世界のHouzzから: 苔の新しい楽しみ方
人類が誕生するはるか前の4億年前から地球に存在し、いまも進化し続ける苔(コケ)。今ではアートでモダンなデザインにも活用されています。
Annie Thornton
2016年5月5日
湿り気のある日陰に生える植物、苔(コケ)。日本庭園に使われていたり、廃墟となった古城や要塞の壁を彩っている苔には風情があるものだ。日陰の石畳みの小道に自然と敷き詰められた苔は、積み重なった年月を感じさせてくれる。
デザイナーやアーティスト、建築家にとっては、苔がインスピレーションの源であったり、表現方法となることも。例えばフランスには、生きた苔を屋外の壁にアレンジした芸術作品がある。ロンドンの大学では、苔を使って新しいタイプのバーティカルガーデン(垂直面に植物を植えてつくる庭)を作る研究が進行中だ。そしてニューヨークの瞑想スタジオでは、苔をアレンジした壁が、心穏やかに自分と向き合う時間の手助けになっている。苔は、記録されているだけでも12,000種以上あり、海水以外の環境なら地球上のあらゆる場所で生息している。苔を使った空間デザインも、限りない可能性を秘めているようだ。
デザイナーやアーティスト、建築家にとっては、苔がインスピレーションの源であったり、表現方法となることも。例えばフランスには、生きた苔を屋外の壁にアレンジした芸術作品がある。ロンドンの大学では、苔を使って新しいタイプのバーティカルガーデン(垂直面に植物を植えてつくる庭)を作る研究が進行中だ。そしてニューヨークの瞑想スタジオでは、苔をアレンジした壁が、心穏やかに自分と向き合う時間の手助けになっている。苔は、記録されているだけでも12,000種以上あり、海水以外の環境なら地球上のあらゆる場所で生息している。苔を使った空間デザインも、限りない可能性を秘めているようだ。
岩に生えた山苔
いわゆる「苔」と呼ばれるものは、植物学上ではコケ植物門に分類される。地球上でもっとも古い植物のひとつで、人類が現れるはるか以前、4億年前の苔の化石も発見されている。シンプルな構造ながら驚くべき環境対応能力と生命力を持ち、レンガの壁や歩道の裂け目から腐りかけの木まで、さまざまな表面で育つことが可能だ。2014年には、イギリスの科学者たちが、南極で1,500年間凍っていた苔をよみがえらせることに成功。これは、冷凍状態からよみがえらせた植物としてはもっとも古い例となった。
いわゆる「苔」と呼ばれるものは、植物学上ではコケ植物門に分類される。地球上でもっとも古い植物のひとつで、人類が現れるはるか以前、4億年前の苔の化石も発見されている。シンプルな構造ながら驚くべき環境対応能力と生命力を持ち、レンガの壁や歩道の裂け目から腐りかけの木まで、さまざまな表面で育つことが可能だ。2014年には、イギリスの科学者たちが、南極で1,500年間凍っていた苔をよみがえらせることに成功。これは、冷凍状態からよみがえらせた植物としてはもっとも古い例となった。
苔をアートに
生命力が強く、応用の可能性も幅広い苔。世話に手間がかからず、成長スピードがゆるやかであるという特徴に着目し、苔を使って自然と芸術を融合させたアーティストもいる。フランソワ・ロベスティエールさんは、生きた苔で住宅や都心のビルの壁面に図柄を描き出し、長期間楽しめる美しいアート作品を作り出している。
11月に完成したこちらの最新作は、南アフリカの指導者、故ネルソン・マンデラ氏をモチーフにしている。フランス、サントにあるホテルの外壁の高さ90センチ強のスペースにマンデラ氏のシルエットが描き出され、通り過ぎる人たちの目を楽しませている。使われているのはすべて生きた苔で、ロベスティエールさんが自分で形作り、壁に植え付けた。1年に2度、形を整えて手入れする予定だが、それ以外のメンテナンスは必要ないそうだ。
苔は建物を傷めない植物だ。「苔には根がないんです」とロベスティエールさんは説明する。苔は、根ではなく「仮根」と呼ばれる根に似た器官を使って壁面にくっついているのだ。「ですから壁を傷めることなく、いろいろな装飾的用途が考えられます。」
生命力が強く、応用の可能性も幅広い苔。世話に手間がかからず、成長スピードがゆるやかであるという特徴に着目し、苔を使って自然と芸術を融合させたアーティストもいる。フランソワ・ロベスティエールさんは、生きた苔で住宅や都心のビルの壁面に図柄を描き出し、長期間楽しめる美しいアート作品を作り出している。
