タイムレスデザインの名作椅子《チェスターフィールドソファ》
インテリアにハイセンスな風格をもたらす6種類のデザインクラシックチェア、その歴史背景や合わせ方のコツ。英国在住20年のアンティークディーラーが1デザインずつ解説します。
西谷典子|Noriko Nishiya
2015年10月27日
カナダとアメリカのある一部の地方では、ソファのことを「チェスターフィールド」と呼ぶくらい、このデザインは伝統的なソファの代表的存在。多彩な顔でどんなスタイルにも合わせやすいソファです。もともとは背筋を伸ばして腰掛けるソファでしたが、現代ではリラックスして座れるソファとしても定評があります。イギリスに亡命していたフロイトが、このソファで催眠療法を行っていたという逸話も。クオリティの高さと独特の存在感が素晴らしいこのソファですが、実のところ、その歴史は今でもベールに包まれたまま。今回はそんな《チェスターフィールドソファ》の謎の歴史と、現代のリビングにおける合わせ方をご紹介しましょう。
デザインの起源は未だに謎
イギリスの紳士クラブや貴族の館の定番ソファといわれる《チェスターフィールドソファ》。そのクオリティの高さと存在感は、今のインテリアにも違和感なく合わせることができるタイムレスな魅力に満ちています。
イギリスの紳士クラブや貴族の館の定番ソファといわれる《チェスターフィールドソファ》。そのクオリティの高さと存在感は、今のインテリアにも違和感なく合わせることができるタイムレスな魅力に満ちています。
北米の一部では「チェスターフィールド」はソファの代名詞であると先にお伝えしましたが、一方イギリスで《チェスターフィールドソファ》といえば、背もたれと肘にボタンがついていて、肘掛けと後ろの背もたれが同じ高さであり、丸まった形のアームを持つソファを意味します。なかにはシートの部分が必ずクッションでなければならない、という人もいますが、これはさまざまです。そもそも、チェスターフィールドの椅子そのものがどこから来たのか、誰がデザインしたものなのか、未だに解明されていないのです。
その名はチェスターフィールド公爵から
この椅子の名前の由来となった、チェスターフィールド公爵4世(フィリップ・スタンホープ/1764〜1773)がこのソファをつくらせたのではないか、というのが一般的に信じられている説ですが、それを立証できる資料は現在でも見つかっていません。彼は政治家であり作家でもあったのですが、その当時出版した本の内容はいわゆる紳士のモラルやエチケットを教えるもので、彼自身、マナーにも厳しくこだわるような人物だったそうです。ロンドンのお屋敷を作る際もインテリアにはかなりこだわり、特に書斎はロンドン一と自慢している記録が残っています。
この椅子の名前の由来となった、チェスターフィールド公爵4世(フィリップ・スタンホープ/1764〜1773)がこのソファをつくらせたのではないか、というのが一般的に信じられている説ですが、それを立証できる資料は現在でも見つかっていません。彼は政治家であり作家でもあったのですが、その当時出版した本の内容はいわゆる紳士のモラルやエチケットを教えるもので、彼自身、マナーにも厳しくこだわるような人物だったそうです。ロンドンのお屋敷を作る際もインテリアにはかなりこだわり、特に書斎はロンドン一と自慢している記録が残っています。
ダンディズムの香る、厳格なデザイン
伝説には公爵がつくらせたソファのシートのボタンは、長く座っても上着がしわにならないように考えられていて、紳士らしく背を伸ばして椅子に座るようなデザインになっています。ある説によれば、このソファはもともと長く座る椅子としてできておらず、待合室のように短時間腰掛けている椅子に適しているソファなのだとか。エチケットやマナーに厳しくこだわったチェスターフィールド公だけに、もし自分の書斎に特別な椅子をつくらせたのだとしたら、このような厳格なデザインになったのも自然なことかもしれません。
伝説には公爵がつくらせたソファのシートのボタンは、長く座っても上着がしわにならないように考えられていて、紳士らしく背を伸ばして椅子に座るようなデザインになっています。ある説によれば、このソファはもともと長く座る椅子としてできておらず、待合室のように短時間腰掛けている椅子に適しているソファなのだとか。エチケットやマナーに厳しくこだわったチェスターフィールド公だけに、もし自分の書斎に特別な椅子をつくらせたのだとしたら、このような厳格なデザインになったのも自然なことかもしれません。
現代ではもっと使いやすい仕様に
現在、昔ながらの技法でつくられている《チェスターフィールドソファ》は、 Fleming &Howland 社製で1880年代から製造されていたそうです。その時代に中材として使われていたのは馬の毛やココナツの繊維で、クッションなしのコイルスプリングのシートが一般的でした。最近の《チェスターフィールドソファ》は、普段使いのリビングのソファとしての用途に合わせ、もっと心地よく座れるようにつくられています。ボタンの数やクッションなど、自分の好みに合わせてテーラーメードで選ぶことができ、従来のパブリックスペース専用の椅子から、プライベートスペースの椅子へとだんだんと変化してきています。
現在、昔ながらの技法でつくられている《チェスターフィールドソファ》は、 Fleming &Howland 社製で1880年代から製造されていたそうです。その時代に中材として使われていたのは馬の毛やココナツの繊維で、クッションなしのコイルスプリングのシートが一般的でした。最近の《チェスターフィールドソファ》は、普段使いのリビングのソファとしての用途に合わせ、もっと心地よく座れるようにつくられています。ボタンの数やクッションなど、自分の好みに合わせてテーラーメードで選ぶことができ、従来のパブリックスペース専用の椅子から、プライベートスペースの椅子へとだんだんと変化してきています。
