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自然の光と風を生かす、パッシブソーラーの家
引退後の夫婦が新築した家は、太陽の光や熱を取り入れる効率的なパッシブソーラー設計。空をめぐる「太陽をつかまえる」設計で、夏は爽やか、冬は暖かく心地よい家が実現しました。
Rebecca Gross
2017年8月25日
グレン・クリストファーソンさんとデビー・クリストファーソンさんの夫婦が暮らすこちらの家は、その特性にちなんで「サンキャッチャー・レジデンス(太陽をつかまえる家)」と名付けられている。以前はシドニーに住んでいたふたりは、退職後の夢の住まいを建てるため、オーストリア、バイロン・ベイの内陸地を望む2360平方メートルの敷地を購入した。
クリストファーソンさん夫婦は、バイロン・ベイとシドニーに事務所を構える〈デイヴィス・アーキテクツ〉に設計を依頼。南向きに開けた急傾斜地という立地でもあり、1年中快適でエネルギー効率の高い家にするには、土地の特徴や方角にしっかり対応することが重要だった。「主なポイントになったのは、冬の日射、通風、そしてこの土地の全体的な気候です」と〈デイヴィス・アーキテクツ〉のエド・デイヴィスさんは言う。「結論は、南北に面し、冬の日差しを取り入れる家をつくることでした」。
クリストファーソンさん夫婦は、バイロン・ベイとシドニーに事務所を構える〈デイヴィス・アーキテクツ〉に設計を依頼。南向きに開けた急傾斜地という立地でもあり、1年中快適でエネルギー効率の高い家にするには、土地の特徴や方角にしっかり対応することが重要だった。「主なポイントになったのは、冬の日射、通風、そしてこの土地の全体的な気候です」と〈デイヴィス・アーキテクツ〉のエド・デイヴィスさんは言う。「結論は、南北に面し、冬の日差しを取り入れる家をつくることでした」。
Photos by Possum Creek Studios
どんなHouzz?
住まい手:退職後の夫婦、グレン&デビー・クリストファーソンさん
所在地:ニューサウスウェールズ州バンガロー
規模:延床面積378平方メートル、ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×3
建築家:〈デイヴィス・アーキテクツ〉
オーナー夫婦の要望は、ベッドルームが3つ、プール、ガレージ、そしてたくさんの収納がある家。すっきりとモダンなラインのデザインで、自然光がふんだんに入ることも大切だ。しかし、まず設計上の問題となったのは、地形も眺めも、南側が開けていることだった。太陽の光や熱を取り入れる効率的なパッシブソーラー設計のためには、北向きにするのが一般的なのだ。 「バンガローの町の冬は、驚くほど寒くなることもあります。南側からの日射を最大限に取り入れて、美しい眺めを生かすことが重要でした」とデイヴィスさんは言う。
どんなHouzz?
住まい手:退職後の夫婦、グレン&デビー・クリストファーソンさん
所在地:ニューサウスウェールズ州バンガロー
規模:延床面積378平方メートル、ベッドルーム×3、バスルーム(トイレ含む)×3
建築家:〈デイヴィス・アーキテクツ〉
オーナー夫婦の要望は、ベッドルームが3つ、プール、ガレージ、そしてたくさんの収納がある家。すっきりとモダンなラインのデザインで、自然光がふんだんに入ることも大切だ。しかし、まず設計上の問題となったのは、地形も眺めも、南側が開けていることだった。太陽の光や熱を取り入れる効率的なパッシブソーラー設計のためには、北向きにするのが一般的なのだ。 「バンガローの町の冬は、驚くほど寒くなることもあります。南側からの日射を最大限に取り入れて、美しい眺めを生かすことが重要でした」とデイヴィスさんは言う。
クライアントの望んでいた耐久性とすっきりしたラインを実現するため、コンクリートとスチールを使っている。「これらの素材はどちらも非常に耐久性があり、スチールの骨組みを使えば、建物に軽やかさや透明感を与えることができます」とデイヴィスさんは言う。傾斜した屋根は、航空機の翼がヒントになった。支柱を端よりも内側に配置することで、屋根が家の上に浮かんでいるような軽さを演出している。
この屋根が、上階の周りをぐるりと囲む屋外エリアを覆っている。太陽の当たる北側に沿って、水泳用の細長いプールがある。屋外ダイニングエリアは東向きだ。
この屋根が、上階の周りをぐるりと囲む屋外エリアを覆っている。太陽の当たる北側に沿って、水泳用の細長いプールがある。屋外ダイニングエリアは東向きだ。
室内から屋外へつながるおもてなしの空間は、グレンさんとデビーさんにとって最優先事項だった場所。デイヴィスさんは、このエリアをキッチンの延長として設計している。またキッチンは、室内と屋外どちらのダイニングにも便利なデザインになっており、両方同時にサーブすることだって可能だ。
アウトドアキッチンのカウンター周りには、上部と両サイドに仕切りがあり、これによって外のダイニングスペースをゾーニングする効果がある。この仕切りには埋め込み照明も設置されている。
アウトドアキッチンのカウンター周りには、上部と両サイドに仕切りがあり、これによって外のダイニングスペースをゾーニングする効果がある。この仕切りには埋め込み照明も設置されている。