11月に完成したこちらの最新作は、南アフリカの指導者、故ネルソン・マンデラ氏をモチーフにしている。フランス、サントにあるホテルの外壁の高さ90センチ強のスペースにマンデラ氏のシルエットが描き出され、通り過ぎる人たちの目を楽しませている。使われているのはすべて生きた苔で、ロベスティエールさんが自分で形作り、壁に植え付けた。1年に2度、形を整えて手入れする予定だが、それ以外のメンテナンスは必要ないそうだ。
苔は建物を傷めない植物だ。「苔には根がないんです」とロベスティエールさんは説明する。苔は、根ではなく「仮根」と呼ばれる根に似た器官を使って壁面にくっついているのだ。「ですから壁を傷めることなく、いろいろな装飾的用途が考えられます。」
壁画家・アーティストであるロベスティエールさんは、以前からずっと、生きた素材に魅力を感じてきた。これまでもフランス各地で大型の壁画を描いてきたが、その中で芝生や植物を有機塗料でペイントするという実験的活動も行っている。
苔との出会いは、インターネットで知った苔グラフィティで、他のアーティストたちが苔で「描いた」作品を目にしたことだった。ロンドンを拠点に活動するアーティストのアナ・ガーフォースさんは、街の壁面に苔でメッセージを描き出すという作品をたくさん作っている。カナダのイラストレーター、ジェニファー・イレットさんは、苔とポップアートを融合した2連の壁画作品を発表している。
いまや苔アーティストでもあるロベスティエールさんは、作品に使用する苔を自ら育てている。最近では、フランスのジョルジュ・デクロード農業学校で、彼オリジナルの苔ウォールアートの製作法「ナチュララール」を教える活動も始めた。ロベスティエールさんが苔に魅かれ続ける理由は、種類が多いことと、一見植物が育たないような環境にも対応する生命力だ。「苔は、まだまだ知られていない部分が多く、育てるのもとても難しいんですよ」と語る。
苔との出会いは、インターネットで知った苔グラフィティで、他のアーティストたちが苔で「描いた」作品を目にしたことだった。ロンドンを拠点に活動するアーティストのアナ・ガーフォースさんは、街の壁面に苔でメッセージを描き出すという作品をたくさん作っている。カナダのイラストレーター、ジェニファー・イレットさんは、苔とポップアートを融合した2連の壁画作品を発表している。
いまや苔アーティストでもあるロベスティエールさんは、作品に使用する苔を自ら育てている。最近では、フランスのジョルジュ・デクロード農業学校で、彼オリジナルの苔ウォールアートの製作法「ナチュララール」を教える活動も始めた。ロベスティエールさんが苔に魅かれ続ける理由は、種類が多いことと、一見植物が育たないような環境にも対応する生命力だ。「苔は、まだまだ知られていない部分が多く、育てるのもとても難しいんですよ」と語る。
苔を科学的に利用したデザイン
建築家、エンジニア、生物学者といった人たちも、苔をデザインに応用ようと研究を進めている。ロンドン大学バートレット建築校のマルコス・クルズさんとリチャード・ベケットさんは、生物学と建築を融合的に研究する「BiotA Lab(バイオタラボ)」プロジェクトを主導して、1年にわたり苔や地衣類などの隠花植物を建物に取り入れる方法を研究している。下のCG画像も「バイオレセプティブ(生物を受容する)デザイン」と呼ぶデザインの一例だ。
壁面を生きた植物で覆った「緑の壁」は、建物を美しく見せ、空気の質も改善し、断熱性を高めることでエネルギーとコストも削減できる。だが残念ながら、設置やメンテナンスにお金がかかるのも事実だ。
一般的な緑の壁では、土の入った容器の中で育てた植物を配置しており、定期的な水やりと管理が必要になる。ところがこちらのプロジェクトでは、壁自体の素材を利用して植物が育つ壁をデザインしているのだ。そのため、構造自体がよりシンプルになり、メンテナンスも楽になる。「私たちが目指しているのは、よりパッシブで、高価な給水機器に頼らなくて済むようなシステムなんです」と、クルズさんは言う。現在はコンクリートを媒体素材として活用する方法を研究しているそうだ。
苔のような植物は、こういった用途にはまさに最適なのだ。その理由はいくつかあるが、「丈夫で、大きな植物に比べて手入れがずっと少なくて済むので、都市生活の中で町や建物に無理なく溶け込みながら役立つと言う点で、理想的なんです」と、ベケットさんは説明する。「さらに、マックス・プランク化学研究所が行った最近の研究では、苔は大気中の二酸化炭素や窒素をかなり吸収してくれることも明らかになっています。」