使い込んだ味わいが魅力のひとつ
革製の《チェスターフィールドソファ》は、紳士的なイメージがあるので、インダストリアルスタイルやミッドセンチュリーモダンのインテリアにはとても相性がいいです。どちらのスタイルもやはり、新品のソファよりはちょっとくたびれたヴィンテージの方が、男性らしさが強調され、味わいや雰囲気が色濃く出ます。《チェスターフィールドソファ》は、革が擦り切れていたり色が落ちている方が、かえってかっこよく見えるのです。長く使えば使うほど味が出てくるソファですね。
革製の《チェスターフィールドソファ》は、紳士的なイメージがあるので、インダストリアルスタイルやミッドセンチュリーモダンのインテリアにはとても相性がいいです。どちらのスタイルもやはり、新品のソファよりはちょっとくたびれたヴィンテージの方が、男性らしさが強調され、味わいや雰囲気が色濃く出ます。《チェスターフィールドソファ》は、革が擦り切れていたり色が落ちている方が、かえってかっこよく見えるのです。長く使えば使うほど味が出てくるソファですね。
遊び心を表現してさまざまなスタイルに
革ではなくファブリックにしても、そのスマートさ、豪華さが変わらないのは、やはり贅沢に数多くつけられたこのボタンのせいでしょう。ベルベットはトラディショナルな感じに仕上がることがありますが、明るい色を選べばコンテンポラリーなイメージのソファにとして、現代のリビングにもよくマッチします。ちなみに、スコットランドのバルティモア城にあったヴィクトリア女王所有のチェスターフィールドは、白地にピンクとブルーのタータンチェックが入ったものでした。遊び心のある個性的な《チェスターフィールドソファ》、今も昔も人気です。
革ではなくファブリックにしても、そのスマートさ、豪華さが変わらないのは、やはり贅沢に数多くつけられたこのボタンのせいでしょう。ベルベットはトラディショナルな感じに仕上がることがありますが、明るい色を選べばコンテンポラリーなイメージのソファにとして、現代のリビングにもよくマッチします。ちなみに、スコットランドのバルティモア城にあったヴィクトリア女王所有のチェスターフィールドは、白地にピンクとブルーのタータンチェックが入ったものでした。遊び心のある個性的な《チェスターフィールドソファ》、今も昔も人気です。
小道具のクッションはマストアイテム
《チェスターフィールドソファ》を普段使いするのなら、クッションは必需品です。しかも座り心地を考えると数個は必要です。ソファの生地とは対照的な色、素材も変わったものを使うなど、ご自分の個性でこの男性的なイメージをアレンジしてみてください。写真のようなアンティークの《チェスターフィールドソファ》は、クッションやスローなどでおもしろいエクレクティックスタイルにイメージチェンジすることができます。
《チェスターフィールドソファ》を普段使いするのなら、クッションは必需品です。しかも座り心地を考えると数個は必要です。ソファの生地とは対照的な色、素材も変わったものを使うなど、ご自分の個性でこの男性的なイメージをアレンジしてみてください。写真のようなアンティークの《チェスターフィールドソファ》は、クッションやスローなどでおもしろいエクレクティックスタイルにイメージチェンジすることができます。
貴族的なたたずまいがリビングに風格を
チェスターフィールド公爵の最後の言葉は「Give Mr Dayrrolls a chair」つまり召使いに命じた「デイロール氏に椅子を差し上げなさい」でした。ただ単に、デイロール氏に椅子に座ってもらうことを促す意味なのか、椅子をあげなさいとの遺言なのかわからず、召使いが躊躇している間に亡くなってしまったのだとか。この最後の言葉が、よりいっそう《チェスターフィールドソファ》の由来の謎を深めてしまったようです。とはいえ、この贅沢なつくりからいっても、このソファが一般の家庭用ではなかったのは明らかです。現代ではさまざまなグレードが選べるようになりましたが、貴族的なたたずまいはどれも変わらず、今も多くの家庭のリビングルームを飾る、ハイエンドなソファといえるでしょう。
チェスターフィールド公爵の最後の言葉は「Give Mr Dayrrolls a chair」つまり召使いに命じた「デイロール氏に椅子を差し上げなさい」でした。ただ単に、デイロール氏に椅子に座ってもらうことを促す意味なのか、椅子をあげなさいとの遺言なのかわからず、召使いが躊躇している間に亡くなってしまったのだとか。この最後の言葉が、よりいっそう《チェスターフィールドソファ》の由来の謎を深めてしまったようです。とはいえ、この贅沢なつくりからいっても、このソファが一般の家庭用ではなかったのは明らかです。現代ではさまざまなグレードが選べるようになりましたが、貴族的なたたずまいはどれも変わらず、今も多くの家庭のリビングルームを飾る、ハイエンドなソファといえるでしょう。
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重厚な椅子ですね。魅力的なデザインですが、日本の住まいに導入するにはハードルが高そうな気もします。
サイズとしては通常のソファとさほど変わらないのでクッションなどの小物のスタイリングの仕方で随分感じが変わるかもしれませんね。
使いこまれて味が出るのも皮だからなのでしょうね。仕事場に本皮のソファー、あこがれです。