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My Houzz:味わいのある家具や照明が映える、ヴィンテージビルの白い部屋
丁寧に手をかけられたヴィンテージ家具と照明を組み合わせてつくった、味わい深いリラックス空間。築50年のビルを改装した、ショップオーナーの家。
田村敦子|Atsuko Tamura
2016年8月26日
Freelance Editor
東京・目黒通りでアンティーク家具ショップ「Point No.39」、ヴィンテージ&オリジナル照明の専門店「Point No.38」を営む杉村 聡さん。お店の入っている築約50年のビルは、歴代オーナーがオーストラリアやフィリピンから来た外国人一家だった時代もある、ちょっと個性的な4階建ての建物だ。初めは1階のみを店舗として借りていたところ、現在のオーナーから「ビルの管理を兼ねて一棟丸ごとまかせたいので、店舗の上階に住んでもらえないだろうか」と相談されたのが3年ほど前。「収納家具は自分で用意するので、造り付けの収納はほとんど要らない。家具を置くシンプルな住空間としての “箱” を、きちんと整えてもらえさえすれば」と要望を出して、倉庫にしていた最上階を住居用に改装し、自宅として住むことに。一部は自身で内装も手掛けた。6畳と8畳の和室2室ずつの4Kという昔ながらの間取りを、シンプルな広いLD+独立キッチン+寝室というレイアウトにリノベーションし、入居してこの夏で2年になる。
ここに移る前は緑豊かな郊外のマンションに住んでいたという杉村夫妻。ビルのオーナーからこの提案があった際、広さや環境、住みやすさについては少し譲歩しなければならない部分があっても、「おもしろそう!」という思いには勝てなかったと語る。自分の理想とする、アンティークやヴィンテージの家具や照明が似合う暮らしを、この場でいろいろ試行錯誤していけると思ったのが、決め手だったのだそう。
どんなHouzz?
住み手:杉村 聡さんと奥様
職業:アンティーク家具とヴィンテージ自転車の店「Point No.39」、アンティーク照明と家具の店「Point No.38」経営、家具デザイナー
所在地:東京都目黒区 4階建てのビルの最上階(2、3階は写真家の友人のスタジオ、1階は自身の店舗)
規模:LD、キッチン、寝室、バスルーム(専有面積69平方メートル)
どんなHouzz?
住み手:杉村 聡さんと奥様
職業:アンティーク家具とヴィンテージ自転車の店「Point No.39」、アンティーク照明と家具の店「Point No.38」経営、家具デザイナー
所在地:東京都目黒区 4階建てのビルの最上階(2、3階は写真家の友人のスタジオ、1階は自身の店舗)
規模:LD、キッチン、寝室、バスルーム(専有面積69平方メートル)
唯一、以前の内装の面影を残しているのは、ガラスブロックを使った玄関脇の壁。レトロなイメージを生かして、照明や木の雑貨を控えめにコーディネートしている。
玄関を入って靴を脱ぎ、一段上がるとまず、短い廊下のような板の間がある。左手は独立型のキッチンで、右手のレトロな黒いドアの向こうはバスルーム。板の間から再び一段下がるとその先に、14畳のリビングダイニング空間が広がる。
リビングの窓側から玄関方向を眺めたところ。ガラスブロックの壁の奥がキッチンで、両開きのアンティークドアを取り付けた壁の向こうが、リビングダイニングとほぼ同じ広さの寝室になっている。
壁はむき出しにしたコンクリートに艶消しの水性塗料をペイントしたシンプルな仕上げ。安定した光の入る部屋なので、自然光をやわらかく反映するマットなアイボリー色を選び、家具や雑貨の背景にしている。
普段使いの食器やリネンは、壁の色に合わせてペイントしたオープンシェルフに収納。家具ショップの一角にあるカフェの運営を担当している奥様が、雑貨やリネンのセレクトをしている。吟味されたシンプルで使いやすいアイテムがコンパクトにおさめられ、必要なものがさっと取り出せるようになっているのはさすが。
