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北欧ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具を選ぶなら
優れた北欧ミッドセンチュリーデザインの家具が生まれた、20世紀中盤のデンマーク。質の高いヴィンテージ家具のデザイナーとメーカー、おすすめアイテムと選び方のポイントをプロが解説します。
西谷典子|Noriko Nishiya
2017年9月10日
高級素材と熟練の職人技術が出会った古きよき時代のアンティーク家具に比べると、第二次世界大戦後に生産された家具は、ベニヤ(突板)、その後MDFなどの安価な素材が中心となり、残念ながらクオリティはやや劣ってしまいます。それでも、デンマークを中心とする北欧製の家具には、良質なものもたくさんあります。
戦後の難しい時代に奮闘した、高い技術力を持つ家具職人の技が見え隠れするこれらのの家具は、木材にこだわるデザイナーとのコラボレーションによる努力の賜物です。今回はそういったクオリティの高いミッドセンチュリー家具のおすすめメーカー3社を、デンマークからピックアップしてご紹介します。
戦後の難しい時代に奮闘した、高い技術力を持つ家具職人の技が見え隠れするこれらのの家具は、木材にこだわるデザイナーとのコラボレーションによる努力の賜物です。今回はそういったクオリティの高いミッドセンチュリー家具のおすすめメーカー3社を、デンマークからピックアップしてご紹介します。
戦後、家具デザインの中心となったデンマーク
第二次世界大戦後、破壊された都市では失われた家屋を建て直すことが急務でした。コストや手間暇のかからない、装飾性の少ないシンプルなデザインが多く生まれたのは当然の流れでした。復興に向かうそんな時代、日本の禅とも共通するシンプルなデザインを従来から好む北欧、特にデンマークのデザイナーたちが、この頃から家具デザイン界の中心となりました。
第二次世界大戦後、破壊された都市では失われた家屋を建て直すことが急務でした。コストや手間暇のかからない、装飾性の少ないシンプルなデザインが多く生まれたのは当然の流れでした。復興に向かうそんな時代、日本の禅とも共通するシンプルなデザインを従来から好む北欧、特にデンマークのデザイナーたちが、この頃から家具デザイン界の中心となりました。
職人肌の実力派、ハンス・J・ウェグナー
デンマークの最も偉大な家具デザイナーの一人は、500を超える椅子を世に送り出した、ハンス・J・ウェグナーでしょう。17歳から家具づくりを学んだ彼は、同時代に活躍したアルネ・ヤコブセンやフィン・ユールのような、王立美術大学卒業という華々しい経歴はないものの、自らの腕と経験によりその地位を勝ち得た実力派デザイナーです。職人肌の彼がつくった家具は、無駄を省いた機能的なデザインが圧倒的に多いのが特徴。素朴で実直な渋い持ち味は、ウェグナーの作品、そして人となりの魅力といえるでしょう。
知っておきたい名作家具:ハンス・ウェグナーの椅子
デンマークの最も偉大な家具デザイナーの一人は、500を超える椅子を世に送り出した、ハンス・J・ウェグナーでしょう。17歳から家具づくりを学んだ彼は、同時代に活躍したアルネ・ヤコブセンやフィン・ユールのような、王立美術大学卒業という華々しい経歴はないものの、自らの腕と経験によりその地位を勝ち得た実力派デザイナーです。職人肌の彼がつくった家具は、無駄を省いた機能的なデザインが圧倒的に多いのが特徴。素朴で実直な渋い持ち味は、ウェグナーの作品、そして人となりの魅力といえるでしょう。
知っておきたい名作家具:ハンス・ウェグナーの椅子
デザインアイコンと普及品の両輪
彼がデザインしたアイコン的なデザインの多くは〈カールハンセン &サン〉によって製造されました。いっぽう、イージーチェアやソファなど一般大衆向けの家具の多くは〈ゲタマ〉が製造。60年経った現在も変わることなく製造・販売されています。ウェグナーは戦後まもなく〈ゲタマ〉のために《GE290》シリーズをはじめとする椅子やソファをデザイン。戦後の復興期だったため、フレームには比較的入手しやすいオーク材が使われました。誰もが買えることを目的に、安価なコストで早く大量生産できるものづくりにも携わっていたのです。
彼がデザインしたアイコン的なデザインの多くは〈カールハンセン &サン〉によって製造されました。いっぽう、イージーチェアやソファなど一般大衆向けの家具の多くは〈ゲタマ〉が製造。60年経った現在も変わることなく製造・販売されています。ウェグナーは戦後まもなく〈ゲタマ〉のために《GE290》シリーズをはじめとする椅子やソファをデザイン。戦後の復興期だったため、フレームには比較的入手しやすいオーク材が使われました。誰もが買えることを目的に、安価なコストで早く大量生産できるものづくりにも携わっていたのです。
良質素材を使った普及品〈ゲタマ〉の家具
