コメント
「コト」から始める家づくり:使う、貯める、使わない
ブルースタジオ石井健による連載。最終回は、エコやサステナブルと住まいについて考えてみましょう。
Takeshi Ishii
2018年3月10日
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの黎明期から1000件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。... もっと見る
これまで家での楽しみ方の多様性を見てきましたが、最終回となる今回は、エコやサステナブルについて考えてみましょう。
近年「暮らしを見直してみよう」という世の中の風潮が特に強く感じられます。“グローバル化” や “スローライフ” といったキーワードが流行したように、暮らしやライフスタイル、家づくりに興味がある人が多いように感じます。これまで、ライフスタイルがこんなにも語られる時代はなかったでしょう。
さらに、これら共通のテーマとしては、環境や自然との共生や、どう生きていくべきかということが語られます。サステナブルな暮らしとはどのような暮らしなのか。また、私たちはどうあるべきなのか、そこに住まいはどう関わっていくべきかを考察していきます。
近年「暮らしを見直してみよう」という世の中の風潮が特に強く感じられます。“グローバル化” や “スローライフ” といったキーワードが流行したように、暮らしやライフスタイル、家づくりに興味がある人が多いように感じます。これまで、ライフスタイルがこんなにも語られる時代はなかったでしょう。
さらに、これら共通のテーマとしては、環境や自然との共生や、どう生きていくべきかということが語られます。サステナブルな暮らしとはどのような暮らしなのか。また、私たちはどうあるべきなのか、そこに住まいはどう関わっていくべきかを考察していきます。
頑張りすぎない「エコ」「サステナブル」
このことを考えるきっかけとなったのは、前回の記事の最後にあげたこちらの写真です。
「エコ」「サステナブル」というと、何かを犠牲にし、我慢しなければいけないイメージもありますが、野菜を育て、鶏を育て、雨水の再利用をする、背伸びしすぎない生活がいいと感じました。
ゆるやかな自然エネルギーの活用や、エネルギーの無駄遣いをしない暮らし方が、デザイン的にも素敵に実践できています。自然に楽しみながらという意味では、ひとつの理想形です。
このことを考えるきっかけとなったのは、前回の記事の最後にあげたこちらの写真です。
「エコ」「サステナブル」というと、何かを犠牲にし、我慢しなければいけないイメージもありますが、野菜を育て、鶏を育て、雨水の再利用をする、背伸びしすぎない生活がいいと感じました。
ゆるやかな自然エネルギーの活用や、エネルギーの無駄遣いをしない暮らし方が、デザイン的にも素敵に実践できています。自然に楽しみながらという意味では、ひとつの理想形です。
築150年の古民家を快適に
次に、築150年の古民家をリノベーションした事例を見ていきます。
「高気密高断熱」を実践している人はまだ少ないかもしれませんが、近年盛り上がりを見せています。現代の生活に合うように改築し、「ただ断熱材を入れた」だけでなく、家を構成する構造自体で断熱性能を向上させています。
Houzzツアー:150年を経た民家を生まれ変わらせるリノベーション「湯沢の住宅」
次に、築150年の古民家をリノベーションした事例を見ていきます。
「高気密高断熱」を実践している人はまだ少ないかもしれませんが、近年盛り上がりを見せています。現代の生活に合うように改築し、「ただ断熱材を入れた」だけでなく、家を構成する構造自体で断熱性能を向上させています。
Houzzツアー:150年を経た民家を生まれ変わらせるリノベーション「湯沢の住宅」
冷暖房不要の家
「パッシブデザイン」とは、自然環境を取り込むことでエネルギーの消費を抑えることを言います。エネルギーを上手に使うには、建築計画の巧みさも問われるのです。
オーストラリア・キャンベラのこの建築家の自邸では、長い日照時間を活かしてパッシブソーラーを利用し、なんと冷暖房不要で生活ができています。日照時間が長いとはいえ、より効率的に集光するために、家の向きも考えられています。
世界のHouzzから:オーストラリアの最新エコ住宅9選
