住まいづくりで問題視されているウッドショック。2022年現在の状況は?
既に多くの方が、“ウッドショック”という言葉をご存じかと思います。日本国内で問題視されている、現在のウッドショックの影響を知り、ご自身の新築・改築計画へのアプローチを考えましょう。

安井俊夫
2022年10月7日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
コロナ禍によって、2021年3月頃から木材の価格が高騰し、建設工事費用の増加や材木の入手が難しくなり、住宅工事へ大きな影響を与えています。2021年5月に『木材価格が高騰?不足?ウッドショックについて建主が理解しておきたいこと』と題して、ウッドショックに関する情報を書きましたが、あれから一年経った現在の状況を、あらためてご説明したいと思います。
建設コストは下がっていない
結論から言えば、木材価格は昨年に比べて下がっていません。そして木材・鉄材価格の上昇に連動するように、建設コスト全体も上がっています。
日本銀行の企業物価指数を参考にすれば、木材の輸入価格は2020年から2021年に入り約70%上昇し、鉄材は約30%の価格が上昇しています。
2022年になり若干価格の上昇率が下がったものの、それでもまだ2020年当時と比べれば70%近く価格上昇したままです。
結論から言えば、木材価格は昨年に比べて下がっていません。そして木材・鉄材価格の上昇に連動するように、建設コスト全体も上がっています。
日本銀行の企業物価指数を参考にすれば、木材の輸入価格は2020年から2021年に入り約70%上昇し、鉄材は約30%の価格が上昇しています。
2022年になり若干価格の上昇率が下がったものの、それでもまだ2020年当時と比べれば70%近く価格上昇したままです。
もちろん、輸入価格の上昇が、そのまま建設資材価格の上昇につながっているわけではありませんが、世界情勢の影響もあり、建設コスト全体が高止まりしています。
どの程度の上昇しているのかは、建設会社・ハウスメーカー・町の工務店と言った依頼先によっても異なりますが、建築家の私個人の感覚からいえば、コロナ禍前よりも総額で2割程は上昇していると感じています。その上がってしまった建設費用に対して、これから家造りをされる方は、どう向き合っていけばよいのかを考えてみましょう。
参考:日本銀行「企業データの公表データ一覧」
どの程度の上昇しているのかは、建設会社・ハウスメーカー・町の工務店と言った依頼先によっても異なりますが、建築家の私個人の感覚からいえば、コロナ禍前よりも総額で2割程は上昇していると感じています。その上がってしまった建設費用に対して、これから家造りをされる方は、どう向き合っていけばよいのかを考えてみましょう。
参考:日本銀行「企業データの公表データ一覧」
現在のコストに対してどう対応すれば良いのか?
1.割り切った選択をする
予算が厳しい状態ならば、依頼先を変えることも一つの方法です。例えば、ハウスメーカーに依頼する場合でも、希望する一社にこだわらず、他社に相談してみたり、希望する仕様のグレードを下げる決断も必要かもしれません。
また、工事期間に対しても、余裕を持って計画することは必要です。工事期間と建設コストとは直接関係ないように思えますが、予期せぬ出来事によって希望する資材や商品が手に入らない状況は、現在でも生じています。その際にすぐに入手できる代替品で納得するか、どうしてもその製品にこだわるかによっては、工事期間に影響が出てしまうかもしれません。突発的な事態に直面した際の素早い判断力は、今まで以上に大切になるでしょう。
1.割り切った選択をする
予算が厳しい状態ならば、依頼先を変えることも一つの方法です。例えば、ハウスメーカーに依頼する場合でも、希望する一社にこだわらず、他社に相談してみたり、希望する仕様のグレードを下げる決断も必要かもしれません。
また、工事期間に対しても、余裕を持って計画することは必要です。工事期間と建設コストとは直接関係ないように思えますが、予期せぬ出来事によって希望する資材や商品が手に入らない状況は、現在でも生じています。その際にすぐに入手できる代替品で納得するか、どうしてもその製品にこだわるかによっては、工事期間に影響が出てしまうかもしれません。突発的な事態に直面した際の素早い判断力は、今まで以上に大切になるでしょう。
2.設計(=準備)に時間をかける、情報を集める
工事に入ってからの変更や修正、あるいは予想外のトラブルは、金銭的にも大きな被害を与えます。そんな状況を避けるためには、設計時に入手しにくい材料を理解したり、納期に時間の掛かる材料を把握し、それらを避ける選定をしたりする必要があります。
着工したらすぐに発注できるようにし、万が一入手が難しい状況が生じた際には次の選択肢を決めておく。これだけでも、着工後のトラブルは減ると思います。それほどの準備には、それなりの期間や費用が必要かもしれませんし、設計者と施工者を含めた密な打ち合わせも必要になるでしょう。多くの時間を必要とするかもしれませんが、着工後のリスクを下げることには繋がります。
Houzz Proを使っている専門家は、進捗状況を、施主を含め全ての関係者と共有することができます。
工事に入ってからの変更や修正、あるいは予想外のトラブルは、金銭的にも大きな被害を与えます。そんな状況を避けるためには、設計時に入手しにくい材料を理解したり、納期に時間の掛かる材料を把握し、それらを避ける選定をしたりする必要があります。
着工したらすぐに発注できるようにし、万が一入手が難しい状況が生じた際には次の選択肢を決めておく。これだけでも、着工後のトラブルは減ると思います。それほどの準備には、それなりの期間や費用が必要かもしれませんし、設計者と施工者を含めた密な打ち合わせも必要になるでしょう。多くの時間を必要とするかもしれませんが、着工後のリスクを下げることには繋がります。
Houzz Proを使っている専門家は、進捗状況を、施主を含め全ての関係者と共有することができます。
3.分離発注で価格を抑える
