タイムレスデザインの名作椅子「ルイ・ゴーストチェア」
インテリアにハイセンスな風格をもたらす6種類のデザインクラシックチェア、その歴史背景や合わせ方のコツ。英国在住20年のアンティークディーラーが1デザインずつ解説します。
西谷典子|Noriko Nishiya
2015年11月5日
アンティークの家具とコンテンポラリースタイルの家具、一見、まったく合わないイメージがありますが、フィリップ・スタルクがデザインした「ルイ・ゴーストチェア」だけは別です。この「透明な存在感」で、スペースが限られた部屋にはもちろん便利な椅子でもありますが、意外にもダークカラーのアンティーク家具と非常に相性がよく、トラディショナルテイストの重い感じをほどよく中和してくれます。違和感なく合わせられる秘密は、そのトラディショナルなフォルムにあります。「ルイ・ゴーストチェア」はエクレクティックスタイルそのもの、古いものと新しいものがバランスよくミックスされた、実によく考えられた椅子なのです。
日本でもなじみ深いフランスのインダストリアルデザイナー、フィリップ・スタルクによる、「ルイ・ゴーストチェア」。コンテンポラリーなインテリアだけでなくアンティークの家具とも意外に相性がよく、新しいものと古いものをミックスするインテリアにしばしば登場する椅子です。
あくせく働かず、夢の中でデザインするという奇才スタルクの、ミリオンセラーを記録したこの椅子の人気の秘密と、上手な使い方の例を見ていきましょう。
あくせく働かず、夢の中でデザインするという奇才スタルクの、ミリオンセラーを記録したこの椅子の人気の秘密と、上手な使い方の例を見ていきましょう。
早くから成功した奇才・スタルク
発明することが仕事であったという航空技師の父を持つフィリップ・スタルクは、小さいころから何かをつくり出すクリエイティブな環境の中で育ちました。生活空間に興味を持ったスタルクはまだ学生だった1969年、、ふくらませることのできる子供の家を展示会で発表し、大成功をおさめます。翌年にはピエール・カルダンのアートディレクターにも抜擢され、早くもその才能を認められるようになったのです。そして、1983年ミッテラン大統領がエリゼ宮の中にある私邸の改装を彼に頼んでから、一気に世界中でその名が知られるようになりました。
発明することが仕事であったという航空技師の父を持つフィリップ・スタルクは、小さいころから何かをつくり出すクリエイティブな環境の中で育ちました。生活空間に興味を持ったスタルクはまだ学生だった1969年、、ふくらませることのできる子供の家を展示会で発表し、大成功をおさめます。翌年にはピエール・カルダンのアートディレクターにも抜擢され、早くもその才能を認められるようになったのです。そして、1983年ミッテラン大統領がエリゼ宮の中にある私邸の改装を彼に頼んでから、一気に世界中でその名が知られるようになりました。
ルイ・ゴーストチェアの誕生
ユーモアのあるプロダクト、ホテルやレストラン空間を数々生み出し多スタルクは2002年、ミラノ・サローネでKartell 社から「ルイ・ゴーストチェア」を発表します。実はその前の1998年、彼はすでに「La Marie」という、世界で初めてのポリカーボネート一体成型のスケルトンの椅子を発表していたのですが、ルイ・ゴーストチェアの方が圧倒的な人気を博しました。
それはどうしてでしょう? 「ルイ・ゴーストチェア」の形をよく見ると、フランスでよく見かけるアームチェアの形にそっくりです。これは、ルイ16世、マリー・アントワネットの時代に流行したネオクラシックデザインの椅子からインスピレーションを得たもので、フランスでは大変なじみのある椅子のフォルムなのです。
家具・インテリア雑貨のショップを探す
ユーモアのあるプロダクト、ホテルやレストラン空間を数々生み出し多スタルクは2002年、ミラノ・サローネでKartell 社から「ルイ・ゴーストチェア」を発表します。実はその前の1998年、彼はすでに「La Marie」という、世界で初めてのポリカーボネート一体成型のスケルトンの椅子を発表していたのですが、ルイ・ゴーストチェアの方が圧倒的な人気を博しました。
それはどうしてでしょう? 「ルイ・ゴーストチェア」の形をよく見ると、フランスでよく見かけるアームチェアの形にそっくりです。これは、ルイ16世、マリー・アントワネットの時代に流行したネオクラシックデザインの椅子からインスピレーションを得たもので、フランスでは大変なじみのある椅子のフォルムなのです。
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「ネオクラシックデザイン」からの発想
ネオクラシックデザインとは、ギリシャやローマの建築物からインスピレーションを得たもので、1748年にイタリアのポンペイの遺跡が見つかってから、その素晴らしいローマ時代のデザインが流行になりました。フランスでは先代の重厚な彫刻が入ったロココスタイルから、シンプルでまっすぐな脚のデザインや繊細な彫刻に変わり、フランスではインテリアの黄金時代を迎えるのです。そんなフランスのトラディショナルなデザインの椅子を、現代のテクノロジーとマテリアルで新しく復活させたのが、このルイ・ゴーストチェアだったわけです。
