世界の読書家たちが暮らす「本と本棚が主役の家」
読書の秋、到来。世界のHouzzから、本を主役に考えた、美しくも知的な家の数々をご紹介します。
Simon Farrell-Green
2016年10月27日
日曜は、図書館のようにデューイ十進分類法や著者名順に本棚の整理する(色別なんてありえない)のが楽しみ、という人も世の中には存在する。極度の愛書家に言わせれば、本にはそれぞれ個性と歴史があり、それはページの中に描かれている物語からだけでなく、本の物質としての存在自体から生まれるもの。隠さずに、堂々とディスプレイしてあげるべき、という信念がある
家をリノベーションするときには、本をしばらく倉庫にしまっておくことになる。そんなときには、まるで古い友人を懐かしむかのように本が恋しくなるものだ。本棚の前を通り過ぎると、そこに並ぶ一冊一冊すべてが、たとえ内容の記憶はあやふやだったとしても、ある時間や場所、人物、思いをよみがえらせてくれるものなのだ。だからこそ、とくに気に入らなかった本でさえ処分できないことも多い。
家をリノベーションするときには、本をしばらく倉庫にしまっておくことになる。そんなときには、まるで古い友人を懐かしむかのように本が恋しくなるものだ。本棚の前を通り過ぎると、そこに並ぶ一冊一冊すべてが、たとえ内容の記憶はあやふやだったとしても、ある時間や場所、人物、思いをよみがえらせてくれるものなのだ。だからこそ、とくに気に入らなかった本でさえ処分できないことも多い。
そんなこんなで本を置く場所がなくなると、もう1つ、また1つと本棚を購入し、ついには部屋がまるごと本に占領されてしまうことになる。こちらの美しいお宅は、〈シェパード&ラウト〉がニュージーランドのカンタベリー地方で手掛けた家。1部屋といわず、歴史ある建物の片翼が、まるごと本のためのスペースになっている。(コンクリート流し込み成形の暖炉、座り心地のよさそうな椅子、そしてピラミッド型の壮観な板張り天井をご覧いただきたい。これならテレビの存在は見逃そう。)
今回は、「本との暮らし」をとことん追及した本マニアたちの部屋をご紹介しよう。どれも、本の物質的な魅力を惜しみなく讃え、ディスプレイしている空間だ。しかし見た目の美しさもさることながら、オーナーたちにとっていちばん大切なのは、毎日愛する本に触れながら、思索し、仕事をし、そして読書をする場所があることだろう。
今回は、「本との暮らし」をとことん追及した本マニアたちの部屋をご紹介しよう。どれも、本の物質的な魅力を惜しみなく讃え、ディスプレイしている空間だ。しかし見た目の美しさもさることながら、オーナーたちにとっていちばん大切なのは、毎日愛する本に触れながら、思索し、仕事をし、そして読書をする場所があることだろう。
階をつなぐ本棚
こちらは、〈プラットフォーム5アーキテクツ〉のパトリック・ミッチェルさんが手掛けた「ブックタワーハウス」。ロンドンのハムステッド地域にあるアーツ・アンド・クラフツ様式の家の2つの階を、オーナー家族の膨大な本のコレクションを主役にリノベーションした。1階のリビングと2階のベッドルームを吹き抜けにした空間が家の中心にあり、このスペースが書棚になっている。上下をつないでいるのはエレガントなオーク材の階段だ。
こちらは、〈プラットフォーム5アーキテクツ〉のパトリック・ミッチェルさんが手掛けた「ブックタワーハウス」。ロンドンのハムステッド地域にあるアーツ・アンド・クラフツ様式の家の2つの階を、オーナー家族の膨大な本のコレクションを主役にリノベーションした。1階のリビングと2階のベッドルームを吹き抜けにした空間が家の中心にあり、このスペースが書棚になっている。上下をつないでいるのはエレガントなオーク材の階段だ。