大量生産というと、品質は怪しいのではと思われがちですが、この時代のウェグナーデザインの椅子やソファのオークのフレームは、すべて無垢材です。大変頑丈で長持ちするよう、しっかりとつくられています。1970年代以降は木材の種類によっては無垢材ではないものも出てきますが、家具製作を知り尽くしたウェグナーと〈ゲタマ〉とのコラボレーションで生まれた家具のクオリティは特筆すべきもの。そして、今も変わらず健在です。
大量生産というと、品質は怪しいのではと思われがちですが、この時代のウェグナーデザインの椅子やソファのオークのフレームは、すべて無垢材です。大変頑丈で長持ちするよう、しっかりとつくられています。1970年代以降は木材の種類によっては無垢材ではないものも出てきますが、家具製作を知り尽くしたウェグナーと〈ゲタマ〉とのコラボレーションで生まれた家具のクオリティは特筆すべきもの。そして、今も変わらず健在です。
おすすめアイテムその1:オークフレームのイージーチェア
ウッドフレームのイージーチェアは北欧発信のデザイン。北欧インテリアにコーディネートするなら家にはひとつ欲しいアイデムです。イージーチェアを選ぶ際のポイントはまず、座り心地。実際に座ってみた感触をしっかりチェックしましょう。〈ゲタマ〉の家具のように、フレームが無垢材でしっかりした構造のものを選んでください。また、クッションシートの下の部分にあるベルトが緩んでいないかどうかも要チェックです。
ウッドフレームのイージーチェアは北欧発信のデザイン。北欧インテリアにコーディネートするなら家にはひとつ欲しいアイデムです。イージーチェアを選ぶ際のポイントはまず、座り心地。実際に座ってみた感触をしっかりチェックしましょう。〈ゲタマ〉の家具のように、フレームが無垢材でしっかりした構造のものを選んでください。また、クッションシートの下の部分にあるベルトが緩んでいないかどうかも要チェックです。
コフォード・ラーセンと〈ファールップ・モブラー〉の家具
1950年代初頭、ローズウッド材の木目の美しさをそのままサイドボードに活かすデザインで一躍有名になったのは、デンマーク人デザイナーのイプ・コフォード・ラーセン。バール(デザイン的価値のある木のコブ)など希少な杢目をベニヤ(突板)として家具の表面に使用する、18世紀からある伝統的な技術を、ラーセンは20世紀のモダンデザインのサイドボードに応用したのです。
「バール」「杢目」についてはこちらもあわせて
アンティーク家具の木材について知る:オーク材
アンティーク家具の木材について知る:チーク材、ローズウッド材
「ベニヤ(突板)」についてはこちらもあわせて
アンティーク家具の木材について知る :ウォールナット材
1950年代初頭、ローズウッド材の木目の美しさをそのままサイドボードに活かすデザインで一躍有名になったのは、デンマーク人デザイナーのイプ・コフォード・ラーセン。バール(デザイン的価値のある木のコブ)など希少な杢目をベニヤ(突板)として家具の表面に使用する、18世紀からある伝統的な技術を、ラーセンは20世紀のモダンデザインのサイドボードに応用したのです。
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サイドボードの正面には、取っ手のように見える木目の突板をあしらい、ハンドルのない無駄を省いたミニマルデザインに仕上げています。このサイドボードは〈ファールップ・モブラー〉が製造元ですが、この希少な杢目を見つける段階からデザイナーが関わることからも、いかに時間をかけてつくられたかがわかります。杢目の美しさを最大限に強調するのは、自然と共存する北欧らしいスタイルです。
〈ファールップ・モブラー〉は家族経営の小さな会社でしたが、ラーセンのデザインとともに家具の質の高さが世に知れ渡り、やがてアメリカの会社に吸収されることになります。現在では1950年代にラーセンがデザインした〈ファールップ・モブラー〉の家具は、高値で売買されるコレクターズアイテムに。
〈ファールップ・モブラー〉の主なアイテムは、サイドボードやテーブル、書斎用のデスクなど。どれもすっきりと無駄のないミニマルなデザインで、現代のインテリアにも自然にスタイリングできるのが魅力です。
〈ファールップ・モブラー〉の主なアイテムは、サイドボードやテーブル、書斎用のデスクなど。どれもすっきりと無駄のないミニマルなデザインで、現代のインテリアにも自然にスタイリングできるのが魅力です。
おすすめアイテムその2:美しい木目のサイドボード
美しい木目のサイドボードもまた、北欧スタイルのインテリアを飾る家具としておすすめしたいアイテムです。1960年代からは、テレビの普及とともにサイドボードの高さも低くなっており、現代のテレビ台としての役目はもちろん、コレクションを飾るステージとしても最適な、機能的な家具です。
選ぶ際はまず、扉や引き出しの開け閉めをしてみてください。引き出しの部分が無垢材でしっかりとしたつくりなら、断然長持ちします。また中の棚や棚受けのパーツなどが全部揃っているかどうかのチェックも忘れずに。