もちろん今でも、街角の壁に苔は自然に生えている。だが、偶発的に生えるままにしておくのではなく、その育ち方をコントロールするというのが〈バイオタ・ラボ〉プロジェクトの目標だ。「これは、美意識が関連してくるところですね。ただ何となく生えているだけだと雑草と同じで、駆除しなくてはならない厄介な存在ですが、特定の場所にだけ育つように設計できれば、役に立ち、しかも美しいものを作り出すことができます」とクルズさんは言う。
建築家、エンジニア、生物学者といった人たちも、苔をデザインに応用ようと研究を進めている。ロンドン大学バートレット建築校のマルコス・クルズさんとリチャード・ベケットさんは、生物学と建築を融合的に研究する「BiotA Lab(バイオタラボ)」プロジェクトを主導して、1年にわたり苔や地衣類などの隠花植物を建物に取り入れる方法を研究している。下のCG画像も「バイオレセプティブ(生物を受容する)デザイン」と呼ぶデザインの一例だ。
壁面を生きた植物で覆った「緑の壁」は、建物を美しく見せ、空気の質も改善し、断熱性を高めることでエネルギーとコストも削減できる。だが残念ながら、設置やメンテナンスにお金がかかるのも事実だ。
一般的な緑の壁では、土の入った容器の中で育てた植物を配置しており、定期的な水やりと管理が必要になる。ところがこちらのプロジェクトでは、壁自体の素材を利用して植物が育つ壁をデザインしているのだ。そのため、構造自体がよりシンプルになり、メンテナンスも楽になる。「私たちが目指しているのは、よりパッシブで、高価な給水機器に頼らなくて済むようなシステムなんです」と、クルズさんは言う。現在はコンクリートを媒体素材として活用する方法を研究しているそうだ。
苔のような植物は、こういった用途にはまさに最適なのだ。その理由はいくつかあるが、「丈夫で、大きな植物に比べて手入れがずっと少なくて済むので、都市生活の中で町や建物に無理なく溶け込みながら役立つと言う点で、理想的なんです」と、ベケットさんは説明する。「さらに、マックス・プランク化学研究所が行った最近の研究では、苔は大気中の二酸化炭素や窒素をかなり吸収してくれることも明らかになっています。」
もちろん今でも、街角の壁に苔は自然に生えている。だが、偶発的に生えるままにしておくのではなく、その育ち方をコントロールするというのが〈バイオタ・ラボ〉プロジェクトの目標だ。「これは、美意識が関連してくるところですね。ただ何となく生えているだけだと雑草と同じで、駆除しなくてはならない厄介な存在ですが、特定の場所にだけ育つように設計できれば、役に立ち、しかも美しいものを作り出すことができます」とクルズさんは言う。
生物受容的デザインの案を説明するCG
デジタル技術や環境ソフトウェアの発展によって、植物の生育に必要な環境をシミュレートすることも可能になっている。それをもとに、物質的・科学的な組成を変えることで壁の素材を調整し、壁の表面に育つ苔の成長を促進したり、あるいは阻害したりすることが可能になる。その結果、模様が美しく、しかもメンテナンスに手間がかからない苔の壁が実現するのだ。
さらに、コンクリートを立体的な形にすれば、デザイン性の幅が広がると同時に、日が当たる部分と影の部分を作り出すことで苔の成長にも変化が出る。
デジタル技術や環境ソフトウェアの発展によって、植物の生育に必要な環境をシミュレートすることも可能になっている。それをもとに、物質的・科学的な組成を変えることで壁の素材を調整し、壁の表面に育つ苔の成長を促進したり、あるいは阻害したりすることが可能になる。その結果、模様が美しく、しかもメンテナンスに手間がかからない苔の壁が実現するのだ。
さらに、コンクリートを立体的な形にすれば、デザイン性の幅が広がると同時に、日が当たる部分と影の部分を作り出すことで苔の成長にも変化が出る。
〈バイオタ・ラブ〉は、3月にロンドンで行われた建設・エネルギー業界の見本市「エコビルド」にもブースを出展してプロトタイプを展示した。
研究はまだ初期段階だが、プロジェクトチームは「生物を受けとめる建築」の未来は明るいと考えている。町にある壁はすべてキャンバスになりうるのだ。
研究はまだ初期段階だが、プロジェクトチームは「生物を受けとめる建築」の未来は明るいと考えている。町にある壁はすべてキャンバスになりうるのだ。
心を穏やかにしてくれる苔
生きた苔でなく、長期保存できるよう加工した「プリザーブドモス」でも、見る人に安らぎを与えてくれる効果がある。この方法なら、通常は緑の壁の設置が難しい場所にも、緑を取り入れることができる。
