自然素材にこだわったフォルメンテラ島の住まい
バレアレス諸島の農場にあるこの家は、細部にいたるまで地元の景観を大切にするオーナーと建築家の想いが込められています。
Rafael F. Bermejo
2022年1月3日
写真提供: マリア・カステッロ
どんなHouzz?
住まい手:30代のカップル
所在地:フォルメンテラ島(スペイン)の カミ・ベル・デ・ラ・モラ通り(Camí Vell de la Mola)の1.8km地点
面積:70㎡+24㎡のポーチ
建築家:ロレーナ・ルザファ + マリア・カステッロ
予算: 約20万ユーロ(2,600万円)
施工会社:Toni 13
スペイン人建築家のマリア・カステッロ(Marià Castelló)の作品を、どこかでご覧になったことがあるかもしれません。スペインのフォルメンテラ島にあるこの住宅は、彼の設計スタジオに在籍している建築家のロレーナ・ルザファ(Lorena Ruzafa)とカステッロが、共同で設計したものです。
島の歴史的な場所にちなんで「エス・ポウ(Es Pou)」と名づけられたこの住宅は、フォルメンテラ島にあるカステッロの手による他の2つの作品と似た形状を備えています。「これら3つのプロジェクトを後押ししたのは、8メートル四方の小さな空間と、付随するポーチを作りたいという思いでした。全てのプロジェクトには、配置に明確な類似性があります」とカステッロは語ります。
どんなHouzz?
住まい手:30代のカップル
所在地:フォルメンテラ島(スペイン)の カミ・ベル・デ・ラ・モラ通り(Camí Vell de la Mola)の1.8km地点
面積:70㎡+24㎡のポーチ
建築家:ロレーナ・ルザファ + マリア・カステッロ
予算: 約20万ユーロ(2,600万円)
施工会社:Toni 13
スペイン人建築家のマリア・カステッロ(Marià Castelló)の作品を、どこかでご覧になったことがあるかもしれません。スペインのフォルメンテラ島にあるこの住宅は、彼の設計スタジオに在籍している建築家のロレーナ・ルザファ(Lorena Ruzafa)とカステッロが、共同で設計したものです。
島の歴史的な場所にちなんで「エス・ポウ(Es Pou)」と名づけられたこの住宅は、フォルメンテラ島にあるカステッロの手による他の2つの作品と似た形状を備えています。「これら3つのプロジェクトを後押ししたのは、8メートル四方の小さな空間と、付随するポーチを作りたいという思いでした。全てのプロジェクトには、配置に明確な類似性があります」とカステッロは語ります。
「ただし『エス・ポウ』では、プロジェクト全体を通じてセラミック素材や木材を使用し、ディテールを細かく微調整したいと考えました。そこで、打ち合わせを繰り返しながら家具を設計し、私たちのスタジオにおいて手作業で製作をおこないました。主寝室のヘッドボードに設置したランプなどの照明も含まれています」
3つの部分に分けられたこの住宅は、数世紀にわたって形成されてきた石壁と農地が織りなす田舎の農場に建てられています。
「住宅は区画の西側にあり、並行して、1キロ以上も続く小道が走っています」とカステッロ。「住宅は南向きに配置され、日没時の西日からは密集した植栽によって保護されます。オーナーからは、当時からおこなっていた農業のために、最も肥沃なエリアを残してほしいという要望がありました」
3つの部分に分けられたこの住宅は、数世紀にわたって形成されてきた石壁と農地が織りなす田舎の農場に建てられています。
「住宅は区画の西側にあり、並行して、1キロ以上も続く小道が走っています」とカステッロ。「住宅は南向きに配置され、日没時の西日からは密集した植栽によって保護されます。オーナーからは、当時からおこなっていた農業のために、最も肥沃なエリアを残してほしいという要望がありました」
この住宅は別荘ではなく、一年を通して住むために設計されました。「この農場は、オーナーご一家が100年以上にわたって所有してきたものです。彼の祖父の代にはさらに大きな10万平米もの農地の一部だったといいます。そういった経緯で、限られた予算しかない若い夫婦が、フォルメンテラ島にこの住宅を建てることができたのです」とカステッロは言います。
建築家の周辺の土地への深い敬意と知識により、ディテールや素材の選択には多大な配慮がなされました。それらが一体となることで、インテリアに特徴を与え、環境と対話をするように住宅が配置されているのです。事実、オーナーの要望のひとつは、「祖先が始めた農業を維持し続けるために、耕作に適したエリアを侵さないでほしい」というものでした。
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建築家の周辺の土地への深い敬意と知識により、ディテールや素材の選択には多大な配慮がなされました。それらが一体となることで、インテリアに特徴を与え、環境と対話をするように住宅が配置されているのです。事実、オーナーの要望のひとつは、「祖先が始めた農業を維持し続けるために、耕作に適したエリアを侵さないでほしい」というものでした。
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屋外の色彩の中心は、温かな土の色合いとアーモンドやイチジクの木の淡いグリーンです。