書棚のいちばん上には、まるでその一部のように小さなデスクが配置されており、ここから本の眺めと庭の眺めが楽しめる。階段の高さに合わせ、下に行くにつれて本棚も低くなっており、いちばん上の棚に手が届くよう工夫されている。
外と中のギャップ
アメリカ東海岸、マーブルヘッドのビーチ沿いに建つこちらの家は、何十年間も空っぽのまま放置されていたところを、オーナーと建築事務所〈シーマスコ+ヴァーブリッジ〉が救い出した物件だ。外観は、典型的な東海岸スタイル(下見板張り、庇の深いポーチを支える白い柱など)だが、インテリアはコンテンポラリー。らせん階段でつないだ2階にわたるライブラリーもその1つだ。
アメリカ東海岸、マーブルヘッドのビーチ沿いに建つこちらの家は、何十年間も空っぽのまま放置されていたところを、オーナーと建築事務所〈シーマスコ+ヴァーブリッジ〉が救い出した物件だ。外観は、典型的な東海岸スタイル(下見板張り、庇の深いポーチを支える白い柱など)だが、インテリアはコンテンポラリー。らせん階段でつないだ2階にわたるライブラリーもその1つだ。
どちらの階でも、書棚は床から天井まであり、本が壁を覆うような印象が心地よい。最上段まで楽に手が届くように、特注の梯子は欠かせない。
棚のクローズアップがこちら。木製の棚が天井から高張力ワイヤーで吊られており、軽さを出している。
日野の家
〈荒木毅建築事務所〉が手掛けた日野市にあるこちらのお宅は、本を中心にした家づくりという考えを新たな次元に持っていったデザインで、非常に日本的ともいえるだろう。2階建ての家の中には、本を愛するオーナーの隠れ家のような書斎のほかにも、各所に本棚が配置されている。基本となるのは、むき出しの木の梁や柱にシンプルなフローティングシェルフ。そこに彩りを加えるのは膨大な本のコレクションだ。
〈荒木毅建築事務所〉が手掛けた日野市にあるこちらのお宅は、本を中心にした家づくりという考えを新たな次元に持っていったデザインで、非常に日本的ともいえるだろう。2階建ての家の中には、本を愛するオーナーの隠れ家のような書斎のほかにも、各所に本棚が配置されている。基本となるのは、むき出しの木の梁や柱にシンプルなフローティングシェルフ。そこに彩りを加えるのは膨大な本のコレクションだ。
本棚は2つの階をまたいで広がり、らせん階段でその上下を行き来する。階段を上りきるとシンプルなデスクがあり、ここから庭を眺めながら村上春樹の小説なんて読むのもいいかもしれない。金属の構造で支えたスチールの踏み板は、本棚の足場となると同時に、下の階にも光を通すことができる。
こちらの写真は、本が入る前の状態。ある意味では、家全体が本棚で、そのなかにバスルームとダイニング、キッチンが用意されているようでもある。(それらのエリアにも本棚はあるが。)
角を工夫した本棚
ニューヨーク州、シャンプレーン湖畔にあるこちらのお宅のオーナーは心臓専門医だが、木工の才能にも長けており、夫人ともども熱心な本のコレクターでもある人物だ。本と木工という2つの趣味が融合されているのが、こちらのライブラリー。建築家〈ドン・ウェルチ〉さんの設計で、サクラ材とメープル材を使って、4つ目のベッドルームを「本と過ごす隠れ家」に作り変えている。棚は天井の角度に沿って優美に傾斜し、上段の本を取るための美しい木の梯子はオーナーの手作りだ。
ニューヨーク州、シャンプレーン湖畔にあるこちらのお宅のオーナーは心臓専門医だが、木工の才能にも長けており、夫人ともども熱心な本のコレクターでもある人物だ。本と木工という2つの趣味が融合されているのが、こちらのライブラリー。建築家〈ドン・ウェルチ〉さんの設計で、サクラ材とメープル材を使って、4つ目のベッドルームを「本と過ごす隠れ家」に作り変えている。棚は天井の角度に沿って優美に傾斜し、上段の本を取るための美しい木の梯子はオーナーの手作りだ。