「パッシブデザイン」とは、自然環境を取り込むことでエネルギーの消費を抑えることを言います。エネルギーを上手に使うには、建築計画の巧みさも問われるのです。
オーストラリア・キャンベラのこの建築家の自邸では、長い日照時間を活かしてパッシブソーラーを利用し、なんと冷暖房不要で生活ができています。日照時間が長いとはいえ、より効率的に集光するために、家の向きも考えられています。
世界のHouzzから:オーストラリアの最新エコ住宅9選
タイニーハウスを考える
この連載でもさまざまな暮らし方を紹介してきましたが、電気や化石燃料をなるべく使わないだけでなく、いらないものを捨てていく暮らしが、世界中で静かなブームとなりつつあります。
このブームの背景には、自分たちを縛り付けている経済活動や安住といった概念から解放されたいという人が増えていることがあるのかもしれません。
単に、ものを減らして小さな家に暮らすだけでなく、エネルギーを極力使わず、シンプルに暮らすことや、自分にとって必要なものは何だろうと考えること。それは、我慢というよりも、欲をそぎ落とすことだと思います。「これって本当に必要?」と問い直す、“生活のダイエット” といった考えが、タイニーハウスの根底にはあるのです。
この連載でもさまざまな暮らし方を紹介してきましたが、電気や化石燃料をなるべく使わないだけでなく、いらないものを捨てていく暮らしが、世界中で静かなブームとなりつつあります。
このブームの背景には、自分たちを縛り付けている経済活動や安住といった概念から解放されたいという人が増えていることがあるのかもしれません。
単に、ものを減らして小さな家に暮らすだけでなく、エネルギーを極力使わず、シンプルに暮らすことや、自分にとって必要なものは何だろうと考えること。それは、我慢というよりも、欲をそぎ落とすことだと思います。「これって本当に必要?」と問い直す、“生活のダイエット” といった考えが、タイニーハウスの根底にはあるのです。
家の性能を抑えることで、エネルギーの利用を抑える
自分の生活に必要ないものをどんどん削ぎ落としていくことが、タイニーハウスという考え方だとしたら、日本の侘び寂びの文化と相性がいいのかもしれません。
こちらは、“動く茶室” で、トレーラーハウスに茶室をつくった事例です。炉と茶釜、にじり口までついた、本格的な茶室となっています。小さいながらお風呂も完備されており、なかなか快適そうです。
自分の生活に必要ないものをどんどん削ぎ落としていくことが、タイニーハウスという考え方だとしたら、日本の侘び寂びの文化と相性がいいのかもしれません。
こちらは、“動く茶室” で、トレーラーハウスに茶室をつくった事例です。炉と茶釜、にじり口までついた、本格的な茶室となっています。小さいながらお風呂も完備されており、なかなか快適そうです。
タイニーハウスとエコハウスの融合は今や当たり前に
建築に関わる多様な人々からなる〈HEAD研究会〉の事例では、建築学科の学生が、断熱タイニーハウスをDIYで開発しました。タイニーハウスとエコハウスの融合は、学生にとってはリアルになってきていることを示唆しています。
建築学生たちがDIYで小屋作りに挑戦! 断熱タイニーハウスプロジェクト
建築に関わる多様な人々からなる〈HEAD研究会〉の事例では、建築学科の学生が、断熱タイニーハウスをDIYで開発しました。タイニーハウスとエコハウスの融合は、学生にとってはリアルになってきていることを示唆しています。
建築学生たちがDIYで小屋作りに挑戦! 断熱タイニーハウスプロジェクト
サステナブルの観点から、エコやパッシブの技術を使いながら発展してきた事例を見てきましたが、住民が代わっても、家という “箱” は継続されていきます。人の一生より長く継続するのです。そして、人が住んだ記憶を、家そのものが受け継いでいきます。
このように持続性を重んじた結果が、高断熱やエコ住宅を選ぶ理由となってくるのではないでしょうか。
このように持続性を重んじた結果が、高断熱やエコ住宅を選ぶ理由となってくるのではないでしょうか。
エコやサステナブルとは“繋ぐ”こと
地方と都市部の格差や、空き家問題は、まだまだ解決とはいきません。みなさんの身近なところでも、実家を誰が継ぐかという問題に思い当たる人もいるのではないでしょうか。
