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折り紙をヒントに生まれた、ニュージーランドの美しい家
折り紙の飛行機のような彫刻的な形をした家。すばらしい眺めを楽しむ設計の工夫にあふれています。
Simon Farrell-Green
2017年4月26日
スコットランド出身のライター、スコット・ローリーさんはオーストラリアのシドニーで暮らしていたが、ニュージーランドの風景に魅了され、家を建てることを決めた。オークランドから1時間半以内という条件で場所を探し始めるのと同時に、〈スタジオ2アーキテクチャ〉の建築家ポール・クラークさんのもとを訪れた。
「しばらく話をして、私たちが今までしてきた仕事を気に入ってもらえたようです」とクラークさんは言う。「過去のプロジェクトを事前にリサーチしてくれていて、お互いフィーリングが合いました。その時点ではまだ土地も決まっていなかったので、このときの会話と訪問がニュージーランドへの愛着という点で出発点だったといえるかもしれません」。
「しばらく話をして、私たちが今までしてきた仕事を気に入ってもらえたようです」とクラークさんは言う。「過去のプロジェクトを事前にリサーチしてくれていて、お互いフィーリングが合いました。その時点ではまだ土地も決まっていなかったので、このときの会話と訪問がニュージーランドへの愛着という点で出発点だったといえるかもしれません」。
Photos by Simon Devitt
どんなHouzz?
住まい手:ライターのスコット・ローリーさんと飼い犬。週末には多くのゲストがやってくる。
所在地:ニュージーランド、オークランド北部の町パキリ
規模:ベッドルームx2、バスルームx2
メールや電話で何度かやりとりをするうち、数ヵ月後にローリーさんからいい土地が見つかったと連絡があった。場所はオークランドから北へ1時間20分、手つかずの白い砂浜が広がるパキリビーチ。元は牧場だった土地の小高い丘陵の一角にあたり、ヘン・アンド・チキン諸島まで見えるすばらしい眺めが望める。「さっそく車で一緒に現地を見に行きました。すると現地から見える島々がインスピレーションをくれてアイデアが浮かんだので、戻るとすぐに小さな模型をひとつの案として作っておきました。これが、ローリーさんとの打ち合わせとともにプロジェクトを進める原動力になりました」とクラークさんは振り返る。
どんなHouzz?
住まい手:ライターのスコット・ローリーさんと飼い犬。週末には多くのゲストがやってくる。
所在地:ニュージーランド、オークランド北部の町パキリ
規模:ベッドルームx2、バスルームx2
メールや電話で何度かやりとりをするうち、数ヵ月後にローリーさんからいい土地が見つかったと連絡があった。場所はオークランドから北へ1時間20分、手つかずの白い砂浜が広がるパキリビーチ。元は牧場だった土地の小高い丘陵の一角にあたり、ヘン・アンド・チキン諸島まで見えるすばらしい眺めが望める。「さっそく車で一緒に現地を見に行きました。すると現地から見える島々がインスピレーションをくれてアイデアが浮かんだので、戻るとすぐに小さな模型をひとつの案として作っておきました。これが、ローリーさんとの打ち合わせとともにプロジェクトを進める原動力になりました」とクラークさんは振り返る。
以前は牛を飼育していた土地は、低木の茂みに戻っていた。敷地へは大きな道路を外れて長い砂利道を進み、さらに長い私道を進んだ先にある、急斜面に近い土地だ。正面に見える丘陵地の向こうにはパキリビーチの砂丘が広がり、東側には再生された低木地の谷が続く。開けた場所に立っていながら、同時にひっそり隠れているようでもある。というのも、周囲にはほかの家は見当たらないからだ。土地には合理的に決めた建物のプラットフォームがあらかじめつくられており、6メートルの高さ制限がつけられていた。建築条件を満たすため、クラークさんは苦心したが、結果的に完成した家は、それぞれの角が既存のプラットフォームに接する形になった。
家は景観の中に折り紙のような造形がたたずむ形をしている。最初に作った模型にかなり近いものだ。上へ伸びた屋根はそのままサイドへ流れ、側面も斜面になっている。屋根のひさし下に設けた空間はローリーさんが書きものをするスタジオで、下の階にはリビングエリアがあり、外には海が見える。ローリーさんが家に求める2つの正反対のニーズ、友人を招いてにぎやかに過ごす場所と、書き手としてひとりで静かに考えるスペースを追求した結果、出た答えが形になった。
家は景観の中に折り紙のような造形がたたずむ形をしている。最初に作った模型にかなり近いものだ。上へ伸びた屋根はそのままサイドへ流れ、側面も斜面になっている。屋根のひさし下に設けた空間はローリーさんが書きものをするスタジオで、下の階にはリビングエリアがあり、外には海が見える。ローリーさんが家に求める2つの正反対のニーズ、友人を招いてにぎやかに過ごす場所と、書き手としてひとりで静かに考えるスペースを追求した結果、出た答えが形になった。
家は大きくない。手前にベッドルームが2部屋とバストイレが2ヵ所、北側には大きく吹き抜けになったオープンな空間がある。「いろんな要素を詰め込んで、押したり引いたり寄せ集めたりして、最高の形になるよう模索しました」とクラークさん。「最初からさまざまな側面を考えたうえで設計しましたが、実際の敷地に合わせるためにはたくさん手を加えなければいけませんでした。シンプルな設計も、実際に建築するとなると必ずしもシンプルにはいかないのです」。それはまるで折り紙を折る作業のようだった。壁が直角の角をつくる場所は1ヵ所しかないが、それも屋根の角度に沿ってうまれた形だ。
