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光の空間、コンサーバトリーの魅力
庭と室内をつなぐアウトドアリビングとして人気のコンサーバトリー。英国生まれのこの建物の特徴やバリエーション、日本の住宅に取り入れる際のポイントをお伝えします。
Yoko Ogino
2016年4月19日
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン。英国のインテリアスタイルの中でも特にイングリッシュカントリーに共感し現在は緑豊かな鎌倉山でスローなライフスタイルを提案しています。
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン... もっと見る
コンサーバトリーとは、その名前の由来がConserve(保存)からきているとおり、その昔、新種の植物や希少な植物を求めて世界を旅した英国のプラントハンターたちが、南の国から運んだオレンジの木を保護するためにつくられた建物でした。今、私たちが知っている住空間としてのコンサーバトリーは、雨の日も曇りの日も比較的安定した明るさを保つことができ、アウトドアリビングの気分を味わえる最高の空間といえます。
コンサーバトリーは贅沢なスぺースですが、これがあることで暮らしが格段に楽しくなること請け合いです。屋外でも屋内でもない、魅力的で不思議な空間にいる時間が、きっと体と心を癒してくれる作用があるからでしょう。
もともと英国生まれの建物であるため、高温多湿の気候や雨季、台風などを想定せずに設計されているので、日本で取り付けるときにはいくつか考慮すべきポイントがあります。たとえば取り付ける位置や方角についても、日本の気候の場合、夏の暑さを避けるため、南ではなく北か東向きに設置することをおすすめします。
今回はそんなコンサーバトリーについての解説です。家にコンサーバトリーを取り入れてみたい方の参考になれば幸いです。
コンサーバトリーは贅沢なスぺースですが、これがあることで暮らしが格段に楽しくなること請け合いです。屋外でも屋内でもない、魅力的で不思議な空間にいる時間が、きっと体と心を癒してくれる作用があるからでしょう。
もともと英国生まれの建物であるため、高温多湿の気候や雨季、台風などを想定せずに設計されているので、日本で取り付けるときにはいくつか考慮すべきポイントがあります。たとえば取り付ける位置や方角についても、日本の気候の場合、夏の暑さを避けるため、南ではなく北か東向きに設置することをおすすめします。
今回はそんなコンサーバトリーについての解説です。家にコンサーバトリーを取り入れてみたい方の参考になれば幸いです。
コンサーバトリーの起源
17世紀のヨーロッパで、地中海沿岸の地域から持ち帰ったオレンジやレモンなど柑橘の樹木を冬の寒さから守りつつ育てるために、窓を大きく取ってつくられた温室の原型、「オランジェリー」と呼ばれる建物が、コンサーバトリーの前身です。陽光を取り入れる工夫をした窓の高さと形が優雅な、装飾的な建物です。
17世紀のヨーロッパで、地中海沿岸の地域から持ち帰ったオレンジやレモンなど柑橘の樹木を冬の寒さから守りつつ育てるために、窓を大きく取ってつくられた温室の原型、「オランジェリー」と呼ばれる建物が、コンサーバトリーの前身です。陽光を取り入れる工夫をした窓の高さと形が優雅な、装飾的な建物です。
イギリスの古い家は、冬の寒さ対策で窓を小さくつくってあるため、部屋の中が暗いという難点があります。そこで、後付け可能なコンサーバトリーを外側に建てることが人気となり、日照が少ない曇りの日やや雨の日でも明るい空間で快適に過ごせる工夫として発達していきました。
連なる窓の美しさ
コンサーバトリーの美しさはまず、窓の形によって表現されます。1枚の大きな窓を入れるのではなく、細身の窓がいくつも連なることで、繊細な表情が醸し出されます。この写真をよく見ると、母屋と同じ形状の窓がコンサーバトリーにもつけられており、統一感と完成度がぐんと増しています。
コンサーバトリーの美しさはまず、窓の形によって表現されます。1枚の大きな窓を入れるのではなく、細身の窓がいくつも連なることで、繊細な表情が醸し出されます。この写真をよく見ると、母屋と同じ形状の窓がコンサーバトリーにもつけられており、統一感と完成度がぐんと増しています。
窓の美しさをさらに強調する窓飾り。日本のサッシにもこのような遊びができたら、窓まわりはもっと楽しくなりそうですね。
屋根のデザインの美しさ
