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一世紀におよぶ女性建築家たちの業績をたたえる『ブレイキング・グラウンド』
世界中から選りすぐられた建築物はすべて、女性建築家の手によるものです。
Gwendolyn Purdom
2020年3月7日
“女性が設計した建築"に関する本の執筆ついて、出版社に話を持ちかけられた建築家のジェーン・ホール。依頼を引き受けた当初は「世界で最も優れた建物」が、本の全ページを埋めるほどには見つからないかもしれない、と懸念していたそうです。
しかし、『Breaking Ground: Architecture by Women(ブレイキング・グラウンド:女性がつくる建築)』(英語版のみ)の草稿に着手する頃には、ホールはすでに掲載に値する作品を700以上もリストアップしていたといいます。2019年10月に英語で出版されたこの本には、最終的には世界中から200以上の建築的に重要な建物が写真と共に取り上げられており、それらを設計した女性たちを先駆者として称えています。
しかし、『Breaking Ground: Architecture by Women(ブレイキング・グラウンド:女性がつくる建築)』(英語版のみ)の草稿に着手する頃には、ホールはすでに掲載に値する作品を700以上もリストアップしていたといいます。2019年10月に英語で出版されたこの本には、最終的には世界中から200以上の建築的に重要な建物が写真と共に取り上げられており、それらを設計した女性たちを先駆者として称えています。
『Breaking Ground: Architecture by Women(ブレイキング・グラウンド:女性がつくる建築)』ジェーン・ホール著
「はじめるにあたって、ぱっと名前が挙がったのは1900年以降の40名ほどでした。ですから、もっと考えてみる必要がありました」ロンドンの建築およびデザイン集団であるアセンブルの創設メンバーでもあるホールは、Houzzのインタビューにこう答えます。「私たちは、そういう思考回路になってしまっているのです。世界で最も優れた建物と建築家を思い浮かべることができる。素晴らしい女性建築家とその建築のことも、おそらく知っている。でもまず男性の名前を先に挙げてしまうのです」
本作には、アメリカの建築家ジュリア・モーガンのような20世紀初頭のパイオニアから、日本の妹島和世のような現代の先見者まで、多数の女性建築家の作品がおさめられています。
「はじめるにあたって、ぱっと名前が挙がったのは1900年以降の40名ほどでした。ですから、もっと考えてみる必要がありました」ロンドンの建築およびデザイン集団であるアセンブルの創設メンバーでもあるホールは、Houzzのインタビューにこう答えます。「私たちは、そういう思考回路になってしまっているのです。世界で最も優れた建物と建築家を思い浮かべることができる。素晴らしい女性建築家とその建築のことも、おそらく知っている。でもまず男性の名前を先に挙げてしまうのです」
本作には、アメリカの建築家ジュリア・モーガンのような20世紀初頭のパイオニアから、日本の妹島和世のような現代の先見者まで、多数の女性建築家の作品がおさめられています。
フランクリン・コート(米フィラデルフィア) 設計:デニス・スコット・ブラウン 写真提供:VSBA
そもそも女性建築家をカテゴリーとして分離するというコンセプト自体、ある意味で問題だとホールは言います。男性と女性を職業上区別し、女性建築家の決定的な特徴は「女性であること」と示唆しかねないからです。
それでも、男性建築家とは違い、女性が設計した建築が、建築の世界でも一般的にも教えられたり、賞賛を受けたりする機会が少なかったなかで、この本は、いままであまり知られてこなかった作品たちを世に知らしめることになるかもしれません。
「この問題の中心にあるのは、建築史の再考と、建築史における、建物のオーサーシップの帰属に対する特異な固執です」と、ホールは本書の序論で述べています。 「つまり、今日の社会においてアイデンティティのカテゴリーが複雑さを増していることを考えると、いまになってオーサーシップを再定義することに価値はあるのか。あるいは、性別にのみ特化した切り口から、個々人に注意を向ける価値はあるのか。オーサーシップが、男性によって男性に帰属させられ、称賛され、宣伝されるということが繰り返されてきた以上、この歴史には修正が必要だというのが率直な答えです」