普段使いの食器やリネンは、壁の色に合わせてペイントしたオープンシェルフに収納。家具ショップの一角にあるカフェの運営を担当している奥様が、雑貨やリネンのセレクトをしている。吟味されたシンプルで使いやすいアイテムがコンパクトにおさめられ、必要なものがさっと取り出せるようになっているのはさすが。
北側と東側の窓から安定した光の入る、広々と明るいオープンスペースは、もとの床板をはがしてモルタルをむき出しにし、ゾーンごとにカーペットやラグを敷くことで変化をつけている。リビングエリアにはオーク材のフローリングカーペットを、ダイニングエリアは季節によって毛皮や織物などのラグを。余分な飾りのないシンプルな内装なので、吟味された素材感が、狙い通りよく映える。
革張りのシートの大きなベンチソファの後ろは、モルタル床を生かしたガーデンエリア。東側の窓辺に沿って、フィカス、ベンジャミン、グレープアイビーなど、まるで小さなインドアガーデンのようにたくさんの植物を飾っている。以前の家では広いベランダから豊かな緑が眺められ、もとからグリーンがいっぱいの部屋が大好きな夫妻。入居した初めの頃、モルタルむき出しの内装が寒々しく思えたこともあり、しばらくの間は毎週のように園芸店や花屋をのぞいては植物を買って、「室内緑化計画」に励んでいたそう。鉢植えを部屋に置く際は虫が入らないよう注意が必要なので、鉢植えに使う土も神経質なくらい点検したという。
このガーデンエリアに置かれたヴィンテージ自転車が、屋外っぽい雰囲気をさらに高めている。これは1935年に生産された一台で、アメリカ人の自転車コレクターから譲ってもらった。細部まで丁寧に補修してあるので、今でもちゃんと乗れるのだとか。
また、3つのエリアにはそれぞれ個性的な照明が取り付けられ、ゾーニングにも一役買っている。杉村さんが好きなのは、1900年代初めの、電球が初めて登場した頃の照明デザイン。全体を照らすのに電球1個の明るさではまだ足りなかった時代なので、おのずと灯数の多いものになり、それがとても魅力的だと思うのだとか。素材は真鍮にエイジング加工したもので、「Point No.38」で扱っているオリジナルデザインも。
また、3つのエリアにはそれぞれ個性的な照明が取り付けられ、ゾーニングにも一役買っている。杉村さんが好きなのは、1900年代初めの、電球が初めて登場した頃の照明デザイン。全体を照らすのに電球1個の明るさではまだ足りなかった時代なので、おのずと灯数の多いものになり、それがとても魅力的だと思うのだとか。素材は真鍮にエイジング加工したもので、「Point No.38」で扱っているオリジナルデザインも。
リビングエリアに置いたTVボードとオープンシェルフは、杉村さんがデザインと製作を手掛けたもの。TVボードはオークの集成材、シェルフはホームセンターで切ってもらった板と、手ごろな材料を使っているが、味わいのある質感を出す作業が、1点1点丁寧に施されている。TVボードは木目が浮き出すように見える下地塗装をしたり、物が落ちにくいように手前側に枠をつけたシェルフの棚板に、まずオイル塗装し、ワックスを塗って磨くという作業を繰り返して、独特の素材感を表現した。
棚を支える支柱や、見える部分に使うビスや釘などの金属も、古びた質感に合うよう、鈍く光る真鍮製に。「シンプルな内装の家では特に、家具などの質感がとても際立つので、木の表情には気を配っていますね。木以外の素材、金属や革、布などもピカピカじゃなくて、ちょっと落ち着いて味の出たものが好きです。新しいものでも、使い込まれた感じの仕上げをしてから部屋に入れると、最初からとてもなじんだ感じになるんです」(杉村さん)。
手前に見えるコーヒーテーブルは、買い付けの旅でサンフランシスコを訪れた際、フリーマーケットで見つけたもの。チーク材とオーク材の突板を使用した、このちょっとジャンクな風合いの1960年代の家具が、リビング全体のイメージを決めることになった。
手前に見えるコーヒーテーブルは、買い付けの旅でサンフランシスコを訪れた際、フリーマーケットで見つけたもの。チーク材とオーク材の突板を使用した、このちょっとジャンクな風合いの1960年代の家具が、リビング全体のイメージを決めることになった。