仕掛けはさらにある。クラークさんが遊び心でつけた天井に折り目で、牧場だったころに牛が通っていた小道を示している。折り目に沿って廊下を抜けると、外の景色が見える空間に出る。家の名称はここからとり、《クロッシング》と名づけた。建物の内部をゆっくり時間をかけて回ってほしいと意図したつくりになっている。「全体がただぽんと与えられてはいません。すべてが一目でわかるように提示されてはいないんです。ある空間へたどり着く、向きを変える、見る、それぞれの瞬間に発見があるように一瞬一瞬を大切にした家です」とクラークさんは説明する。
仕掛けはさらにある。クラークさんが遊び心でつけた天井に折り目で、牧場だったころに牛が通っていた小道を示している。折り目に沿って廊下を抜けると、外の景色が見える空間に出る。家の名称はここからとり、《クロッシング》と名づけた。建物の内部をゆっくり時間をかけて回ってほしいと意図したつくりになっている。「全体がただぽんと与えられてはいません。すべてが一目でわかるように提示されてはいないんです。ある空間へたどり着く、向きを変える、見る、それぞれの瞬間に発見があるように一瞬一瞬を大切にした家です」とクラークさんは説明する。
いよいよ家のいちばん奥まで来ると、壁はガラスとなっており、完全に外に向かって開くことができる。床から天井までのガラス壁と大きな開口部から、小さなテラスが続き、その向こうの景観へといざなう。内装に使用した木材をひさしの下にも使っているため、テラスにぬくもりが生まれ、包まれるような感覚を覚える。
外観は頑丈そうだし、スペースエイジを思わせる雰囲気もあるが、リビングは全体にヒマラヤスギの内装パネルをはっている。天井と壁が接する部分と部屋の角は、とりわけ精巧な施工が必要だった。
家のいたるところに、この家の個性を表現し、その背景にある哲学を際立たせる小さな工夫がちりばめられている。例えばアイランド型のキッチンカウンターは、キッチンの窓から見えるヘン・アンド・チキン諸島の島の形を模したデザインをクラークさんが指定した。まさに楽しい家のための楽しい工夫だ。「昔ながらのアイランド型カウンターも、職人たちの技で、ダイナミックな魅力が生まれました。とにかく、楽しみたくて」とクラークさんは話す。
家のいたるところに、この家の個性を表現し、その背景にある哲学を際立たせる小さな工夫がちりばめられている。例えばアイランド型のキッチンカウンターは、キッチンの窓から見えるヘン・アンド・チキン諸島の島の形を模したデザインをクラークさんが指定した。まさに楽しい家のための楽しい工夫だ。「昔ながらのアイランド型カウンターも、職人たちの技で、ダイナミックな魅力が生まれました。とにかく、楽しみたくて」とクラークさんは話す。
2階の仕事場に続く階段も少し変わっている。互い違い階段になっているのだ。クラークさんによれば、ニュージーランドの建築基準では階段にもいくつか種類があり、個室やリビングではない小さなスペースへアクセスするためだけの階段は「重要でない」階段とみなされるため、こんな階段が可能になったのだそうだ。遊び心は階段にとどまらない。手すりもキッチンカウンターや家の外観と同じく、窓の外に見える島の形をモチーフにしている。「断面を島の形に作って、建物の断面とリンクさせた手すりを作りました」。
同じく熟慮したのが窓。窓は家の各立面の表情をつくるからだ。私道から見ると家は非常に閉じられたつくりだが、正面から見ると開放的だ。クラークさんは両サイドの窓を注意深く配置した。東面には大きな窓を2つ開けたため、周囲に広がる牧歌的な丘陵地帯が眺められる。窓のうち1つはリビングルームにあり、同じ空間にあるガラス壁からの光景とはまったく異なる眺めを見せてくれる。もう1つの窓はゲスト用の寝室にあり、ゲストへのおもてなしにもなっている。
ローリーさんの寝室があるのは家の西側。こちらは細いスリット窓をいくつか設置している。「大きな土手に木が並んでいるイメージです」とクラークさんは言う。通風の目的以外、こちら側を大きく開ける意味はあまりなかった。だが細部は美しい。屋根瓦棒葺きとし、壁も同じ素材を使っている。スリット窓の幅もこの壁にそろえている。
平面図を見ると、この家の非常に複雑な構造がわかる。玄関と廊下は南側の壁の中心から少しずれた位置に配置された。廊下はかつて牛が通った小道に沿ってリビングへ続き、外の田園風景をのぞかせながら、最後に北面で視界が開ける。右の図に見える点線は屋根と天井の稜線を示している。
夜になると家はまったく違った表情を見せる。黒と木の素材がぬくもりと心地よさを感じさせ、日が暮れて海と島の景色が見えなくなっても美しく魅力的な空間だ。家に夜の表情をつくることは、クラークさんがつねに心を砕いている点だ。「私の建築哲学なんです。ホームオーナーにとって、夜の家も昼間と同じように魅力的な空間であることが重要だと考えています」。
こうして格別な個性のあるが完成した。家であると同時に、彫刻作品のようでもある。「私自身もこの家を楽しんでいますし、訪れた人も住まい手のローリーさんとこの家を楽しんでいると思います」とクラークさんは言う。ローリーさんは次のプロジェクトを考え始めているという。彼の頭の中にはやってみたいことがいくつかある。そのなかには大きなプロジェクトもあるかもしれない。「彼は冒険を恐れません。冒険にわくわくするタイプなんです」クラークさんはローリーさんをそう称した。
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