏。「地下室をきちんとプランニングすることで、誰からも邪魔をされない、安心で快適な空間を、適正価格で手に入れて欲しい」という
(写真は、小杉氏とコンクリート工事の共同研究をしている建設会社の工事部長邸の地階。この地下室だけでなく屋根・屋上までコンクリート打ちっ放しで防水はしていない)。
地下室は、一般家庭にとっては、無縁の世界だと思っていた。しかし、建築技術の発展や、建築材の進化に加え、現代の建築家の創意工夫により、地下室には大きな可能性が広がっていることがわかり、驚かされた。家の中で、最もくつろげる場所が「地下室」という個人邸が、今後さらに増えていくかもしれない。
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Seigo Miyake様、ありがとうございます。実際に地下室付き住居にお住まいでいらした方のご意見は貴重です。その物件の地階は「居室」用途として造られたものではなかったということでしょうか?寝苦しい夏を過ごさずにすむ「地下室」の存在は魅力的です。遮音性が高いのも利点ですね。
睡眠と熱・音の関係を身をもって知ることが出来る貴重な経験でした。
その経験をもとに、ディスカッションでは窓から離れてお休みになるようご提案させて頂きました。
>> 地階は「居室」用途として造られたものではなかった
そうです。しかし1階の窓から光が届くような工夫がしっかりしてありました。