ネオクラシックデザインとは、ギリシャやローマの建築物からインスピレーションを得たもので、1748年にイタリアのポンペイの遺跡が見つかってから、その素晴らしいローマ時代のデザインが流行になりました。フランスでは先代の重厚な彫刻が入ったロココスタイルから、シンプルでまっすぐな脚のデザインや繊細な彫刻に変わり、フランスではインテリアの黄金時代を迎えるのです。そんなフランスのトラディショナルなデザインの椅子を、現代のテクノロジーとマテリアルで新しく復活させたのが、このルイ・ゴーストチェアだったわけです。
古典的デザインと新素材の出会い
当時は画期的だったポリカーボネートという新しい素材を使いながらも、見た目は大変クラシックというこの椅子は、ヨーロッパの古いインテリアに合う、エッジの利いた椅子として大人気となります。特に代々受け継いだアンティーク家具を持っていて、少々トラディショナルなインテリアに飽きがきていた人達にはぴったりの椅子でした。色の濃いトラディショナルの家具特有の重たい感じが、「ルイ・ゴーストチェア」を合わせることでインテリアに一種の「抜け感」が生まれ、スペースの狭いパリのアパートのような空間にはぴったり。熱狂的に受け入れられました。
当時は画期的だったポリカーボネートという新しい素材を使いながらも、見た目は大変クラシックというこの椅子は、ヨーロッパの古いインテリアに合う、エッジの利いた椅子として大人気となります。特に代々受け継いだアンティーク家具を持っていて、少々トラディショナルなインテリアに飽きがきていた人達にはぴったりの椅子でした。色の濃いトラディショナルの家具特有の重たい感じが、「ルイ・ゴーストチェア」を合わせることでインテリアに一種の「抜け感」が生まれ、スペースの狭いパリのアパートのような空間にはぴったり。熱狂的に受け入れられました。
見た目もサイズも軽やか
たとえば、スペースが限られたキッチンにどうしてもダイニングテーブルを置きたいときなどに。この椅子と円卓をチョイスすれば4人は座れ、ご覧の通り、窮屈な感じなしにダイニングエリアが確保できます。しかも、アームチェアにしては小ぶりなサイズなのもうれしい点です。大きいスペースに置くと、もっとスペースがあるように感じられ、スペースのないところにもそれなりの空間を持たせることができるという、本当にありがたい椅子なのです。
たとえば、スペースが限られたキッチンにどうしてもダイニングテーブルを置きたいときなどに。この椅子と円卓をチョイスすれば4人は座れ、ご覧の通り、窮屈な感じなしにダイニングエリアが確保できます。しかも、アームチェアにしては小ぶりなサイズなのもうれしい点です。大きいスペースに置くと、もっとスペースがあるように感じられ、スペースのないところにもそれなりの空間を持たせることができるという、本当にありがたい椅子なのです。
頑丈で耐久性も優秀
「ルイ・ゴーストチェア」の構造は、継ぎ目のない一体成型。6脚までスタッキングすることもでき、傷や衝撃にも強いので、インドア・アウトドア兼用に使えます。見た目とは違った頑丈な椅子です。レストランやホテル、劇場やミュージアム、結婚式場などのパブリックスペースで多く使われるようになったのも、場所をとらず、耐久性があるという理由のほか、透明なために周りの華やかな装飾やインテリアをブロックすることなく、たくさんの椅子を置くことができる理由からでした。
「ルイ・ゴーストチェア」の構造は、継ぎ目のない一体成型。6脚までスタッキングすることもでき、傷や衝撃にも強いので、インドア・アウトドア兼用に使えます。見た目とは違った頑丈な椅子です。レストランやホテル、劇場やミュージアム、結婚式場などのパブリックスペースで多く使われるようになったのも、場所をとらず、耐久性があるという理由のほか、透明なために周りの華やかな装飾やインテリアをブロックすることなく、たくさんの椅子を置くことができる理由からでした。
透明だからこそのおもしろさ
この椅子は遠くから見ると、うっすらアウトラインだけが見え、まさしく「ゴースト」のようですが、特に白い壁、白いフロアに置くと椅子が最も透けた感じに見えます。その透明感を利用して、ヴィヴィッドな柄のクッションを置くと、まるでクッションが浮いているようにも見え、おもしろいスタイリングができます。スタルクの探求する「エレガントでミニマルな美しいラインのプロダクト」を、この椅子が象徴的に表現しているといえるでしょう。
この椅子は遠くから見ると、うっすらアウトラインだけが見え、まさしく「ゴースト」のようですが、特に白い壁、白いフロアに置くと椅子が最も透けた感じに見えます。その透明感を利用して、ヴィヴィッドな柄のクッションを置くと、まるでクッションが浮いているようにも見え、おもしろいスタイリングができます。スタルクの探求する「エレガントでミニマルな美しいラインのプロダクト」を、この椅子が象徴的に表現しているといえるでしょう。
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幽霊のはずなのですが、しっかり存在感がある椅子ですよね。