マンハッタンに新しくできた瞑想スタジオ〈MNDFL〉は、静かな環境で集中して瞑想したい人のための場所。スタジオの中はできるだけ不要なものを取り除いたシンプルな空間で、プリザーブドモスの大きな壁が唯一の装飾的要素だ。白く塗ったレンガ壁の部屋の中、幅およそ2.7メートルの緑の苔が、天井のスカイライトから入る自然光に照らされている。
苔の壁を取り入れたのは、植物を目にするで得られるとされる、心が穏やかになる効果を狙ったもの。「植物は、私たちの生活にさまざまな良い効果をもたらすことが証明されています。集中力、生産性、創造性を高めたり、気持ちをポジティブにしてくれたりします。ストレスを和らげ、落ち着かせてくれるんです」と言うのは、植物アレンジメントを専門とするお店〈ザ・シル〉のエリザ・ブランクさん。彼女のお店と、〈ホームポリッシュ〉のデザイナーたち、そしてスタジオ〈MNDFL〉が協力してこの苔壁を作っている。「都会の中で木を見るだけでも、良い変化があると言われています。すべての植物と同じように、この壁も心を穏やかに導いてくれるはずです。」
〈MNDFL〉の苔の壁は、視覚的にも周囲の大都会とは対照的な印象だ。「ニューヨークは、コンクリートと金属でできた街ですから、植物の鮮やかな緑が目に入るだけで、はっとすることがあります」と、< MNDFL >の共同設立者でCEOのエリー・バロウズさんは言う。「本質的に瞑想というのは、立ち止まって、ごく単純なもの、例えば呼吸のようなものに意識を集中することなんです。ですから、この壁はスタジオの本質的な部分とも呼応していると思います。」
安らぎを求めての苔を見つめる、というのはちょっとしたブームにもなっているようだ。例えば日本には、田舎に出かけ、苔を見て回るツアーが存在する。日本には1,600から2,000種の苔があるとされている。苔を鑑賞し、その美しさと力強さを感じて楽しむだけでなく、苔を見ることで日常の疲れやストレスから解放されると言う参加者もいる。
生きた苔でなく、長期保存できるよう加工した「プリザーブドモス」でも、見る人に安らぎを与えてくれる効果がある。この方法なら、通常は緑の壁の設置が難しい場所にも、緑を取り入れることができる。
マンハッタンに新しくできた瞑想スタジオ〈MNDFL〉は、静かな環境で集中して瞑想したい人のための場所。スタジオの中はできるだけ不要なものを取り除いたシンプルな空間で、プリザーブドモスの大きな壁が唯一の装飾的要素だ。白く塗ったレンガ壁の部屋の中、幅およそ2.7メートルの緑の苔が、天井のスカイライトから入る自然光に照らされている。
苔の壁を取り入れたのは、植物を目にするで得られるとされる、心が穏やかになる効果を狙ったもの。「植物は、私たちの生活にさまざまな良い効果をもたらすことが証明されています。集中力、生産性、創造性を高めたり、気持ちをポジティブにしてくれたりします。ストレスを和らげ、落ち着かせてくれるんです」と言うのは、植物アレンジメントを専門とするお店〈ザ・シル〉のエリザ・ブランクさん。彼女のお店と、〈ホームポリッシュ〉のデザイナーたち、そしてスタジオ〈MNDFL〉が協力してこの苔壁を作っている。「都会の中で木を見るだけでも、良い変化があると言われています。すべての植物と同じように、この壁も心を穏やかに導いてくれるはずです。」
〈MNDFL〉の苔の壁は、視覚的にも周囲の大都会とは対照的な印象だ。「ニューヨークは、コンクリートと金属でできた街ですから、植物の鮮やかな緑が目に入るだけで、はっとすることがあります」と、< MNDFL >の共同設立者でCEOのエリー・バロウズさんは言う。「本質的に瞑想というのは、立ち止まって、ごく単純なもの、例えば呼吸のようなものに意識を集中することなんです。ですから、この壁はスタジオの本質的な部分とも呼応していると思います。」
安らぎを求めての苔を見つめる、というのはちょっとしたブームにもなっているようだ。例えば日本には、田舎に出かけ、苔を見て回るツアーが存在する。日本には1,600から2,000種の苔があるとされている。苔を鑑賞し、その美しさと力強さを感じて楽しむだけでなく、苔を見ることで日常の疲れやストレスから解放されると言う参加者もいる。
ニューヨークの瞑想スタジオの苔の壁で目指しているのは、室内に圧迫感を感じさせたり、中にいる人の集中力を妨げたりすることなく、空間を演出すること。「はっとするほど美しく、それでいて深い呼吸を促すようなものが欲しかったんです」とブランクさんは言う。基本的に緑一色が占めるデザインの中にも、平面的な苔や立体的な苔、一部にはシダ植物も混ぜられており、テクスチャーと存在感を生み出している。