屋外の雰囲気が、住宅の内部にも取り込まれて、フォルメンテラ島の特徴であるこれらの色彩が光ります。セラミックスとウッドという、繊細かつ時代を超えて愛される組み合わせによって、部屋全体が表現されています。
カステッロの他の作品の紹介記事を読む
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「土の温もりは、マヨルカ風のセラミック素材で仕上げられたアーチ天井と、プレス成型のテラコッタタイルで仕上げられた床にそれぞれ引き継がれています」(カステッロ)
このテラコッタタイルは、ファサードの仕上げや主寝室のヘッドボードといった、住まいのさまざまな箇所で使用されています。カステッロは、施工時に生じた端材でさえも屋根などに利用しています。
テラコッタタイルを使った住まいの写真をみる
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セラミック製の格子は、玄関だけでなく、住まいの「昼」と「夜」のエリアの境界を定めています。
カステッロがこの住宅で最も気に入っている点を教えてくれました。「選りすぐった素材が、完成した住宅によい影響をもたらした点です。カーテンや家具を入れるより前でも、音の反響がありませんでしたし、インテリアには温かく、くつろいだ雰囲気がありました。オーナーまも、この住宅を気に入ってくれています」
カステッロがこの住宅で最も気に入っている点を教えてくれました。「選りすぐった素材が、完成した住宅によい影響をもたらした点です。カーテンや家具を入れるより前でも、音の反響がありませんでしたし、インテリアには温かく、くつろいだ雰囲気がありました。オーナーまも、この住宅を気に入ってくれています」
北に面した部分には2つのベッドルームがあります。「オーナーが特に喜んでくれたのが、ヘッドボードではないでしょうか。私たちが何か計画しているようだと感づいてはおられましたが、はっきりとはわかっていなかったので驚かれたようです」とカステッロは話します。
ただ、オーナーがあまり気に入っていないことがひとつあります。それは、この住まいが夏期に渋滞するカミ・ベル・デ・ラ・モラ通りからわずか500メートルしか離れていないという点です。興味を持った人が立ち止まって家の写真を撮ったり、家の周りを歩き回ったり、さらにはドアに触れたりといったことが毎日のように繰り返されるそうです。「最初はサラも面白がっていましたが、今は違います」とカステッロ。「景観との一体感を失うことなく、北側からのアクセスをしにくくする門を、どのように設計しようかと思案中です」
ただ、オーナーがあまり気に入っていないことがひとつあります。それは、この住まいが夏期に渋滞するカミ・ベル・デ・ラ・モラ通りからわずか500メートルしか離れていないという点です。興味を持った人が立ち止まって家の写真を撮ったり、家の周りを歩き回ったり、さらにはドアに触れたりといったことが毎日のように繰り返されるそうです。「最初はサラも面白がっていましたが、今は違います」とカステッロ。「景観との一体感を失うことなく、北側からのアクセスをしにくくする門を、どのように設計しようかと思案中です」
建物全体を通じた素材の一貫性と調和は、建築家がすべてのディテールに対して注意を払ったことを反映しています。たとえば、主寝室内のヘッドボードのようなユニークなものだけでなく、照明や浴室の金物のような、より一般的なものにも合うよう、プラグやスイッチには、ガラス固化を施した磁器製の白いプラグやスイッチを使用しました。照明などの特別なアイテムは、建築家のスタジオで、このプロジェクト専用の型枠を用いて手づくりされたものです。
浴室の壁の一部は、周辺の植生の色に合わせた、ガラス固化を施した淡いグリーンのセラミックタイルで仕上げられています。セラミック製の格子を通して射し込む光が、光と影の絶え間ない相互作用を生み出しています。
住宅のアクソノメトリック・レンダリング
特筆すべきは、地域の環境に対する、カステッロとルザファの敬意と配慮です。「何世代にもわたって無名の人々によって育まれた、伝統的な建築における普遍的なものの見かたは、特定の環境に対処・順応する方法を数多く生み出してきました。私たちはそれを無視することはできないと思います」とカステッロは言います。
特筆すべきは、地域の環境に対する、カステッロとルザファの敬意と配慮です。「何世代にもわたって無名の人々によって育まれた、伝統的な建築における普遍的なものの見かたは、特定の環境に対処・順応する方法を数多く生み出してきました。私たちはそれを無視することはできないと思います」とカステッロは言います。
「この極めて重要な知識を、私たちは自分たちの仕事に生かすように努めています。地元の素材だけでなく、ポーチやパティオの設置方法や、光を和らげるアイテム、夏の卓越風を捉える向き、周辺の植生を利用する方法なども含まれています」
コロナ禍で、屋外空間の価値、そして地中海建築の特徴であり屋内外の移行空間の価値が注目されるようになったとカステッロは話します。
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