歴史的によく知られている女性建築家は、しばしば自らの仕事の実績よりも、有名な男性建築家に関連して認知されていることを本書は指摘しています。
たとえば、アイリーン・グレイの住宅『E-1027』は、ル・コルビュジエとのつながりで知られていました。写真のフィラデルフィアのフランクリン・コートを設計したデニス・スコット・ブラウンは、本書の引用においてこう述べます。
「私の作品がどのように発表され、クレジットされても、それは(私のパートナーであるロバート)ヴェンチューリの作品と認識されていました。私たち両方が設計する可能性など、思いもよらないようでした」
近年、建築業界の状況と論調は変わりつつある、とホールは言いますが、取り戻すべき時間は長く、再検討するべき作品の量は膨大です。本の中で取り上げる建物を決めるにあたっては、世界中の女性建築家を幅広く紹介し、その経験も、自らの仕事をどのように定義したいかも、個人によって異なることを強調したかったとそうです。
「そうすることにより、本書では、美的なカテゴリーとしての『女性』という考え方を支持するのではなく、むしろ女性自身の目を通した建築史を示しています」と彼女は書いています。
そもそも女性建築家をカテゴリーとして分離するというコンセプト自体、ある意味で問題だとホールは言います。男性と女性を職業上区別し、女性建築家の決定的な特徴は「女性であること」と示唆しかねないからです。
それでも、男性建築家とは違い、女性が設計した建築が、建築の世界でも一般的にも教えられたり、賞賛を受けたりする機会が少なかったなかで、この本は、いままであまり知られてこなかった作品たちを世に知らしめることになるかもしれません。
「この問題の中心にあるのは、建築史の再考と、建築史における、建物のオーサーシップの帰属に対する特異な固執です」と、ホールは本書の序論で述べています。 「つまり、今日の社会においてアイデンティティのカテゴリーが複雑さを増していることを考えると、いまになってオーサーシップを再定義することに価値はあるのか。あるいは、性別にのみ特化した切り口から、個々人に注意を向ける価値はあるのか。オーサーシップが、男性によって男性に帰属させられ、称賛され、宣伝されるということが繰り返されてきた以上、この歴史には修正が必要だというのが率直な答えです」
歴史的によく知られている女性建築家は、しばしば自らの仕事の実績よりも、有名な男性建築家に関連して認知されていることを本書は指摘しています。
たとえば、アイリーン・グレイの住宅『E-1027』は、ル・コルビュジエとのつながりで知られていました。写真のフィラデルフィアのフランクリン・コートを設計したデニス・スコット・ブラウンは、本書の引用においてこう述べます。
「私の作品がどのように発表され、クレジットされても、それは(私のパートナーであるロバート)ヴェンチューリの作品と認識されていました。私たち両方が設計する可能性など、思いもよらないようでした」
近年、建築業界の状況と論調は変わりつつある、とホールは言いますが、取り戻すべき時間は長く、再検討するべき作品の量は膨大です。本の中で取り上げる建物を決めるにあたっては、世界中の女性建築家を幅広く紹介し、その経験も、自らの仕事をどのように定義したいかも、個人によって異なることを強調したかったとそうです。
「そうすることにより、本書では、美的なカテゴリーとしての『女性』という考え方を支持するのではなく、むしろ女性自身の目を通した建築史を示しています」と彼女は書いています。
ハダウェイ・ハウス(カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州ウィスラー) 設計:パトリシア・パトカウ/Patkau Architects 写真:James Dow/Patkau Architects
『ブレイキング・グラウンド』で紹介される建物は、さかのぼること1912年のマリオン・マホー二・グリフィン設計のロック・クレストーロック・グレン住宅開発(米アイオワ州)から、最近ではステファニー・マクドナルド(Stephanie Macdonald)設計の2019 MKギャラリー(イギリス)まで網羅しています(200を超える建物は、本の後ろにある写真入りの時間軸にも整理されて載っています)。
