わずか13㎡のヴィンテージアパートをリノベーション。若手男性建築家のミニマリストな暮らし
歴史遺産にもなっているメルボルンのアパートを購入した20代の建築家。造作家具やカーテンを使って、13平方メートルという面積を最大限に活用しています。
Joanna Tovia
2015年6月15日
わずか13平方メートルのなかに、ベッドルーム、ダイニング、オフィス、メディアルームを作るとなると、空間の有効活用のための工夫は必須だ。建築家のマイケル・ローパーさんは、メルボルン郊外の集合住宅に住んで2年経ったころ、思い切ってアパートメントを買うことにした。それもただのアパートメントではない。著名な建築家ベスト・オヴァレンドが設計し、1936年に完成したアールデコ様式のカイロ・ビルディング(The Cairo Building)なのだ。
この建物は、オーストラリアの集合住宅のさきがけのひとつ。コンクリートと突き出たバルコニーを斬新に取り入れた設計は、当時の最先端を行くものだった。建築を勉強するなかでこの建物のことを知り、長年憧れていたローパーさん。課題は、この建物の歴史と構造を尊重しつつ、生活のニーズに合わせた形にしていくことだった。
「すごく気に入っています。いくつかシンプルな工夫をしただけで、こんな小さなスペースですが快適で住みやすい理想の家になりました」とローパーさん。
この建物は、オーストラリアの集合住宅のさきがけのひとつ。コンクリートと突き出たバルコニーを斬新に取り入れた設計は、当時の最先端を行くものだった。建築を勉強するなかでこの建物のことを知り、長年憧れていたローパーさん。課題は、この建物の歴史と構造を尊重しつつ、生活のニーズに合わせた形にしていくことだった。
「すごく気に入っています。いくつかシンプルな工夫をしただけで、こんな小さなスペースですが快適で住みやすい理想の家になりました」とローパーさん。
どんなHouzz?
居住者:アーキテクチャー・アーキテクチャー(Architecture Architecture)の建築家マイケル・ローパーさん
所在地:メルボルン郊外フィッツロイ
規模:延床面積24平方メートル(13平方メートルのワンルーム、小さなキッチン、バスルーム)
都市に住む人が増え、郊外が拡大を続けているこの時代。ローパーさんは、小さいスペースを大きく活用することを選んだ。使い道の限定されたたくさんの空間ではなく、フレキシブルに使えるひとつの高品質な空間、という選択だ。「量より質です」とローパーさん。
居住者:アーキテクチャー・アーキテクチャー(Architecture Architecture)の建築家マイケル・ローパーさん
所在地:メルボルン郊外フィッツロイ
規模:延床面積24平方メートル(13平方メートルのワンルーム、小さなキッチン、バスルーム)
都市に住む人が増え、郊外が拡大を続けているこの時代。ローパーさんは、小さいスペースを大きく活用することを選んだ。使い道の限定されたたくさんの空間ではなく、フレキシブルに使えるひとつの高品質な空間、という選択だ。「量より質です」とローパーさん。
「いちばん難しかったのは、利便性を改善しながらも、アパートメントの文化遺産的な価値を損なわず、狭く感じさせないということでした」とローパーさん(写真)。
アンティークショップで見つけた中古のデスクとチェア。歴史遺産登録もされているアパートメントにふさわしいものを、と選んだ。高い天井と広い窓があり、もともと部屋の構造は良好。ローパーさんは、今ある物を取り除くことはせず、現状を最大限に活用する方向で進めた。
黒いフレームに入っているのはメルボルンの写真家ヴィキ・ペザーブリッジの作品。もう1点はローパーさんの父親が描いた絵。
黒いフレームに入っているのはメルボルンの写真家ヴィキ・ペザーブリッジの作品。もう1点はローパーさんの父親が描いた絵。