部屋の反対側には、木工細工と読書をする場所として、造作デスクを取り入れた。デスクの側面には棚が作りつけられている。写真の下の段に見える波型は、部屋全体に見られるモチーフで、数百メートル先に広がる湖の風景を思い起こさせてくれる。
本棚は、部分ごとに組み立ててから上の階に運び入れた。
本棚は、部分ごとに組み立ててから上の階に運び入れた。
ウェルチさんが目指したのは、本の美しさが最大限に引き出させるようなディスプレイで、部屋に圧迫感を感じさせないように入念な配慮がされている。棚の角部分に正方形の「ブックエンド」デザインを絶妙なバランスで組み込み、ところどころにアートを飾るための2段抜きスペースを設けているのも、そのためだ。
ポートランドの本棚
シンプルで小さな家でも、ライブラリースペースを中心にまとめることは可能だ。オレゴン州ポートランド近郊のソーヴィー・アイランドにあるこちらの家は、ジェシカ・ヘルガーソンさんが手掛けたタイニーハウス。ファミリールームには、白くペイントした木製の造作家具と、一面の本棚が設けられている。
Houzzツアー:50平米の小さな家で4人家族が送るシンプルでサステナブルな暮らし
シンプルで小さな家でも、ライブラリースペースを中心にまとめることは可能だ。オレゴン州ポートランド近郊のソーヴィー・アイランドにあるこちらの家は、ジェシカ・ヘルガーソンさんが手掛けたタイニーハウス。ファミリールームには、白くペイントした木製の造作家具と、一面の本棚が設けられている。
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シンプルな梯子で本棚の上にのぼると、寝室ロフトになっている。読みたいときにいつでも小説に手が届く。
本とアート
部屋をまるごとライブラリーにできないなら、壁一面だけでも十分。とくに、柱が高くて、天井まである大きな窓から明るい光が入ってくるこんなスペースなら最高だ。ただ、家の向きによっては、背表紙の日焼けがやや心配になるが……。
部屋をまるごとライブラリーにできないなら、壁一面だけでも十分。とくに、柱が高くて、天井まである大きな窓から明るい光が入ってくるこんなスペースなら最高だ。ただ、家の向きによっては、背表紙の日焼けがやや心配になるが……。
こちらは、工場として使われていた既存のスペースをスタジオ兼居住空間に改装した、〈BWアーキテクツ〉による魅力的なプロジェクト。片側には、散光が部屋全体に行きわたる天井の高いスタジオがある。そしてもう片側には、中庭へとつながるリビングエリアがあり、この部屋をまとめているのが床から天井まで届く本棚だ。本があるおかげで、ゆったり思索できる場所という雰囲気が醸し出されている。
注目したいのは、棚のあちこちに貼られているピンクのポストイットメモ。書棚のオーガナイズに対する並々ならぬ熱心さを感じさせ、興味をひかれるところだ。
デザインの詩
一方、ベネチアにあるこちらの1階アパートメントには、詩人で大学教授のオーナーが暮らしている。この部屋を見ると、特注でしつらえた本棚を揃えなくても、愛する本を美しく見せて収納できることがわかる。もちろん、帽子やマネキン、ティーポットなど、多彩なコレクションもいっしょにディスプレイ。
こちらもあわせて
世界のHouzzから:11ヵ国の本を愛する人たちのお気に入りの本棚と読書スペース
いかがでしたか?
ご感想をおきかせください! 他にも、Houzzで素敵な本棚の写真をみつけたら、コメント欄でシェアしてください。
一方、ベネチアにあるこちらの1階アパートメントには、詩人で大学教授のオーナーが暮らしている。この部屋を見ると、特注でしつらえた本棚を揃えなくても、愛する本を美しく見せて収納できることがわかる。もちろん、帽子やマネキン、ティーポットなど、多彩なコレクションもいっしょにディスプレイ。
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