ダイニングテーブル&チェアは、1940年代につくられたアメリカのヴィンテージ。ちょっとテーパードした脚に素朴な彫り模様が入っているのがおもしろく、テーブルの126×76cmという小ぶりなサイズも、2人暮らしにぴったりだと思って選んだのだそう。「ヨーロッパのものと違って、アメリカの家具の中には、職人でもなんでもない一般の人が見よう見真似でつくったのかな、という感じの家具があるんですよ。家具づくりの道具も近代的なものじゃなくて、案外手斧で削り出したものだったりして、粗削りでちょっと大味な感じ。そんなところに味わいがあって好きなんです」。
ソファの座り心地やテーブルのサイズ感、照明のボリューム感や照らしたときの雰囲気。これらは実際に暮らす空間に置いてみないと実感できないことも多い。杉村邸のこの部屋はある意味、ラボラトリー(実験室)ともいえるのかもしれない。商品の使い勝手を試すためにしばらくの間ここで使ってみることもあるし、逆に自宅用として好きなように作って使ってみた結果、これはいい、ということで商品化されたものもある。
さまざまな年代や国、デザイン、素材のアイテムが混じり合い、木の家具の色も同じではないのに、どことなく雰囲気が揃っている。「統一感」というのとは違うけれど、心地よいハーモニーが感じられる部屋。そんなさりげない家具のコーディネートに、秘訣はあるのだろうか? シンプルな部屋に、家具で表情をつけていくインテリアづくりのコツを杉村さんに聞いてみた。
「多くのアイテムを置いて落ち着く部屋をつくるには、たぶん2つほどコツがあると思います。1つめは、どこかに小さな共通項をつくること。たとえば、木が違っていても金属パーツを揃えるとか、塗装色は同じにするとか、装飾にテーマをもたせるとか。その際も全部がつながっている必要はなくて、少しずつつながっていって輪になる、という感じを目指すとよいと思います」。
「2つめは、きちんと手入れをして清潔に保つことで、丁寧に扱われている雰囲気を出すこと。僕が家具を仕上げるときにも気をつけていることですが、ぞんざいではなくきちんと使い込まれてきたものというのは、表情が穏やかで、協調性があるんです。一見でこぼこしていてにぎやかなんだけど、引いて全体を見るとまとまっている。かしこまりすぎないゆったりと落ち着いた感じを、自分自身も目指しています」。
「2つめは、きちんと手入れをして清潔に保つことで、丁寧に扱われている雰囲気を出すこと。僕が家具を仕上げるときにも気をつけていることですが、ぞんざいではなくきちんと使い込まれてきたものというのは、表情が穏やかで、協調性があるんです。一見でこぼこしていてにぎやかなんだけど、引いて全体を見るとまとまっている。かしこまりすぎないゆったりと落ち着いた感じを、自分自身も目指しています」。
1階の職場と4階の住まいを行き来する生活が、3年目に入った杉村さん。まだまだ自宅のインテリアは完成していないという。「これから作ろうと思っているのは書棚です。バーンと大きいものを置きたいですね。あと、照明やグリーンも、インテリア雑貨ももっと増やしていきたい。断捨離の時代と逆行していますが」。
最後に、「どうしてお店の名前にNo.39、38と番号がついているんですか?」と聞いてみた。「一生のうちに、お店を40店舗開くのが夢なんです。最初の店に39という名前をつけて、次が38、ラストになるのは0。カウントアップよりカウントダウンのほうが実現の可能性が高いかなと。いや、まだ始まったばかりなんですけどね(笑)」。
家づくりも店づくりも、これからが本番だ。
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最後に、「どうしてお店の名前にNo.39、38と番号がついているんですか?」と聞いてみた。「一生のうちに、お店を40店舗開くのが夢なんです。最初の店に39という名前をつけて、次が38、ラストになるのは0。カウントアップよりカウントダウンのほうが実現の可能性が高いかなと。いや、まだ始まったばかりなんですけどね(笑)」。
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