一級建築士事務所 暮らしと建築社

須坂市Y邸

概要
敷地は須坂市の郊外の果樹園が広がる一体にあります。周辺には古くからの集落の残る
落ち着いた場所にあります。祖父様のリンゴ畑を転用しています。そのためリンゴ畑の
どの位置に住宅を建て、宅地化するかの検討から始めています。
道路と直接的な関係にならないようにリンゴ畑を半分残し目隠しとして利用しています。
同時にリンゴ畑は庭の延長として特徴のある風景を生み出しています。リンゴ畑のリン
ゴの木は手入れしやすいように低い高さに管理されています。その低木のスケールに
合わせた建物の大きさを操作しています。また周辺をすべて果樹畑(リンゴ、ぶどう)
に囲まれている為、その要素は自然というよりは、人の手によって管理された人工的な
風景として受け止めています。グリッドに配された樹木、グリッドに乗っているぶどう
棚のワイヤー、支柱など。人工的に整然と並んだ風景に合わせて、「建物の大きさを
適切に分節する」「周辺の高さに配慮した高さ」「グリッドに乗った配置」を計画に
取込んでいます。

平面計画
平面計画は雁行配置した3つの棟を渡り廊下で繋ぐ分棟形式としています。1つ目の棟
には玄関と駐車場、2つ目の棟にはLDKと浴室、3つ目の棟には寝室と子ども部屋と
いう、奥に行くほどプライベートになる配置になっています。また住棟の高さも奥に
行くほど徐々に高くなる形式をとり大きさを感じさせない工夫がされています。
住棟間の渡り廊下は両側がサッシのガラス面とした開放的な作りになっており、リンゴ
畑が見渡せる形式になっています。またLDK棟と寝室棟との間の渡り廊下はデッキと
連続しており、半分がポリカの半透明の屋根があり、リビング、子供部屋(工作スペース
・アトリエ)からの室内の延長として利用できるようになっています。内部と外部が
入り組む事で各部屋が視覚的に繋がりつつも棟別の物理的な距離もつくられ距離感を
調節しながら生活することができます。
2階は最小限の高さのロフトスペースとして将来的な家族の生活の変化を受け入れる
余地として大きく残されています。

構造計画
構造は木造の在来工法でありながら無柱の大きな空間を実現しています。特徴的な家型
をしたLDKは7.28x5.46mの無柱空間として2x4材を利用した38x235の合わせ梁に
スチールの□75x45を貫通させたシンプルな構成。断熱性能を重視したことで梁自体は
現しになっていませんが細く軽い印象の鉄の角パイプが頭上を貫通しています。

設備・その他
果樹園に囲まれた敷地ということで、農薬散布などの影響を考慮した素材選びを行ない
ました。外壁材・屋根材はガルバリウム鋼板のなかでも基材の耐久性が高いSGL
(マグネシウム含有量を増やし耐腐食性のが一般品の3倍)を採用しています。
ストーブはDLD社のアイアンドッグ。横引き煙突、圧迫感の少ない小さな本体、
鉄板の厚い精巧な作りなどの理由で選定されています。
リビングの窓には木製バーチカルブラインド(鳥取県智頭杉のサカモト製)を採用。
柔らかい光が生まれ、日射調整も反射が美しい。
リビングソファは松本のアトリエm4さんのもの。唐松とレザー、鉄のハード目なソファ
もストーブとナラの床との相性が良いです。
ダイニングテーブルは飯島町のHUMPさんのもの。こちらはナラ材です。キッチンは
完全なオープンです。キッチンは造作でタモ材の柾目の面材を選定しています。
クライアントこだわりのセレクトも全体的に上手くまとまり心地よい空間に仕上がっています。

リビングの窓からはリンゴが実る風景が間近に見える。まさに長野らしいという印象の
特別な敷地です。自宅に庭がリンゴ畑。春には白い花が、夏には青い実が、紅葉した
リンゴの葉に赤い実がまた美しい。人の手の入った農の風景。人工の物ではあるけれど
美しさもある。その風景に呼応した長野らしい住宅になっています。


須坂市Y邸

所在地 長野県上田市
主要用途 住宅
竣工年 2015年

設計・監理 暮らしと建築社
   担当/須永次郎 須永理葉
構造 木下洋介構造設計室
   担当/木下洋介
施工 松代建設工業株式会社
   
敷地面積  493.82m2
建築面積  149.89m2
延床面積 176.39m2
階数   地上2階 
設計期間 2014年1月~2015年4月
施工期間 2015年4月~2015年9月
写真撮影  上田宏
プロジェクトの竣工年/制作年: 2015
国: 日本