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Houzzツアー:37平米のマンションを壁面収納ユニットでゲストをもてなせる家に
NYの小さなアパートでも、友だちを呼んでパーティーを楽しみたい! そんな願いを叶える、工夫あふれる収納式ユニットを使ったリノベーションをご紹介します。
Vanessa Brunner
2017年2月23日
37.2平方メートルしかないこちらのマンハッタンのアパートに暮らすオーナーは、パーティーを開いておもてなしをするのが大好き。となれば、小さなアパートでも、大きな家と同じくらい多くの生活用品を家においておく必要がある。リノベーションを依頼された〈ノーマル・プロジェクト〉の建築家、マイケル・チェンさんとカリ・アンダーソンさんは、設計を始めるとすぐに、空間を小間切れにすればするほど、アパートが狭苦しくなることに気づいた。そんなとき、クライアントが解決策をひらめいた。ワンルームの空間を快適にゾーニングしてくれる造作キャビネットをつくり、そこにクローゼット、ベッド、デスクを詰め込んでしまうというアイデアだ。
使うときだけ広げる収納式ベッドを利用するアイデアは住まい手から出たもの。そこで、建築家のチェンさんとアンダーソンさんは、リビングの中でベッドを使うのに必要な広さを計算した。収納式ベッドは畳んだときに見える脚が目障りなので、大きなピボットヒンジ式の扉をつけて隠せるようにした。これで、ベッドを使わないときは締めておけばベッドが見えないし、ベッドを広げてドアを開けば、ベッドスペースとリビングを隔てるパーティションになる。
ベッドサイドテーブル、クローゼット、本をおいておく棚がほしいというリクエストに応えるうちに、ベッド収納ユニットのサイズや機能が固まっていった。しかも、ここの壁は収納式ベッドユニットを設置するのにうってつけだった。というのも、不格好に出っ張った柱があるので、キャビネットをつくることでそれを隠すことができたのだ。ベッドサイドテーブルと本棚は、枕側の壁にコルクを貼り、柱の隣の凹み(ニッチ)に埋め込む形にデザインした。
ベッドを隠すドアはパーティションになるだけでなく、フラップを引き出せばデスクやバーカウンターとしても利用できる。
ユニットの製作には、さまざまなメーカーの建具や部品を使ったが、自作した部分もある。サイズや機能の面だけでなく、収納の各部をスムーズに動かすためにも、自分たちでカスタマイズする必要があった。「蝶番やピボットヒンジがうまく動くように、設計過程では精密なデジタルモデリングを行いました」とチェンさん。
ユニットの製作には、さまざまなメーカーの建具や部品を使ったが、自作した部分もある。サイズや機能の面だけでなく、収納の各部をスムーズに動かすためにも、自分たちでカスタマイズする必要があった。「蝶番やピボットヒンジがうまく動くように、設計過程では精密なデジタルモデリングを行いました」とチェンさん。
家の中の各空間は重なりながらゆるやかにゾーニングされている。キッチンはアパートの入口近くに、ベッドエリアは中央にある。ダイニングはベッドを折りたたむと出現し、ホームオフィスはピボットヒンジのドアを開けると出現する。リビングは、ピボットヒンジのドアを開け閉めすることで、プライバシーの度合いを調整できる。
ドアをすべて閉めると、収納はアパートの躯体と一体化。残りの空間がゆったりとしたダイニングになり、おもてなしを楽しめる。
目障りな照明器具をつけずにアパート内を明るくするのも課題の1つだった。そこで、キャビネット上部に蛍光灯を設置。天井にあてた間接照明で、部屋全体を照らす。
目障りな照明器具をつけずにアパート内を明るくするのも課題の1つだった。そこで、キャビネット上部に蛍光灯を設置。天井にあてた間接照明で、部屋全体を照らす。
キャビネットのリビング側の端に本棚を設置したので、本や映画DVDを楽に出し入れすることができる。ドロップダウンパネルを倒し、椅子を置けば、ワークスペースにも。デスク前の壁は光が通るが、リビングのデイベッドでゲストが寝ているときには閉めておけば、完全に室内を仕切ってプライバシーを確保することができる。
このプロジェクトで最大の難関が、キャビネットの組立済み部品を部屋にどう運び込むかという点。建物が古く、エレベーターも階段もとても狭いのだ。結局、組立済み部品をいったん解体して運び込んだ部分もある。
このプロジェクトで最大の難関が、キャビネットの組立済み部品を部屋にどう運び込むかという点。建物が古く、エレベーターも階段もとても狭いのだ。結局、組立済み部品をいったん解体して運び込んだ部分もある。
キャビネットの明るいブルーが、部屋に奥行きを与えている。「楽しい雰囲気をつくりたいと思ったんです。白やグレーではちょっとつまらないですから」とチェンさん。「自然光がたくさん入る空間なので、強い色を入れたら面白くなるだろう、と思いました。太陽の動きに従い、ブルーは1日の間に異なる表情を見せます。ものすごく明るく見えることもあれば、控えめな色、あるいは深みのある色に見えることもあります」
キッチンもリノベーションした。高品質のレンジ、食洗機、電子レンジ、大容量の収納など、住まい手からはたくさんのリクエストがあった。そこで、エクレクティックなこの家のスタイルに合うモダンな造作キッチンを制作した。
キッチンスペースの端に小さなレンジ台を設置。2つのカウンターの下にフルサイズの冷蔵庫を組み込んだ。青いキャビネットの端は、キッチン用品の収納になっている。
キャビネットの扉には、アルミのバーを埋め込んでいる。太いバーは扉の開閉を行うためのもの。バーの位置は、人の動きを考えて決めた。
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