コンサーバトリーの特徴は屋根にもあります。この家では、母屋の2階部分の縦長窓があるために、コンサーバトリーの屋根の高さが十分にとれません。そこで、ドーマーと呼ばれる屋根つきの窓の形のトップライトをつけ、天井をより高く見せるようにしました。このような賢いアイデアはぜひ参考にしたいものです。
コンサーバトリーの特徴は屋根にもあります。この家では、母屋の2階部分の縦長窓があるために、コンサーバトリーの屋根の高さが十分にとれません。そこで、ドーマーと呼ばれる屋根つきの窓の形のトップライトをつけ、天井をより高く見せるようにしました。このような賢いアイデアはぜひ参考にしたいものです。
既存の建物の奥まったくぼみ(入隅)に設置する場合、雨水の流れを考慮すると、屋根は通常、片流れ(片方に勾配させること)にするのが妥当です。でも、こちらのように中央部分に切妻屋根を組み込ませることで、平凡な形に変化ができ、建物の美しさが増しています。このように、コンサーバトリーのデザインを考えるとき、屋根の形はとても大切なエッセンスとなります。
ロフトを利用した変わりコンサーバトリー
こちらは、コンサーバトリーが進化した形。ロフトを光の空間に変身させています。ルーフバルコニーにつなげることで、変形の屋根の構造がスタイリッシュなテントのように見えます。日本でも、屋上のある家の階段室の屋根と窓を、ガラスやポリカーボネートのような光を通す素材に替えたら、このような楽しいアウトドアリビングをつくることも夢ではありません。
こちらは、コンサーバトリーが進化した形。ロフトを光の空間に変身させています。ルーフバルコニーにつなげることで、変形の屋根の構造がスタイリッシュなテントのように見えます。日本でも、屋上のある家の階段室の屋根と窓を、ガラスやポリカーボネートのような光を通す素材に替えたら、このような楽しいアウトドアリビングをつくることも夢ではありません。
トップライトでLDKを光の空間に
採光の乏しい北国でよく見られるおしゃれなトップライト(天窓)。キッチン全体がコンサーバトリーのように明るい空間になる、北の国ならではの工夫です。トップライトはリフォームでも採用できるので、日本の北側のキッチンなどには、大変有効なアイデアだと思います。
採光の乏しい北国でよく見られるおしゃれなトップライト(天窓)。キッチン全体がコンサーバトリーのように明るい空間になる、北の国ならではの工夫です。トップライトはリフォームでも採用できるので、日本の北側のキッチンなどには、大変有効なアイデアだと思います。
こちらは家族やゲストがくつろぐリビング全体を明るい空間にしつらえています。昼間は陽光がいっぱいの空間に、夜は月や星の見えるロマンティックな部屋になりますね。
棟と棟の間をコンサーバトリーに
2棟の建物の間をつなぐ渡り廊下が、コンサーバトリーに変身。カントリーコテージスタイルの建物に、モダンなフレームだけのガラスパネルがぴったり似合っているのは、パネルがシンプルだからこそです。透明感のある空間の中の景色が、まるで絵のように見えますね。
2棟の建物の間をつなぐ渡り廊下が、コンサーバトリーに変身。カントリーコテージスタイルの建物に、モダンなフレームだけのガラスパネルがぴったり似合っているのは、パネルがシンプルだからこそです。透明感のある空間の中の景色が、まるで絵のように見えますね。
こちらも同様に、2棟ををつなぐ廊下風コンサーバトリーです。こちらは外壁を既存の建物に合わせて仕上げているため、建物どうしがしっくりとなじんで見えます。広いパティオがつながり、素敵なアウトドアリビングになっています。
コンサーバトリーは人間や植物のためだけの場所ではありません。ペットにとっても快適なお気に入りの空間になるでしょう。
日本の気候に適した処理や工事が重要
ここからは、日本の家屋に後からコンサーバトリーをつける場合の注意点や方法についてお伝えします。
こちらの家では、正面の3枚の窓の前にコンサーバトリーを設置しました。木造家屋なので、建具の取り替えや壁を撤去する作業が比較的やりやすい反面、夏の湿度や暑さで建物が傷みやすいという難点があります。特に白アリなどの害虫から建物を守るため、基礎工事の際に防蟻(白アリ駆除)工事は必須となります。
ここからは、日本の家屋に後からコンサーバトリーをつける場合の注意点や方法についてお伝えします。
こちらの家では、正面の3枚の窓の前にコンサーバトリーを設置しました。木造家屋なので、建具の取り替えや壁を撤去する作業が比較的やりやすい反面、夏の湿度や暑さで建物が傷みやすいという難点があります。特に白アリなどの害虫から建物を守るため、基礎工事の際に防蟻(白アリ駆除)工事は必須となります。
屋根のデザインは母屋の状況に応じて
