コメント
Houzzツアー: スペインの伝統的な別荘「シガラル」を改装した贅沢な住宅
16世紀からトレド郊外で発展してきた田園の別荘「シガラル」をコンテンポラリーな住まいにリノベーションした、ラグジュアリーな住宅です。
José María Faerna
2016年9月25日
「シガラル」とはトレドの郊外にあるつくられた、歴史的な田園の別荘群。史上初のシガラルは、中世後期にタホ川の南岸の地区につくられた。セルバンテスやティルソ・デ・モリーナら16、17世紀のスペイン文化黄金時代の作家たちの作品から20世紀中期の作品まで、スペイン文学をたどれば、トレドのブルジョワたちが夏を過ごす別荘として発展してきたシガラルの歴史がわかる。だが、近年になり、シガラルの多くは敷地を分割され、ホテルに転用されている。
そんななか、これからご紹介するプロジェクトは、シガラルを本来どおり住居として使用すべくリノベーションした事例である。オーナーのブルーノ・ミゲレスさんは、開放的な空間を連ねた美しい住宅をつくりあげた。息を呑むほど美しいトレドの街と、それを囲む景色を見渡せるすばらしい位置に立つ家である。
そんななか、これからご紹介するプロジェクトは、シガラルを本来どおり住居として使用すべくリノベーションした事例である。オーナーのブルーノ・ミゲレスさんは、開放的な空間を連ねた美しい住宅をつくりあげた。息を呑むほど美しいトレドの街と、それを囲む景色を見渡せるすばらしい位置に立つ家である。
どんなHouzz?
住まい手:夫婦と3人の娘
所在地:スペイン、トレド
設計:ブルーノ・ミゲレス
地上2階に加え、地下室とロフトを居住空間とする住宅だ。家は敷地の中央に位置し、前と後ろの両側に庭があり、住宅の南側からは前庭にアクセスできる。ダイニングルームとマスターベッドルームは、同じく南側に張り出した、金属板を張ったキューブに配置されている。花崗岩で舗装されたアプローチの奥にプレキャストコンクリートの大きな壁があり、右側の石張りの部分の内側には、寝室とガレージがある。
住まい手:夫婦と3人の娘
所在地:スペイン、トレド
設計:ブルーノ・ミゲレス
地上2階に加え、地下室とロフトを居住空間とする住宅だ。家は敷地の中央に位置し、前と後ろの両側に庭があり、住宅の南側からは前庭にアクセスできる。ダイニングルームとマスターベッドルームは、同じく南側に張り出した、金属板を張ったキューブに配置されている。花崗岩で舗装されたアプローチの奥にプレキャストコンクリートの大きな壁があり、右側の石張りの部分の内側には、寝室とガレージがある。
手付かずのまま残したオークの老木2本が、家と周囲の景観をつなぐ役割を果たしている。ソリッドな外壁と大きなガラス窓の対比が軽快さを生んでいる。
北側のファサードは、そのまま伸びてポーチを形成し、プールとともに裏庭を囲むことででオープンな中庭をつくりだしている。設計者のミゲレスさんは「プールは建物から離して日のあたる場所に設置し、周囲の自然がもつうねるような景観とは対照的に、中庭はフラットで気持ちのよい芝生のスペースとしました」と説明する。
インフィニティプールは裏庭から北に向かって広がり、旧市街の素晴らしい景色を望むことができる。前景にはサンタ・クルス美術館や大聖堂の塔を、はるかむこうには要塞や畑、グレドス山脈のふもとの丘を見渡すことができる。「オーナーは自分が暮らすトレドの街を熱愛していて、南西に広がる歴史地区やシガラルの眺めがお気に入りなんです」とミゲレスさん。
屋根付きポーチは四方向を開放しているので、夕暮れどきになるとゲストは庭や北側のファサードを包む黄昏の眺めを楽しむことができる。
ポーチのリビングエリアでは、夏に使用するダイニングエリアがある。この空間はプールと同じ向きになっており、絵葉書のように素晴らしい旧市街や遠くの景色をあますことなく味わうことができる。
リビングルームはコンテンポラリーな暖炉によって区切られているが、2面に開口部があるシースルー暖炉なので空間を視覚的につないでくれる。
リビング奥のラウンジエリアは《チャールズ》のソファを壁側に置き、センターテーブルは《デイエシス》を選んだ。どちらもアントニオ・チッテリオが〈B&B Italia〉のためにデザインしたもの。椅子の《レイジー》は同じく〈B&B Italia〉でパトリシア・ウルキオラが手がけた作品だ。床は灰色の樹脂モルタル仕上げとなっている。室内の壁は全面ガラスの壁面となっており、光とあたたかさの溢れる空間になっている。屋外の木々は室内の壁面に、影と光の美しい模様を描き出す。
広々としたダイニングルームは、南側に突き出したキューブ状の金属張りの建物の中、前庭に生えている樹齢100年のオークの目の前に位置している。ダイニングルームの家具は、ジャン・マリー・マッソーが〈ポロ〉のために手がけた、鮮やかなイエローの天板が美しいダイニングテーブール《シナプシス》、テーブルとは対照的にフォーマルな印象の黒の革張り椅子は〈カッシーナ〉のためにフィリップ・スタルクがデザインした《パシオン》、同じく〈カッシーナ〉のためにピエロ・リッソーニが手がけた、白大理石の天板が美しいポリッシュ仕上げの白いキャビネット《フラット》を選んだ。南側の強い光をオークの木が、室内に差し込む光をやわらげてくれるので、ダイニングルームの雰囲気は北側の街の全景を見渡す空間よりも落ち着た雰囲気だ。
「家族とともに、友人をもてなすことを積極的に楽しみ、みんなで食事を楽しむための住まい」にふさわしい空間が実現している。
