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Houzzツアー:間口は狭く、奥に深く。幅わずか2.1メートルでも快適なアパートメント
スペインの首都マドリッドにある幅2.1メートルという驚きの家。間口が極めて狭いアパートメントに、工夫あふれる空間構成で家の機能を見事に収めた事例をご紹介します。
Isabel Arjona
2016年12月7日
マドリッドの中心地にあるこちらの住まいをリノベーションしたオーナーは、広告業界で働くクリエイティブなエクゼクティブ。専有面積21平方メートル、幅わずか2.1メートルという細長い形状の1階物件のうえ、採光口は天井の端にある中庭に面したスカイライトのみ、というきびしい状況にもひるむことはなかった。問題点は十分に分かっていたし、プラス面(その1つは4.75メートルの天井高)をうまく利用すれば、乗り越えられると考えたのだ。それではリノベーションの驚きの結果を見てみよう。
どんなHouzz?
居住者:広告業界のエグゼクティブ
所在地:スペイン、マドリッド
規模:21平方メートル
建築家:建築事務所〈MYCC〉のカルミナ・カサフアナ、ベアトリス・G・カサレス、マルコス・ゴンザレス
リノベーション前は、1階にある間口の狭い部屋の地面に、数メートルの深さの穴が開いているだけという状態だった。「どうしようもない状態でした。どうにかスペースを広げようとした前のオーナーが、やむを得ず地下を掘り下げていたんです。床はほとんどないようなものでしたね」と建築事務所〈MYCC〉のカサレスさんは言う。
居住者:広告業界のエグゼクティブ
所在地:スペイン、マドリッド
規模:21平方メートル
建築家:建築事務所〈MYCC〉のカルミナ・カサフアナ、ベアトリス・G・カサレス、マルコス・ゴンザレス
リノベーション前は、1階にある間口の狭い部屋の地面に、数メートルの深さの穴が開いているだけという状態だった。「どうしようもない状態でした。どうにかスペースを広げようとした前のオーナーが、やむを得ず地下を掘り下げていたんです。床はほとんどないようなものでしたね」と建築事務所〈MYCC〉のカサレスさんは言う。
高さがもとのままに保たれていたのは、エントランス付近のほか、わずかな部分だけだった。リノベにより、エントランスを入ってすぐのところにキッチンをつくった。このプロジェクトでは、複数の生活エリアを異なる高さに配置することで、下方向へと広げられたスペースを無駄なく活用している。
こちらの書斎も、元の高さが維持されている部分。建物の中庭に開かれたスカイライトの真下に位置し、家のなかで唯一ここから自然光を取り入れることができる。この空間は中2階のようになっており、出入りするには壁に取り付けられた梯子を使う。こうすることで、住まい手はいつも自発的に意識しながら空間とふれあうことになる。
ほかの多くの部分について言えることだが、この室内バルコニーのような場所の用途も、書斎だけと1つに決まっているわけではない。マットレスを置けば、座ってくつろぐ場所にも、来客時の寝室にもなる。これが、プロジェクトの強みの1つなのだ。「高さがある空間を活用して、たくさんの部屋を作っています。各部屋は、はっきりと区切られていながら、視覚的に屋内のほかの部分ともつながりを感じることができます」とカサレスさんは言う。
部屋の配置を見てみると、垂直方向にも水平方向にも、1つの部屋と次の部屋との間には何らかの「ずれ」があることがわかる。これにより、部屋から部屋への移り変わりがはっきりするだけでなく、それが「身体で実感できる」とカサレスさんは言う。「リビンクからキッチンに上がったり、リビングの隣の1段低いベッドルームに下りたり、という動きによって空間の変化が強調され、家の中をめぐるうちに、それぞれのエリアに対して、さまざまな認識が生まれます。」
リビングルームは、垂直方向にも水平方向にも、家の中心に位置している。リビングルームを形づくる基本的な考えかたは、ほかの場所と同じだ。下の階(ベッドルームとバスルームがある)へとつながる階段状の構造は、腰掛ける場所としても利用することができる。そして特に注目したいのは、リビングルームの下に作られたスペース。ここは収納ユニットになっており、ベッドルームを広く使いたいときには、中にベッド自体をしまうことも可能だ。
上げ底床の中にある収納ユニットには、階段下にあるハッチから入る。収納は、このスペースと、リビングエリアのソファの下にある引き出しのほか、エントランスとベッドルームには1つずつクローゼットが用意されている。
家の中心のリビングエリアから、もう1つの階段を下りると、オープンバスルームを含む残りのスペースになっている。サイズ面で大きな制限のある物件にもかかわらず、デザインの効果によって、スペースをたっぷり確保し、多彩な部屋を作り出すことができた。
ひときわ目をひくバスタブは、現場で成形されたもの。いちばん奥の角は収納スペースになっており、低い壁に沿って洗面台とトイレが配置されている。「白をスペース全体の基調として、建造方法と仕上げはシンプルにしました」とカサレスさんは言う。「なめらかでミニマルな表面仕上げは、プロジェクトを通して一貫しています。」
頭の中を刺激される構造の家だが、さまざまな要素がどのように全体を構成しているか、立体図を見るといちばん分かりやすいだろう。
複雑なプロジェクトの結果、素晴らしい住まいが完成したが、そのインスピレーションとなったアイデアについてカサレスさんはこう話してくれた。「軽さのある構造をさまざまな高さに配置して、まるで部屋から部屋へと飛び移れるような印象にしたい、というのが、スケッチを始めた当初からのアイデアでした。昔のプラットフォームゲームを思わせるようなデザインですね。」
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