中に入ると、オープンプランのキッチン・ダイニング・リビングエリアが棟に沿って東西に長く伸び、リビングエリアは大きなスライド式のガラス扉から南北にも広がって、十字のようなかたちになっている。大型のタイルを室内にも屋外にも使い、視覚的なシームレスさが強調されている。
キッチンは、インテリア全体のシンプルですっきりとしたラインを邪魔しないように、ひとつながりの空間のいちばん端に配置した。キッチンアイランドの前面はグレイアイアンバーク材の板張りで、温かみとニュアンスを加えている。
ダイニングエリアは、キッチンとリビングのあいだ、ちょうど真ん中あたりに位置しており、このスペースの中心的存在だ。「南側にある大きな壁面が空間にまとまりを出し、アートを飾る場所にもなります」とデイヴィスさんは言う。また、ゲストを呼んでおもてなしをするときには、この壁があることで、みんなの意識が風景ではなく食べ物やお互いへと向かう。北からの光がクリアストーリー窓から入り、レーザーカットのシェードを使ったペンダントライトが、美しい照明効果をつくり出す。
明るい自然光が入る北側には、書斎兼ライブラリーがある。「部屋の真ん中あたりで視覚的に変化をつけ、落ち着いた雰囲気を加える効果もあります」とデイヴィスさんは言う。
明るい自然光が入る北側には、書斎兼ライブラリーがある。「部屋の真ん中あたりで視覚的に変化をつけ、落ち着いた雰囲気を加える効果もあります」とデイヴィスさんは言う。
ダイニングエリアとは対照的に、リビングエリアは南北の両方向に開かれ、眺望と日差しを取り入れている。「この空間は、2方向に面するように設計しました。南からは遠くの丘の景色が見え、北からは太陽が差し込みます」とデイヴィスさんは言う。
南北の方向を強調することで、建物を丘につなぎとめ、北側のプールまわりに日当たりのよい場所を確保している。
「こちらの屋外エリアは、グレンさんとデビーさんがリラックスするための場所なんです。日当たりがよく、いやな南風からは守られながら、リビングエリアのガラス窓を通して向こう側の風景も見ることができます」とデイヴィスさんは言う。
リビングエリアは、冬の低い日差しも活用できる設計になっており、夏はクリアストーリー窓で良好な通風を確保する。コンクリートスラブ構造の床はサーマルマスとなり、冬は蓄熱して部屋を暖め、夏は気温を一定に保つ役割を果たす。白い外壁は、夏の熱い日差しをはね返してくれる。
リビングエリアは、冬の低い日差しも活用できる設計になっており、夏はクリアストーリー窓で良好な通風を確保する。コンクリートスラブ構造の床はサーマルマスとなり、冬は蓄熱して部屋を暖め、夏は気温を一定に保つ役割を果たす。白い外壁は、夏の熱い日差しをはね返してくれる。
視線を集めるのは、プールの奥にあるつくり付けのベンチ。ここは、気負わずリラックスできるくつろぎの場所なのだと感じさせてくれる。
マスターベッドルームはリビングエリアの奥にあり、こちらも同じように、眺望と冬の日差しと通風に配慮した設計となっている。「ベッドルームは、南側の風景を主役に、シンプルでプライベートで、心の落ち着く空間にデザインしています」とデイヴィスさんは言う。
オンスイートのバスルームも、同じくシンプルかつモダンなデザインで、南側の景色が見える。床にはリビングエリアやバルコニーと同じタイルが使われている。無垢ハードウッド材の造作の棚が、温かみを感じさせる。
下の階への階段は、リビングエリアとマスターベッドルームのあいだにある。「ここは、いわば家の『肺』のようなスペースで、心地よい移動の空間であるだけでなく、家全体に光を取り入れ通気をよくする機能があるんです」とデイヴィスさんは言う。「シンプルに上下の階をつなぐとともに、上の階ではベッドルームと日中の居住空間をつなぐ『ガラスの通路』となっています」。
階段室の両端の壁は、床から天井まで一面、ガラス製の羽板がついた窓になっており、ここから自然光と空気を室内に取り入れている。階段と、特注のガードレールや手すりは、グレイアイアンバーク材だ。
下の階にはベッドルームが2つある。どちらもマスターベッドルームと同様に、特注のワードローブ、デスク、空調が造り付けられている。
中も外も、上階も下階も、インテリアの色使いは全体で統一されている。こちらのベッドルームも、ニュートラルで鮮明な白の背景に、深いターコイズブルーという取り合わせだ。
エネルギーのさらなる効率化をはかるため、太陽光発電システムと太陽熱給湯ユニットを屋根に設置している。下階の収納エリアには雨水タンクもある。
〈サンキャッチャー・レジデンス〉は、以前からこの地域にあった建物や景観に配慮してデザインされている。上階の外壁は〈ジェームズ・ハーディ〉の下見板材《リニア》で仕上げた。耐久性が高く、影のラインが深く出る製品だ。「ニューサウスウェールズ州北部の海岸沿いでは昔から下見板張りの建物が多いので、そこからの引用です」とデイヴィスさんは説明する。下の階のレンガやブロック造りの部分は丘に溶け込み、サーマルマスとしても機能している。
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