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日本在住30余年の外国人夫妻が建てた、思い出が息づく明るい家
子供たちが巣立ち、夫婦だけの家をつくることにした東京の外国人夫妻。完成したのは、旧居で気に入っていた部分のデザインを取り入れた、日当たりの良い家でした。

Miki Anzai
2019年6月9日
Editor |Houzz Japan
米国出身で東京に暮らして30余年になるウィリアム・スティールさんと、オーストラリア出身の奥様のパトリシアさん。長年、2人はウィリアムさんが教養学部の教授を勤めていた国際基督教大学(ICU)の敷地内に建つW.M.ヴォーリズ設計の家を借りて住んでいた。しかし4人の子供たちが巣立ち、自身も大学退官を控え、夫婦の家を建てることにした。
井の頭公園近くの土地を購入したものの、隣家に囲まれた奥まった敷地のため、日当たりやプライバシーを保てるか不安を抱えていた。そんな時、長浜信幸建築設計事務所が手がけた吉祥寺の家を見て「これだ!」と確信し、長浜信幸さんに設計を依頼したという。
井の頭公園近くの土地を購入したものの、隣家に囲まれた奥まった敷地のため、日当たりやプライバシーを保てるか不安を抱えていた。そんな時、長浜信幸建築設計事務所が手がけた吉祥寺の家を見て「これだ!」と確信し、長浜信幸さんに設計を依頼したという。
スティール邸を訪れると、吹抜けからは燦々と陽光が降り注いでおり、旧居の面影を引き継いだというだけあって、どことなく懐かしい空間が広がっていた。
どんなHouzz?
住まい手:ウィリアム・スティールICU名誉教授夫妻
所在地:東京都三鷹市井の頭
敷地面積:140.36㎡
建築面積:56.12㎡
延床面積:105.63㎡
設計・監理:長浜信幸建築設計事務所
施工:株式会社内田産業
構造・規模:木造・地上2階建
竣工:2015年3月
撮影:黒住直臣(スナップショットを除く)
どんなHouzz?
住まい手:ウィリアム・スティールICU名誉教授夫妻
所在地:東京都三鷹市井の頭
敷地面積:140.36㎡
建築面積:56.12㎡
延床面積:105.63㎡
設計・監理:長浜信幸建築設計事務所
施工:株式会社内田産業
構造・規模:木造・地上2階建
竣工:2015年3月
撮影:黒住直臣(スナップショットを除く)
建物は、公道から20メートル入った路地の奥に位置する。この旗竿(はたざお)敷地を逆手に取り、隣家との境に木製フェンスを配し、その壁沿いに奥様が大切にしている草花を列植した。2階のフェンスは、意匠性もさることながら、プライバシーを確保するためでもある。
玄関手前に置かれた立派な石は、以前住んでいた家の庭から持って来たもの。
東京の建築家を探す
玄関手前に置かれた立派な石は、以前住んでいた家の庭から持って来たもの。
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旧居で使用していた靴箱は、脚を2本カットして玄関に備え付けた。
ステンドグラスは、長浜さんの知人で作家の櫻井弓子さん作。ガラスを透過して差し込む光は、太陽の動き、季節の変化、その時々で違った表情を見せてくれる。
ステンドグラスは、長浜さんの知人で作家の櫻井弓子さん作。ガラスを透過して差し込む光は、太陽の動き、季節の変化、その時々で違った表情を見せてくれる。
玄関とリビングを繋ぐガラスの引き戸と本棚は、以前の家を彷彿させるようにと、長浜さんがデザインした。「ここに来る友達は、昔の家と似ている!」と口を揃えて言うそう。テーブルと椅子も旧居で使っていたもの。
「環境に優しい自然素材を使って欲しい」という夫妻の要望を受け、壁は漆喰、床はナラ材を採用した。「本来は傷や汚れがつきやすい素材ですが、子育てが終わり、2人だけの『大人の家』なので、とても綺麗に保たれていると友人たちも驚きます」とパトリシアさん。