この集合住宅の名前「カイロ」にちなみ、ローパーさんは自分のアパートメントを「カイロの紫のバラ」と名付けた。ウディ・アレンの1985年の映画のタイトルだ。映画では、トム役のジェフ・ダニエルズが白黒映画のスクリーンを抜け出して、ミア・ファロー演じるセシリアのカラフルな現実世界に飛び込んでくる。このアパートメントの劇場のようなカーテンも映画のテーマを感じさせる。このカーテンで生活用品を自在に隠したり表に出したりすることができ、ベッドさえ折りたたんでカーテンの奥にしまうことが可能。
カーテンレールの中央に本棚があるため、どんなアレンジの場合も本棚を見せるインテリアが可能。
カーテンレールの中央に本棚があるため、どんなアレンジの場合も本棚を見せるインテリアが可能。
「床から天井まである大きなカーテンが空間を作り出しているんです」とローパーさん。「天井の高さを強調するだけでなく、視覚的にも音響的にも空間を和らげる効果があり、温かく居心地いい部屋にしてくれています」
美しいカーテンも、よく考えられた収納の工夫の一部。
「何よりも、カーテンがあることで空間を変化させられるのがいいですね。窓やベッド、ワードローブや本棚を必要に応じて見せたり隠したり。とてもシンプルですが、これで雰囲気がガラッと変わるんです」とローパーさん。
カーテンを動かせば一瞬で、ワンルームの部屋がベッドルームからダイニングへ、そしてオフィスやメディアルームに姿を変える。
「何よりも、カーテンがあることで空間を変化させられるのがいいですね。窓やベッド、ワードローブや本棚を必要に応じて見せたり隠したり。とてもシンプルですが、これで雰囲気がガラッと変わるんです」とローパーさん。
カーテンを動かせば一瞬で、ワンルームの部屋がベッドルームからダイニングへ、そしてオフィスやメディアルームに姿を変える。
木製の収納は、アーキテクチャー・アーキテクチャーのチームによる特注デザイン。
キッチンのドアをつぶして壁にし、そこに開口部を取り付けた。このおかげで、キッチンから居室を通して向こう側の庭が見えるようになり、空間のレイアウトもより自由になった。例えば友人たちが来た時は、ベッドをしまってデスクをこの窓の下に置けば、料理をしている間みんながその周りに集まってくる。そして、デスクを部屋の真ん中に動かせばダイニングテーブルに。足りない椅子は外のバルコニーから持ってくる。
バルコニーは建物の住人共用の大きな庭に面しており、道路を挟んで向かいには26ヘクタールの世界遺産庭園、カールトン・ガーデンズがある。建物が位置するのはカフェやショップ、ライブハウスなどが並ぶブランズウィック・ストリート(フィッツロイ地区)から歩いてすぐの場所だ。「子供の頃からこのあたりに住んでいるのですが、活気があって好きです」とローパーさん。
今も玄関ドアの横に小さな扉が見える。もともとここは単身男性用の集合住宅として設計されており、この扉は食事を出し入れするためのもの。以前は共用ダイニングルームも用意されていた。
アパートメントの本来の飾らない美しさを生かすため、木材はビクトリアンアッシュを選び、白のメラミンとファブリックを使ってシンプルな配色にした。さらにいくつか簡単な工夫を加え、空間の広がりを演出している。
例えば、収納は前を閉め切らないオープンな部分を多くして部屋の奥行を感じさせるように。そしてカーテンを開ききると、スチールの窓枠のエレガントなラインが生きる。
例えば、収納は前を閉め切らないオープンな部分を多くして部屋の奥行を感じさせるように。そしてカーテンを開ききると、スチールの窓枠のエレガントなラインが生きる。
バスルームとキッチンは費用を抑えるためまだ手を付けていないが、ローパーさんいわく、メインの部屋だけを見ても効果は明らか。用途ごとに特化した部屋をいくつも作る必要はなく、小さな住まいでも、多様に使えるクオリティの高い生活空間を作ることができるのだ。
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建物自体が経年した美しい雰囲気を持っており文化的な暮らしが想像できます。狭さを感じさせない空間はバルコニーとの一体感があるからでしょう。