美しい木目のサイドボードもまた、北欧スタイルのインテリアを飾る家具としておすすめしたいアイテムです。1960年代からは、テレビの普及とともにサイドボードの高さも低くなっており、現代のテレビ台としての役目はもちろん、コレクションを飾るステージとしても最適な、機能的な家具です。
選ぶ際はまず、扉や引き出しの開け閉めをしてみてください。引き出しの部分が無垢材でしっかりとしたつくりなら、断然長持ちします。また中の棚や棚受けのパーツなどが全部揃っているかどうかのチェックも忘れずに。
リーズナブルで高品質、〈オーマン・ジュン〉の家具
デンマークのミッドセンチュリー家具メーカーで、もう1社おすすめを挙げるなら、〈オーマン・ジュン〉でしょう。カリスマデザイナーによるデザインではない分、価格はリーズナブルなのにクオリティはお墨付きです。
〈オーマン・ジュン〉は、1936年にアンドレア・オーマンが創立した、家族経営の小さな会社。真摯なものづくりが評価され、1960年代にはすでに、当時デザインを担当したグンニ・オーマンの家具はコレクターズアイテムとなっています。キャビネットやサイドボードのハンドル(取っ手)が繊細な細長い特徴のあるデザインになっているのが目印。そんな素晴らしいシグニチャー・デザインを持っているのも魅力です。
デンマークのミッドセンチュリー家具メーカーで、もう1社おすすめを挙げるなら、〈オーマン・ジュン〉でしょう。カリスマデザイナーによるデザインではない分、価格はリーズナブルなのにクオリティはお墨付きです。
〈オーマン・ジュン〉は、1936年にアンドレア・オーマンが創立した、家族経営の小さな会社。真摯なものづくりが評価され、1960年代にはすでに、当時デザインを担当したグンニ・オーマンの家具はコレクターズアイテムとなっています。キャビネットやサイドボードのハンドル(取っ手)が繊細な細長い特徴のあるデザインになっているのが目印。そんな素晴らしいシグニチャー・デザインを持っているのも魅力です。
この会社の家具のクオリティの高さは、家具の後ろ側を見れば一目瞭然です。誰も見ることがない部分にも丁寧な仕事が施してあるのです。クオリティの低い家具になると、合板はまだよい方で、1970年代にはチーク材も枯渇して後ろの板にMDFが使われるようになります。
後ろ側の板は、安い素材や荒い仕事だったとしても、上から角を隠すようにカバーすれば隠してしまうこともできます。でも、この写真の〈オーマン・ジュン〉の家具の後ろ側は、斜めにカットされたフレームの角をしっかりと見せて、細部まで手が込んでいることを強調しています。
後ろ側の板は、安い素材や荒い仕事だったとしても、上から角を隠すようにカバーすれば隠してしまうこともできます。でも、この写真の〈オーマン・ジュン〉の家具の後ろ側は、斜めにカットされたフレームの角をしっかりと見せて、細部まで手が込んでいることを強調しています。
おすすめアイテムその3:両側から使える家具、ルームディバイダー
〈オーマン・ジュン〉は他にも、きちんとした品質の本棚、またはルームディバイダー(部屋の間仕切りに使える収納家具)などを製造しています。ルームディバイダーもまた、ミッドセンチュリー時代に人気のあった家具。インテリアのフォーカルポイントにもなるおすすめアイテムです。その名の通りダイニングとリビングを仕切る役割をし、スペースに限りのある部屋で大変役に立ちます。
選び方のポイントはやはり〈オーマン・ジュン〉 の家具のようにどちら側を見てもきれいに見えるつくりのものを選ぶこと。会社によっては本棚のバージョンや扉付きバージョンなど多様なデザインがあるので、2、3台揃えればウォールユニットとしても使えます。
〈オーマン・ジュン〉は他にも、きちんとした品質の本棚、またはルームディバイダー(部屋の間仕切りに使える収納家具)などを製造しています。ルームディバイダーもまた、ミッドセンチュリー時代に人気のあった家具。インテリアのフォーカルポイントにもなるおすすめアイテムです。その名の通りダイニングとリビングを仕切る役割をし、スペースに限りのある部屋で大変役に立ちます。
選び方のポイントはやはり〈オーマン・ジュン〉 の家具のようにどちら側を見てもきれいに見えるつくりのものを選ぶこと。会社によっては本棚のバージョンや扉付きバージョンなど多様なデザインがあるので、2、3台揃えればウォールユニットとしても使えます。
こういったクオリティの高いものづくりの会社は、デンマークをはじめ北欧には多く存在しますが、北欧のミッドセンチュリー家具を世に知らしめたのは、品質以外にもやはり、優秀なデザイン力にあったと思います。この北欧のエリートデザイナーに目をつけたイギリスが、デンマークの後に続きます。次回は、北欧から影響を受けたイギリスのミッドセンチュリー家具についてご紹介したいと思います。
Houzz スタイル事典:ミッドセンチュリーモダン
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