「環境に優しい自然素材を使って欲しい」という夫妻の要望を受け、壁は漆喰、床はナラ材を採用した。「本来は傷や汚れがつきやすい素材ですが、子育てが終わり、2人だけの『大人の家』なので、とても綺麗に保たれていると友人たちも驚きます」とパトリシアさん。
家のどこにいても陽だまりを感じられるのは、リビングの上にある大きな高窓とトップライト(天窓)のお陰だ。
この敷地は、準防火地域内にあるため、無造作に防火サッシを使うと網入りガラスにする必要がでてしまう。この高窓からは外がよく見通せるので「どうしても視線を遮る菱形の金網を避けたかった」という長浜さん。窓の外側に防火シャッターを付けて透明ガラスを使えるように工夫した。
この敷地は、準防火地域内にあるため、無造作に防火サッシを使うと網入りガラスにする必要がでてしまう。この高窓からは外がよく見通せるので「どうしても視線を遮る菱形の金網を避けたかった」という長浜さん。窓の外側に防火シャッターを付けて透明ガラスを使えるように工夫した。
開閉式トップライトからは、心地よい風が吹き抜ける。ウィリアムさんは、ここから月を眺める時間がお気に入りだ。パトリシアさんは、降り注ぐ太陽を浴びながら、「猫のように」まどろむのが何よりの幸せだそう。
「スティール夫妻は、住まいに対する確固たる考えをお持ちだったので、設計しやすかった」という長浜さん。ただし「求める素材が日本のどこで入手できるか分からなかった」ので、照明・タイル・材木にいたるまで、長浜さんが一緒に店まで出向き、慎重に決めたそう。ダイニングのアクセントになっている照明はルイス・ポールセン。伸張式ダイニングテーブルは、長浜さんの知人の木工家・根岸宏行さんがブラックウォールナットで製作した自信作だ。
リビングとの境の梁の下には壁をつくって、ダイニングスペースを寝室に変更することも可能だ。「老後を見据えた設計にも心がけました」という長浜さん。
建築家と家づくりをするメリットとは?
リビングとの境の梁の下には壁をつくって、ダイニングスペースを寝室に変更することも可能だ。「老後を見据えた設計にも心がけました」という長浜さん。
建築家と家づくりをするメリットとは?
ガーデニングが趣味の夫妻のために、敷地の角を利用して小さなテラスも設けた。ここの開口も透明ガラス(その外側に防火シャッター)をはめ込んだので、遮るものなく、外の緑を楽しめる。
ウィリアムさんの趣味は調理。キッチンへの思い入れは強く、動線への配慮、収納の位置にいたるまで、細かく長浜さんに希望を伝え、設計してもらったという。手前のカウンタートップは「パイ生地をこねる時に、生地が温まらないように」とクォーツ(水晶)ストーンを選ぶこだわりようだ。
大黒柱は「孫たちのお気に入りで、来るたびにしがみついて遊んでいます」と微笑むウィリアムさん。
大黒柱は「孫たちのお気に入りで、来るたびにしがみついて遊んでいます」と微笑むウィリアムさん。
1階の浴室。外の日本庭園を眺めながらの入浴タイムは格別だという。この庭には、昔の隣人から受け継いだ、300年前の地蔵が「家の守り神」として奉られている。浴槽は、ウィリアムさんたっての希望で、肌触りがよく湯冷めしにくいホーロー製。
左からパトリシアさん、ウィリアムさん、長浜さん。
「ご夫妻とは設計・現場作業中にもアイディアを出し合えたので、相乗効果でどんどん良い家になっていきました」と語る長浜さん。
「日本人は、家より土地にお金をかけ過ぎでは?」と感じているというスティール夫妻。「我々は真逆で、堅牢な構造、自然な素材、良好な日当たり、菜園スペースなどにこだわり、その全てを手にいれました」と満足げに語る。とはいえ、クリスマスに子供や孫が20名ほど一同に会すと手狭に感じることもあるという。「もしもう一軒建てることになったら、また長浜さんにお願いしたい」と希望を語っていた。
新築のHouzzツアーを読む
懐かしい昭和初期の洋館をイメージした、小田原の高台に立つ家
「ご夫妻とは設計・現場作業中にもアイディアを出し合えたので、相乗効果でどんどん良い家になっていきました」と語る長浜さん。
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