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名作デザイン:アレクサンダー・ジラード
壁紙からクッションまで、色彩と遊び心にあふれるアレクサンダー・ジラードのデザイン。時代を超えた魅力の秘密は、フォークアートから受けたインスピレーションにありました。
Becky Harris
2016年4月13日
アレキサンダー・ジラードは、鮮やかな色づかいで知られる、最も優れたモダン・テキスタイルのデザイナーです。1920年代に建築家、インテリアデザイナーとして活動を始め、1949年、デトロイト美術館の「モダン生活のために」展のデザインを監修。その後〈ハーマンミラー〉に所属し、ニューヨーク近代美術館でも企画を手がけるようになりました。インドのハンドクラフトにも関心を寄せ、1955年には同美術館で開かれた「インドのテキスタイルと装飾芸術」展を手がけています。
ジラードが手がけた大きな仕事の1つが、アメリカのブラニフ航空のブランドイメージを刷新するプロジェクトでした。「平凡な飛行機(英語だと “プレーンなプレーン” という掛詞になる)の終焉」をモットーに掲げ、グッズのトランプから搭乗ゲート、飛行機の機体、ラウンジまで、あらゆるデザインを一新。客室乗務員の制服デザインは、同じくテキスタイルデザインの名手だったエミリオ・プッチに依頼しました。
ジラードは1970年代まで〈ハーマンミラー〉に所属。1978年には、妻と一緒に集めたフォークアート(民芸品)のコレクションを米ニューメキシコ州サンタフェのインターナショナル・フォークアート美術館へ寄贈しました。1993年にこの世を去りましたが、彼の残したデザインは永遠の魅力を放っています。この記事では、代表作を振り返りながら、彼の足跡をたどってみたいと思います。
ジラードが手がけた大きな仕事の1つが、アメリカのブラニフ航空のブランドイメージを刷新するプロジェクトでした。「平凡な飛行機(英語だと “プレーンなプレーン” という掛詞になる)の終焉」をモットーに掲げ、グッズのトランプから搭乗ゲート、飛行機の機体、ラウンジまで、あらゆるデザインを一新。客室乗務員の制服デザインは、同じくテキスタイルデザインの名手だったエミリオ・プッチに依頼しました。
ジラードは1970年代まで〈ハーマンミラー〉に所属。1978年には、妻と一緒に集めたフォークアート(民芸品)のコレクションを米ニューメキシコ州サンタフェのインターナショナル・フォークアート美術館へ寄贈しました。1993年にこの世を去りましたが、彼の残したデザインは永遠の魅力を放っています。この記事では、代表作を振り返りながら、彼の足跡をたどってみたいと思います。
フォークアートにインスピレーションを受けたジラード。その影響を感じさせるデザインには、遊び心や肩の力の抜けた雰囲気があります。ジラードは生前、こう語っていました。「フォークアートには、大人になるにつれて失いがちな、子供のような好奇心や冒険心があふれていると思います。」
1952年、ジラードは〈ハーマンミラー〉のテキスタイル部門デザインディレクターに就任し(交流のあったチャールズ・イームズが、当時同社にいたジョージ・ネルソンにジラードを紹介し採用されました)、1970年代まで活躍しました。イームズもジラードもフォークアートと色彩を愛し、同じ時期にプライウッドチェアの製作を試みていました。
写真の部屋の壁に飾られている白黒のテキスタイルは、〈ハーマンミラー〉でデザインした「エンバイロメンタル・エンリッチメント・パネル」と名づけた装飾パネルシリーズから。1971年のデザインで、ジラードが同社でのキャリアの最終期に手がけた300点を超えるデザインの一つです。現在でもヴィンテージとして流通しており、プライウッド製の小型版もあります。
写真の部屋の壁に飾られている白黒のテキスタイルは、〈ハーマンミラー〉でデザインした「エンバイロメンタル・エンリッチメント・パネル」と名づけた装飾パネルシリーズから。1971年のデザインで、ジラードが同社でのキャリアの最終期に手がけた300点を超えるデザインの一つです。現在でもヴィンテージとして流通しており、プライウッド製の小型版もあります。
意外なことに、〈ハーマンミラー〉にいた時代、彼はそれほど有名ではありませんでした。でも、現在では、その人気はますます高まっています。例えば、デザイナーのトッド・オールダムが出版した『Alexander Girard』はジラードの多彩な仕事をたたえる大判の作品集で、グラフィックデザインのファンの間では必携の書になっています。
ジラードのデザインは、ヴィンテージのパネルから壁紙、クッション、ノートまで、あらゆるシーンに登場します。最近では〈FLOR〉のタイルやケイト・スペードのバッグ、〈アーバン・アウトフィッターズ〉のクッション、〈ヴィトラ〉の人形などにも応用されています。写真の壁紙はジラードがデザインしたアルファベットモチーフをもとに、〈ハーマンミラー〉と提携して〈マハラム〉が製作したものです。
フォークアートに見いだした楽しさや驚きを自身のデザインにも活かしたいと考えていたジラードは、こんな思いを口にしています。「いいデザインに対する希望は、自分の仕事に信念を持ち、信念に合うことだけをする、そんなデザイナーのもとにあります。現実には難しいと思われがちですが、そうした姿勢で仕事として成り立たせていくことは可能です。」
太陽のモチーフを施した楽しげなクッション。レトロスタイルを愛するブロガー、ジェニー・ミッチェルさんのベンチを明るく彩っています。
太陽のモチーフを施した楽しげなクッション。レトロスタイルを愛するブロガー、ジェニー・ミッチェルさんのベンチを明るく彩っています。
ハーマンミラーのサイトには、「ファブリックを通じて暮らしを今よりちょっとよくすることが自分の仕事、とジラードは考えていました」という解説があります。写真右のウームチェアは、ジラードおなじみの四つ葉モチーフのファブリックを張ったもの。生地は〈マハラム〉で扱っている。ジラードのデザインを取り入れる人がジラードの願いを現実化し、さらに遊び心を加えたデザインを生み出していくさまを見ていると楽しくなります。ジラードもきっとこの部屋を気に入ってくれているはずだと思います。
1959年、ジラードはニューヨークにあるレストラン、ラフォンダ・デル・ソルのトータルデザインを依頼されました。メニューや紙マッチをはじめ、店舗のタイル、壁面、スタッフの制服までをトータルでデザインしたプロジェクトは、ジラードの仕事の中でも広く知られるものとなりました。このときただ1つ、店の椅子だけはチャールズとレイのイームズ夫妻にデザインをお願いしました。
パズルに描かれた絵は、ジラードがいくつになっても持ち続けてほしいと願った、子ども時代を思わせる遊び心を感じさせます。
建築をモチーフにした遊び心のあるグラフィックプリントのクッション。
うずまきと菱形を組み合わせてへびをかたどったデザインは、インパクトのある幾何学柄。ベースの黄色を飾る軽やかなサニーイエローでポップな印象です。
人気インテリアデザイナー、ジョナサン・アドラーも、ジラードのグラフィックには目がないそう。こちらの壁紙はジョナサン・アドラーのショップで取り扱われています。
ジラードは家具のデザインも手がけました。こちらのコーヒーテーブルはその1例。切り抜かれたような部分の使い方は、工夫のしがいがありそうです。
アイコンともいえる白と黒のプリントは、まねをしたデザインがたくさん生まれました。クラシックでモダンで、決して時代遅れにならない魅力があるから、といえるでしょう。
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