コンサーバトリーの特徴である屋根の形も、母屋の状況によっては自由にデザインができないこともあります。こちらの家も、軒が低くせり出していて、コンサーバトリーの屋根勾配が取れないことが難点でした。そのため、ほぼフラットに近い形状ですが、寄棟で取り付けることにし、うまくおしゃれな感じに仕上げることができました。屋根が低くても、コンサーバトリーは天井による圧迫感がないため、それほど低さを感じない点は長所のひとつですね。
コンサーバトリーの特徴である屋根の形も、母屋の状況によっては自由にデザインができないこともあります。こちらの家も、軒が低くせり出していて、コンサーバトリーの屋根勾配が取れないことが難点でした。そのため、ほぼフラットに近い形状ですが、寄棟で取り付けることにし、うまくおしゃれな感じに仕上げることができました。屋根が低くても、コンサーバトリーは天井による圧迫感がないため、それほど低さを感じない点は長所のひとつですね。
こちらの家でも、南側に面した庭にコンサーバトリーを建てる際、2階のバルコニーにより屋根の高さが制限されたため、屋根は勾配を低くし、全体の高さを抑えてつくられました。
小さな空間でも広がりを感じる
屋根が低くても天井がつかないため、内部は意外に圧迫感がありません。また壁もないことで空間が外とつながり、従来のスペースよりも広く感じられます。この建物は4.5畳ですが、それほど狭く思えないのは、外の景色が内部と一体になり、アウトドアリビングとして機能しているからでしょう。
防火地域、準防火地域以外であれば、10平米(6畳)未満の建物は増築の確認申請が不要なため、後からでも比較的簡単に施工が可能です。ただし、建蔽率や容積率に抵触しないことは必須条件です。
屋根が低くても天井がつかないため、内部は意外に圧迫感がありません。また壁もないことで空間が外とつながり、従来のスペースよりも広く感じられます。この建物は4.5畳ですが、それほど狭く思えないのは、外の景色が内部と一体になり、アウトドアリビングとして機能しているからでしょう。
防火地域、準防火地域以外であれば、10平米(6畳)未満の建物は増築の確認申請が不要なため、後からでも比較的簡単に施工が可能です。ただし、建蔽率や容積率に抵触しないことは必須条件です。
防火地域、準防火地域での注意点
建物の構造の規制が厳しい、防火地域、準防火地域にコンサーバトリーを建てる場合の注意点をお話しします。
こちらの写真の家は準防火地域のため、木製のコンサーバトリーに防火基準に合う素材を使用して建てられました。
屋根は少々重くなりますが、防火ガラス入りで施工するため、重量に耐えられるように、屋根材を大きくするなど工夫をしてあります。外壁の腰壁は母屋と一体の耐火構造材を使用し、窓と窓の間の木部も金物でカバーをするなど、細かい仕上げが必要です。
建物の構造の規制が厳しい、防火地域、準防火地域にコンサーバトリーを建てる場合の注意点をお話しします。
こちらの写真の家は準防火地域のため、木製のコンサーバトリーに防火基準に合う素材を使用して建てられました。
屋根は少々重くなりますが、防火ガラス入りで施工するため、重量に耐えられるように、屋根材を大きくするなど工夫をしてあります。外壁の腰壁は母屋と一体の耐火構造材を使用し、窓と窓の間の木部も金物でカバーをするなど、細かい仕上げが必要です。
上のコンサーバトリーの内部です。窓は防火認定済のサッシを利用し、イギリスのデザインにならい、細身のダブルハング窓を横に連ねています。既成のサッシも、組み合わせによっておしゃれに並べることができる例です。
窓下の仕上げはお好みで
窓下の腰壁部分は、レンガ張り、タイル張り、漆喰仕上げなど、お好みに合わせて仕上げられます。基礎工事の際に、基礎を高くして窓下まで上げておくと、後の仕上げ工事がしやすくなるのでおすすめです。また地面から離れることで、白アリ対策にもなります。
窓下の腰壁部分は、レンガ張り、タイル張り、漆喰仕上げなど、お好みに合わせて仕上げられます。基礎工事の際に、基礎を高くして窓下まで上げておくと、後の仕上げ工事がしやすくなるのでおすすめです。また地面から離れることで、白アリ対策にもなります。
庭と部屋をつなぐアウトドアリビング空間、コンサーバトリーのあれこれをご紹介しました。英国の田舎のコテージやロンドンのテラスハウスで見かけて以来、憧れの建物でした。日本でコンサーバトリーを作るときには、夏の高温多湿をきちんと考慮し、日本の風土に合う素材を使えば、明るい陽だまりと開放感にあふれた、快適な空間を手に入れることができるでしょう。
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