「家族とともに、友人をもてなすことを積極的に楽しみ、みんなで食事を楽しむための住まい」にふさわしい空間が実現している。
写真に写っているのは設計した建築家のブルーノ・ミゲレスさん。キッチン家電は、アメリカ産のスギ材を張った、床から天井まで届く壁面キャビネットの中にのすべて収納。キッチンに並ぶ椅子は〈B&B Italia〉のために深澤直人がデザインした《パピリオ》コレクション。椅子に腰を下ろせば、裏庭の眺めはもちろん、金属張りのキューブ状の部分と、それに似た、反対側に位置するダイニングルームのある張り出し部分を眺めて楽しむことができる。
リビングエリアとキッチン、ダイニングルームや1階東側のその他の部屋へ続く廊下を仕切るのは、木製の本棚だ。前述の暖炉や本棚といった仕切りによって、空間や光の連続性を断つことなく各部屋の境界がゆるやかに定められている。白の革張りの〈ヴィトラ〉製イームズの《ラウンジチェア》に腰掛けているのはこの家のオーナー。フロアランプはアントニオ・チッテリオとトアン・グエンによる〈フロス〉製《ケルビン F》。
西側には、庭に面したマスターベッドルームとバスルームがある。もともとこの部屋の床の仕上げはレジンモルタルだったが、黒塗装仕上げのオーク材フローリングに変更した。ベッドはパトリシア・ウルキオラが手がけた〈B&B Italia〉製《タフティ》で、チッテリオがデザインを手がけた〈マクサルト〉製ベッドサイドテーブルの《アンフォラ》に〈アルテミデ〉のランプが添えられている。
ミース・ファン・デル・ローエがデザインした名作家具、〈ノール〉製の《バルセロナチェアー》からも、トレドのすばらしい眺望を味わえる。
マスタースイートには、ホワイトトーンでまとめたバスルームがある。ひときわ存在感を放つのが、〈マクロ〉製バスタブの《ウェーブ》だ。自然光あふれる空間となっており、バスタブからも洗面台からも、北側の眺めを望むことができる。
東側は、家の中でもっとも暗い場所。ここには温度管理の行き届いたワインセラーが設置されている。ほかの空間と同様、ここでも光の反射を楽しむ空間がつくられている。
正面玄関と裏庭へつながる出口の間、住宅の中央に位置は、建物の軸となる空間があり、ここに立つと、屋内、屋外の建物の高さを感じることができる。この効果を強調するため、この空間には訪れる人が足をとめる2つのモダニズムデザインの名作がしつらえられている。ガエタノ・ペッシェが手がけた〈B&B Italia〉の《アップ》、そしてアッキーレ・カスティリオーニがデザインしたシーリングライトの《タラクサカム88S》だ。異なる高さに戦略的に設置して、通路のフォーカルポイントとしている。
日が沈むと、このコンテンポラリーなトレドのシガラルのコンセプトである自然な透明感に、人工の光が変化を加える。街は星がちりばめられた大空となり、窓ガラスに映りこんた家具や建物の素材がみせる表情と星空が、一枚の仮想平面上で重なり合う。街の明かりを背景に質感が交錯し、家そのものが、自らを映す鏡のような存在になる。
「空間ごとに天井の高さも素材も異なっている」にもかかわらず、遮られることなく連なる室内空間は、そのまま屋外へと連なり、この世のものとは思えない雰囲気をまとう。これこそが、この家の中心的コンセプトだ、とミゲレスさんは話す。
周辺環境との連続性は、エネルギー効率や環境保全といった側面にもあらわれている。ミゲレスさんは地熱エネルギーの利用をプロジェクトの目玉とした。床下暖房と天井冷却システムを採用することでエネルギー消費量を75%減らし、二酸化炭素排出量もゼロになった。
さらに、自動調光システムを採用しており、光の設定を変えることもできるし、それぞれに個性、流動性、統一感のある部分を連ねたこの住宅の各部分に、光が一貫性をもたらしている。
さらに、自動調光システムを採用しており、光の設定を変えることもできるし、それぞれに個性、流動性、統一感のある部分を連ねたこの住宅の各部分に、光が一貫性をもたらしている。
おすすめの記事
Houzzツアー (お宅紹介)
クラシックなパリジャン風デザインを現代風にアレンジ
古典的な優美さと巧妙な仕組みの壁収納ベッドによって、ある女性とその甥のための美しいセカンドハウスが生まれました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
明るい色使いがポイント。ホームオフィスがあるスペインのリノベーション
ハッピーな雰囲気が魅力的な光あふれる住まい。デザイナーが考えた、予算を抑えるための秘策もご紹介します。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
開放的な空間に生まれ変わった、クラシックなテラスハウス
ロンドンの歴史ある建物の全面リフォーム。そして大胆に変身した廊下を、ビフォー・アフターの写真とともにご紹介します。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
スペインの街を一望できるペントハウス
息をのむようなバルセロナの眺めを楽しむことができる、素晴らしいテラスをもつペントハウス。しかし改装前、出入り口には狭い引き戸しかありませんでした。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(海外)
光に満ちた回廊を再利用して、都市型アパートを開放的に
美しい天井と大きな窓がある、太陽の差し込む明るいロッジアをリビング空間の一部とすることで、住まいを一変させました
続きを読む