この壁でイメージしたのは「森の下生えのように重なり合って生い茂る緑」だとブランクさんは表現する。この壁をデザインした〈アーティザン・モス〉のエリン・キンジーさんは「近くで見ると、実はいろんな動きがあるのがわかって、見る人に自然とのつながりを感じさせてくれるんです」と言う。
この壁でイメージしたのは「森の下生えのように重なり合って生い茂る緑」だとブランクさんは表現する。この壁をデザインした〈アーティザン・モス〉のエリン・キンジーさんは「近くで見ると、実はいろんな動きがあるのがわかって、見る人に自然とのつながりを感じさせてくれるんです」と言う。
スタジオがあるのは1837年築の集合住宅(タウンハウス)の地下で、一般的な室内用の「緑の壁」に必要な自然光も入らなければ、耐力壁もない。メンテナンスのスタッフも確保できそうになかった。苔には土壌が必要なく、比較的手が掛からないとはいえ、水分とある程度の光がなくては育つことができない。
そこで助けを求めたのが、プリザーブドプラントを専門に扱う西海岸のデザイン事務所〈アーティザン・モス〉だった。「エリーが思い描いている緑の壁のイメージを再現しつつ、この場所でも維持できるようにしたかったからなんです」とブランクさんは言う。〈アーティザン・モス〉では、食用色素と毒性のないUVコート剤を使って生きた植物を加工し、緑の壁を形作っている。加工された植物はまるで時間が止まったように、何年もそのままの状態を維持することが可能。必要な世話は、たまにホコリを払ってあげる程度だ。「これがプリザーブドだなんて信じられない、とよく言われるんです」とキンジーさん。
こうして、建物に構造上の制約があっても、手の込んだメンテナンスができなくても、植物育成用ライトや給水システムを用意しなくても、本来は難しい環境のなかに緑の壁の効果を取り入れることができた。「それに、なにより美しいのがいいですね」とバロウズさんは言う。
そこで助けを求めたのが、プリザーブドプラントを専門に扱う西海岸のデザイン事務所〈アーティザン・モス〉だった。「エリーが思い描いている緑の壁のイメージを再現しつつ、この場所でも維持できるようにしたかったからなんです」とブランクさんは言う。〈アーティザン・モス〉では、食用色素と毒性のないUVコート剤を使って生きた植物を加工し、緑の壁を形作っている。加工された植物はまるで時間が止まったように、何年もそのままの状態を維持することが可能。必要な世話は、たまにホコリを払ってあげる程度だ。「これがプリザーブドだなんて信じられない、とよく言われるんです」とキンジーさん。
こうして、建物に構造上の制約があっても、手の込んだメンテナンスができなくても、植物育成用ライトや給水システムを用意しなくても、本来は難しい環境のなかに緑の壁の効果を取り入れることができた。「それに、なにより美しいのがいいですね」とバロウズさんは言う。
住まいに苔を
生きた苔も、現代の住宅デザインに活用されている。ワシントン州沖のサンファン諸島に最近完成したこちらの家では、入り口とメインバスルームに苔庭がアレンジされている。この家は、建築家が自分の母親のために建てた家で、建設が始まる前の敷地から採取した苔を、周囲に広がる自然とのつながりを感じさせる要素として取り入れている。
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初めて苔の存在に気付いたのは自然の風景の中だった、という人も多いだろう。その自然を、庭にも持ち込んでみてはいかがだろうか?岩を覆ったり、芝生の代わりにしたり、敷石の間や木の表面に育てたり…、現代的な住宅の庭にも、苔を取り入れられる場所はたくさんある。
苔の楽しみに、スケールは関係ない。「どんなに狭い場所しかなくても、ちょっとした緑を取り入れることができる、というのが私の考え方の原点です」と言うのは、サンフランシスコの〈ライラ・B・デザイン〉で植物と花のデザインを手掛けるベイラー・チャップマンさん。「手の込んだセンターピースでも、ちいさな苔のひとかたまりでも、植物をアレンジして飾ることで、どんな場所でも心地良い空間に変身させることができます。」
日本へ旅行したときに見た苔庭がインスピレーションとなり、チャップマンさんが製作したのが、室内で楽しむミニサイズの苔テラリウム。一握りの苔が堂々たる主役の作品だ。
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