他人に渡ったとしても、ちゃんとメンテナンスされ、手を入れられて受け継がれていくようにしたい。それは思い入れがあればあるほどでしょう。
築40年のこちらの住宅は、外観はいたって普通に見えますが、内装をリノベーションして、1階を蕎麦屋にして2階を事務所兼住居にし、新しい暮らし方を始めました。まさに “繋ぐ” を体現している家です。
本連載では、“家って何だろう” といったことをいろいろな角度から考えてきました。エコやサステナブルとは、ただ住みたい家に住むだけではない、文化を次の世代へ受け継ぐ気持ちであり、このことこそがリノベーションして住み続ける精神なのではないでしょうか。
「コト」から始める家づくり 過去の連載
つくる、食べる、そしてその先
集める、飾る、悦に入る
集まる、祝う、もてなす
のぼる、はねる、体当たりする
まなぶ、はたらく、とじこもる
聴く、弾く、録るを主役に
涼む、楽しむ、工夫する
やすむ、くつろぐ、オフになる
きたえる、癒す、体を育てる
作、創、造 3つの “つくる”
愛でる、育む、支え合う
地方と都市部の格差や、空き家問題は、まだまだ解決とはいきません。みなさんの身近なところでも、実家を誰が継ぐかという問題に思い当たる人もいるのではないでしょうか。
他人に渡ったとしても、ちゃんとメンテナンスされ、手を入れられて受け継がれていくようにしたい。それは思い入れがあればあるほどでしょう。
築40年のこちらの住宅は、外観はいたって普通に見えますが、内装をリノベーションして、1階を蕎麦屋にして2階を事務所兼住居にし、新しい暮らし方を始めました。まさに “繋ぐ” を体現している家です。
本連載では、“家って何だろう” といったことをいろいろな角度から考えてきました。エコやサステナブルとは、ただ住みたい家に住むだけではない、文化を次の世代へ受け継ぐ気持ちであり、このことこそがリノベーションして住み続ける精神なのではないでしょうか。
「コト」から始める家づくり 過去の連載
つくる、食べる、そしてその先
集める、飾る、悦に入る
集まる、祝う、もてなす
のぼる、はねる、体当たりする
まなぶ、はたらく、とじこもる
聴く、弾く、録るを主役に
涼む、楽しむ、工夫する
やすむ、くつろぐ、オフになる
きたえる、癒す、体を育てる
作、創、造 3つの “つくる”
愛でる、育む、支え合う
おすすめの記事
小さな住まい
コンパクトリビングの賢いスペース活用法
コンパクトな空間は、ひとつひとつの要素が持つ「意味」が大切。スペースを最大限に生かしながら、快適に過ごせるテクニックと実例をご紹介しましょう。
続きを読む
ダイニングの記事
知っておきたい器づかいのコツ:料理をおいしく見せる器の色
文/進藤由美子
料理をおいしそうに見せる器って、どんな器でしょう? 家での食事をおいしく、楽しくする器の揃え方、使い方のコツを2回に分けてご紹介します。前編は、器の色について。
続きを読む
家事・掃除
計画的に少しずつ、今からできる大掃除ウィークリープラン
今から気負わず始められて、年末には家じゅうきれいになるお掃除プランと進め方のポイントをお届けします。そろそろ大掃除か、気が重いな……という人はぜひ読んでください!
続きを読む
ダイニングの記事
秋から冬へ、人が集まる季節のおもてなしテーブルコーディネート30選
暖かい部屋で過ごすひとときがうれしい季節の到来です。仲間や家族と集まり語らう時間、楽しいホームパーティーの参考に、晩秋から冬にかけてのテーブルセッティングシーンをどうぞ!
続きを読む
部屋別
失敗しないキッチン選び。システムキッチンとオーダーメイドキッチンの違い
日々の食事づくりに欠かせないキッチン。選び方ひとつで快適な毎日を手に入れることができます。まずは「システムキッチン」「造作キッチン」そして「オーダーメイドキッチン」の違いを知ることから始めましょう。
続きを読む
暮らしのヒント
中古マンションのリノベーション、いちばん気になる予算の考え方は?
文/大村哲弥
最近人気と注目が集まっている中古マンションのリノベーション。物件の価格やリノベーションの費用についての概要をまとめました。
続きを読む
リフォーム・リノベーションのヒント
リノベーションをするとなったら、心がけておくべき11のこと
リフォームやリノベーションにありがちなことをあらかじめ心得ておけば、 不安をおさえてスムーズにプロジェクトを進められます。
続きを読む