高騰する建設コストを抑えるために、「分離発注方式」で家を建てる方法もあります。分離発注方式とは、建設会社やハウスメーカーに家の工事を依頼せず、建築主がそれぞれの専門業者と個々に契約を交わして、工事の依頼をする方法です。
この方法を採用すれば、直接経費・間接経費を節約することができるため、結果的にはコストダウンに繋がります。木材や鉄材だけでなく各種資材が高騰している状況なので、それぞれの価格を自分で把握できる分離発注方式は、かなり有効な節約方法となるでしょう。
高騰する建設コストを抑えるために、「分離発注方式」で家を建てる方法もあります。分離発注方式とは、建設会社やハウスメーカーに家の工事を依頼せず、建築主がそれぞれの専門業者と個々に契約を交わして、工事の依頼をする方法です。
この方法を採用すれば、直接経費・間接経費を節約することができるため、結果的にはコストダウンに繋がります。木材や鉄材だけでなく各種資材が高騰している状況なので、それぞれの価格を自分で把握できる分離発注方式は、かなり有効な節約方法となるでしょう。
ただし、問題もあります。金融機関から融資を受ける場合には、建物の質を担保できないと金融機関から難色を示されることがあるのです。その場合には、工事費用全額を自己資金で用意できることが必要となります。
また、工事の調整や手配、コストコントロールやトラブル処理と言ったすべてのことを施主が行うことになるので、かなりの専門的な知識と時間も必要です。それらの作業を設計者か専門のプロデューサーに依頼する方法もありますが、そうすると、さらに費用がかさむことになります。
そしてなにより、工事を個別に発注するということは、家を総合的に管理する会社・人物が不在となるため、後々の補償や不具合の対応、メンテナンスに関しても、すべて自分で行うことになります。つまり、分離発注で節約した費用と責任を、施主自身の時間とお金で賄うことになるわけです。
また、工事の調整や手配、コストコントロールやトラブル処理と言ったすべてのことを施主が行うことになるので、かなりの専門的な知識と時間も必要です。それらの作業を設計者か専門のプロデューサーに依頼する方法もありますが、そうすると、さらに費用がかさむことになります。
そしてなにより、工事を個別に発注するということは、家を総合的に管理する会社・人物が不在となるため、後々の補償や不具合の対応、メンテナンスに関しても、すべて自分で行うことになります。つまり、分離発注で節約した費用と責任を、施主自身の時間とお金で賄うことになるわけです。
4.新築を諦めて、中古住宅を購入する
コストや工期に関して不安な要素が多いこの時期、新築住宅ではなく、中古住宅の購入を考えてみる方法もあります。良質な中古住宅を吟味して購入し、建物に過不足があればリフォームやリノベーションを施して、自分に合う家とする。そんな方法を検討することも、一つの手です。
その際に大切なことは、良質な中古住宅の吟味ですが、これはインスペクション(住宅診断)を行うことで、建物の状態を事前に把握するようにしましょう。
リフォーム・リノベーションのヒントに関する記事を読む
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5.補助金や助成金を活用する
国や地方自治体、あるいは民間団体の提供する、補助金や優遇制度を積極的に調べて活用しましょう。下記はその一例です。
こちらの記事もあわせて
ZEHビルダー・ZEHプランナーとは?建築家が解説する、役割・登録区分・補助金について
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- すまい給付金
- 住宅ローン減税
- 長期優良住宅
- 低炭素住宅
- 地域型住宅グリーン事業
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金
- エネファーム設置補助金
- 自治体の補助金・助成金制度
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6.計画時期を再考する
家を建てようと決心する時には、「冷静な判断」と「若干の勢い」が必要になると思います。なにせ生涯で一番高額な費用を費やし、これから数十年とローンを払い続けるわけですから、「エイヤ!」と勢いをつけなければ、怖くてその一歩は踏み出せないでしょう。
しかし、そんな勢いで少し熱に浮かされた状態の頭を一度冷まし、冷静に判断してみましょう。「どうしても今動かなければダメなのか」「あと一年待ってみても良いのではないか」と。その冷静さが、家を建てるベストなタイミングを教えてくれるかもしれません。
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しかし、そんな勢いで少し熱に浮かされた状態の頭を一度冷まし、冷静に判断してみましょう。「どうしても今動かなければダメなのか」「あと一年待ってみても良いのではないか」と。その冷静さが、家を建てるベストなタイミングを教えてくれるかもしれません。
一年待つことで、建設資金が増えたり、ひょっとすると木材・鉄材の価格も下がるかもしれません。何よりも供給に難がある建設資材が、安定して供給される状況に戻る可能性だってあり得ます。
建設時期を再考することは、けして後ろ向きの判断ではなく、前向きな決断となることもあると思います。可能ならばファイナンシャルプランナーと相談し、ご自身とご家族の皆さんにとって最適な家づくりを、資産の面から検討することも大切かもしれません。
家づくりのヒントの記事をもっと読む
Houzzで建築家を探す
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ご意見ありがとうございます。木造住宅が多く建てられる日本ですが、国内産の木材利用率は意外に少なく、林業が衰退する状況が続いています。コロナ禍以降、本当にこのままで良いのだろうかと、あらためて考えさせられます。自給自足と言う言葉の意味を、今一度考え直し行動する必要があるのかもしれませんね。