ホールはまた、主流の建築史で過小評価されている一部地域の女性による作品例を可能な限り多く含めるようにしたと言います。掲載作品は、写真のパトリシア・パトカウ設計によるハダウェイ・ハウス(カナダ)や、ジーン・ギャング設計によるパーク571内のエレノア・ボートハウス(Eleanor Boathouse at Park 571)(シカゴ)などのプロジェクトだけでなく、リナ・ボ・バルディ設計によるカーサ・デ・ヴィドロ(ブラジル、サンパウロ)や、スク・ヒ・チュン(Sook Hee Chun)設計によるABCビルディング(ABC Building)(韓国、ソウル)、マリアム・カマラ(Mariam Kamara)設計による宗教と世俗の複合施設ヒクマ(Hikma)(ニジェール、ダンダジ)も含まれています。
アイルランドの女性建築家2人組が、2020年プリツカー賞受賞
『ブレイキング・グラウンド』で紹介される建物は、さかのぼること1912年のマリオン・マホー二・グリフィン設計のロック・クレストーロック・グレン住宅開発(米アイオワ州)から、最近ではステファニー・マクドナルド(Stephanie Macdonald)設計の2019 MKギャラリー(イギリス)まで網羅しています(200を超える建物は、本の後ろにある写真入りの時間軸にも整理されて載っています)。
ホールはまた、主流の建築史で過小評価されている一部地域の女性による作品例を可能な限り多く含めるようにしたと言います。掲載作品は、写真のパトリシア・パトカウ設計によるハダウェイ・ハウス(カナダ)や、ジーン・ギャング設計によるパーク571内のエレノア・ボートハウス(Eleanor Boathouse at Park 571)(シカゴ)などのプロジェクトだけでなく、リナ・ボ・バルディ設計によるカーサ・デ・ヴィドロ(ブラジル、サンパウロ)や、スク・ヒ・チュン(Sook Hee Chun)設計によるABCビルディング(ABC Building)(韓国、ソウル)、マリアム・カマラ(Mariam Kamara)設計による宗教と世俗の複合施設ヒクマ(Hikma)(ニジェール、ダンダジ)も含まれています。
アイルランドの女性建築家2人組が、2020年プリツカー賞受賞
サッカースタジアム(ベラルーシ、ボリソフ) 設計:スペラ・ヴィデニュイッキ/OFIS Architects(Špela Videčnik of OFIS Architects) 写真:Tomaz Gregoric/OFIS Architects
建物の写真とその建築家の略歴以外に、建築の世界で活躍する女性たちの全体像をよりよく理解するのに役立つという『おすすめの文献』リストも掲載されています。ここでは、建築教育、理論、または政策を通じて業界に貢献した重要な女性たちが取り上げられています。
「彼女たちは代表する建物作品がないので、本来であれば本書には掲載されない予定でした。ですが、別の切り口で建築の世界を形作る女性にも注目する重要性を、私たちは感じたのです」とホール。
依然として男性の偉業に焦点を当て続ける建築学部のカリキュラム、そして建築を専攻したものの進路先に選ばない女子学生の割合が高いままである状況のなか、建築分野に踏み出そうとしている女性の助けとなり、インスピレーションを与えるものとして、この一冊が役立つことを、彼女は願っています。
「この本では、建築の世界で女性が達成してきた豊富で多様な実績を紹介しています。建築学生や若い建築家たちに、居場所は存在する、ということを伝えたいと思います」
建築についての記事を読む
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「彼女たちは代表する建物作品がないので、本来であれば本書には掲載されない予定でした。ですが、別の切り口で建築の世界を形作る女性にも注目する重要性を、私たちは感じたのです」とホール。
依然として男性の偉業に焦点を当て続ける建築学部のカリキュラム、そして建築を専攻したものの進路先に選ばない女子学生の割合が高いままである状況のなか、建築分野に踏み出そうとしている女性の助けとなり、インスピレーションを与えるものとして、この一冊が役立つことを、彼女は願っています。
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